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7章
元魔王様とシキの従魔 8
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「そうだな、起きる前に倒すとしよう。」
ジルはスキルの一つ心眼を発動させる。
このスキルは目の視覚情報に頼らずとも、一定範囲内の視覚情報を得る事が可能なスキルだ。
このスキルの優れている点は、自分を中心に全方位の視覚情報を同時に得られるのと、範囲内であれば透視も可能なところだ。
なので自分が経つ地面の中の様子も視る事が出来る。
「時空間魔法、空間連結!」
続いて魔法を発動させる。
発動させた魔法は空間連結と言って、知覚出来ている範囲の離れた空間同士を繋ぐ事が可能な魔法だ。
これにより繋いだ空間の片方に起きた事は、もう一方の空間でも起きる事になる。
そしてジルが繋いだのは、目の前の空間と心眼によって視えたコカトリスの心臓部分の空間である。
「魔技、ハートブレイク!」
魔王時代に生み出した魔法とスキルの合わせ技を放つ。
それぞれの利点を活かして生み出された複合技は、初見殺し、理不尽、回避不能等なんでもありのチート技だ。
その一つがハートブレイクである。
空間連結によって繋がれた空間の片方、何もない目の前の空間で手を握る動作をするだけで、コカトリスの心臓を潰す事が出来るのだ。
コカトリスは一瞬震えて小さな悲鳴を漏らし、口から血を吹き出して再び倒れる。
今度はしっかりと絶命している。
「討伐完了だ。」
「さすがジル様なのです!」
圧倒的な実力は魔王の頃から知っているので、シキはそこまで驚いたりはしていない。
「さて、石化のスキルが手に入ればいいんだが。」
変化吸収によるスキルの入手はランダムである。
コカトリスを万能鑑定で見てみると、石化、威圧、咆哮と三つのスキルを持っていたので、確率で言うと三分の一だ。
早速ライムの分身に変化吸収をさせてみる。
自分の身体よりも遥かに巨大なコカトリスであっても問題無く吸収出来る様だ。
殆ど吸収したところで、終わったとばかりにライムの分身が戻ってくる。
羽や骨がちらほら残っており、一番必要そうな魔石も残っていた。
「ライム、魔石は吸収しなくてもいいのか?」
確認するとプルプルと揺れて肯定してそうな感じだ。
「ふむ、魔石が重要だと思っていたが、他の素材で事足りるのか。魔石は高く売れるから、残してくれるのは助かる。」
魔物の素材で最も高い素材の一つが魔石だ。
魔法道具、魔法武器、魔物防具等を作る時に魔石は必須なので、幾らでも買い取り手がいるのである。
「ライムはどうなったのです?」
シキがドキドキしながら尋ねてくる。
万能鑑定のスキルで確認するが、石化のスキルの文字は無い。
「駄目だな、威圧のスキルを覚えた様だ。」
「ガーン、石化じゃ無いのです。」
三分の一を外して取得したのは威圧のスキルだった。
シキの反応にライムがプルプルと揺れて、申し訳無さそうな感じが伝わってくる。
「あああ、違うのです!ライムは悪く無いのです!」
ガッカリしたライムを見てシキが慌てて訂正する。
自分のせいでライムを落ち込ませてしまった。
「威圧のスキルも使い所はあるんだろう?」
「勿論なのです!自分よりも力の無い魔物に混乱や恐怖を与える良いスキルなのです!」
フォローする様にジルが尋ねるとシキが早口で語る。
しかしその説明だと現在のライムでは使えないと言う事でもあった。
現状最弱のスライムであるライムが威圧しても、誰も威圧される事は無いので、今後の成長に期待したいところだ。
「コカトリスの探し直しなのです。」
「…いや、その必要は無さそうだ。」
ジルが空を見上げながら言う。
まだ遠いが大きな羽音が近付いてきているのだ。
羽音と共に雄叫びも聞こえてきて、相当怒っているのが分かる。
「こ、コカトリスが向かってきているのです!?」
精霊眼で確認したシキが慌てて言う。
その報告にライムもプルプルと震えて怯えている。
「悲鳴を聞き付けたか、同種の存在を感知出来るのか。なんにせよ手間が省ける。」
最弱コンビとは違ってジルは嬉しそうに言う。
またコカトリスを探して森を彷徨う必要が無くなったからだ。
「グギャアア!」
コカトリスがその大きな身体でジル達の真上に到着すると、いきなり灰色のブレスを吐いてきた。
このスキルには石化のスキルが付加されている。
「こ、怖いのです!」
ライムも同じく怖いのか、最弱コンビが身を寄せ合いながら震えている。
そしてジル達の下にブレスが着弾する。
灰色のブレスが晴れると、結界によって護られた無傷のシキとライムがいた。
だがジルの姿だけがその場から消えていた。
「グギャ!?」
「おいおい、高ランクの魔物が聞いて呆れるな。」
見失って困惑するコカトリスの背中から声を掛けるジル。
結界だけを残して背中まで爆速で移動していたのだ。
そして隙だらけの背中を上から蹴り付け、コカトリスを地面に叩き付ける。
派手な爆音を響かせて地面に激突したコカトリスは一撃で絶命した。
「ライム、吸収してみろ。」
上から華麗に着地したジルに言われて、ライムが急いでコカトリスの下に分身を向かわせる。
どことなく少し慌てている様子だ。
ライムは最弱のスライムながら、ジルは絶対に逆らってはいけない存在だと本能で感じ取っていたのだ。
