異世界で趣味(ハンドメイド)のお店を開きます!

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「なんだか急に監視が強くなったわね」

「そろそろ動き出す頃かしら…?」

「少し揺さぶっておく?」

「それも良いかもしれないわね」

 【白き百合】の皆さんは私に監視がついているなんて言うけども見られている感じもしないし、私には何も感じない。
 いや、そもそも見られているのは本当に私?【白き百合】の皆さんの可能性もあるのでは?

 そんな質問を何度か繰り返し、私は諦めたのだった。

「何処から見てるのでしょう?」

「今は全部で3人。一人は向かえの宿屋の屋上から、もう一人は左側三軒先の民家から、最後の一人はこの部屋の一個下の階、右側4個隣ね」

「え!この宿屋にいるんですか!?」

「気付かれてないとでも思ってるのかしら。私達を舐め過ぎじゃない?」

ーーーコンコンコンッ

 突然、聞こえてきたノック音に【白き百合】の皆さんが身体を強ばらせる。
 視線を合わせて頷き合い、ヘルマさんは軽く咳払いをしてから問いかける。

「…どちら様かしら」

「御免なさいね。立場上こうやってしか会えないから、無礼なのは分かっていてよ」

「立場上ですって?それほど高貴なお方が我々のような平民にどんなご用なのかしら」

 散々監視されていた相手の正体が分からない以上警戒を解くことは出来ない。しかも、警戒を怠ったわけじゃないのにドアの目の前まで来られても気付かなかった。
 どんな手を使ったのだろうか。
 自分で“立場上”とか言うのだから相手は貴族なのだろう。正直相手にしたくない相手だ。

「そうですわね。用件を先にお伝えするべきでしたわね。失礼しました」

 しかし、相手は少し嫌味っぽく言った言葉を鼻で笑うことも嘲笑うこともなく真摯に受け取る。

「お願いがあって参りました」

「お願い、ねぇ?」

「この国を守る為に其方にいるお嬢さんにご協力頂きたい。報酬は勿論弾みますし、欲しいものが有ればなんだって仰って頂いて構わないわ」

「何だって、ですって。流石貴族様。なかなかの大盤振る舞いだこと」

「と、とりあえず、入って貰いませんか…?」

「「「「……そうね」」」」

「感謝致しますわ」

 貴族だと言うのに彼女はその立場をひけらかしたり、此方を見下したり、暴力も罵倒も馬鹿にだってしない。

 これまで出会ってきた貴族がまともでは無かっただけでちゃんとした貴族もいるのだとすこし安心した。

「初めまして、わたくしはアルベルティーナ・ガルシア・エンデワーズで御座います。こっちは侍女のラルダですわ」

「ラルダです」

「…エンデワーズって」

「王族…ですよね…」

「王族!?」

 ふふふ、と人形のような可愛らしい顔でお上品に笑いながらも隙のない雰囲気に気圧される。

「我々に王族の方が何のご用でしょうか…?」

「…リザ様、恥を偲んでお願い申し上げます」

「え…エッ!?」

 さっきまで余裕たっぷりの笑顔を見せていたとは思えないほどに深々と頭を下げる少女。
 この顔を私は見たことがある。
 そう、王都での品評会の会場の一番高い場所に彼女は座っていた。

「どうか、この王国をお助け頂けませんでしょうか」

「あ、頭を上げて下さい!王女様!」

「…お見苦しいかと存じますが、どうか…どうか…わたくしの願いをお聞き届け頂けませんでしょうか!」

 何故王女である彼女がこんなにも必死になって頭を下げているのか、と戸惑いを隠せない。

「リザも何の事情も知らないで頷く事は出来ないだろ。取り敢えず、話しだけは聞くって事でどう?」

「は、はい」

「ありがとうございます」

 暗い表情を敢えて隠す事なく例を言う姿は計算のようにも見えるが、余裕がないだけにも見える。
 どれが本当の彼女なのか。王女としての立場がそうさせてしまうのか。

「これからお話しする事は他言無用でお願い申し上げます」

「…まぁ、それくらいは守るよ」

「ありがとうございます」

 王女様は深いため息のような深呼吸をしてからゆっくりと話し始めた。











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