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10章
元魔王様と最強のメイド達 5
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今回の結界は自由に生き物の出入りを出来無くする断絶結界である。
魔族が逃亡しようとしても、結界を破壊しない限りは出る事は出来無い。
「ちっ、うぜえ魔法を使ってきやがる。だが憑依中の俺には特に意味がねえけどな。肉体を失うくらいか。」
一見ピンチの様に見える魔族がそう言ってニヤリと笑う。
現状はハガンの身体に魔族が自分の精神を憑依させている。
なので魔族の実態がある訳では無い。
ハガンの身体と魔族の精神が分離すれば、実態の無い精神だけは結界を通り抜けて元の身体に戻ってしまう。
精神すらも封じる結界はあるのだが、残念ながら今のジルは使う事が出来無い。
「全く厄介な事だ。さっさと始末するか。」
魔王時代ならば精神にすらも干渉するスキルや魔法は幾らでも持っていたが、今のジルにその術は無い。
なのでハガンの中に憑依する魔族を捕らえる事は出来無い。
「マスター、命令の続行を私にお任せください。」
タイプBがそう言って名乗りを挙げる。
元々ジルに言い渡された殲滅作業が終わってなかったので、続きを実行したいのだ。
「そうだな、タイプBに任せるとしよう。」
「ま、待ってほしいのじゃ!」
ジルの言葉を聞いたナキナが割って入ってくる。
「どうしたナキナ?」
「その役目、妾に譲ってもらえぬか?」
どうやらタイプBに任せようとした魔族の討伐だが、ナキナがやりたい様だ。
一応ジルとしては見た目が鬼人族の同胞でもあるので、気を遣ってナキナ以外が倒した方がいいと配慮しての事だった。
「中身は違っても見た目は同族だぞ?大丈夫か?」
「それに私がきた時には満身創痍だった様子。お一人では厳しいのではないですか?」
ジルの意見に続く様にタイプBが言う。
タイプBから見れば、マスターであるジルやタイプC以外の殆どが格下の相手となる。
ナキナに任せるよりも自分がやった方が確実で手っ取り早いと思うのは当然である。
「あれは不意打ちを受けただけじゃ。それに妾はハガンを解放してやりたい。あの様な者に殺され、無念の死を遂げただけで無く、身体を好き放題に使われ悔やんでおるじゃろう。」
ナキナはハガンの敵討ちをしたいらしい。
いつまでも同胞の身体を好き勝手に使われたくないのだ。
「ジル様、お姫様に仇を取らせてあげてほしいのです!」
ナキナの想いを知ってシキも頼んできた。
「分かった、危なくなったら介入するからな。」
「一度機会を貰えれば充分じゃ。失敗したら直ぐに引き下がると約束しよう。」
ナキナはハガンに憑依する魔族を見ながら小太刀を抜く。
「おいおい、俺に重傷を負わせられたのにまた挑んでくるとはな。」
「口を塞いでおれ。これ以上ハガンの声で喋るでない。」
ハガンの声であってもハガンでは無い。
ナキナはハガンの声を使って喋る魔族に一喝して、二つの小太刀を構える。
「けっ、余計な奴らのせいで任務は失敗に終わるし散々だぜ。腹いせに一人くらい道連れにしてやる。」
魔族はそう言って戦闘態勢に入る。
例え殺されても本当に死ぬ訳では無いので、せめて何人か道連れにしようと戦う事を選んだ。
「ハガン、気付いてやる事も出来無かった妾を許してくれ。代わりと言う訳では無いが、お主を開放して弔ってやるからのう。」
ナキナは既に亡くなっている本物のハガンに語りかける様に呟く。
そしてナキナの全身からオーラの様な物が立ち上る。
武器を含めた全身を大量の魔力によって魔装しているのだ。
「もっともっと精進するとここに誓うのじゃ。同胞達の為に、理不尽な死や危険に抗える為に、お主の守りたかった者達を守る為に…。」
魔装する魔力の量が目に見えて増していく。
一回で決めると言っていた様に、最初から全力でいくのだろう。
「な、なんだその力は!?まだ力を隠してやがったのか!?」
