60 / 736
7章
元魔王様とシキの従魔 5
しおりを挟む
魔王であった頃に自分にも実験として使ってみたが、スキルは際限無く覚える事が出来た。
しかしスキルを既に覚えている現状最弱のライムの魔力量では、新たにスキルを取得出来無い可能性がある。
「た、試してみなければ分からないのです!」
「確かにな、一先ず使ってみるか。何かスキルの希望はあるか?」
そう尋ねたジルはスキル収納本を開いて見せる。
相当な数のスキルが収納されている。
これは魔王時代に魔物を倒して獲得したスキルばかりである。
スキル収納本の実験として、魔物が大量に潜むとある森を丸ごと消し飛ばした事がある。
その時に数えきれない程のスキルを獲得したのだ。
「石化なんて強そうなのです。」
大量にあるスキルの中からシキが選んだのは石化のスキル。
対象者の身体を徐々に石に変えていくと言う、なかなか凶悪な能力を持つスキルだ。
「分かった、ライムに石化のスキルを譲渡する。」
ジルがスキル収納本の効果をライムに使ってスキルを与えようとする。
しかしスキル収納本は何も反応しない。
「何も起こらないのです。」
「失敗だな。弱い部類のスキルならば取得出来る可能性はあるか。」
スキルの中には弱いスキルもあれば強いスキルもあり、使い勝手が悪いスキルもあれば汎用性が高いスキルもある。
そう言ったスキルの上下関係で必要な魔力量も大きく違ってくるので、取得に関連してくる可能性はあるとジルは考えていた。
「だったらスライムの基本的なスキルを覚えさせてみるのです。」
「そうだな、ライムは特殊なスライムだからか分裂のスキルを持っていない。」
シキが提案してきたがジルも同じ事を考えていた。
スライムにも様々な種類がいるが、共通して覚えているスキルがある。
それが分裂と言うスキルだ。
スライムならば必ず持っているスキルなのだが、ライムは分裂のスキルを覚えていなかった。
分裂と言っても使うたびにスライムが増殖していく訳では無い。
核が無い分身を生み出し、自分の代わりに何かをさせる時に使うスキルだ。
これがあれば無防備になる捕食行為を代わりに任せたりして、自分の危険を減らす事が出来る。
スライムの貴重な自衛手段の一つなのである。
「ライムに分裂のスキルを譲渡する。」
先程と同じくスキルを与えようとすると、今度はスキル収納本とライムが光り出した。
直ぐに光りは収まり、スキル収納本の項目にあった分裂のスキルが消えていた。
「成功なのです?」
一応万能鑑定にてライムの事を視てみると、変化吸収に加えて分裂のスキルが増えていた。
「ああ、分裂のスキルを取得している。」
「やったのですライム!」
ライムもプルプルと揺れて喜んでいる様だ。
「これで少しは戦闘中に死ににくくなったか。」
ライムが分裂のスキルを使って分身に危険な事を任せれば、本体の生存率はかなり高まる。
そもそも危険な状況ならば助けに入るので、吸収中の保険と言ったところだ。
「早速ライムの育成をするのです!」
シキがライムをもっと強くしたいと意気込んでいる。
「そうだな、スキル収納本は正規の手段では無い。魔物を吸収させてみるとしよう。」
ジルが作り出したスキル収納本は所謂チートアイテムだ。
人にも魔物にもスキルを与える事が出来るが、ライムはそんな事をしなくてもスキルを得られるスキルを持っているので、早速そちらも試してみる事にした。
ライムを育てる為に一先ずジル達が訪れたのはギルドである。
暫くはゆっくりすると受付嬢のミラに話していたのだが、事情が変わったので仕方が無い。
何故ギルドに来たのかと言うと、討伐系統の依頼書には魔物の生息域が書かれているからだ。
欲しいスキルを持つ魔物のいる場所を調べられるだけで無く、報酬まで手に入るので利用しない手は無い。
「どうだシキ?」
「うーん、めぼしい魔物はいないのです。」
シキがそう言うので、隣りのBランクの依頼ボードに移動する。
ライムに覚えさせたいスキルを持つ魔物の情報が書かれている依頼書を探しているのだ。
知識の精霊であるシキは、この世界に存在する魔物の情報も記憶している。
なのでどの魔物がどんなスキルを持っているのかも分かるのである。
そしてシキのお眼鏡に叶うスキル持ちの魔物が、ジルの受けられるDランクの依頼ボードにはいなかった。
その上のCランクも微妙だったので、今度はBランクを見ようとしているのだ。
「ジル様これなのです!コカトリスなのです!」
シキが指差した依頼書に書かれていたのはコカトリスと言う魔物だ。
蛇の尾を持つ巨大な鶏の様な魔物である。
この魔物はライムに最初に与えようとした石化のスキルを所持しているのだ。
スキル収納本で与えられなかったので、正規の方法で手に入れたい。
「場所はブロム山脈の奥地?聞いた事が無いな。」
魔王時代も遠出する事は少なかったので、ジルは地理に疎い。
更に転生する間に世界にも変化があったので、ジルの持つ情報は古い可能性もある。
「魔の森の方角とは反対側にある山脈なのです。馬車だと数日掛かるので、それなりに遠いのです。」
そう言ってシキが説明してくれる。
ジルが転生している間もこの世界で知識を蓄えていたので、様々な知らない情報を与えてくれる有り難い存在である。
「ふむ、ならばこれにするとしよう。」
ライムに石化のスキルを覚えさせる為にコカトリスを狩る事に決めた。
