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隣国エテルカールトン
黒幕
しおりを挟む「調子はどうだ、レイナード」
「予定通り。全ては順調に進んでおります」
私の今の状況はかなり良くない。
息子はあの建国祭の件以来、当然だが他国からの評価は著しく下がり、何とか評価を上げようと思ったが、相変わらずの無能で将来は見込めない。
それも、ただの馬鹿なら貴族たちには操りやすい無能王子としての姿を見せて対面構図を演出しながら、その裏から私が操るという完璧な構図が出来ていたはずだった。
だが、あれば馬鹿を通り越した無能だった。
この世界は何もかもが自分の望むままに動くと思っている。だから、自分の理解の範囲から外れたものは見えない、いや、見えないふりをする。そして、見えていないから指摘を受けても自分のせいではないと思い込む。
物が分からないのではない、分かろうとしない。学習しようとしない。己の無能を理解していないから、どんな酷い評価を受けているのかも理解できない。これではもう救い用がない。
お陰で娘ーアルベルティーナに王妃まで丸め込まれ、ミカエルにしてやられる始末。
このままでは私の国が奴らに乗っ取られてしまう。
だが、このまま手を拱いているつもりはない。
次の作戦は必ず成功するだろう。
その為の準備はもうほぼ整った。
「奴らを警戒してお前をエテルカールトンへ送っていなければ、今頃私の地位は盤石のものとなっていただろう。それは悔やまれてならないが、寧ろそのお陰でこの作戦が上手くいくというもの。何も心配する事はない。そうだろう?」
「はい、陛下」
「見せてくれて」
レイナードによって持ち込まれたのは何処にでもありそうな、しかし作りはとても丁寧な大量の革の鞄。
だが、これが此度のダンジョン攻略、引いてはモンスターハウス攻略に一役買っていると言う。
「防具類は今とある冒険者にこちらの名は伏せて依頼を出しております。時期にでも手に入るかと」
「ふん、もしかしたらこちらの作戦の方が先になるかもしれないなぁ?そうなれば防具など無くとも問題ない」
「出来るだけ早く進めます」
「あぁ、頼んだぞ」
…阿呆どもめ。自分達は逃げたつもりでいるようだが、それが己の首を縛りに行く事になるとはつゆ程も思っていないのだろうな…!
まさに滑稽!それで私の気も少しは晴れると言うもの。
「…しかし、良くあの男を動かせたな。アイツは警戒心が強い。金だけで簡単に動くとは思えんがな」
「それはとても簡単な事です。警戒心が強いのならそれを利用するまで。あの男は常に元国王一派を恐れております。その情報をチラつかせて自らやる様に誘導したのですよ」
「ハハハ!全くお前は優秀な奴だ!だか、まだ足りない。これではまだまだ足りないのだ!」
まずは冒険者共がこれ以上ダンジョン攻略を進めて勢い付くのを止める。そして、この魔道具を使って我々が攻略してやるのだ。
だが、それだけでは私の気が済まない。
奴らの大切なものを奪い取り、更なる絶望を与える!そして奴らは涙ながらに地を這いつくばり、己の愚かさを悔いて私にこう懇願するのだ。
———助けてください お願いします
と!
アイツらはそれはそれは必死に私に命乞いをする事だろう。私は奴らのその姿を見るまでは決してこの怒りを収めることは出来ないし、私の気が晴れることも決してないだろう。
「おい、レイナード。例の“アレ”の手配も終わったんだろうな?」
「はい、陛下。…此方でございます」
「こ、これが…あの…!…実験も済んだんだろうな?」
「もちろんで御座います」
「…ふ、ふふふ、ふはははは!これさえ有れば…これさえッ!……あー、実に楽しみ過ぎて今夜は眠れなさそうだ…。目を閉じれば瞼の裏にアイツらのツラが醜く歪んで行く様が目に浮かんでくるからなぁ…!」
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