異世界で趣味(ハンドメイド)のお店を開きます!

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隣国エテルカールトン

聖都(4)

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 通された場所には外からは想像もつかないほど、人が沢山いた。
 いるのはお供え物をしに来た人だけじゃなくて、さっきも見かけた袴姿の黒髪黒目の人、それからそのお手伝いをしているのだろうか、子供達が沢山走り回っている。
 思ったよりも騒がしい場所だった。

 中央には何故か光の加減で顔が見えない…多分、仏様の様な像が聳え立っている。
 その像の足元には十箇所ぐらい物を置けそうな祭壇の様なところがあって、皆んなそこに持ち込んだ品を置いて良く良くお祈りをしている。

「どうしてこれが認められないんだ!」

「それは、もう既に似た物が存在していると言うことですね」

「こんな俺は画期的な物見たことないぞ!」

「手元に残ったと言うことは神は既にそれは存在していると示されたとしか私からは言えません」

「主様、主様!」

「見つかりましたか?」

「ふん、あるわけねぇよ!」

「こちらです!」

「なっ…!?」

 更に、袴姿の…とりあえず巫女さんと呼ぼうかな。巫女さん達はクレーム対応の様なことを懸命にこなしている様だった。

「今では日に認められる数は1件あれば良い方らしい」

 1日一件と言うことはその他の人はほとんど金貨1枚を失ってしまったと言うこと。だから、人によってはこうして威圧的にクレームをつける人も出てくるのだろう。そんなのたまったものじゃない。
 入り口で篩にかけていたのはそう言うことなのだろう。

「やってみます」

 空いた祭壇に進み出て、まずは鞄を置く。
 …皆んなお祈りしてるし、私もしておくか…。

「…?」

 どうやら鞄はぴくりとも動かず、そのままの位置に存在している。

「許可されなかったってことですか?」

「…そのようだな」

「そうですか…」

 残念、というよりも悲しいという気持ちが強い気がする。だって、許可されなかったと言うことは同じ物を作った人が存在している、と言う訳で。
 この場所には先人たちの痕跡を確かに感じるけど
、まるで私が生地から素材まで選んで、デザインして、心を込めて作った物が偽物だと言われているような気がした。

「…結構自信あったんですよ、私」

「気を取り直して!アクセサリーもやってみろ!な!」

「そうにゃ!確かに《収納》の指輪があるから不思議ではないにゃ!」

「…はい」

 お願い…。今度こそは認められて欲しい。
 これがダメだったら私のアイデンティティが失われるのに等しい。

「…やっぱり、ダメみたいですね」

「仕方がないにゃ」

「大丈夫、問題ない」

 アークさんにここに連れてこられたってことは確実にお供えが出来る、と皆んなが思ってくれているからだと私は心の何処かでそう思っていた。だから、お供えが出来ないなんて事考えてもいなかったんだ。

「…なぁ~」

「大丈夫だ。仕方がない!そう落ち込むな」

「…はい」

『お前はあほうか』

「…」

『この儀式、そんな精巧な物ではないぞ』

「…」

『何を悩んでおるのだ』

「…」

 ウンディーネが何か騒いでいる言葉は聞こえているが今は頭に入ってこない。
 今は何がいけなかったのか、何が駄目なのか、このモヤモヤはなんなのか、そっちに思考を巡らしたいから他を気遣えるような余裕もない。

 あの人が言うようにアクセサリー全般がダメなのか、《付与》されていれば指輪も鞄も同じ?
 でも、初めて鞄を作った時皆んな言ってたはず。アクセサリーみたいに宝石などに《付与》するのが普通で鞄のように宝石以外に《付与》するのは概念そのものが無かったって。

 …ってことはみんなが知らなかっただけで、他国には私と同じように宝石以外に《付与》をした人がいるってこと?
 確かにこの世界は通信技術が乏しい。
 でも、私が見た限りでは冒険者達がその代わりを勤めているのではと思うくらいに彼らはギルドを通して沢山の情報を共有している。
 そんな彼らが知らないと言うことは、その更に昔の話って事?

 考えれば考えるほど分からない。

「ほらな、ちびすけ。だから忠告してやったのに。金は戻ってこねぇぞ」

「…分かってますけど」

「強がっちゃって~」

「…イラッ」

 こういうのは無視。それに限る。
 私だんだん、いい性格してきたね…?
 扉の前で並んでいる人達を篩にかけていた男が持ち場が変わったのか、境内の出入り口に立っていて、私の表情を見てダメだったという事を読み取ったのか、声をかけてきた。
 そう年は変わらないだろうにコチラを完全に馬鹿にした態度に苛立ち、私はノアを抱き抱えて完全に無視を決め込んで足早に鳥居を潜り抜けた。

「あ、いや…え?なに、こわっ…」

「お前、好みの子いじめるタイプだろ」

「なっ!ウルセェ!あんなクソチビ…!」

「それ以上喋ったらマジで口縫うにゃ」

「…あー、…す、すんませんした…」

「喋るなと言っただろ」

「…!」

 ウンディーネが耳元でピーピーうるさくて、私の後ろで何が怒っていたのかは全く見ていなかった。

「…リザ、何にも聞いてない」

「…そんなにショックだったにゃ」

 そして、考え事をしているうちにいつの間にか宿屋に戻っていた。
 皆んなはお酒を飲んでから寝ると言うので私は一人部屋へと戻った。

 
 
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