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9章
元魔王様と暗躍する謎の集団 6
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ジルが洞窟の外で戦っている鬼人族達の助けに向かおうと入り口に足を向ける。
「やれやれ、こちらの主力の一体をお一人で倒されるとは。正にイレギュラーですね。」
すると突然声が掛けられ、バッと声のした方を振り向く。
戦闘に集中していた事と魔物の多さで、人の魔力に気付けなかった。
目元まで覆う程のフードで全身見えないが、角が無く人族の様なシルエットだ。
声から性別が男だと言う事は分かる。
「その口ぶり、色々と情報を持っていそうだな。」
予知に出てきた工作員かは分からないが、明らかにオーガの件に関わっている人物と思われる。
更にジルの事も何かしら知っている様だ。
敵の情報を探ろうと万能鑑定を使用するが視えない。
フードが鑑定阻害の効果を有していそうだ。
「そんな怖い目を向けないでいただきたいですね。どうも私の周りはそう言った者が多くて困ります。」
目元が見えないので表情は分かりにくいが、うんざりとした雰囲気は伝わってくる。
「雑談をするつもりは無い。」
そう言ってジルはフードの男に手を向ける。
その腕がバチバチと電気を帯び始める。
先程の雷魔法を無詠唱で使っているのだ。
オーガキングの動きさえ止めた魔法だ、加減しても人族であれば暫く動けないだろう。
「起動!」
しかしジルが魔法を放つよりも早く、フードの男が何かを発動させた。
その言葉の直後に広い洞窟の床を埋める程の超巨大な魔法陣が地面に浮かび上がった。
魔法陣が浮かび上がると、雷魔法を放とうとジルの腕でバチバチと音を鳴らしていた雷が霧散していく。
強制的に魔法が解除されてしまった。
「っ!?」
それだけでは終わらず、ジルの視界が徐々に光りを失い黒一色の光景になり、身体は石化したかの様に重くなった。
「陣形魔法か。」
一瞬驚かされたが正体を知って平静となる。
どうやら口だけは普通に動く様である。
魔法の効果が無くなった事を見ても、詠唱が意味をなさないから口くらい自由にさせても問題無いとの判断だろう。
「おやおや、知っておられるとは博識ですね。魔法無効、盲目、拘束の盛り合わせですよ。」
ジルの言葉を聞いてフードの男が満足げに頷きながら言った。
自分の使った魔法に気付いてもらえて機嫌が良さそうである。
「分かったところでどうする事も出来無いでしょうけどね。」
視界は黒一色で身体が満足に動かせず魔法が使えない。
急にそんな戦闘が出来無い状態へと追い込まれてしまった。
確かに簡単に打ち破るのは難しい魔法であった。
「備えあれば憂いなしとはよく言ったものですね。まさかこんなところで役に立つとは思いませんでした。」
フードの男がそう言って、掌に握り隠していた紙切れを離す。
紙切れはひらひらと落下しながら、役割りを終えたかの様に消えていった。
ジルには見えていなかったが床を埋め尽くす魔法陣と同じ絵柄が紙切れには描かれていた。
陣形魔法の発動に使用されたのだろう。
「発動条件は?」
「この死体の山ですよ。貴方が用意してくれたので、発動条件を満たせました。奥の手も無ければのこのこと出てこれませんからね。」
陣形魔法と言う魔法は少し特殊であり、魔力の他にも効果に応じて様々な供物を必要とする。
どちらが欠けても発動条件を満たせず、発動させる事が出来無い扱いが難しい魔法なのだ。
「まんまと嵌められたか。」
扱いが難しい魔法と言う事もあり、使い手が少なく警戒されにくい魔法でもある。
魔王時代の配下にも使い手はいたが、たったの一人だけだった。
「仕方ありませんよ。この魔法は気付くのが難しいですからね。」
条件さえ満たせればいつでも瞬時に発動可能な便利な魔法でもある。
「それで?我を殺すのか?」
魔法を封じられただけで無く、視界と身体の自由まで奪われている状況だ。
ジルを殺したいのなら好機と思えるだろう。
「さて、どうしましょうか。排除したいのは確かなのですが悩んでいるのですよ。」
フードの男はそう言って悩む。
殺せるならば殺したいと言った様子だ。
ジルの事も何かしら知っている様だし、自分達にとって厄介な存在ならば早めに消したいと考えるだろう。
「ほう、ちなみに我は魔法の効果が切れ次第に貴様を殺すぞ。」
現状を把握しつつも強気な態度を崩さないジル。
ジルにとってこの程度はピンチでもなんでも無い。
「そうでしょうね。そうなる前に仕留めたいところなのですが。」
そう言ってフードの男が地面に落ちている石を拾い、ジルに向けて放る。
しかしジルに当たる前に何かに阻まれて石が弾かれる。
「準備不足ですね。貴方を殺すには圧倒的に準備が足りていません。どれだけあるか分からないスキルや魔法道具に付き合って時間切れなんて笑えませんからね。」
フードの男が殺したいが殺せない理由がこれだった。
魔法を封じた程度では殺せないだろうと分かっていたのだ。
ジルの常識外れな強さは魔法だけでは無いと予測していた。
