123 / 693
14章
元魔王様と孤児院の貧困事情 8
しおりを挟む
殺意とまではいかないが、明らかな敵意が自分の後ろから感じられたので振り向く。
すると冒険者の装いをした男が、全身を魔装した状態で自分目掛けて爆走してくるのが目に映る。
盗賊かと思える程に怖い顔付きをしており目付きも悪い。
一瞬で距離を詰めてきたその男は、柄が鎖で繋がれた両刃斧を両手に持っており、その片方を振るって突然攻撃してきた。
「いきなり攻撃とは危ない奴だ。」
突然の攻撃だったがジルは瞬時に右手を魔装して、素手で両刃斧を受け止めた。
それなりの衝撃が手に伝わってくるが怪我をする程では無い。
「っ!?」
男はまさか自分の両刃斧を素手で受け止められるとは思っておらず、目を大きく見開いて驚愕している。
「ちっ!」
舌打ちをしつつ続けてもう片方の両刃斧を振るってくる。
状況がイマイチよく分からないが、敵意を持って攻撃してくるのならば反撃しても文句を言われる筋合いは無いと考える。
そしてジルは空いている左手を魔装して迎え撃とうとした。
「アレン止めなさい!」
すると近くにいたアキネスが声を荒げた。
アレンとはジルに攻撃してきている者の名前の様だ。
突然始まった戦闘に驚き、アキネスは動くのが遅れた。
アキネスの声を聞いてアレンと呼ばれた男は、ジルに迫っていた両刃斧を止める。
一応アレンが攻撃を止めたので、ジルも様子を見る意味で左手は動かしていない。
「何故止めやがる!また金目当ての人攫いとかだろうが!誰も渡しはしねえ!」
アキネスに向かってアレンが吠える様に言う。
どうやら人攫いか何かと勘違いされているらしい。
「違います!この方は違うんです!」
「アレン、突然なんて事を!武器を下ろしなさい!」
アキネスが必死に否定していると、この状況を見た神父も小走りで近付いてきて、アレンを叱る様に言う。
「そう言う事だ。勘違いしているが、我はお前が口にした様な輩では無い。」
ジルもアキネスや神父の言葉に続く様に勘違いだと告げる。
「…いつもの連中とは無関係なのか?」
アキネスや神父、そしてジルの言葉を受けてアレンは武器を下ろした。
敵意も無くなったのでジルも魔装を解除する。
「そうです。それどころか、ジル殿は我々に食べ物を恵んで下さった恩人です。」
神父の言葉を受けてアレンは驚き周りを見回す。
今は突然の戦闘行為で皆が手を止めてしまっているが、子供達の手にはシチューの入った皿がある。
どうやらカッとなったアレンは周りが見えていなかった様だ。
「…悪かったな、いきなり攻撃しちまって。勘違いした様だ。」
状況を理解したアレンはバツが悪そうに謝罪した、
口調は荒っぽいが表情や声からは申し訳無さが伝わってくるので反省している様である。
「ジル殿、本当にアレンが申し訳無い事をした。」
アレンに続いて神父やシスター達も頭を下げてくる。
「驚いたが勘違いは解けたんだし気にするな。」
ジルは怪我をした訳でも無いので気にしてはいない。
突然それなりに強い攻撃が飛んできたので多少驚いただけである。
「…そう言ってくれんのはありがてえが、俺の気がすまねえ。一発殴れ。」
そう言ってアレンは自分の顔を指差す。
勘違いとは言え攻撃したケジメを付けるつもりなのだ。
「我が気にするなと言っている。それにそんな事をしても意味は無い。」
無抵抗の者を殴る様な趣味は無い。
それに特に気にする程の害を受けた訳でも無い。
「…分かった。こいつは貸しだ。何か別の形で返させてもらう。」
アレンはそう言って無理矢理納得した様だ。
別の形であっても先程の詫びを入れるつもりらしい。
「まあ、それで気がすむのならそうすればいい。それよりもアレンと言ったな?話しを聞くにお前はここの関係者なのだろう?」
先程のアキネスや神父の口ぶりから知り合いなのは明らかである。
「ああ、元だがな。」
「ジル様、昨日お話しした巣立っていった者達の一人です。アレンは冒険者をしているんです。」
アキネスがアレンについて紹介してくれる。
成長した事で孤児院を卒業した者の一人らしい。
「成る程、それなりに強いのも頷ける。」
格好から冒険者だろうとは予想出来た。
だがこんなに強い冒険者は、転生してから初めて出会ったかもしれない。
「アレン、今日も孤児院にお金を渡しにきてくれたのか?」
「ああ、俺がここにくる理由はそれくらいしかねえだろ。」
神父の問い掛けにアレンは頷く。
そして懐から一つの袋を取り出して渡した。
ジャラジャラと音を立てており、それなりに重そうな袋である。
チラッと中身が見えたが、大量の銀貨と少しの小金貨が見えた。
冒険者として稼いだ金なのだろうが中々の金額である。
「いつもすまないな。」
神父はお礼を言って両手で大事そうに袋を受け取る。
文字通り自分達が生きていく為に必要なお金なので、元孤児であるアレンから受け取るとしても、はっきりとした敬意が感じられた。
