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1章
魔王様と魂廻の儀 2
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配下達に向けた遺書や過去に行った様々な実験の後片付け等、魔王がいなくなった後の事を気にして、配下達がいた頃と同じ様に全て元に戻した。
「これで思い残す事も無いな。」
最も召喚魔法が成功するかは分からない。
これだけ色々片付けたのだが、神の召喚に失敗して寿命が無くなるまで過ごす事もあり得る。
「希望が見えてしまったからな。再び無駄な時間を長々と過ごすのは御免だ。」
魔王はそう呟きながら魔王城から出て庭に向かう。
初級の召喚魔法程度であれば、城内でも問題無いのだが、流石にそれで神を呼ぶ事は難しいだろう。
召喚魔法は難易度を上げる毎に魔法陣と必要魔力が増えるので、城内では手狭なのだ。
当然魔王が行おうとしているのは、最上位の召喚である。
試した事は無いが、魔法に関しての技術は魔族の中でもトップクラスである。
「こんなものか。」
数十分をかけて魔王城の庭には巨大な魔法陣が描かれた。
普通であれば何十人という魔法使いが協力して描く規模なのだが、簡単にやってしまうのが規格外の魔王なのである。
魔法陣が準備出来たので、魔力を注いでいく。
魔力を込める作業も普通であれば相当な時間が必要となり、相当量の魔力が必要となる。
しかし魔王は魔力が膨大過ぎて身体から溢れ出ている程なので、数分で魔法陣に必要量を溜め終え、己の魔力は僅かに減った程度で、数秒で回復している。
「我が呼び掛けが届いたならば、召喚に応えろ!」
召喚したい神々の事を考えながら、召喚魔法の詠唱をすると魔法陣が眩く輝き出す。
魔王は期待の眼差しで魔法陣の中央を凝視する。
輝きが一際強くなり、次第に収まっていくと、魔法陣の中央には何も無かった。
「…失敗…なのか。」
期待していた分、魔王は膝から地面に崩れ落ちてしまう。
それと同時に書斎から持ってきた召喚魔法に関する本が地面に落ちる。
かつての側近に召喚魔法を得意としている者がおり、その者が扱っていた召喚魔法に関する本である。
「はぁ~、万策尽きたか。ん?」
魔王は本を拾おうとして、何か本からはみ出している事に気がつく。
手に取るとメモの様な物が挟まっていた。
「異世界人を召喚する魔法陣…。」
知能だけで見れば人間と言う種族はこの世界で最も優れていると言える。
その者達が新たに生み出した魔法陣は、外界から召喚を可能とする魔法陣だった。
魔法陣によって異世界の強者を呼び寄せて、魔王を殺そうと考えたのだ。
だが魔王は生きているので、結果はご覧の通りである。
どんな強者達が呼び寄せられようとも、魔王には全く歯が立たず、寝返る様な輩すらもいた。
「そう言えば人間達は、我を殺す為に他の世界から勇者並みの実力者を召喚する特殊な魔法陣を生み出していたな。」
召喚魔法について詳しかった側近が人間の生み出した特殊な魔法陣について調べたメモだったのだろう。
魔法陣の構造や必要な条件等について、事細かに書かれていた。
「そうか!これだ!我が求めていた魔法陣は!」
一般的な召喚魔法はこの世界に存在する物を呼び寄せる物だ。
なので神界に住まう神々を召喚出来無かったとしても不思議では無い。
「…いや、少し無駄があるか。改良して魔法陣のスペックをあげるとしよう。」
希望はまだあると自分に言い聞かせて、人間が生み出した魔法陣を改良して、新たな魔法陣を試す事にする。
神々の恩恵を受けた魔王も大概に知能は優れていた。
魔法の改良、新たな魔法の創造はお手の物なのだ。
「まさか我を殺す為に人間が生み出した魔法陣を、同じ目的で我自身が使う事になるとはな。」
多少改良したがベースは残っている。
まさか人間達の思惑がこんな結果で叶うとは、昔の自分が聞いたら夢にも思わない事だろう。
魔法陣を新たに描き、魔力を注ぐ。
改良したからか、メモに書かれていた魔力量を超えても、まだまだ魔法陣には魔力が入っていく。
「これ程魔力を一度に使うのはいつ以来だろうか。」
魔法の最上位である極級魔法を全力で放ったとしても、魔力量の数%程しか減る事はないだろう。
だが現在魔力量の一割を超え、もう直ぐ二割に届きそうである。
これ程の魔力が普通に解き放たれれば、国など簡単に灰燼に帰すだろう。
それを防止して魔力を蓄える装置の様な役目を果たすのが魔法陣である。
結局改良型魔法陣は、魔王の魔力量の実に五割も蓄えて、ようやく許容量に達した。
普通の召喚魔法に使う魔法陣とは比べ物にならない量である。
「久しぶりに魔力が身体から溢れていないな。と言っても暫くすれば元に戻るか。」
前から知っていれば魔力を抑える方法の一つとして使えた可能性はあるが、魔王は良しとしなかっただろう。
これ程の魔法陣であれば、文字通り何でも召喚出来る可能性がある。
他者に悪用されれば、世界を大きく変える事にもなり得るのだ。
それに使用しなければしないで、魔力を蓄えたままの状態の爆弾とも言える危険な物でもある。
