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4章
元魔王様と初めての依頼 6
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複数のゴブリンの上位種が出現した為、ゴブリンが集落を築いている可能性が浮上した。
なので三人は正確な情報を得る為に森の調査を開始した。
エルーの嗅覚を頼りにゴブリンの居場所を見つけると次々に襲撃していく。
その過程で通常のゴブリンも倒す事が出来たので、一先ず依頼の方も心配する必要は無くなった。
「また上位種ですね。これは殆ど確定でしょう。」
ゴブリンの上位種を簡単に倒しているジルを見ながらゾットが呟く。
既に倒した上位種の数は二桁を超えている。
「そうなると知りたいのは規模ね。」
「それが分かりませんと対応が決まりませんしね。」
魔物の中には自分達が暮らしやすい様に村を作る習性を持つ魔物もいる。
ゴブリンもその内の一つだ。
村を作り繁殖行為をして、同族の仲間を増やしていき更に村を拡張していく。
放置すればするだけ、際限無く規模が増して数が増えていくのである。
「村の大きさで何か変わるのか?」
大きかろうと小さかろうと、ゴブリンの村を見つければ殲滅する事に変わりないのではないかとジルは思った。
「出来たばかりの村だったら私達でも簡単に潰せるわね。」
数が少し多いと言ってもランクの低いゴブリン種である。
実質Bランク以上の実力を持つ冒険者が三人もいれば過剰戦力と言える。
「しかし大きくなってしまった村になりますと、数が多いだけで無く統率する個体もいる可能性があります。」
エルーとゾットが気にしている部分はそれだった。
「統率する個体?」
「キング、クイーン、ジェネラル等ですね。」
進化する魔物の中でも上位種や最上位種に位置付けられる個体名である。
それらは総称して統率個体と呼ばれる。
「高ランクの魔物なのは当然として、同じ種に力を与えるのが統率個体よ。」
統率個体は同じ種を従え力を与える存在なので、今回で言えば先程まで倒してきたゴブリンやその上位種を従える事が出来る。
更に力を増す支援の様なものを与える者もいるので、脅威度が一気に増すのである。
「成る程、統率個体か。」
それを聞いてジルにも思い当たる事があった。
魔王時代の話しだが、側近の一人に魔物の使役を得意としている者がいた。
それぞれの魔物に愛称を付ける奴だったので、本来の名前は知らず統率個体か定かでは無いが、ゴブリンを率いる特殊なゴブリンを従えていたのは覚えている。
そのゴブリン軍団は、自分にとっては全く脅威とは呼べない存在だったが、格上の魔物を次々と倒す実力は持っていた。
なのでそれが統率個体だったならば、その脅威はよく分かる。
「そして統率個体の有無によっては、街へ応援を呼びに行く選択肢が増えますね。」
高ランクの実力者達だとしても、安全を考えれば三人で無理な行動はせず、人手を増やしてから殲滅戦を行うのだ。
「ふむ、先ずは見つけなければ話しにならんな。」
「そうね。…しっ、雑談はここまでよ。」
エルーが手で合図を出して、二人に口を開かない様に指示を出す。
ぴくぴくと鼻と耳を動かしているので、遠くの臭いや音に意識を向けている様だ。
「見つけたわ、それも数が多いわね。」
エルーは感じ取りながら小声で二人に言う。
「村か?」
「数は六体くらいだから違うわ。ウルフ種の血の臭いも一緒に移動して感じるから、狩りを行う部隊かも。」
感じ取った臭いと音でゴブリンの集団の状況を伝える。
「同じ様に狩りにいくか?」
「いや、ここは少し泳がせましょう。」
ジルの意見を否定して代替案を出すゾット。
数が増えても倒す事自体は難しく無いが、せっかくなら利用させてもらう事にした。
「そうね、団体なら村に所属するゴブリンかもしれないし、獲物を持っているなら村に帰る可能性も高いわ。」
ゾットの意見に賛成するエルー。
先程までに倒してきたゴブリンは全て単独であり、まとまって行動しているゴブリンはいなかった。
上位種だとしても野良や逸れの可能性があり、集落に属しているゴブリンかは分からない。
だが同じ行動を共にするゴブリンの団体ならば率いる上位種がいて、更にそれらを統率する個体が存在するかもしれない。
そして捕らえた獲物を持ち帰る途中ならば、このまま放置してその後を追えば、集落に辿り着ける可能性もある。
広大な魔の森を闇雲に探すよりずっと確実である。
「ならば後を追うか。」
「ええ、臭いと音を頼りに少し離れて付いていくわ。こっちよ。」
ゴブリン達に気付かれない様に充分に距離を取って後を追う。
しかし魔の森には当然ゴブリン以外にも魔物は存在する。
エルーはゴブリン達を追いながらも他の魔物と接敵しない様に移動を支持している。
なので特に戦闘をする事も無くスムーズに追跡が出来た。
「まずいわね、相当な数のゴブリンの臭いがしてきたわ。」
ゴブリンの集団の後を追いながらエルーが小声で呟く。
臭いもキツイのだろう、声から不快感がよく伝わる。
「集落があると言う事ですか?」
「間違い無いわね。」
