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13章
元魔王様と商会長との交渉術 2
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突然の領主の来訪により、困惑と緊張が二人から伝わってくる。
「二人共頭を上げて上げて。今の私は領主では無く商人の一人なんだからさ。」
トゥーリが頭を下げた状態で固まっている二人に向けて柔らかな声音で言う。
どうやら取り引きの話し合いとしてトゥーリ自らがきた様である。
ビーク商会は商会長とその息子がいなくなってしまったので、今や領主のトゥーリの下で経営されている。
なのでトゥーリが領主兼商会長となっているのだ。
「「は、はぁ。」」
一先ず二人は納得してソファーに座り直す。
それを見て満足そうに頷いてからトゥーリが対面のソファーに座った。
「ジル君も彼女達を少しは見習ってもいいんだよ?」
ソファーに座るなりトゥーリがそんな事を言ってきた。
立ち上がる様子を一切見せないジルと違って、小さくて目立たないがシキも一応ちょこんと立ち上がって会釈をしていたりする。
「我は相手が誰であろうと、へりくだるのは好かないのでな。」
ソファーから立ち上がる気が無い事をトゥーリに告げる。
魔王として常に上の立場にいた事も少しは関係しているのかもしれないが、元々のジルの性格がこうなのだ。
転生の際に神々にさえも対等な話し方をしていたのがその証拠であろう。
「じ、ジルさん!?」
そんな態度を領主にとるジルを見てリュカが慌てている。
女将も声には出していないがその態度を見て内心焦っているであろう。
その理由は貴族に対して平民がそんな態度を取れば、不敬罪として捕縛される事もあるからだ。
それが過激な貴族ならば最悪の場合不敬罪どころか死刑にされる事すらある。
「いいんだお嬢さん、ジル君がこう言う感じなのは知ってるからね。貴族に対してこんなにあからさまな態度を取る人なんて珍しいだろ?」
リュカに構わないと伝えてクスクスと笑っているトゥーリ。
その様子を見て女将とリュカもトゥーリが怒っていない事を知って安堵する。
「珍しいと言うか、怖いもの知らずですよね。」
リュカが言う様に目の前にいるトゥーリが子供の領主だとしても、ジルの様な態度を取る平民はいない。
貴族には大人も子供も関係無く、等しく平民とは隔絶された権力を所持しているのである。
わざわざリスクを冒して機嫌を損ねる必要は無い。
「確かにね。まあ、この話しはここまでにしようか。今日は取り引きの為にきたんだもんね?」
ジルの態度に関してはトゥーリも気にしていないので、話しを切り上げて本題に戻す。
「はい、塩を買いにきました。」
さすがの女将も普段とは口調を変えて敬語で話している。
これが貴族に対する普通の平民の態度である。
「幾らくらいを希望してるのかな?」
「このお金で買える分だけ頂きたいです。」
そう言って女将が差し出したのは小金貨50枚である。
平民からしたら大金に違い無く、中々奮発していると言える。
ジルがフライドポテトの再現用に使用した分も返済しているので、それも含まれているだろう。
「成る程、500000Gね。塩はちょうど昨日入ったからそれなりにはあるんだけど、どうしようかな。」
金額を確認した後にトゥーリが悩む様に言う。
「ある程度は値段が決まっているのではないのか?」
悩んでいる様子のトゥーリを見てジルが尋ねる。
セダン一の商会の本店ともなれば、塩の取り引きなんて今までにも数え切れない程行ってきている。
ある程度値段に合った数は既に決まっている筈なのだ。
「うん、そうだね。相場なら500gくらいかな。」
宿屋でジル達が使った小さな壺に入っていた塩は、使い掛けだったが満杯なら100gは入りそうであった。
ジルが使用料として支払った額を考えれば妥当である。
「もう少し頂く事は難しいですか?」
ここにきたのは大口の取り引きをする事で値段交渉がある程度出来るからだ。
しかし交渉相手にまさか領主がくるとは女将も思わなかっただろう。
本来なら強気に交渉して相場よりも多くの塩を買いたかったと思われるが、商会長依然に領主相手では探り探りと言った様子である。
「分かっているさ。君達にはモンドの馬鹿が迷惑を掛けたからね。お詫びもしたいと思ってたんだよ。」
トゥーリも適正価格で譲るつもりは無い様だ。
先日の騒動で迷惑を受けた女将達に対して、お詫びも兼ねるつもりらしい。
「そ、そんな、恐れ多いです。」
「それに領主様のせいじゃありませんよ。」
それを受けて二人は喜びよりも恐れ多いと感じている。
目上の貴族相手でしかも領主となれば、平民の反応はこうなってしまうだろう。
「いや、私の責任だよ。戦力で劣っていた事を理由に放置していたのは私だからね。だから迷惑を掛けた人達には、私が出来る限り詫びて返還しているんだ。」
モンドが捕まってから悪事は次々と露見していった。
それにより迷惑を受けた者の情報も大量に出てきて、トゥーリが後始末として方々に詫びているのだ。
「だからわざわざ出てきたと言う事か。」
多少大口の取り引きと言っても、平民との交渉にわざわざ商会長が出てくる事は稀だろう。
そうなると交渉以外で何か目的があると言う事になり、今回はお詫びがメインなのだろう。
