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隣国エテルカールトン
対抗策
しおりを挟む私もアークさんに言われてお供えの品は予め二つづつ用意していた。
それはあの教会にいたクレーマーみたいに納得しない人達への対応のため、物ならばその現物を、飲み物、食べ物ならそのレシピを見本として納めていく決まりになっているからだ。
ダルマさんの話によると、教会の者はその納められた物を基によく調べて、それよりもより良い物、精巧な物を作って製作者として成り代わり、神の権能を利用して欲しい時に欲しい物を盗む、と言う悪どい事をしているのだと言う。
そして、そのグウジという人はその権能を戦争などにも利用していて、時には他国からお金で請け負うっている事もあるのだとか。
「逆らったせいで滅んだ国もあるだよ~。僕の友達の街は対抗しようと武器を持ったのだよ~。でも、作っても盗まれて、作っても盗まれたんだよ…。皆んなガリガリだったのだよ~。赤ちゃんにミルクもあげれないって言ってたんだよ~。僕たちはグウジに取られない料理作ってただよ」
食べ物まで奪うなんて…。
どうしてそのグウジという人はそんな事酷い事が出来るのだろう。
ウンディーネはこのお供えのシステムを『そんなに精巧なものじゃない』って言った。それに私が話した精霊さん達もこれが悪い事だとはとても思っているようには見えなかった。
ただ、そのグウジって人に利用されてるだけなんだ。
「…でも、それならどうして教会がそんな事をしてるのに問題にならないの?」
「このポンジャーネ地方では昔から作った物や食べ物、飲み物などが忽然と消えて無くなる時があるだよ~。それを昔から『妖精のイタズラ』と呼んで良い事の前触れだと言い伝えられてきたのだよ~」
「その『妖精のイタズラ』が教会の仕業ってことだな」
「僕たちはそうだと思っているのだよ~」
「教会の奴ら、その『美酒』もそうだが、リザの作った物より良い物を作る自信が無かったんだろうな」
「…どうしてそうなるの?」
「初めから違和感はあったんだ。でも、今のダルマさんの話でやっとその違和感の正体が分かったよ。あの、出入り口で待ち伏せしていた少年…」
「え?」
「彼、リザさんの魔法鞄とアクセサリーを見て驚かなかったんだよ」
うん、確かに?言われてみれば、そうだったかもしれないけど。
「彼の言うアクセサリーが認められない理由はまだ理解できたが、魔法鞄の理由で持ち出したのが指輪なのも違和感があった」
「?」
「私が彼なら、過去に同じ物がお供えされた事があると嘘を付く。その方がバレないからね」
「確かに…そうだね」
「恐らく、彼は鞄がお供えされるのを見ていた。見ていたのを口止めでもされてたんじゃないかな?」
フィオさんが言うことは確かに一理ある。
アクセサリーがお供え出来なかったのはまた違う理由だけど、鞄の件はきっと教会の仕業で確定だ。
「リザ。どうかな?反撃はハンバーグから始めてみるって言うのは」
「ハンバーグ…そうね!ハンバーグからはじめよう!ね!ダルマさん!」
「ぼくもなのだよ~?きちんと説明するのだよ~」
「私、この店のメニュー表にある全部の料理、この店よりも美味しく作れる自信があるの。グウジが成り代わってるの私たちで体現して、妖精の仕業じゃないってバラすっていうのはどうかな?」
「はいなのだよ~!そうするのだよ~!ありがとなのだよ~」
ダルマさんの覚悟には本当に尊敬する。両親の大切なものを奪われて、大切な場所も奪われて、散々傷つけられたのに、それでもまだ誰かの為にこんなに頑張れる人がこのままなのは絶対に駄目だよ。
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