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コ○ナ感染
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朝起きた時から、心持ち喉がイガラっぽい感じがした。36.8℃と熱はないのだが、ほんの少し寒気がする。時節柄なにか嫌な予感がした。
尾高倫子(りんこ)は、あと三日ほど仕事が立て込んでいて休めないので、懇意にしている会社の医師に電話で相談してみることにした。
「先生、大丈夫でしょうか? ちょっと寒気がするんですけど………?」
「倫子ちゃん。今の時点で、リモートだけで診断をだせと言うのは無理な話だよ! リモートならせめてあと二日か三日、様子をみさせてくれないか?」
「仕事が立て込んでいて、しばらく休めないんですけど………」
「わかった。編集長には上手く言っといてあげるよ。もしこれが新型のコ○ナ感染なら、まずいことになるよってね! さいわい倫子ちゃん、この間だれとも深い接触を持たなかったようだね?」
「はい。調べものがあったので、資料室に閉じ込めみたいになっていたんです」
「なるべく人との接触は、今の時点ない方がいいからね」
「ごめんなさい、先生。とにかく今は大人しくしていることにします。どうせ誰とも会えないんでしょう?」
「大丈夫。本当に危ないと思ったら、PCRキットをもって完全武装で駆けつけるから。だからあまり心配しないで!」
「わかりました。仕方ありませんね。普段ならただの風邪ですむんですけど………」
「まあ、あまり気にしないほうが良い! たいていは普通の風邪だから」
「はい………」
医師がそう言ったその晩から、倫子の容態はズンズン悪くなった。みるみるうちに熱が出てきて、やがて39℃になった。
呼吸が苦しい。
富士登山で高山病にかかって以来である。鯉が水面でパクパク息をするように、吸っても吸っても酸素が入ってこない感じである。
以前に買っておいた、パルスオキシメーターの値が89、90になった。熱は39.2℃ある。それだけではなく、ものの味や匂いがしなくなった。まさにコ○ナ感染の典型である。
「先生………胸が苦しい………。わたし………もう駄目かもしれない………」
「しっかりしなさい。すぐ救急車をよんであげるから! 気を確かにもつんだ!」
三十代前半でこんなに重症化が早いのも珍しかった。たった半日でこんなに悪くなった。これが新型コ○ナの恐ろしさだ。
倫子は医師につきそわれ、救急車で搬送された。途中とうとう気を失ってしまった。不覚にもブラックアウトしてしまったのである。
次に目覚めたのは、会社にほど近い病院であった。ICUにつながれていた。人工呼吸器も装着され、それでも呼吸は浅く弱々しかった。
不思議なのは、倫子が二人いることだった。ひとりは人工呼吸器につながれている、人事不省の倫子である。もうひとりは、部屋の上方でプカプカ浮いている、困った顔の倫子である。肉体と幽体の彼女がふたりいたのである。
「まいったな………。編集長に叱られちゃうかな? でも、どうしたら良いのかしら………?」
困った顔の倫子が、困った顔のままで言う。ベッドの方の倫子は、人工呼吸器につながれたまま、今にも命が絶えそうなほどだ。霊的なことに慣れているとはいえ、こんな場合にはまったくお手上げであった。
倫子は花房出版の編集者だった。入社十年目。編集部の女性エースである。いま流行りの作家で、某信用金庫に籍のあった○川雄大や、歴史小説で有名な黒○静央を担当していた。
自身が経済学部出身と言うこともあって、経済に明るいのが彼女の強みだ。また歴史が好きで、歴女のはしりなのも売りである。どちらも、編集者としては申し分なかった。
しかしそれだけではない。もう一つ倫子には、あまり知られていない特徴があったのである。
彼女は小さな時分から不思議な体験をすることが多く、人に見えない霊が見えたり、霊と話したりすることがままあった。学生時代には交通事故で三日間の仮死状態を体験した。そしてそのあいだに、幽体離脱までしてしまうほどだった。
だから運悪く流行りの感染症にかかったとはいえ、恐ろしくて震えがとまらないようなことはなかった。
ただ残念で仕方がなかった。このまま死んでしまうのかもしれない。編集長にはずいぶん可愛がってもらったのに、なにひとつ返せていないのである。死ぬことそのものはべつに怖くなかった。ただ申し訳ない気持ちがつよい。このまま自分が死んでしまったら、ずいぶん滑稽に違いない。自分もいつか小説を書いてみたいという夢を持っていたくせに、なにもなさぬ内に鬼籍に入ってしまうとは、ずいぶん間抜けな話ではないか。
まだ頭部と腹部に二本あるシルバーコード(珠の緒)は切れていない。だから今すぐ命が絶えるという事はあるまい。そう考えて、彼女は気持ちを落ちつかせようとした。
幽体離脱中の倫子は壁ぎわの中空にプカプカ漂いながら、下のベッドに力なく横たわる意識不明の倫子を漫然とながめていたのであった。
やがて暗いトンネルを通って、急速に移動する感じが訪れた。昔の体験と同じで、ヒューヒューと髪が風になびく感じが心地いい。数分移動したあと、よく手入れされた花壇のある、瀟洒な家の庭先にでた。
また同じような体験をしている。と思う間もなく、ふいに誰かのことが頭に浮かんだ。
「どこかしら、ここ? まえも来たことがある………」
倫子は記憶をたどってみたが、誰の家かはわからなかった。
「あっ、誰かくる…………この感じ! そう、思いだしたわ!」
最初は眩しくてなにもわからなかった。これで幽体離脱も三度目だ。しかし、なんど経験しても、最初から霊人に慣れるのは難しい。だがなにか、胸の奥で懐かしい気もした。
「眩しくって、見えません………。少し………光を落としてください!」
倫子は、ハレーションを起こしている人型に向かって言った。
「ごめ~ん、これで、良いかしら!」
「………もう少し………もう少し………はい、結構です!」
「ヤッホー、リンちゃん! 久しぶり!」
「やっぱり! あなたは、守護霊のキリコさんじゃないですか?」
霊界で数少ない知り合いの、キリコだった。うすいピンクの霊界色ワンピースがよく似合っていた。
「おひさ! 元気してた?」
「はい。この前は、いろいろお世話になりました。え~と、十年ぶりですか………?」
「もうそんなになるかなぁ! あの世では時間がないからよく分からなくって、一年ほどもたっていない感覚なのよね? そう、もう十年か、早いわよね!」
十年前に交通事故で死にかけた時、肉体生命を救ってくれた存在がキリコだった。肉体をオーラで包んで致命的な怪我を防いでくれただけでなく、あの世の理を一つ一つ教えてくれたのもキリコだった。
「あのう、今日はまたどういう………」
「そう、そうよね。用もないのに、まだ死んでもいない人を呼び出したりしないわよね。ゴメンなさい、こんな面倒な時に………。でも、こんな時じゃなきゃ、好きな人とコンタクトをとれなくてねぇ………!」
「えっ? それじゃあ………」
話しを聞いていると、まるで今回のコ○ナ感染は、計画の一端かという風にとれなくもない。
「ごめ~ん! でも、べつに無理にコ○ナに感染させたわけじゃないのよ。たまたま、たまたま!」
「わかってます、分かってます!」
キリコはこんな風に冗談ぽく聞こえてても、凄まじいバイタリティーと能力をもった霊人である。十年まえ、倫子が交通事故をおこした時も、ダンプカーとトラックに挟まれて、ペシャンコになった車の中で奇跡的に助かったことがある。それもすべて、キリコがなした技であった。それだけでなくその後、あの世についての知識と智慧を、手とり足とり教えてくれたのもキリコであった。いわば倫子にとって、文字通り恩人なのである。
「分かりました! もうこうなれば、キリコさんにすべておまかせします。え~い、あたって砕けろだわ!」
「ありがと! さすがに霊的な世界に慣れていると、理解も早いわよね! でも、今度の用事はそれじゃないのよ~。リンちゃんには、この道の先生について、三日程みっちり勉強してもらいたいの」