すると冒険者の装いをした男が、全身を魔装した状態で自分目掛けて爆走してくるのが目に映る。
盗賊かと思える程に怖い顔付きをしており目付きも悪い。
一瞬で距離を詰めてきたその男は、柄が鎖で繋がれた両刃斧を両手に持っており、その片方を振るって突然攻撃してきた。
「いきなり攻撃とは危ない奴だ。」
突然の攻撃だったがジルは瞬時に右手を魔装して、素手で両刃斧を受け止めた。
それなりの衝撃が手に伝わってくるが怪我をする程では無い。
「っ!?」
男はまさか自分の両刃斧を素手で受け止められるとは思っておらず、目を大きく見開いて驚愕している。
「ちっ!」
舌打ちをしつつ続けてもう片方の両刃斧を振るってくる。
状況がイマイチよく分からないが、敵意を持って攻撃してくるのならば反撃しても文句を言われる筋合いは無いと考える。
そしてジルは空いている左手を魔装して迎え撃とうとした。
「アレン止めなさい!」
すると近くにいたアキネスが声を荒げた。
アレンとはジルに攻撃してきている者の名前の様だ。
突然始まった戦闘に驚き、アキネスは動くのが遅れた。
アキネスの声を聞いてアレンと呼ばれた男は、ジルに迫っていた両刃斧を止める。
一応アレンが攻撃を止めたので、ジルも様子を見る意味で左手は動かしていない。
「何故止めやがる!また金目当ての人攫いとかだろうが!誰も渡しはしねえ!」
アキネスに向かってアレンが吠える様に言う。
どうやら人攫いか何かと勘違いされているらしい。
「違います!この方は違うんです!」
「アレン、突然なんて事を!武器を下ろしなさい!」
アキネスが必死に否定していると、この状況を見た神父も小走りで近付いてきて、アレンを叱る様に言う。
「そう言う事だ。勘違いしているが、我はお前が口にした様な輩では無い。」
ジルもアキネスや神父の言葉に続く様に勘違いだと告げる。
「…いつもの連中とは無関係なのか?」
アキネスや神父、そしてジルの言葉を受けてアレンは武器を下ろした。
敵意も無くなったのでジルも魔装を解除する。
「そうです。それどころか、ジル殿は我々に食べ物を恵んで下さった恩人です。」
神父の言葉を受けてアレンは驚き周りを見回す。
今は突然の戦闘行為で皆が手を止めてしまっているが、子供達の手にはシチューの入った皿がある。
どうやらカッとなったアレンは周りが見えていなかった様だ。
「…悪かったな、いきなり攻撃しちまって。勘違いした様だ。」
状況を理解したアレンはバツが悪そうに謝罪した、
口調は荒っぽいが表情や声からは申し訳無さが伝わってくるので反省している様である。
「ジル殿、本当にアレンが申し訳無い事をした。」
アレンに続いて神父やシスター達も頭を下げてくる。
「驚いたが勘違いは解けたんだし気にするな。」
ジルは怪我をした訳でも無いので気にしてはいない。
突然それなりに強い攻撃が飛んできたので多少驚いただけである。
「…そう言ってくれんのはありがてえが、俺の気がすまねえ。一発殴れ。」
そう言ってアレンは自分の顔を指差す。
勘違いとは言え攻撃したケジメを付けるつもりなのだ。
「我が気にするなと言っている。それにそんな事をしても意味は無い。」
無抵抗の者を殴る様な趣味は無い。
それに特に気にする程の害を受けた訳でも無い。
「…分かった。こいつは貸しだ。何か別の形で返させてもらう。」
アレンはそう言って無理矢理納得した様だ。
別の形であっても先程の詫びを入れるつもりらしい。
「まあ、それで気がすむのならそうすればいい。それよりもアレンと言ったな?話しを聞くにお前はここの関係者なのだろう?」
先程のアキネスや神父の口ぶりから知り合いなのは明らかである。
「ああ、元だがな。」
「ジル様、昨日お話しした巣立っていった者達の一人です。アレンは冒険者をしているんです。」
アキネスがアレンについて紹介してくれる。
成長した事で孤児院を卒業した者の一人らしい。
「成る程、それなりに強いのも頷ける。」
格好から冒険者だろうとは予想出来た。
だがこんなに強い冒険者は、転生してから初めて出会ったかもしれない。
「アレン、今日も孤児院にお金を渡しにきてくれたのか?」
「ああ、俺がここにくる理由はそれくらいしかねえだろ。」
神父の問い掛けにアレンは頷く。
そして懐から一つの袋を取り出して渡した。
ジャラジャラと音を立てており、それなりに重そうな袋である。
チラッと中身が見えたが、大量の銀貨と少しの小金貨が見えた。
冒険者として稼いだ金なのだろうが中々の金額である。
「いつもすまないな。」
神父はお礼を言って両手で大事そうに袋を受け取る。
文字通り自分達が生きていく為に必要なお金なので、元孤児であるアレンから受け取るとしても、はっきりとした敬意が感じられた。
1
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる