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商会開業
訪問者
しおりを挟む晴天の青空。綺麗に刈り揃えられた芝生、その中心にぽつりと真っ白なガーデンテーブルとチェアーが置かれている。
テーブルには絶対にお高いであろう真っ白で美しい総レースのテーブルクロス。
真っ白な空間によく映える晴天の空よりも青い花柄の陶磁器のティーセット。そんな美しいティーセットに負けない侍女の美しい所作で入れられる美しい琥珀色。
色とりどりのお菓子が周りを彩る。
それら全ての御膳立てを一身に受けてながらも机に両肘を付いて当たり前のように享受出来る女性に一応招待を受けてここに居るのだけれども。
この完全にお貴族様な世界に場違いな存在である私。そして目の前の女性は私をまるで珍動物でも見つけたかのように食い入るように見つめている。
「それで貴方はどうなの?」
「いや…私は…」
絶対に誤魔化すことなど出来ない、そう思わせるような視線にただ言葉を詰まらせることしか私には出来ない。
一体全体どうして私の目の前に王女様…いや、王太子様がいらっしゃるのでしょうか…?
数時間前までの私はいつも通りにマリーちゃんと楽しい朝食の時間を過ごていたはず。
その後、フランさんから冒険者ギルドのお偉いさんであるギルさんが呼んでいたと聞いて、マリーちゃんとギルドに足を運んだ。
その道中で王女様が立太子されたと言う噂話しを聞いたんだった。
「おめでとうございます…?」
「ふふふ、ありがとう」
王女様が立太子した、という噂にはもう一つ王女様が婚約する、という噂がセットで出回っていたので、私は思わず祝福の言葉をかける。
言った後に全ての結婚が必ずしも幸せであるとは限らないということを身を持って体験している私はそれに気付いて王女様の顔色を伺う。
「此処に来るまでの間に噂を聞きまして…」
「これも全て貴方のお陰よ」
「い、いえ…!私はただ防具をお貸ししただけで…」
「防具だけじゃないわ。一番邪魔だったオクタヴィアンを片付けてくれたのも貴方だし」
オクタヴィアン、と言えば品評会の時のあの貴族の事か。それについては本当に偶然と言うか成り行きというか…でも、王女様にとってはそういう事ではないのだろう。
でも、何故その事を王女様が…?
「あ、え…と、その…」
「あら、ごめんなさいね。…自分の事を知らない間に調べ上げられてるって本当、気持ち悪いわよね」
美しい顔を目一杯歪ませて、悲しげに微笑む王女様。貴族らしい所作と口調が本当に年下なのだろうか、と思うくらい大人びて見えるが、多分これは彼女の本質ではないと思う。
先日初めて会った時と今は明らかに纏っている雰囲気が違っていて…あの時はもう少し年相応に見えていた。
「いえ、ここまで来たら一層清々しいくらいです」
「そう言ってくれると助かるわ」
ふわっと笑ってみせる表情にほんのりと子供っぽさが出ていて安心する。
多分、こっちが本当の彼女。ただ、それを出すことをもう彼女は許されない立場になったのだろう。直ぐに表情を引き締めてしまう。
それから王女様は私にも何があったのかそれを知る権利がある、とオーブランドを出てから今日に至るまでのことの経緯を全て話してくれた。
以前より王女様はこの国の行く先を案じて王太子となる為に様々な努力と準備をしていた。
今も昔も変わらず、王家と近しい関係の者達は他と比べると火を見るより明らかに様々な点で優遇されている。
それは同時に彼らも王に齎す利益が有るということ。例えばオクタヴィアン家が作るエールを王宮御用達にしたり、品評会で賞を授けたりすることで、王は金銭や物品を貰っていたのだ。
これが王がダンジョン都市を欲しがった最大の理由である。
「自分に近い貴族にダンジョン都市を与えて、その恩恵にダンジョン品をせしめようとしていたのですね」
「そうよ。しかも、それを世の為に使うわけでもなく…。本当に暇を持て余すと人は碌でもないことを考えつくものね」
だから、王女様達は王と関係のある貴族達の罪を洗い出し、証拠を集め、宰相と交渉の席に着いた。
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