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隣国エテルカールトン
エレファンス
しおりを挟む「お、お待ちしておりました!」
「あぁ、ご苦労だったな」
「し、支部長を呼んで参ります!」
「あぁ、頼む」
ギルドの中もおおよそ外の様子と変わらず、しっかりと整えられていて、ギルゲインが新人冒険者達のために整えた塾もしっかりと機能していているし、新規登録受付もスムーズに対応出来ているし、一番心配していた買取や売買業務などは一時的に外部の者を入れる事で何とか対応していた様だ。
「良くこの数日でここまで整えたな」
「…じ、実は数日前にとある冒険者がダンジョンを発見しまして、ここは国有地ですので王へ報告の手紙を出し、その間に手筈を整えたのです、はい」
「実に見事な手腕だ!お前の様な優秀な職員がいたのを見逃していたなんてオレも随分と惜しい事をした!」
「お、お褒め頂けるなんて…そんな、はい。誠に嬉しい事です、はい」
「君も助かったよ!」
「私も良い経験をさせていただきました」
外部から買取業務を請け負っていた、この街に住んでいるという錬金術師の青年も特段変わった様子もなく、とても協力的で叶うならそのままギルドの職員として雇いたいほど良い腕をしている。
「踏破情報や地図作成の依頼、その他魔物やトラップの情報収集はどこに依頼を?」
「実は、はい。たまたま偶然、王宮からの依頼の帰りだったAランクパーティーの常闇さんが滞在しておりまして、はい。初踏破の称号と引き換えに引き受けて頂きました、はい」
「…それまでは誰もダンジョンに入れなかったという事?」
「そう言う条件でしたので、はい」
確かに初踏破の称号は冒険者なら誰もが憧れる称号の一つだ。だが、同時に何があるのか分からないのがダンジョン。
確かに出来たての若いダンジョンなら魔物も強くない事も多いし、ダンジョン内も複雑じゃない場合が多いが、単一のパーティーでそれを仕上げるとなるとどんなに強く優秀なパーティーだったとしても、危険は大いにあるし、なかなか骨の折れる作業なのは間違いない。
そんな仕事をあの常闇が請け負うだろうか。
常闇は火力には少し不安な点はあるが、それを上回るだけの情報収集が得意なパーティー。
常に自分に優位な情報を仕入れ、それを駆使して安全かつスピーディーに攻略していく。そんなパーティーが誰も入ったことのなく、何一つ情報のないダンジョンに挑むだろうか。
「ダンジョン内の詳しい情報が欲しい。常闇は何処に居るのだろうか?」
「それが、一昨日にダンジョン内の初踏破報酬を受け取って直ぐにこの街を出たと聞いております、はい」
「…何処に向かったかは?」
「元拠点のあるフローネに向かうと門番には話していた様ですが、はい」
「ありがとう。本部に帰ったら直接聞くことにしよう」
それから少しギルド内の雑務の指示を出して、その後はベテラン受付達に任せて、二人は宿屋へ向かう。
「…マーサ、36年前のことを思い出すのは俺だけか?」
「いや、私も思い出していたところよ」
36年前に、英雄と呼ばれたギルゲイン達のパーティー【銀の衣】が解散する事になった事件であり、マーサが冒険者として人生で一番悔やんでいる事件。
「もう、あんな事二度と合っちゃダメなのよ」
「…マーサ」
かつて賑やかだった森から何もかもを奪い、文字通りの“静の森”にした魔物、そしてその事件の事を思い出すのだった。
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