しかしスキルを既に覚えている現状最弱のライムの魔力量では、新たにスキルを取得出来無い可能性がある。
「た、試してみなければ分からないのです!」
「確かにな、一先ず使ってみるか。何かスキルの希望はあるか?」
そう尋ねたジルはスキル収納本を開いて見せる。
相当な数のスキルが収納されている。
これは魔王時代に魔物を倒して獲得したスキルばかりである。
スキル収納本の実験として、魔物が大量に潜むとある森を丸ごと消し飛ばした事がある。
その時に数えきれない程のスキルを獲得したのだ。
「石化なんて強そうなのです。」
大量にあるスキルの中からシキが選んだのは石化のスキル。
対象者の身体を徐々に石に変えていくと言う、なかなか凶悪な能力を持つスキルだ。
「分かった、ライムに石化のスキルを譲渡する。」
ジルがスキル収納本の効果をライムに使ってスキルを与えようとする。
しかしスキル収納本は何も反応しない。
「何も起こらないのです。」
「失敗だな。弱い部類のスキルならば取得出来る可能性はあるか。」
スキルの中には弱いスキルもあれば強いスキルもあり、使い勝手が悪いスキルもあれば汎用性が高いスキルもある。
そう言ったスキルの上下関係で必要な魔力量も大きく違ってくるので、取得に関連してくる可能性はあるとジルは考えていた。
「だったらスライムの基本的なスキルを覚えさせてみるのです。」
「そうだな、ライムは特殊なスライムだからか分裂のスキルを持っていない。」
シキが提案してきたがジルも同じ事を考えていた。
スライムにも様々な種類がいるが、共通して覚えているスキルがある。
それが分裂と言うスキルだ。
スライムならば必ず持っているスキルなのだが、ライムは分裂のスキルを覚えていなかった。
分裂と言っても使うたびにスライムが増殖していく訳では無い。
核が無い分身を生み出し、自分の代わりに何かをさせる時に使うスキルだ。
これがあれば無防備になる捕食行為を代わりに任せたりして、自分の危険を減らす事が出来る。
スライムの貴重な自衛手段の一つなのである。
「ライムに分裂のスキルを譲渡する。」
先程と同じくスキルを与えようとすると、今度はスキル収納本とライムが光り出した。
直ぐに光りは収まり、スキル収納本の項目にあった分裂のスキルが消えていた。
「成功なのです?」
一応万能鑑定にてライムの事を視てみると、変化吸収に加えて分裂のスキルが増えていた。
「ああ、分裂のスキルを取得している。」
「やったのですライム!」
ライムもプルプルと揺れて喜んでいる様だ。
「これで少しは戦闘中に死ににくくなったか。」
ライムが分裂のスキルを使って分身に危険な事を任せれば、本体の生存率はかなり高まる。
そもそも危険な状況ならば助けに入るので、吸収中の保険と言ったところだ。
「早速ライムの育成をするのです!」
シキがライムをもっと強くしたいと意気込んでいる。
「そうだな、スキル収納本は正規の手段では無い。魔物を吸収させてみるとしよう。」
ジルが作り出したスキル収納本は所謂チートアイテムだ。
人にも魔物にもスキルを与える事が出来るが、ライムはそんな事をしなくてもスキルを得られるスキルを持っているので、早速そちらも試してみる事にした。
ライムを育てる為に一先ずジル達が訪れたのはギルドである。
暫くはゆっくりすると受付嬢のミラに話していたのだが、事情が変わったので仕方が無い。
何故ギルドに来たのかと言うと、討伐系統の依頼書には魔物の生息域が書かれているからだ。
欲しいスキルを持つ魔物のいる場所を調べられるだけで無く、報酬まで手に入るので利用しない手は無い。
「どうだシキ?」
「うーん、めぼしい魔物はいないのです。」
シキがそう言うので、隣りのBランクの依頼ボードに移動する。
ライムに覚えさせたいスキルを持つ魔物の情報が書かれている依頼書を探しているのだ。
知識の精霊であるシキは、この世界に存在する魔物の情報も記憶している。
なのでどの魔物がどんなスキルを持っているのかも分かるのである。
そしてシキのお眼鏡に叶うスキル持ちの魔物が、ジルの受けられるDランクの依頼ボードにはいなかった。
その上のCランクも微妙だったので、今度はBランクを見ようとしているのだ。
「ジル様これなのです!コカトリスなのです!」
シキが指差した依頼書に書かれていたのはコカトリスと言う魔物だ。
蛇の尾を持つ巨大な鶏の様な魔物である。
この魔物はライムに最初に与えようとした石化のスキルを所持しているのだ。
スキル収納本で与えられなかったので、正規の方法で手に入れたい。
「場所はブロム山脈の奥地?聞いた事が無いな。」
魔王時代も遠出する事は少なかったので、ジルは地理に疎い。
更に転生する間に世界にも変化があったので、ジルの持つ情報は古い可能性もある。
「魔の森の方角とは反対側にある山脈なのです。馬車だと数日掛かるので、それなりに遠いのです。」
そう言ってシキが説明してくれる。
ジルが転生している間もこの世界で知識を蓄えていたので、様々な知らない情報を与えてくれる有り難い存在である。
「ふむ、ならばこれにするとしよう。」
ライムに石化のスキルを覚えさせる為にコカトリスを狩る事に決めた。
1
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる