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隣国エテルカールトン

加護

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———幼子達よ、この人間は我の物だ。勝手に持ち出されては困る

『お願い~』
『助けてほしい~』
『ほしい~』

———お前達で対処出来ぬ問題ならば、この人間にも不可能だろう

『大丈夫~』
『ミサと同じ~』
『同じ匂い~』

 また当事者である私を置いて話しが勝手に進んでいく。何故私はいつもこうなのだろうか。巻き込まれ体質と言うか、不幸体質と言うか…。

———この人間は脆いのだ。他のにしろ

 そうだ!そうだ!
 私は魔法がほんの少し使えて、ちょっと手先が器用なだけのただの人間ですよ。連れてっても何の足しにもなりませんよ~。

『だめだよ~』
『緊急事態なんだもん~』
『王が危険~』

———お前達の都合など知らん。とにかくこの娘は貰って帰る

『だめだめ~』
『ミサと同じ人間~』
『同じ人間必要~』

 妖精達も勝手だけど、ドラゴンの言い分もかなり乱暴で勝手だよ。私、完全に物扱いだし。
 …ってか、ミサって誰?

「あの、そのミサ、さんっていうのは誰なんですか?」

『ミサ~』
『僕らの友達~』
『王の大切な人~』

———あやつか。ならば自業自得だ。我は危険だと再三にわたり注意をした

『王悪くないよ~』
『王子騙された~』
『人間に騙された~』

———知らん

 とにかく、今の話をまとめると。
 妖精達の王が人間に騙された王子のせいで何やら緊急事態に陥って危険な状態。そして恐らく妖精王の大切な人が“ミサ”って言う人で、その人ならば妖精王を助けられて、でもそのミサって人がいないから代わりにそのミサって人に似た私が誘拐された、って事?

 全くなんて良い迷惑だ。
 なんで似てるからって理由でなんの説明もなく連れ去られるのだろうか。この世界、秩序無さすぎない?

「私に何を期待してるのか分かりませんが、私には何も出来ませんよ」

『ミサの匂い~』
『同じ能力~』
『同じ気配~』

———ふむ、何を言っても無駄のようだ

 いや、いや。諦めないでくれないか。唯一の希望だったのにこんな無駄なんて言葉で片付けてないで無理矢理でも良いから解放してくれない?
 それが無理ならさっき言った伝言だけで良いから伝えて来てくれない?

———幼子達、リザに何もかもを求めているのだ

『ミサ作った~』
『ミサのアクセサリー』
『もとに戻してほしい~』

「アクセサリー?」

———ふむ、ウンディーネの予知のままだ

 予知?なんか、情報の供給過多でおかしくなりそう。アクセサリーを直す、じゃなくて戻す?ミサさんもアクセサリー屋?それとも付与術師なのだろうか?
 分からないことが多すぎてまともな答えに辿り着きそうもない。
 誰か、この話しに詳しい人。詳しく説明してくれないだろうか。

———その昔、エテルを作った人間の中にミサと言う女がいた

 頭の中の声聞いてたのかな…?
 詳しい説明が聞けそうだ。

 昔、エテルの成長に大きく携わった女性がいた。
 その女性はある日突然エテルに現れて美しい装飾品を作り出し、その装飾品の力で国を強くした。
 彼女が生み出した物には高い安い、大きい小さいなどの価値や見た目には囚われず、その殆どに《加護》の力が備わっていた。
 国が大きくなっていく一方で大きな障害があった。
 先住民である妖精国との関係だ。
 妖精は弱いが魔法石よりも遥かに多い魔力を内包していて魔力の供給という利用価値が高かい存在だった。
 それに目をつけた人間に乱獲され妖精達は土地を大地を荒らした。作物が育たなくなり、動物も激減し、森が消えた。そして、お互いに住みづらくなってしまった。
 行く先がなくなったエテル。住処が無くなった妖精国。
 そんな二国を救うためにその女性は同じ国に住む妖精王へご挨拶にと一つのアクセサリーを送った。
 それには《断絶》の加護が備わっていた。
 《断絶》の加護は望むもの全てを断絶することができる。よってこの加護を受けた者が望めば一個人を拒絶する事も災害などの大きな脅威からも断絶される。とても強力な加護である。

 妖精の王はその力で人間との関係を《断絶》し、人間達の視界から妖精達は一方的に消えたのだった。




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