そして吸収を終えたライムは、無事に石化のスキルを手にする事に成功した。
ジルはスキルの一つ心眼を発動させる。
このスキルは目の視覚情報に頼らずとも、一定範囲内の視覚情報を得る事が可能なスキルだ。
このスキルの優れている点は、自分を中心に全方位の視覚情報を同時に得られるのと、範囲内であれば透視も可能なところだ。
なので自分が経つ地面の中の様子も視る事が出来る。
「時空間魔法、空間連結!」
続いて魔法を発動させる。
発動させた魔法は空間連結と言って、知覚出来ている範囲の離れた空間同士を繋ぐ事が可能な魔法だ。
これにより繋いだ空間の片方に起きた事は、もう一方の空間でも起きる事になる。
そしてジルが繋いだのは、目の前の空間と心眼によって視えたコカトリスの心臓部分の空間である。
「魔技、ハートブレイク!」
魔王時代に生み出した魔法とスキルの合わせ技を放つ。
それぞれの利点を活かして生み出された複合技は、初見殺し、理不尽、回避不能等なんでもありのチート技だ。
その一つがハートブレイクである。
空間連結によって繋がれた空間の片方、何もない目の前の空間で手を握る動作をするだけで、コカトリスの心臓を潰す事が出来るのだ。
コカトリスは一瞬震えて小さな悲鳴を漏らし、口から血を吹き出して再び倒れる。
今度はしっかりと絶命している。
「討伐完了だ。」
「さすがジル様なのです!」
圧倒的な実力は魔王の頃から知っているので、シキはそこまで驚いたりはしていない。
「さて、石化のスキルが手に入ればいいんだが。」
変化吸収によるスキルの入手はランダムである。
コカトリスを万能鑑定で見てみると、石化、威圧、咆哮と三つのスキルを持っていたので、確率で言うと三分の一だ。
早速ライムの分身に変化吸収をさせてみる。
自分の身体よりも遥かに巨大なコカトリスであっても問題無く吸収出来る様だ。
殆ど吸収したところで、終わったとばかりにライムの分身が戻ってくる。
羽や骨がちらほら残っており、一番必要そうな魔石も残っていた。
「ライム、魔石は吸収しなくてもいいのか?」
確認するとプルプルと揺れて肯定してそうな感じだ。
「ふむ、魔石が重要だと思っていたが、他の素材で事足りるのか。魔石は高く売れるから、残してくれるのは助かる。」
魔物の素材で最も高い素材の一つが魔石だ。
魔法道具、魔法武器、魔物防具等を作る時に魔石は必須なので、幾らでも買い取り手がいるのである。
「ライムはどうなったのです?」
シキがドキドキしながら尋ねてくる。
万能鑑定のスキルで確認するが、石化のスキルの文字は無い。
「駄目だな、威圧のスキルを覚えた様だ。」
「ガーン、石化じゃ無いのです。」
三分の一を外して取得したのは威圧のスキルだった。
シキの反応にライムがプルプルと揺れて、申し訳無さそうな感じが伝わってくる。
「あああ、違うのです!ライムは悪く無いのです!」
ガッカリしたライムを見てシキが慌てて訂正する。
自分のせいでライムを落ち込ませてしまった。
「威圧のスキルも使い所はあるんだろう?」
「勿論なのです!自分よりも力の無い魔物に混乱や恐怖を与える良いスキルなのです!」
フォローする様にジルが尋ねるとシキが早口で語る。
しかしその説明だと現在のライムでは使えないと言う事でもあった。
現状最弱のスライムであるライムが威圧しても、誰も威圧される事は無いので、今後の成長に期待したいところだ。
「コカトリスの探し直しなのです。」
「…いや、その必要は無さそうだ。」
ジルが空を見上げながら言う。
まだ遠いが大きな羽音が近付いてきているのだ。
羽音と共に雄叫びも聞こえてきて、相当怒っているのが分かる。
「こ、コカトリスが向かってきているのです!?」
精霊眼で確認したシキが慌てて言う。
その報告にライムもプルプルと震えて怯えている。
「悲鳴を聞き付けたか、同種の存在を感知出来るのか。なんにせよ手間が省ける。」
最弱コンビとは違ってジルは嬉しそうに言う。
またコカトリスを探して森を彷徨う必要が無くなったからだ。
「グギャアア!」
コカトリスがその大きな身体でジル達の真上に到着すると、いきなり灰色のブレスを吐いてきた。
このスキルには石化のスキルが付加されている。
「こ、怖いのです!」
ライムも同じく怖いのか、最弱コンビが身を寄せ合いながら震えている。
そしてジル達の下にブレスが着弾する。
灰色のブレスが晴れると、結界によって護られた無傷のシキとライムがいた。
だがジルの姿だけがその場から消えていた。
「グギャ!?」
「おいおい、高ランクの魔物が聞いて呆れるな。」
見失って困惑するコカトリスの背中から声を掛けるジル。
結界だけを残して背中まで爆速で移動していたのだ。
そして隙だらけの背中を上から蹴り付け、コカトリスを地面に叩き付ける。
派手な爆音を響かせて地面に激突したコカトリスは一撃で絶命した。
「ライム、吸収してみろ。」
上から華麗に着地したジルに言われて、ライムが急いでコカトリスの下に分身を向かわせる。
どことなく少し慌てている様子だ。
ライムは最弱のスライムながら、ジルは絶対に逆らってはいけない存在だと本能で感じ取っていたのだ。
そして吸収を終えたライムは、無事に石化のスキルを手にする事に成功した。
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