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隣国エテルカールトン
聖都(1)
しおりを挟むそれから一週間程かけて私達は聖都のまでの道のりをワイワイ、ガヤガヤしながら進んだ。
エテルカールトンは思っていたよりも素敵な国だった。と言うのも前回の旅と違って街道はしっかりと整備されいてベコボコ道は全くないし、その街道は聖騎士たちによる巡回が行われていてとても安全だし、街道沿いには小さな教会があってそこでは食品を扱う移動販売所や少し休むことができる茶屋みたいなお店があって、常に新鮮な野菜やお肉などを仕入れられたり、美味しい紅茶を飲むことも出来た。
聖教国は戒律が厳しいと聞いていたのでかなり酷い状況を想像していたが、見た感じはこうも安心安全で快適に過ごせて、馬車で腰が痛くなる事もないし、美味しいものも食べられる。何も問題はないように見えた。
だけど、聖都目前の町で初めてその教会の実情を目の当たりにする。
「今月分は金貨100枚だと通達があったはずだ!」
「し、しかし!通達があったのは3日前です!そんな簡単に集められる金額では…!」
「先日お前達が起こした騒ぎのせいで急遽街道の整備が必要になった。その費用が上乗せになっているのだ。整備費が必要だと言うことは元々分かっていただろう?」
「で、ですが…!」
「くどい!今日中に準備せよ!それが出来なければこの街は差し止めだ!」
だけど、それが出来ている理由とその言葉の意味を知って、謝った見解をしていたのだとすぐに考えを正す事になった。
「差し止めって…?」
「町が聖教国の管理下に入る事になる。自治権も取り上げになり……この街に住む彼らは国に借金したと言う扱いになり借金奴隷にさせられる」
「え…?」
そんないきなり奴隷に?そんな事が許されるの?
「リザ、見ない方がいい」
「我々はこの国の人間じゃない。どうしてやる事もできないんだ」
「そんな…どうしてこんな事が…」
「この国は絶対神様を崇める教会が起こした国なんだが、もともと違う国だった」
かつてここはカールトンという国だったらしい。そのカールトンだった頃も絶対神エテルを崇めていて、それを国教としていたのだとか。
そしてその頃から街道は神の通る道として聖騎士たちが今のように街道を作り、守護していた。お陰で私が感じていたように、この世界で一番安全で快適な環境の街道が生まれた。
それが国民からの強い支持を集める。
街道が整備され、安全になった事で人や物の移動がより安全に、そして簡単に行えるようになり、安全な国だと認められる事で外からも人が流入するようになり、貿易も順調に増えていった。
お陰でとても豊かな国へと発展していき、そして、ゆっくりと、しかし着実に国よりも教会が力をつけていくようになる。
そして、傲慢を極めた貴族達を痺れを切らした国民達を含めた教会主導の大きなクーデターが起こり、そしてその後、そのまま教会が国を管理するようになって、神の名をもらいエテルカールトンと名を変え聖教国となったのだ。
しかし、国民達は理解していなかったのだ。
教会がその街道を守るために必要な資金や物資がどこから提供されていたのかを。
国民達から貴族達が巻き上げたお金が国に納められ、そして国費から国教である教会に資金提供されていた。だから、国民は教会に行けば無料で怪我や病気を治してもらえたし、街道は常に安全だったのだ。
だから、頭が教会にすり替わろうとも巻き上げられていたお金が減る事はなく。
むしろ教会は街道の整備以外の事には注力せず、終いには巻き上げたお金にその街道の整備費を上乗せするようになったのだ。
「…こんな事思うのは酷いかもしれませんが、私は同情はしますが自業自得に思ってしまいます」
「…そうだな」
国をより良くするために必要だと思って行動したのかもしれない。
だけど、私はこんなに領主として頑張っているアークさんがダンジョンにモンスターハウスが発生した時になんて言われていたのか身近で聞いた。
あれは結局国王の思惑だったのに、自分達を必死に守ってくれてた人を悪く言って、真実が明るみに出てからも別に謝ったりはしなかった。
噂に踊らされて、間違った事をする。
私はそんな自分の無知を棚に上げて、知らなかったで済まされると思っている人が本当に許せない。
それは自分もしてしまっていた事があるから、自分を戒める意味でも許してはいけないと思っている。
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