「今度こそ頼むぞ!我が呼び掛けが届いたならば、召喚に応えろ!」
大きく深呼吸してから詠唱を唱えると、魔法陣が先程よりも強烈な輝きを放ち、視界が白一色で埋まった。
「これで思い残す事も無いな。」
最も召喚魔法が成功するかは分からない。
これだけ色々片付けたのだが、神の召喚に失敗して寿命が無くなるまで過ごす事もあり得る。
「希望が見えてしまったからな。再び無駄な時間を長々と過ごすのは御免だ。」
魔王はそう呟きながら魔王城から出て庭に向かう。
初級の召喚魔法程度であれば、城内でも問題無いのだが、流石にそれで神を呼ぶ事は難しいだろう。
召喚魔法は難易度を上げる毎に魔法陣と必要魔力が増えるので、城内では手狭なのだ。
当然魔王が行おうとしているのは、最上位の召喚である。
試した事は無いが、魔法に関しての技術は魔族の中でもトップクラスである。
「こんなものか。」
数十分をかけて魔王城の庭には巨大な魔法陣が描かれた。
普通であれば何十人という魔法使いが協力して描く規模なのだが、簡単にやってしまうのが規格外の魔王なのである。
魔法陣が準備出来たので、魔力を注いでいく。
魔力を込める作業も普通であれば相当な時間が必要となり、相当量の魔力が必要となる。
しかし魔王は魔力が膨大過ぎて身体から溢れ出ている程なので、数分で魔法陣に必要量を溜め終え、己の魔力は僅かに減った程度で、数秒で回復している。
「我が呼び掛けが届いたならば、召喚に応えろ!」
召喚したい神々の事を考えながら、召喚魔法の詠唱をすると魔法陣が眩く輝き出す。
魔王は期待の眼差しで魔法陣の中央を凝視する。
輝きが一際強くなり、次第に収まっていくと、魔法陣の中央には何も無かった。
「…失敗…なのか。」
期待していた分、魔王は膝から地面に崩れ落ちてしまう。
それと同時に書斎から持ってきた召喚魔法に関する本が地面に落ちる。
かつての側近に召喚魔法を得意としている者がおり、その者が扱っていた召喚魔法に関する本である。
「はぁ~、万策尽きたか。ん?」
魔王は本を拾おうとして、何か本からはみ出している事に気がつく。
手に取るとメモの様な物が挟まっていた。
「異世界人を召喚する魔法陣…。」
知能だけで見れば人間と言う種族はこの世界で最も優れていると言える。
その者達が新たに生み出した魔法陣は、外界から召喚を可能とする魔法陣だった。
魔法陣によって異世界の強者を呼び寄せて、魔王を殺そうと考えたのだ。
だが魔王は生きているので、結果はご覧の通りである。
どんな強者達が呼び寄せられようとも、魔王には全く歯が立たず、寝返る様な輩すらもいた。
「そう言えば人間達は、我を殺す為に他の世界から勇者並みの実力者を召喚する特殊な魔法陣を生み出していたな。」
召喚魔法について詳しかった側近が人間の生み出した特殊な魔法陣について調べたメモだったのだろう。
魔法陣の構造や必要な条件等について、事細かに書かれていた。
「そうか!これだ!我が求めていた魔法陣は!」
一般的な召喚魔法はこの世界に存在する物を呼び寄せる物だ。
なので神界に住まう神々を召喚出来無かったとしても不思議では無い。
「…いや、少し無駄があるか。改良して魔法陣のスペックをあげるとしよう。」
希望はまだあると自分に言い聞かせて、人間が生み出した魔法陣を改良して、新たな魔法陣を試す事にする。
神々の恩恵を受けた魔王も大概に知能は優れていた。
魔法の改良、新たな魔法の創造はお手の物なのだ。
「まさか我を殺す為に人間が生み出した魔法陣を、同じ目的で我自身が使う事になるとはな。」
多少改良したがベースは残っている。
まさか人間達の思惑がこんな結果で叶うとは、昔の自分が聞いたら夢にも思わない事だろう。
魔法陣を新たに描き、魔力を注ぐ。
改良したからか、メモに書かれていた魔力量を超えても、まだまだ魔法陣には魔力が入っていく。
「これ程魔力を一度に使うのはいつ以来だろうか。」
魔法の最上位である極級魔法を全力で放ったとしても、魔力量の数%程しか減る事はないだろう。
だが現在魔力量の一割を超え、もう直ぐ二割に届きそうである。
これ程の魔力が普通に解き放たれれば、国など簡単に灰燼に帰すだろう。
それを防止して魔力を蓄える装置の様な役目を果たすのが魔法陣である。
結局改良型魔法陣は、魔王の魔力量の実に五割も蓄えて、ようやく許容量に達した。
普通の召喚魔法に使う魔法陣とは比べ物にならない量である。
「久しぶりに魔力が身体から溢れていないな。と言っても暫くすれば元に戻るか。」
前から知っていれば魔力を抑える方法の一つとして使えた可能性はあるが、魔王は良しとしなかっただろう。
これ程の魔法陣であれば、文字通り何でも召喚出来る可能性がある。
他者に悪用されれば、世界を大きく変える事にもなり得るのだ。
それに使用しなければしないで、魔力を蓄えたままの状態の爆弾とも言える危険な物でもある。
「今度こそ頼むぞ!我が呼び掛けが届いたならば、召喚に応えろ!」
大きく深呼吸してから詠唱を唱えると、魔法陣が先程よりも強烈な輝きを放ち、視界が白一色で埋まった。
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