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2章
元魔王様と人族の街 5
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大男本人は酔いが覚めたと言っているが、今度は見下していた相手にやられて頭に血が昇ってしまい、冷静な判断が出来ていない状態だ。
「自分が何をしてるか分かっているのか?」
そんなロングソードを見せられたくらいで、ジルは動揺したりはしないが、いい加減面倒になってきた。
「生意気なガキの教育だ。運が良かったら死なないかもな!」
周りの冒険者達が止める間も無く、大男はジルに向けて飛び出し、ロングソードを振り上げる。
ジルも迎え撃つ為に右腕を大男に向けて伸ばしていく。
「そこまでにしな。」
少し遠くから女性の声が聞こえたかと思うと、それと同時に身体が少し動きにくくなったと感じる。
「な、身体が!?」
大男も突然身体が動かなくなって動揺している。
それもその筈で、ジルと大男の身体の周りには無数の糸が張り巡らされていた。
その糸は簡単に切れる事は無く、大男の動きを完全に止める程に頑丈な様だ。
しかしジルの動きを完全に縛る事は出来ていなかった。
手や腕にも糸が絡んでいるが、動かしにくくなっただけで動かない訳では無い。
なので特に気にする事も無く腕を大男に向けて伸ばす。
「っ!?動きを止めな、手が千切れるよ!」
糸を張ったと思われる女性がジルに向けて言うが、それでも動くのを止めない。
そしてブツンと言う音を最初に、次々と糸がジルの力に耐えられずに切れていく。
「あたしの糸を素手で!?」
絡まっていた糸から解放され、遮る物が無くなったジルの腕はもう少しで大男に届く。
「悪いが矛を収めてもらえないか?」
あとほんの少しで手が届くと言ったところで、ジルの肩に手を置いた男性にそう言われた。
「お前も我の邪魔をするのか?」
振り向かずにジルが尋ねる。
さすがに面倒事が続くと、ジルもイライラしてくる。
返答次第では無事では済まさないと声色が語っている。
「そんなつもりはないさ。そこの馬鹿な酔っ払いを回収しようと思ってね。」
大男を指差しながら言う男性。
どうやら大男と違って騒ぎを収めにきてくれた様だ。
「そうか、ならばさっさとしてもらおうか。」
「すまないね。」
男性は糸を張った女性に合図を送ると糸が解除される。
そしてその瞬間に華麗な動作で大男の意識を刈り取る。
「皆、騒がせてしまって済まない。」
男性が謝罪すると、冒険者達から口笛や賞賛が浴びせられる。
ジルは知らなかったが、それなりに有名な冒険者の様だ。
「もう直ぐ自警団が来る。新人君、ミラさんも迷惑を掛けたね。」
「い、いえ。助けて頂いてありがとうございます。」
男性は手を振りながら席に戻っていった。
気を失った大男はずるずると引き摺られている。
「色々ありましたが、お待たせしました。冒険者ギルドでの冒険者登録でお間違い無いですか?」
ミラが気を取り直してと言った感じで、ジルの話しの続きに戻る。
「ああ。」
「ではこちらの水晶に魔力を流して下さい。」
ミラが取り出した水晶は、キラキラと綺麗に光る魔法道具だ。
魔法道具とは魔力を流す事によって機能する道具の総称である。
ジルも魔王時代の暇潰しで取り組んだ期間があったのでそれなりに知識はある。
だが目の前にある水晶は初めて見るので、一応万能鑑定のスキルを使って効果を確かめておく事にした。
万能鑑定の結果、水晶は魔力を流す事で年齢、種族、犯罪歴、スキル、魔法等の様々な個人情報を得る効果を持っている事が分かった。
「使うのは決まりか?」
能力隠蔽のスキルを使って情報を書き換えているので、水晶がそれを見破ってこない限りは問題は無い。
しかし他者に情報を与えたくは無いので、万が一を考えると不用意に使いたいとは思えない。
「申し訳ありません、冒険者カードに記載される情報もありますので。もちろん個人の情報は冒険者ギルドで厳重に管理されますので、漏洩の心配はありません。」
「分かった。」
冒険者カードの作成に必要と言われれば了承するしか無い。
とは言え神達からオススメされたスキルなのだから、そう簡単に下界の魔法道具に性能で劣ってもらっては困る。
ジルが水晶に魔力を流すと水晶が光り、文字が空中に浮かび上がってくる。
魔法道具がジルの情報を得て、表示しているのだろう。
「少々お待ち下さい。」
ミラは空中に漂う文字をメモしてから奥の扉に向かう。
1分程で戻ってきて渡されたカードには、名前や使用出来るスキル、魔法等が書かれていた。
能力隠蔽のスキルはしっかり仕事している様で、書き換えられた内容が書かれている。
とは言っても他人に冒険者カードには無い魔法やスキルを見られれば、ギルドから何か言われるかもしれないので注意は必要だ。
「こちらが仮冒険者カードになります。」