長い間ハガンになりすまして潜入していた魔族だったが、ナキナのこんな力を見るのは初めてだ。
「同胞に見せる為の力では無いからのう。潜入していたお主が知らんのも当然じゃ。これは妾の前に立ちはだかる敵を葬る為の力じゃからな!」
同胞を危険から守る為に身に付けた力。
そう簡単に使う機会は無いが、魔族に乗っ取られたハガンを救う為となれば出し惜しむ理由は無い。
「見てくれはヤバそうだが、てめえは一度死にかけた身。少し回復した程度で俺に勝てるかよ!」
魔族は魔法道具の指輪に魔力を流し、無数の石弾をナキナに放つ。
不意を付いた時よりも一つ一つが大きく数も多い。
「推して参る!」
ナキナは魔族目掛けて真っ直ぐに突っ込む。
油断していなければ、ナキナにとっては取るに足ら無い攻撃である。
走りながら二つの小太刀で石弾を斬り刻み、塵に変えていく。
「これならどうだ!」
石弾が通じないと分かり違う指輪を使う。
巨大な火球が生み出され、激しく燃え盛りながら向かってくる。
「不意打ちで無ければ、この程度効きはせん。お主程度の実力では足りぬ!」
石弾と同じく火球を斬り付けるナキナ。
魔装された剣圧によって、火球が跡形も無く消し飛ぶ。
「なっ!?」
「終わりじゃな。…その首いつか取りにいくからのう。」
ハガンの中に潜む魔族を睨み付けながら呟き、魔装されていた二つの小太刀に更に魔力が込められていく。
すると刀身が燃えるように紅く染まっていった。
「鬼道烈火!」
二つの小太刀が空間すらも斬り裂く様な轟音を響かせ振われる。
正に鬼が怒り狂っているかの様な激しい攻撃に、ジル達も驚かされる。
その絶大な攻撃を魔族が受け切れる訳も無く、攻撃によって憑依されていたハガンの身体が、糸がプツリと切れたかの様に地面に倒れた。
「終わったぞ、ハガン…。」
倒れたハガンを見ながらナキナが呟く。
万能鑑定でハガンを視たが、ナキナの攻撃によって憑依状態は解除されていた。
そして倒れたハガンの表情からは、どことなく感謝をしている様な、そんな風に感じられた。
魔族が逃亡しようとしても、結界を破壊しない限りは出る事は出来無い。
「ちっ、うぜえ魔法を使ってきやがる。だが憑依中の俺には特に意味がねえけどな。肉体を失うくらいか。」
一見ピンチの様に見える魔族がそう言ってニヤリと笑う。
現状はハガンの身体に魔族が自分の精神を憑依させている。
なので魔族の実態がある訳では無い。
ハガンの身体と魔族の精神が分離すれば、実態の無い精神だけは結界を通り抜けて元の身体に戻ってしまう。
精神すらも封じる結界はあるのだが、残念ながら今のジルは使う事が出来無い。
「全く厄介な事だ。さっさと始末するか。」
魔王時代ならば精神にすらも干渉するスキルや魔法は幾らでも持っていたが、今のジルにその術は無い。
なのでハガンの中に憑依する魔族を捕らえる事は出来無い。
「マスター、命令の続行を私にお任せください。」
タイプBがそう言って名乗りを挙げる。
元々ジルに言い渡された殲滅作業が終わってなかったので、続きを実行したいのだ。
「そうだな、タイプBに任せるとしよう。」
「ま、待ってほしいのじゃ!」
ジルの言葉を聞いたナキナが割って入ってくる。
「どうしたナキナ?」
「その役目、妾に譲ってもらえぬか?」
どうやらタイプBに任せようとした魔族の討伐だが、ナキナがやりたい様だ。
一応ジルとしては見た目が鬼人族の同胞でもあるので、気を遣ってナキナ以外が倒した方がいいと配慮しての事だった。
「中身は違っても見た目は同族だぞ?大丈夫か?」
「それに私がきた時には満身創痍だった様子。お一人では厳しいのではないですか?」
ジルの意見に続く様にタイプBが言う。
タイプBから見れば、マスターであるジルやタイプC以外の殆どが格下の相手となる。
ナキナに任せるよりも自分がやった方が確実で手っ取り早いと思うのは当然である。
「あれは不意打ちを受けただけじゃ。それに妾はハガンを解放してやりたい。あの様な者に殺され、無念の死を遂げただけで無く、身体を好き放題に使われ悔やんでおるじゃろう。」
