異世界で趣味(ハンドメイド)のお店を開きます!

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商会開業

敵の敵は

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「殿下、宜しいですね?」

「…こうするしか……仕方がないのよ」

 自分に言い聞かせるようにそう呟いたメルフィオーネから視線を外して真っ直ぐ前だけを見て歩く。

 全部の準備を整えた。
 私ももう覚悟を決めるしかない。

 門のように聳える大きな扉の前には遠くからでも誰だかハッキリと分かるほどに見慣れた姿がある。

「王妃殿下、王女殿下。ご無沙汰しております」

「ミカエラ、堅苦しいのはやめましょう」

「はい、叔母さま」

「久しぶりですね。…家紋のために…頼みましたよ」

「はい、お任せ下さいませ」

 膝をついて最上級の敬意を表する男を上から見下ろす。
 艶のある柔らかな毛が動作に合わせてふわふわと動く。私はそれを恨めしそうに見る。

「貴方は本当に相変わらずね」

「…?」

 何を言われているか彼には何もかも手を取るように分かっているのに分からないフリをしながら首を傾げる仕草はあざといとしか言いようがない。
 ただ、そう私に思われているのも彼の計算の内なのだから本当にやるせない。

「やっと君の夢が叶うね」

「…これからよ」

「大丈夫だよ」

 コソコソと耳元で囁く声に少しだけ反論しながらも彼の言う通りもう少しで長年の夢が叶うのだと開きかけの扉の奥に堂々と座っている男を見据える。

「わざわざ謁見を申し込むと言うことはそれなりの話題なのだろうなぁ。姫よ」

「はい、勿論で御座います。陛下」

 “姫”と呼んだのにも関わらず“陛下”と返した私に引っかかったのかピクリと眉毛を顰める。
 
「…メルフィオーネとミカエラも一緒とはどう言うしだいか聞こうか」

「はい。わたくしとミカエラの婚約をお認め頂きたく参上致しました」

「婚約か…」

 王も謁見の間に3人で入ってきた時点でおおよその予測はしていたであろうが、一番頭になかった結果に確認するように繰り返す。

「王妃も納得しているのか?」

「はい。この二人に親交があったのは私も知らなかったのですが、思いあっている二人です。家柄にはなんの問題もありませんし協力することにしたのですわ」

「ふむ…」

 思っていた通り王が渋い顔をしながら唸るようなかなり低い声を出す。

 王がこの婚約を渋るのは予想通りだ。
 無能な第一王子アレクシオスのお陰で他国の王族の血を引く娘である私は王の地位を脅かす存在となった。
 そこに追い討ちをかけるように我が国の誇る四大侯爵家のうちの一つであるロブソン家。そこの末の息子との婚約は王の地位だけではなく、ロブソン家と他の侯爵三家とのパワーバランスを崩してしまう。
 ただでさえ王妃の生家として近年強い発言力を持ち、力を付けてきているのにアレクシオスと私、どちらが王位を継承してもロブソン家と深い関わりができるこの状況は王としてはあまり好ましくない。

 勿論、それだけではないのだが…。

「其方はどう思う?」

 どうするか、と王は顎髭をつまみながら考える素振りをしながら視線だけ近くに立っている宰相へと向ける。

「王妃殿下も納得されておりますし、家柄にも人選的にも人格的にも全く問題なく、何よりご本人様たちが深く想いあっていると言うのならば、余程の理由でもない限りは認めない訳にはいかないかと存じます」

「…そうか」

 宰相なら侯爵家同士のパワーバランスを重視するはずと思っていたのだろう。質問した時に返ってくると予想していた答えと違っていて拍子抜けした表情をする。
 そして、そのまま認める訳にいかない王は宰相に言ってほしかった答えを自ら言葉にする。

「しかし、ロブソン家か…。確かにこの貴族社会でお互い思い合っての結婚はそうそうにない。出来るならば祝福してやりたいが、四大侯爵家のパワーバランスを考えると直ぐには答えを出せない問題なのだ。分かるな、アルベル」

「はい、陛下」

 私のしっかりとした返事に頷き返す王はこれでこの話しを終わらせようと数回手を打った。






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