ミラが一枚のカードを渡してきながら言う。
「仮?」
身分証となる冒険者カードがやっと手に入ったかと思ったら、どうやらまだ何かある様であった。
「自分が何をしてるか分かっているのか?」
そんなロングソードを見せられたくらいで、ジルは動揺したりはしないが、いい加減面倒になってきた。
「生意気なガキの教育だ。運が良かったら死なないかもな!」
周りの冒険者達が止める間も無く、大男はジルに向けて飛び出し、ロングソードを振り上げる。
ジルも迎え撃つ為に右腕を大男に向けて伸ばしていく。
「そこまでにしな。」
少し遠くから女性の声が聞こえたかと思うと、それと同時に身体が少し動きにくくなったと感じる。
「な、身体が!?」
大男も突然身体が動かなくなって動揺している。
それもその筈で、ジルと大男の身体の周りには無数の糸が張り巡らされていた。
その糸は簡単に切れる事は無く、大男の動きを完全に止める程に頑丈な様だ。
しかしジルの動きを完全に縛る事は出来ていなかった。
手や腕にも糸が絡んでいるが、動かしにくくなっただけで動かない訳では無い。
なので特に気にする事も無く腕を大男に向けて伸ばす。
「っ!?動きを止めな、手が千切れるよ!」
糸を張ったと思われる女性がジルに向けて言うが、それでも動くのを止めない。
そしてブツンと言う音を最初に、次々と糸がジルの力に耐えられずに切れていく。
「あたしの糸を素手で!?」
絡まっていた糸から解放され、遮る物が無くなったジルの腕はもう少しで大男に届く。
「悪いが矛を収めてもらえないか?」
あとほんの少しで手が届くと言ったところで、ジルの肩に手を置いた男性にそう言われた。
「お前も我の邪魔をするのか?」
振り向かずにジルが尋ねる。
さすがに面倒事が続くと、ジルもイライラしてくる。
返答次第では無事では済まさないと声色が語っている。
「そんなつもりはないさ。そこの馬鹿な酔っ払いを回収しようと思ってね。」
大男を指差しながら言う男性。
どうやら大男と違って騒ぎを収めにきてくれた様だ。
「そうか、ならばさっさとしてもらおうか。」
「すまないね。」
男性は糸を張った女性に合図を送ると糸が解除される。
そしてその瞬間に華麗な動作で大男の意識を刈り取る。
「皆、騒がせてしまって済まない。」
男性が謝罪すると、冒険者達から口笛や賞賛が浴びせられる。
ジルは知らなかったが、それなりに有名な冒険者の様だ。
「もう直ぐ自警団が来る。新人君、ミラさんも迷惑を掛けたね。」
「い、いえ。助けて頂いてありがとうございます。」
男性は手を振りながら席に戻っていった。
気を失った大男はずるずると引き摺られている。
「色々ありましたが、お待たせしました。冒険者ギルドでの冒険者登録でお間違い無いですか?」
ミラが気を取り直してと言った感じで、ジルの話しの続きに戻る。
「ああ。」
「ではこちらの水晶に魔力を流して下さい。」
ミラが取り出した水晶は、キラキラと綺麗に光る魔法道具だ。
魔法道具とは魔力を流す事によって機能する道具の総称である。
ジルも魔王時代の暇潰しで取り組んだ期間があったのでそれなりに知識はある。
だが目の前にある水晶は初めて見るので、一応万能鑑定のスキルを使って効果を確かめておく事にした。
万能鑑定の結果、水晶は魔力を流す事で年齢、種族、犯罪歴、スキル、魔法等の様々な個人情報を得る効果を持っている事が分かった。
「使うのは決まりか?」
能力隠蔽のスキルを使って情報を書き換えているので、水晶がそれを見破ってこない限りは問題は無い。
しかし他者に情報を与えたくは無いので、万が一を考えると不用意に使いたいとは思えない。
「申し訳ありません、冒険者カードに記載される情報もありますので。もちろん個人の情報は冒険者ギルドで厳重に管理されますので、漏洩の心配はありません。」
「分かった。」
冒険者カードの作成に必要と言われれば了承するしか無い。
とは言え神達からオススメされたスキルなのだから、そう簡単に下界の魔法道具に性能で劣ってもらっては困る。
ジルが水晶に魔力を流すと水晶が光り、文字が空中に浮かび上がってくる。
魔法道具がジルの情報を得て、表示しているのだろう。
「少々お待ち下さい。」
ミラは空中に漂う文字をメモしてから奥の扉に向かう。
1分程で戻ってきて渡されたカードには、名前や使用出来るスキル、魔法等が書かれていた。
能力隠蔽のスキルはしっかり仕事している様で、書き換えられた内容が書かれている。
とは言っても他人に冒険者カードには無い魔法やスキルを見られれば、ギルドから何か言われるかもしれないので注意は必要だ。
「こちらが仮冒険者カードになります。」
ミラが一枚のカードを渡してきながら言う。
「仮?」
身分証となる冒険者カードがやっと手に入ったかと思ったら、どうやらまだ何かある様であった。
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