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隣国エテルカールトン
お供え再び
しおりを挟む「また来たのか?」
「…」
「今日は何をお供えするんだ?また鞄とかじゃないよな?」
「…」
「なん、なんだよ」
この青年とは喋らない。
それがイライラしない1番の方法。
私はこれ以上の詮索は無用だと、軽蔑の色も隠さないで青年に見えるように無言で片手にロールキャベツをもう片方には金貨を持って見せる。
青年が戸惑っている隙に、彼の手元目がけてポトリと金貨だけ落として、直ぐに立ち去る。
「お、おい!」
「なにか?」
「あ、いや…」
「嫌われたな」
「ドンマイにゃ」
「嫌い、当然」
「ふっ」
「わ、笑うな!」
入り口では一悶着がありながらも特に問題もなく境内に入場する事が出来た。これもロールキャベツ効果なのだろうか。
少しドキドキしてただけに肩透かしを食らった気分だ。だけど、ほんのりと金獅子の皆んなが周りを警戒しているような感じがして、私ももう一度気を引き締める。
「お、置きます」
「大丈夫だよ」
「う、うん」
フィオさんに背中を押されて、私はロールキャベツの皿の下に隠れる様に指輪をそっと置く。
ウンディーネに協力して貰って、効果もりもりの指輪だ。
勿論、一般向けに作った魔法鞄も素材を変えて内容量を底上げした物に更に手を加えて、見た目にも少し拘って、刺繍や装飾を施した。
空いた時間で少しずつ進めようと持ってきていた白百合の皆さんに注文頂いたオーダーメイド品の素材やその他諸々色んな素材を持ってきていて本当に良かった。
…昨日の夜は緊張していたのか、何だが目が冴えてしまって、注文品の制作がかなり捗ってしまった事は皆んなには秘密だ。
「…やっぱりダメ、みたい…」
お皿の上からスープごと見事なほど綺麗に消えたロールキャベツ。しかし、その皿の下に残る自信作の指輪。
「おめでとうございます。こちらの品は神に認められました。付きましてはレシピの提出後、認定メダルを発行致します」
「は、はい」
矢継ぎ早に説明する巫女さんが何かを言っていたのに全く耳に入ってこない。
「こっちは俺たちに任せておけ」
「は、はい」
アークさん達が巫女さんについて行くのを見送って私はただ茫然とするばかりだった。
「…精霊様はどう思われますか?」
『…仕方ない。我は精霊の中でも最も高貴な存在。こんな小さきもの達と話す事などあり得ないことだが…』
そう言うとウンディーネの半透明の液体状の体の中でキラキラとした粒子状の何かが一箇所に集まっていき、それが小さな塊となるとウンディーネは私に手を出す様に言い、そのまま差し出した私の手のひらの上にポロリとその塊が落ちる。
「これは…」
『お前達が魔法石と呼ぶものだ。我が作った故、そんじゃそこらの物とはわけが違うぞ』
素人の私が見ても分かるくらい不思議なオーラが炎の様にメラメラと漂っている。
『ふふふ、また来てるよ』
『本当だ、また来てるよ』
そして、その魔法石を受け取った途端に耳を澄まさないと分からないくらいに小さな声だけど、どこからとも無く出会った頃のウンディーネの様な白いモヤから不思議な声が聞こえてくる。
『また来たの?でも、ダメだよ』
『うん、ダメだよ』
『もっと綺麗なのあるからね』
『あれはもっと綺麗だった』
私が作った物じゃない?
精霊達が綺麗だと絶賛される様なアクセサリーが存在していたって事?
『綺麗であったかいんだよ』
『そう、あったかいの!』
『とってもあったかいよ』
アクセサリーで、綺麗なのに、あったかい?
『それに優しいんだ』
『うん、凄く優しい』
『優しいよね』
妖精達が何故そう感じるのかは分からないけど、これだけは間違いない。私が作ったアクセサリーよりも綺麗であったかくて、優しい…そんなアクセサリーを作る人がいるってことだ。
「リザ?」
「…今日は一旦帰ります」
「うん、そうしようか」
「……うん」
フィオさんが気を遣ってくれてるのに上手く返せない。それだけじゃない。何だがその優しさが今は凄く苦しかった。
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