ナキナはハガンの敵討ちをしたいらしい。
いつまでも同胞の身体を好き勝手に使われたくないのだ。
「ジル様、お姫様に仇を取らせてあげてほしいのです!」
ナキナの想いを知ってシキも頼んできた。
「分かった、危なくなったら介入するからな。」
「一度機会を貰えれば充分じゃ。失敗したら直ぐに引き下がると約束しよう。」
ナキナはハガンに憑依する魔族を見ながら小太刀を抜く。
「おいおい、俺に重傷を負わせられたのにまた挑んでくるとはな。」
「口を塞いでおれ。これ以上ハガンの声で喋るでない。」
ハガンの声であってもハガンでは無い。
ナキナはハガンの声を使って喋る魔族に一喝して、二つの小太刀を構える。
「けっ、余計な奴らのせいで任務は失敗に終わるし散々だぜ。腹いせに一人くらい道連れにしてやる。」
魔族はそう言って戦闘態勢に入る。
例え殺されても本当に死ぬ訳では無いので、せめて何人か道連れにしようと戦う事を選んだ。
「ハガン、気付いてやる事も出来無かった妾を許してくれ。代わりと言う訳では無いが、お主を開放して弔ってやるからのう。」
ナキナは既に亡くなっている本物のハガンに語りかける様に呟く。
そしてナキナの全身からオーラの様な物が立ち上る。
武器を含めた全身を大量の魔力によって魔装しているのだ。
「もっともっと精進するとここに誓うのじゃ。同胞達の為に、理不尽な死や危険に抗える為に、お主の守りたかった者達を守る為に…。」
魔装する魔力の量が目に見えて増していく。
一回で決めると言っていた様に、最初から全力でいくのだろう。
「な、なんだその力は!?まだ力を隠してやがったのか!?」
長い間ハガンになりすまして潜入していた魔族だったが、ナキナのこんな力を見るのは初めてだ。
「同胞に見せる為の力では無いからのう。潜入していたお主が知らんのも当然じゃ。これは妾の前に立ちはだかる敵を葬る為の力じゃからな!」
同胞を危険から守る為に身に付けた力。
そう簡単に使う機会は無いが、魔族に乗っ取られたハガンを救う為となれば出し惜しむ理由は無い。
「見てくれはヤバそうだが、てめえは一度死にかけた身。少し回復した程度で俺に勝てるかよ!」
魔族は魔法道具の指輪に魔力を流し、無数の石弾をナキナに放つ。
不意を付いた時よりも一つ一つが大きく数も多い。
「推して参る!」
ナキナは魔族目掛けて真っ直ぐに突っ込む。
油断していなければ、ナキナにとっては取るに足ら無い攻撃である。
走りながら二つの小太刀で石弾を斬り刻み、塵に変えていく。
「これならどうだ!」
石弾が通じないと分かり違う指輪を使う。
巨大な火球が生み出され、激しく燃え盛りながら向かってくる。
「不意打ちで無ければ、この程度効きはせん。お主程度の実力では足りぬ!」
石弾と同じく火球を斬り付けるナキナ。
魔装された剣圧によって、火球が跡形も無く消し飛ぶ。
「なっ!?」
「終わりじゃな。…その首いつか取りにいくからのう。」
ハガンの中に潜む魔族を睨み付けながら呟き、魔装されていた二つの小太刀に更に魔力が込められていく。
すると刀身が燃えるように紅く染まっていった。
「鬼道烈火!」
二つの小太刀が空間すらも斬り裂く様な轟音を響かせ振われる。
正に鬼が怒り狂っているかの様な激しい攻撃に、ジル達も驚かされる。
その絶大な攻撃を魔族が受け切れる訳も無く、攻撃によって憑依されていたハガンの身体が、糸がプツリと切れたかの様に地面に倒れた。
「終わったぞ、ハガン…。」
倒れたハガンを見ながらナキナが呟く。
万能鑑定でハガンを視たが、ナキナの攻撃によって憑依状態は解除されていた。
そして倒れたハガンの表情からは、どことなく感謝をしている様な、そんな風に感じられた。
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
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