視界にはまだ映っていないが、既にエルーは大量のゴブリン達の臭いや音を感じ取って嫌そうな表情を浮かべていた。
なので三人は正確な情報を得る為に森の調査を開始した。
エルーの嗅覚を頼りにゴブリンの居場所を見つけると次々に襲撃していく。
その過程で通常のゴブリンも倒す事が出来たので、一先ず依頼の方も心配する必要は無くなった。
「また上位種ですね。これは殆ど確定でしょう。」
ゴブリンの上位種を簡単に倒しているジルを見ながらゾットが呟く。
既に倒した上位種の数は二桁を超えている。
「そうなると知りたいのは規模ね。」
「それが分かりませんと対応が決まりませんしね。」
魔物の中には自分達が暮らしやすい様に村を作る習性を持つ魔物もいる。
ゴブリンもその内の一つだ。
村を作り繁殖行為をして、同族の仲間を増やしていき更に村を拡張していく。
放置すればするだけ、際限無く規模が増して数が増えていくのである。
「村の大きさで何か変わるのか?」
大きかろうと小さかろうと、ゴブリンの村を見つければ殲滅する事に変わりないのではないかとジルは思った。
「出来たばかりの村だったら私達でも簡単に潰せるわね。」
数が少し多いと言ってもランクの低いゴブリン種である。
実質Bランク以上の実力を持つ冒険者が三人もいれば過剰戦力と言える。
「しかし大きくなってしまった村になりますと、数が多いだけで無く統率する個体もいる可能性があります。」
エルーとゾットが気にしている部分はそれだった。
「統率する個体?」
「キング、クイーン、ジェネラル等ですね。」
進化する魔物の中でも上位種や最上位種に位置付けられる個体名である。
それらは総称して統率個体と呼ばれる。
「高ランクの魔物なのは当然として、同じ種に力を与えるのが統率個体よ。」
統率個体は同じ種を従え力を与える存在なので、今回で言えば先程まで倒してきたゴブリンやその上位種を従える事が出来る。
更に力を増す支援の様なものを与える者もいるので、脅威度が一気に増すのである。
「成る程、統率個体か。」
それを聞いてジルにも思い当たる事があった。
魔王時代の話しだが、側近の一人に魔物の使役を得意としている者がいた。
それぞれの魔物に愛称を付ける奴だったので、本来の名前は知らず統率個体か定かでは無いが、ゴブリンを率いる特殊なゴブリンを従えていたのは覚えている。
そのゴブリン軍団は、自分にとっては全く脅威とは呼べない存在だったが、格上の魔物を次々と倒す実力は持っていた。
なのでそれが統率個体だったならば、その脅威はよく分かる。
「そして統率個体の有無によっては、街へ応援を呼びに行く選択肢が増えますね。」
高ランクの実力者達だとしても、安全を考えれば三人で無理な行動はせず、人手を増やしてから殲滅戦を行うのだ。
「ふむ、先ずは見つけなければ話しにならんな。」
「そうね。…しっ、雑談はここまでよ。」
エルーが手で合図を出して、二人に口を開かない様に指示を出す。
ぴくぴくと鼻と耳を動かしているので、遠くの臭いや音に意識を向けている様だ。
「見つけたわ、それも数が多いわね。」
エルーは感じ取りながら小声で二人に言う。
「村か?」
「数は六体くらいだから違うわ。ウルフ種の血の臭いも一緒に移動して感じるから、狩りを行う部隊かも。」
感じ取った臭いと音でゴブリンの集団の状況を伝える。
「同じ様に狩りにいくか?」
「いや、ここは少し泳がせましょう。」
ジルの意見を否定して代替案を出すゾット。
数が増えても倒す事自体は難しく無いが、せっかくなら利用させてもらう事にした。
「そうね、団体なら村に所属するゴブリンかもしれないし、獲物を持っているなら村に帰る可能性も高いわ。」
ゾットの意見に賛成するエルー。
先程までに倒してきたゴブリンは全て単独であり、まとまって行動しているゴブリンはいなかった。
上位種だとしても野良や逸れの可能性があり、集落に属しているゴブリンかは分からない。
だが同じ行動を共にするゴブリンの団体ならば率いる上位種がいて、更にそれらを統率する個体が存在するかもしれない。
そして捕らえた獲物を持ち帰る途中ならば、このまま放置してその後を追えば、集落に辿り着ける可能性もある。
広大な魔の森を闇雲に探すよりずっと確実である。
「ならば後を追うか。」
「ええ、臭いと音を頼りに少し離れて付いていくわ。こっちよ。」
ゴブリン達に気付かれない様に充分に距離を取って後を追う。
しかし魔の森には当然ゴブリン以外にも魔物は存在する。
エルーはゴブリン達を追いながらも他の魔物と接敵しない様に移動を支持している。
なので特に戦闘をする事も無くスムーズに追跡が出来た。
「まずいわね、相当な数のゴブリンの臭いがしてきたわ。」
ゴブリンの集団の後を追いながらエルーが小声で呟く。
臭いもキツイのだろう、声から不快感がよく伝わる。
「集落があると言う事ですか?」
「間違い無いわね。」
視界にはまだ映っていないが、既にエルーは大量のゴブリン達の臭いや音を感じ取って嫌そうな表情を浮かべていた。
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