「えっ、私が先生につくんですか?」
「そう。そうなのよ。ちょっとエッチな先生だけど、優秀なのは保証するわ!」
「はぁ、べつにかまいませんけど………」
「ごめんね~。そのかわり、リンちゃんが勉強してるあいだ、わたしが肉体のメンテナンスをしておいてあげる。こんど肉体に帰ったときは、ピカピカのチューンナップボディーよ!」
なんの講義か知らないが、あと三日ばかり勉強すればコ○ナ感染の肉体から解き放たれると聞いて、悪い話ではないと倫子は思った。キリコにまかせておけば大丈夫だ。きっと無事に地上に帰れるだろう。
「分かりました。ぜんぶお任せします! それに、キリコさんには恩義がありますもんね!」
「ありがと~! じゃ、さっそく紹介するわね。こちらが大先生の栄ちゃん先生よ!」
さっきから後に控えていた小犬に向かって、紹介の手をひろげてキリコは言った。よく見ると、自分が思いこんでいたのは、小犬などではなく小柄な中年男性であった。
「失礼しました! キリコさんかわいい小犬をつれているなって、そう思いこんでいました!」
「良いんだよ! 邪魔にならないように、僕が遠慮しすぎたから、君の眼には小犬に見えたようだね!」
「ウケる~! センセイ、わたしの後にいたと思ったら、リンちゃんにはホントにかわいいワンコに見えてたのね!」
「キリコちゃんは時々、根性悪になるから困るよ。べつに、僕がそれで良いならいいじゃないか? それより、疾く倫子ちゃんの肉体整備をはじめた方がいいんじゃないかい?」
「いっけな~い! わたしがボヤボヤしてたら、リンちゃんの身体がいつまでもそのままね!」
「後のことは僕にまかせて、君はチューンナップボディーとやらを準備したまえ!」
「わっかりました! リンちゃんと別れるのは残念だけど、そろそろ行くわね。リンちゃん、この家ワタシのだから好きに使ってくれて構わないわ。じゃ先生、またね。あまりエッチなことしちゃダメよ!」
そう言うと、キリコは久闊をじょする間もなく、あっというまに消えた。まさしく、疾風の如きスピードだった。
尾高倫子(りんこ)は、あと三日ほど仕事が立て込んでいて休めないので、懇意にしている会社の医師に電話で相談してみることにした。
「先生、大丈夫でしょうか? ちょっと寒気がするんですけど………?」
「倫子ちゃん。今の時点で、リモートだけで診断をだせと言うのは無理な話だよ! リモートならせめてあと二日か三日、様子をみさせてくれないか?」
「仕事が立て込んでいて、しばらく休めないんですけど………」
「わかった。編集長には上手く言っといてあげるよ。もしこれが新型のコ○ナ感染なら、まずいことになるよってね! さいわい倫子ちゃん、この間だれとも深い接触を持たなかったようだね?」
「はい。調べものがあったので、資料室に閉じ込めみたいになっていたんです」
「なるべく人との接触は、今の時点ない方がいいからね」
「ごめんなさい、先生。とにかく今は大人しくしていることにします。どうせ誰とも会えないんでしょう?」
「大丈夫。本当に危ないと思ったら、PCRキットをもって完全武装で駆けつけるから。だからあまり心配しないで!」
「わかりました。仕方ありませんね。普段ならただの風邪ですむんですけど………」
「まあ、あまり気にしないほうが良い! たいていは普通の風邪だから」
「はい………」
医師がそう言ったその晩から、倫子の容態はズンズン悪くなった。みるみるうちに熱が出てきて、やがて39℃になった。
呼吸が苦しい。
富士登山で高山病にかかって以来である。鯉が水面でパクパク息をするように、吸っても吸っても酸素が入ってこない感じである。
以前に買っておいた、パルスオキシメーターの値が89、90になった。熱は39.2℃ある。それだけではなく、ものの味や匂いがしなくなった。まさにコ○ナ感染の典型である。
「先生………胸が苦しい………。わたし………もう駄目かもしれない………」