「そう言う事だよ。それで塩についてなんだけど、600くらいでどうかな?」
トゥーリが提示してきたのは約金貨1枚分の塩を上乗せした数だった。
「二人共頭を上げて上げて。今の私は領主では無く商人の一人なんだからさ。」
トゥーリが頭を下げた状態で固まっている二人に向けて柔らかな声音で言う。
どうやら取り引きの話し合いとしてトゥーリ自らがきた様である。
ビーク商会は商会長とその息子がいなくなってしまったので、今や領主のトゥーリの下で経営されている。
なのでトゥーリが領主兼商会長となっているのだ。
「「は、はぁ。」」
一先ず二人は納得してソファーに座り直す。
それを見て満足そうに頷いてからトゥーリが対面のソファーに座った。
「ジル君も彼女達を少しは見習ってもいいんだよ?」
ソファーに座るなりトゥーリがそんな事を言ってきた。
立ち上がる様子を一切見せないジルと違って、小さくて目立たないがシキも一応ちょこんと立ち上がって会釈をしていたりする。
「我は相手が誰であろうと、へりくだるのは好かないのでな。」
ソファーから立ち上がる気が無い事をトゥーリに告げる。
魔王として常に上の立場にいた事も少しは関係しているのかもしれないが、元々のジルの性格がこうなのだ。
転生の際に神々にさえも対等な話し方をしていたのがその証拠であろう。
「じ、ジルさん!?」
そんな態度を領主にとるジルを見てリュカが慌てている。
女将も声には出していないがその態度を見て内心焦っているであろう。
その理由は貴族に対して平民がそんな態度を取れば、不敬罪として捕縛される事もあるからだ。
それが過激な貴族ならば最悪の場合不敬罪どころか死刑にされる事すらある。
「いいんだお嬢さん、ジル君がこう言う感じなのは知ってるからね。貴族に対してこんなにあからさまな態度を取る人なんて珍しいだろ?」
リュカに構わないと伝えてクスクスと笑っているトゥーリ。
その様子を見て女将とリュカもトゥーリが怒っていない事を知って安堵する。
「珍しいと言うか、怖いもの知らずですよね。」
リュカが言う様に目の前にいるトゥーリが子供の領主だとしても、ジルの様な態度を取る平民はいない。
貴族には大人も子供も関係無く、等しく平民とは隔絶された権力を所持しているのである。
わざわざリスクを冒して機嫌を損ねる必要は無い。
「確かにね。まあ、この話しはここまでにしようか。今日は取り引きの為にきたんだもんね?」
ジルの態度に関してはトゥーリも気にしていないので、話しを切り上げて本題に戻す。
「はい、塩を買いにきました。」
さすがの女将も普段とは口調を変えて敬語で話している。
これが貴族に対する普通の平民の態度である。
「幾らくらいを希望してるのかな?」
「このお金で買える分だけ頂きたいです。」
そう言って女将が差し出したのは小金貨50枚である。
平民からしたら大金に違い無く、中々奮発していると言える。
ジルがフライドポテトの再現用に使用した分も返済しているので、それも含まれているだろう。
「成る程、500000Gね。塩はちょうど昨日入ったからそれなりにはあるんだけど、どうしようかな。」
金額を確認した後にトゥーリが悩む様に言う。
「ある程度は値段が決まっているのではないのか?」
悩んでいる様子のトゥーリを見てジルが尋ねる。
セダン一の商会の本店ともなれば、塩の取り引きなんて今までにも数え切れない程行ってきている。
ある程度値段に合った数は既に決まっている筈なのだ。
「うん、そうだね。相場なら500gくらいかな。」
宿屋でジル達が使った小さな壺に入っていた塩は、使い掛けだったが満杯なら100gは入りそうであった。
ジルが使用料として支払った額を考えれば妥当である。
「もう少し頂く事は難しいですか?」
ここにきたのは大口の取り引きをする事で値段交渉がある程度出来るからだ。
しかし交渉相手にまさか領主がくるとは女将も思わなかっただろう。
本来なら強気に交渉して相場よりも多くの塩を買いたかったと思われるが、商会長依然に領主相手では探り探りと言った様子である。
「分かっているさ。君達にはモンドの馬鹿が迷惑を掛けたからね。お詫びもしたいと思ってたんだよ。」
トゥーリも適正価格で譲るつもりは無い様だ。
先日の騒動で迷惑を受けた女将達に対して、お詫びも兼ねるつもりらしい。
「そ、そんな、恐れ多いです。」
「それに領主様のせいじゃありませんよ。」
それを受けて二人は喜びよりも恐れ多いと感じている。
目上の貴族相手でしかも領主となれば、平民の反応はこうなってしまうだろう。
「いや、私の責任だよ。戦力で劣っていた事を理由に放置していたのは私だからね。だから迷惑を掛けた人達には、私が出来る限り詫びて返還しているんだ。」
モンドが捕まってから悪事は次々と露見していった。
それにより迷惑を受けた者の情報も大量に出てきて、トゥーリが後始末として方々に詫びているのだ。
「だからわざわざ出てきたと言う事か。」
多少大口の取り引きと言っても、平民との交渉にわざわざ商会長が出てくる事は稀だろう。
そうなると交渉以外で何か目的があると言う事になり、今回はお詫びがメインなのだろう。
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