実際に石が弾かれたのも、魔法が使えない事を考えるとスキルか魔法道具によるものである。
弱体化したと言っても身を守る手段は万全なのである。
「やれやれ、こちらの主力の一体をお一人で倒されるとは。正にイレギュラーですね。」
すると突然声が掛けられ、バッと声のした方を振り向く。
戦闘に集中していた事と魔物の多さで、人の魔力に気付けなかった。
目元まで覆う程のフードで全身見えないが、角が無く人族の様なシルエットだ。
声から性別が男だと言う事は分かる。
「その口ぶり、色々と情報を持っていそうだな。」
予知に出てきた工作員かは分からないが、明らかにオーガの件に関わっている人物と思われる。
更にジルの事も何かしら知っている様だ。
敵の情報を探ろうと万能鑑定を使用するが視えない。
フードが鑑定阻害の効果を有していそうだ。
「そんな怖い目を向けないでいただきたいですね。どうも私の周りはそう言った者が多くて困ります。」
目元が見えないので表情は分かりにくいが、うんざりとした雰囲気は伝わってくる。
「雑談をするつもりは無い。」
そう言ってジルはフードの男に手を向ける。
その腕がバチバチと電気を帯び始める。
先程の雷魔法を無詠唱で使っているのだ。
オーガキングの動きさえ止めた魔法だ、加減しても人族であれば暫く動けないだろう。
「起動!」
しかしジルが魔法を放つよりも早く、フードの男が何かを発動させた。
その言葉の直後に広い洞窟の床を埋める程の超巨大な魔法陣が地面に浮かび上がった。
魔法陣が浮かび上がると、雷魔法を放とうとジルの腕でバチバチと音を鳴らしていた雷が霧散していく。
強制的に魔法が解除されてしまった。
「っ!?」
それだけでは終わらず、ジルの視界が徐々に光りを失い黒一色の光景になり、身体は石化したかの様に重くなった。
「陣形魔法か。」
一瞬驚かされたが正体を知って平静となる。
どうやら口だけは普通に動く様である。
魔法の効果が無くなった事を見ても、詠唱が意味をなさないから口くらい自由にさせても問題無いとの判断だろう。
「おやおや、知っておられるとは博識ですね。魔法無効、盲目、拘束の盛り合わせですよ。」
ジルの言葉を聞いてフードの男が満足げに頷きながら言った。
自分の使った魔法に気付いてもらえて機嫌が良さそうである。
「分かったところでどうする事も出来無いでしょうけどね。」
視界は黒一色で身体が満足に動かせず魔法が使えない。
急にそんな戦闘が出来無い状態へと追い込まれてしまった。
確かに簡単に打ち破るのは難しい魔法であった。
「備えあれば憂いなしとはよく言ったものですね。まさかこんなところで役に立つとは思いませんでした。」
フードの男がそう言って、掌に握り隠していた紙切れを離す。
紙切れはひらひらと落下しながら、役割りを終えたかの様に消えていった。
ジルには見えていなかったが床を埋め尽くす魔法陣と同じ絵柄が紙切れには描かれていた。
陣形魔法の発動に使用されたのだろう。
「発動条件は?」
「この死体の山ですよ。貴方が用意してくれたので、発動条件を満たせました。奥の手も無ければのこのこと出てこれませんからね。」
陣形魔法と言う魔法は少し特殊であり、魔力の他にも効果に応じて様々な供物を必要とする。
どちらが欠けても発動条件を満たせず、発動させる事が出来無い扱いが難しい魔法なのだ。
「まんまと嵌められたか。」
扱いが難しい魔法と言う事もあり、使い手が少なく警戒されにくい魔法でもある。
魔王時代の配下にも使い手はいたが、たったの一人だけだった。
「仕方ありませんよ。この魔法は気付くのが難しいですからね。」
条件さえ満たせればいつでも瞬時に発動可能な便利な魔法でもある。
「それで?我を殺すのか?」
魔法を封じられただけで無く、視界と身体の自由まで奪われている状況だ。
ジルを殺したいのなら好機と思えるだろう。
「さて、どうしましょうか。排除したいのは確かなのですが悩んでいるのですよ。」
フードの男はそう言って悩む。
殺せるならば殺したいと言った様子だ。
ジルの事も何かしら知っている様だし、自分達にとって厄介な存在ならば早めに消したいと考えるだろう。
「ほう、ちなみに我は魔法の効果が切れ次第に貴様を殺すぞ。」
現状を把握しつつも強気な態度を崩さないジル。
ジルにとってこの程度はピンチでもなんでも無い。
「そうでしょうね。そうなる前に仕留めたいところなのですが。」
そう言ってフードの男が地面に落ちている石を拾い、ジルに向けて放る。
しかしジルに当たる前に何かに阻まれて石が弾かれる。
「準備不足ですね。貴方を殺すには圧倒的に準備が足りていません。どれだけあるか分からないスキルや魔法道具に付き合って時間切れなんて笑えませんからね。」
フードの男が殺したいが殺せない理由がこれだった。
魔法を封じた程度では殺せないだろうと分かっていたのだ。
ジルの常識外れな強さは魔法だけでは無いと予測していた。
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弱体化したと言っても身を守る手段は万全なのである。
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