「しっかりしなさい。すぐ救急車をよんであげるから! 気を確かにもつんだ!」
三十代前半でこんなに重症化が早いのも珍しかった。たった半日でこんなに悪くなった。これが新型コ○ナの恐ろしさだ。
倫子は医師につきそわれ、救急車で搬送された。途中とうとう気を失ってしまった。不覚にもブラックアウトしてしまったのである。
次に目覚めたのは、会社にほど近い病院であった。ICUにつながれていた。人工呼吸器も装着され、それでも呼吸は浅く弱々しかった。
不思議なのは、倫子が二人いることだった。ひとりは人工呼吸器につながれている、人事不省の倫子である。もうひとりは、部屋の上方でプカプカ浮いている、困った顔の倫子である。肉体と幽体の彼女がふたりいたのである。
「まいったな………。編集長に叱られちゃうかな? でも、どうしたら良いのかしら………?」
困った顔の倫子が、困った顔のままで言う。ベッドの方の倫子は、人工呼吸器につながれたまま、今にも命が絶えそうなほどだ。霊的なことに慣れているとはいえ、こんな場合にはまったくお手上げであった。
倫子は花房出版の編集者だった。入社十年目。編集部の女性エースである。いま流行りの作家で、某信用金庫に籍のあった○川雄大や、歴史小説で有名な黒○静央を担当していた。
自身が経済学部出身と言うこともあって、経済に明るいのが彼女の強みだ。また歴史が好きで、歴女のはしりなのも売りである。どちらも、編集者としては申し分なかった。
しかしそれだけではない。もう一つ倫子には、あまり知られていない特徴があったのである。
彼女は小さな時分から不思議な体験をすることが多く、人に見えない霊が見えたり、霊と話したりすることがままあった。学生時代には交通事故で三日間の仮死状態を体験した。そしてそのあいだに、幽体離脱までしてしまうほどだった。
だから運悪く流行りの感染症にかかったとはいえ、恐ろしくて震えがとまらないようなことはなかった。
ただ残念で仕方がなかった。このまま死んでしまうのかもしれない。編集長にはずいぶん可愛がってもらったのに、なにひとつ返せていないのである。死ぬことそのものはべつに怖くなかった。ただ申し訳ない気持ちがつよい。このまま自分が死んでしまったら、ずいぶん滑稽に違いない。自分もいつか小説を書いてみたいという夢を持っていたくせに、なにもなさぬ内に鬼籍に入ってしまうとは、ずいぶん間抜けな話ではないか。
まだ頭部と腹部に二本あるシルバーコード(珠の緒)は切れていない。だから今すぐ命が絶えるという事はあるまい。そう考えて、彼女は気持ちを落ちつかせようとした。
幽体離脱中の倫子は壁ぎわの中空にプカプカ漂いながら、下のベッドに力なく横たわる意識不明の倫子を漫然とながめていたのであった。
やがて暗いトンネルを通って、急速に移動する感じが訪れた。昔の体験と同じで、ヒューヒューと髪が風になびく感じが心地いい。数分移動したあと、よく手入れされた花壇のある、瀟洒な家の庭先にでた。
また同じような体験をしている。と思う間もなく、ふいに誰かのことが頭に浮かんだ。
「どこかしら、ここ? まえも来たことがある………」
倫子は記憶をたどってみたが、誰の家かはわからなかった。
「あっ、誰かくる…………この感じ! そう、思いだしたわ!」
最初は眩しくてなにもわからなかった。これで幽体離脱も三度目だ。しかし、なんど経験しても、最初から霊人に慣れるのは難しい。だがなにか、胸の奥で懐かしい気もした。
「眩しくって、見えません………。少し………光を落としてください!」
倫子は、ハレーションを起こしている人型に向かって言った。
「ごめ~ん、これで、良いかしら!」
「………もう少し………もう少し………はい、結構です!」
「ヤッホー、リンちゃん! 久しぶり!」
「やっぱり! あなたは、守護霊のキリコさんじゃないですか?」
霊界で数少ない知り合いの、キリコだった。うすいピンクの霊界色ワンピースがよく似合っていた。
「おひさ! 元気してた?」
