異世界で趣味(ハンドメイド)のお店を開きます!

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隣国エテルカールトン

新ダンジョン

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「さぁ!行こうか!」

「…えぇ」

 一番初めに足を踏み入れたのはコツコツと足音が壁に当たって跳ね返って反響するくらい狭い通路。その反射してくる音がマーサに妙な不安を誘う。
 そんなマーサの心配を他所に久し振りの冒険で浮き足立っているギルゲイン。英雄と呼ばれた面影は何処へやら。もう相当良い年だと言うのにこの張り切り様…幾つになっても子供っぽい。

「楽しむのは良いけれど、この狭い通路ではアンタの剣は振り回せないわよ」

「分かってるさ!だから今日はこれで行く!」

「…」

「イッテっ!」

 そう言いながら突き出してきた力瘤を無言でシバイてマーサはダンジョンの更に奥へと進み出した。
 
 ダンジョン内部は一見なんの変哲もなさそうだが、それがマーサに何とも言えない違和感を与える。
 ダンジョンは通常、産まれたては弱い魔物しか居なく、内部もとてもシンプルでただの一本道だったり、グルグル回るだけだったりが殆どだ。
  その為これまでは有用な資材の調達を見込めるダンジョンは敢えてダンジョンの主人を討伐せずにダンジョンを成長させて資材を確保してきた。

「うむ、既に中級といったところか」

「…そのようね」

 だが、このダンジョンには既に中級レベルの魔物が普通に出てきていて、しかも時折現れるユニークモンスター(同じ種族なのに特別個体値の高いモンスター)もいた。下手すれば直ぐにでも上級に昇格する可能性まである。

「…やっぱり変だな」

 なのに、ダンジョン内部は一番最近見つかった
初級者向けのダンジョンの草原ダンジョンよりも簡単なただの一本道。
 この異常事態に何故誰も声をあげていないのか。

「まず、此処がかなり有益なダンジョンだという事」

 一本道でとても簡単な道。魔物からの不意打ちなどの心配もなく、此方にも多少の不利はあるものの、適当に放った魔法が確実に当たるくらい通路が狭い。
 余程のことがない限り死ぬ心配はない。
 そんな場所で取れるのは中級レベルの魔物素材。更に、中級ダンジョンレベル資材。

「そしてダンジョンについて詳しく知る冒険者が引退などで減ってしまった事」

 私達同世代の冒険者達は未知だったダンジョンを少しでも安全に攻略する為、それからギルドと王国の腐敗によりダンジョン外でも身に大きな危険があったので、金銭的なやり取りはあったものの情報のやり取りが盛んだった。
 しかし、今ではダンジョンの存在が当たり前になって来ていて、若い世代は冒険についてはとても詳しいが、ダンジョンについては基本すら知らない者も多い。
 マーサは其れらを正しく知り、理解しているからノアの突拍子もない話しも直ぐに飲み込む事が出来た。

「…常闇が正しく報告しなかったってことか」

「まだそうと決まったわけじゃないわ。常闇が調査した時にこの状態だったとは言い切れないから」
 
 しかし、ダンジョン成長とはとてもゆっくりなもの。それは人類が成長するよりも更にもっともっとゆっくりなものなのだ。
 ダンジョンの変化、成長とは何百年単位のものでダンジョン変異にはその前に大きな地震や地割れ、などの地殻変動も伴うのでその予兆はかなり分かりやすい。
 なのにそれが王都近郊の街で人の行き交いもそこそこある土地で誰にも気付かれることなく起こったとなるとそれは異常事態に他ならない。

 長く見てきた常闇を疑いたくない。
 しかし、そうは言えない状況なのは間違いなかった。


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