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商会開業
監視
しおりを挟む3日間寝る間も惜しんでとにかく革を縫い続けた私は周りがドッカンバッタンの大騒音にも関わらず泥のように眠り続けた。
「リザ、そろそろ夕食よ?」
「ん…んー」
「気持ちよく寝ている事悪いけど、食事も大切だからね」
「ふぁ~い」
優しい声で私を起こしてくれるのは、ヘルマさん。
白に近い金髪でアメジストの瞳、目鼻立ちがハッキリしているのに主張は強くなく、涼しげで優しい。
一言で言えば女神様のように美しい人。
ユシテルさんともまた違った美しさだ。
「ご飯を食べたらまた寝なさい」
「はい」
そして何より優しい。
…そして少し…うん、少しだけ過保護な気がある。
「貴方には本当に感謝しているの」
「ヘルマさん、それは何度も聞きましたよ」
「絶対に守ってあげるからね」
「それもいっぱい聞きましたよ」
「言ったでしょ?なんか変なのが貴方を見張ってるって」
「それ、本当に私ですか…??」
ーー
ーーー
ーーーー
ーーーーー
三日前。
私はルーペリオさんと防具を作り始めた。初めは簡単な革鎧から初めてみる。
お陰でルーペリオさんが言っていた防具は鍛治師にしか作れないと言う理由は直ぐに分かった。
…《変換》《変質》
これは“防具”が持つ能力のようなものだ。
素材が《変換》されて“防具”になり、“防具”になった物は《変質》を得る。
これが謂わば“防具”に《付与》された効果なのだろう。
《変質》を得た“防具”にはサイズがない。“防具”が使用者の身体に合うように合わせてくれるからだ。
「…それなら、私が《変換》と《変質》を《付与》出来たら“防具”になるのでは?」
「確かに一理ありますね。やってみましょう」
これまでの“防具”はこれら二つの《付与》を行うことにより、その他の効果を《付与》することが出来なかったのだろう、と私は考えた。
でも、3つ目の《付与》を行える私ならば、二つの《付与》の他にもう一つ効果をつけられるはず。
そうして作られたのが試作品第一号である、『革のベスト』だった。
アクセサリーを作った時に得た知識も活かせるように魔法石の付け替えも備えておいた。
ベストが本当に“防具”になっているのか、従来品よりも良い性能や効果を持っているのか、きちんと効果を発揮できるのか、を確かめるために私たちは森林ダンジョンへと赴いた。
検証方法はルーペリオさんがベストを着て、下級の魔物の攻撃を受けてみる、という何ともシンプルなもの。
ルーペリオさん曰く『革のベスト』はきちんと“防具”として認められているが、問題の《変換》と《変質》がなく、その上で《防御力上昇・中》と《回復・小》、《自動修復》が《付与》されていて、身体にはピッタリらしい。
私の作った防具は不思議な事に《変換》と《変質》は認められないが、その効果はあるのだ。
ただ、それを実際に使ってみるまでは如何しても信じられない、と言うのが本心のようだ。
「どうでしょうか?」
「…何も言うことがありません」
「そうですか…」
「はい、こんな素晴らしい体験を出来るとは…長生きしてみるものです」
あ、あぁ。申し分ない、って意味の方だったみたい。良かった。
「この『革のベスト』は通常の“防具”の鉄…いえ、鋼とも遜色ありません」
「鋼の上となるとミスリル…ですよね。流石に鉱石を扱うのは難しいです」
「となると、ベストではなく鎧にすること。そして、上昇系の《付与》を大にすること。この二つが鍵となりますね」
「でも、それなら初めから鋼のものを着た方が良さそうですね」
「いえ、それは違いますよ。鋼鎧はとても重たく重戦士や重騎士などタンク役の装備といえます。魔法金属ともなれば別ですが、なかなか手に入る代物ではありませんので現段階では鋼鎧が一番良い装備と言えます」
「では、鋼鎧ほどの効果があって軽いなら!」
「需要は大きいでしょう」
「ミスリルを越えられるようにやってみましょう!」
そして、私の凝り性が大いに発揮された。
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