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10章

元魔王様と最強のメイド達 3

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 換装して武器を変えて再びハンマーを手に握るタイプB。

「足手纏いがいると大変だな!」

 オーガキングや強化されたオーガ達に囲まれて、余裕の笑みを向けてくるハガン。
この戦力で負けるとは微塵も思っていない様子だ。

「足手纏いでは無く保護対象です。保護対象なのですから守るのは当然です。ですが今からは自己防衛可能と判断し、私も全力でいきます。」

 既にシキが取り出したポーションによって治療が行われている。
完治とまではいかなくても、軽く動けるくらいには回復している。

「まるで今まで全力を出していなかったみたいな言い方だな!俺の魔法で強化されたオーガキングを味わいやがれ!」

「ゴガアアア!」

 一体のオーガキングが雄叫びを上げながら向かってくる。
魔石による進化だけでは無く、魔法によっても何かしらの強化をした様だ。
身体全体が怪しいオーラに包まれている。

 魔法で強化された力によって、空気を斬り裂く勢いで振られた斧がタイプBに振り下ろされる。
それをジャンプして軽やかに避けるタイプB。
だが空中では逃げ場が無い。

「ゴガアアア!」

 次の攻撃は避けられないだろうとばかりに、オーガキングが空中のタイプB目掛けて斧を振るう。

「どれだけ進化しようと強化されようと、二つの神器わたしとハンマーの前には些細な事です。」

 そう言ってタイプBがハンマーを振りかぶる。
先程までとは違って全力を出すので、ハンマーを両手持ちにして魔装もしている。
そして向かってくる斧目掛けて振り下ろす。

「ヘビースタンプ!」

 互いのハンマーと斧がぶつかるが、拮抗するなんて事は無かった。
一瞬で斧もオーガキングも、抵抗すら許されずにハンマーに押し潰される。

 統率個体であり、オーガの中でも最上位種のオーガキングが一瞬でである。
だがそれだけでは終わらない。
振り下ろされたハンマーの力によって、クレーターの様に地面が大きく陥没する。

 更にその衝撃で地震が起きたかの様に大きく地面が揺れて、周囲の地面が大きくヒビ割れる。
その常軌を逸した破壊力を前に、敵味方関係無く全員が唖然としていた。

「ば、馬鹿な!?魔法道具と魔法で強化したオーガキングだぞ!?」

 一早く正気に戻ったハガンが驚きと共に叫ぶ。
目の前で起こった事が信じられないと言った様子だ。

「この程度の魔物に遅れはとりません。私をスクラップにしたければ、Sランククラスを用意してください。」

 この発言は大袈裟に言っている訳では無い。
元々魔王を殺す目的で作られたので弱い筈が無いのだ。
結局目的を果たす程の強さには至らなかったが、Sランククラスでなければ、まともな相手にならない程の強さは秘めている。

「くそがっ!」

 ハガンは悪足掻きする様に魔法道具の指輪を次々に使用する。
火の玉、石弾、風の刃と様々な攻撃を次々に繰り出す。

「今さらそんな攻撃は効きません。『換装!』」

 大盾を出して向かってくる全ての攻撃を受ける。
当然そんな攻撃では傷一つ付かない。

「観念しました…おや?」

「あー、逃げたのです!」

 ハガンは攻撃を目眩しに逃亡を図った。

「目眩しからの逃亡とは、スクラップどうこう言われていましたが口先だけでしたか。」

「黙れ!オーガ共、俺が逃げる時間を稼げ!命懸けでな!」

 タイプBの煽る様な発言にも構わず、自分がこの場から逃れる事に全力を出すハガン。
残ったオーガキングやオーガ達を、自分が逃げる時間を稼ぐ為に使用する。
そんな無慈悲な命令でも、黙って従うオーガキング達。

「運がありませんでしたね。仕える主人があの様な者だったとは。」

 敵の魔物とは言っても、同情する様な言葉を掛けるタイプB。
仕える主人を持つ者同士、扱いの差に少なからず思うところがあった。

「そんな事を言っている場合では無いのです!逃げられちゃうのです!」

 逃亡するハガンを追おうともしないタイプBを見て慌てるシキ。
ハガンとの距離はどんどん開いていく。

「個体名シキ、もっと広い視野を持つと良いですよ。」

「へ?」

 シキは言われた事の意味がよく分からなかった。
だがその直後に聞こえてきた言葉によって、タイプBの言葉の意味を理解する。

『動くな!』

 洞窟の方から叫んでいる訳でも無いのに、よく通る言葉が辺りに響く。
その言葉を受けたハガンの動きが止まる。

「な、何だ!?身体が急に!?」

 逃亡しようと走っていた自分の身体が突然動かなくなり、パニックになるハガン。
スキルの影響なのだが、焦って気付けていない様だ。

「タイプC、我はもう一人で歩けるのだが?」

「遠慮なさらず楽にしていてください。マスターのお役に立つ事が、私にとっての喜びなのですから。」

 先程声が聞こえてきた洞窟方面から、そんな会話が徐々に大きくなって聞こえてくる。
洞窟に残っていたジルとタイプCだ。

「いや、それでもこの格好はどうなのだ?」

 洞窟から現れた二人は戦場に合わない奇妙な状態だった。
豪華な椅子に座るジルを、巨大な二つの手が持って浮いている。

 これはタイプCの機能の一つ、連動外装と言う魔法道具だ。
四肢と同じ形を模した巨大な魔法道具が、タイプCの動きに連動して動くと言う物である。

 今はタイプCが物を大切に持つ様な動作をしており、連動外装がその動作と連動して、豪華な椅子に座るジルを持っていると言う状態であった。

「やはりマスターには玉座がお似合いです。」

 タイプCは連動外装によって運ばれる玉座に座るジルを見て幸せそうな様子である。

「我はかなり恥ずかしいのだがな。」

 場違い感のある登場に、なんとも居心地の悪い気持ちになるジルだった。
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