「はい。この前は、いろいろお世話になりました。え~と、十年ぶりですか………?」
「もうそんなになるかなぁ! あの世では時間がないからよく分からなくって、一年ほどもたっていない感覚なのよね? そう、もう十年か、早いわよね!」
十年前に交通事故で死にかけた時、肉体生命を救ってくれた存在がキリコだった。肉体をオーラで包んで致命的な怪我を防いでくれただけでなく、あの世の理を一つ一つ教えてくれたのもキリコだった。
「あのう、今日はまたどういう………」
「そう、そうよね。用もないのに、まだ死んでもいない人を呼び出したりしないわよね。ゴメンなさい、こんな面倒な時に………。でも、こんな時じゃなきゃ、好きな人とコンタクトをとれなくてねぇ………!」
「えっ? それじゃあ………」
話しを聞いていると、まるで今回のコ○ナ感染は、計画の一端かという風にとれなくもない。
「ごめ~ん! でも、べつに無理にコ○ナに感染させたわけじゃないのよ。たまたま、たまたま!」
「わかってます、分かってます!」
キリコはこんな風に冗談ぽく聞こえてても、凄まじいバイタリティーと能力をもった霊人である。十年まえ、倫子が交通事故をおこした時も、ダンプカーとトラックに挟まれて、ペシャンコになった車の中で奇跡的に助かったことがある。それもすべて、キリコがなした技であった。それだけでなくその後、あの世についての知識と智慧を、手とり足とり教えてくれたのもキリコであった。いわば倫子にとって、文字通り恩人なのである。
「分かりました! もうこうなれば、キリコさんにすべておまかせします。え~い、あたって砕けろだわ!」
「ありがと! さすがに霊的な世界に慣れていると、理解も早いわよね! でも、今度の用事はそれじゃないのよ~。リンちゃんには、この道の先生について、三日程みっちり勉強してもらいたいの」
「えっ、私が先生につくんですか?」
「そう。そうなのよ。ちょっとエッチな先生だけど、優秀なのは保証するわ!」
「はぁ、べつにかまいませんけど………」
「ごめんね~。そのかわり、リンちゃんが勉強してるあいだ、わたしが肉体のメンテナンスをしておいてあげる。こんど肉体に帰ったときは、ピカピカのチューンナップボディーよ!」
なんの講義か知らないが、あと三日ばかり勉強すればコ○ナ感染の肉体から解き放たれると聞いて、悪い話ではないと倫子は思った。キリコにまかせておけば大丈夫だ。きっと無事に地上に帰れるだろう。
「分かりました。ぜんぶお任せします! それに、キリコさんには恩義がありますもんね!」
「ありがと~! じゃ、さっそく紹介するわね。こちらが大先生の栄ちゃん先生よ!」
さっきから後に控えていた小犬に向かって、紹介の手をひろげてキリコは言った。よく見ると、自分が思いこんでいたのは、小犬などではなく小柄な中年男性であった。
「失礼しました! キリコさんかわいい小犬をつれているなって、そう思いこんでいました!」
「良いんだよ! 邪魔にならないように、僕が遠慮しすぎたから、君の眼には小犬に見えたようだね!」
「ウケる~! センセイ、わたしの後にいたと思ったら、リンちゃんにはホントにかわいいワンコに見えてたのね!」
「キリコちゃんは時々、根性悪になるから困るよ。べつに、僕がそれで良いならいいじゃないか? それより、疾く倫子ちゃんの肉体整備をはじめた方がいいんじゃないかい?」
「いっけな~い! わたしがボヤボヤしてたら、リンちゃんの身体がいつまでもそのままね!」
「後のことは僕にまかせて、君はチューンナップボディーとやらを準備したまえ!」
「わっかりました! リンちゃんと別れるのは残念だけど、そろそろ行くわね。リンちゃん、この家ワタシのだから好きに使ってくれて構わないわ。じゃ先生、またね。あまりエッチなことしちゃダメよ!」
そう言うと、キリコは久闊をじょする間もなく、あっというまに消えた。まさしく、疾風の如きスピードだった。
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