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商会開業

深海ダンジョン(4)

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 声が出ない。身体も動かない。

「うむ、何とつまらん」

「「「「…」」」」

 何かしらの幻覚?のような物を見ていて、取り敢えず私たちはノアが居なかったら、死にそうだった、と言うことだけはすぐに理解できた。

「さっきはボトボトと簡単に落ちてドロドロに溶けていったのに」

「「「「…」」」」

 不吉な言葉を平然と…いや、むしろ面白いことのように言う白い影。取り敢えず人間ではないことだけは確かだ。
 何かしたい気持ちはやまやまどけど、身体も動かないし、声も出ないのだから、ただ黙って白い影の声を聞いている他にどうする事も出来ない。

「私のお気に入りの根城にこんな廃棄物を置いていきおって、普通に死ぬると思うなよ」

 さっきまで感じていた肌を焼くような熱を思い出して、私は思わず身震いする。

 状況がうまく飲み込めない。
 階段を降りて直ぐに死体の山があって、私たちは供養の為に燃やした。
 そしたら…。

 私は目を必死に動かして薄暗い中で必死に探す。

 ーーーー居た!

 少しグッタリとした様子だけど、ぬいぐるみをしっかりと抱きしめているマリーちゃんの姿。
 この事をカルロスさん達もに伝えたいけど、全く声が出ない。

 ノア!ノア!
 マリーちゃんがあそこにいるの!
 安全な場所に移動させて!

ーーー分かった

 大丈夫。ノアとは意識が共有出来てる。
 いや、今はむしろ会話まできちんと出来てる。どうにか出来るかもしれない。

「溶かすのは失敗したし…。餌にするのも失敗したし…。後何があるか…?なぁ、どう思う?」

 不意に話しを振られた私は途端に近づいて来た白い影へと視線を上げる。
 この白い影は今ここにマリーちゃんが居ることに気づいてないかもしれない。私のせいで気付かれたらおしまいだ。

「あぁ、ごめん。言葉を縛っていたんだった」

「……喋れ、る」

「ねぇ、君はどうやって死にたい?面白い答えだったら参考にしてあげるよ」

「…どうやって…そうですね…」

 とにかく今はどうにかして時間を稼がないと。さっき辺りを見渡した限りこの白い影以外に魔物はいないみたいだし、マリーちゃんを安全なところに移したら取り敢えずは安心だ。

「病死…あっ、だめ!」

 ノアがマリーちゃんを階段の上まで引っ張っていくのが見えて安心して見上げるが、白い影は何を察したのか、ふわりと舞い上がり、階段までの距離を一瞬で詰める。

「…ふむ。お前だったのか。キャスパリーグ」

「…!」

 また声が出なくなってしまった。
 それはまるで金縛りにあったかのような感覚だけど、不思議と恐怖や不安のようなものは感じない。
 マリーちゃんの存在にカルロスさん達も気づいたようで、取り敢えずお互いにアイコンタクトをして喋られないことを確認する。

「それにしても情けない姿をしておる。全く誰なのか分からなかったぞ」

「にゃあ」

「ふむ、その首輪が原因なのか。魔力まで抑えるとはなかなかの代物のようだ」

 この白い影…?はノアと知り合いだったのかな?

「ほう、この小娘が…面白い」

「なぁ~」

「それは出来ぬ。この子供は返してやるから、この小娘は置いてけ」

「なぁー」

「どちらかだ。子供か、小娘か。どちらか一方で我慢してやる。選べ」

 私かマリーちゃんどちらかをここに置いて行けと話しているようだ。

 マリーちゃんはグッタリとした様子。こんな薄暗い魔物が出るような危険な所で一人だったんだ。精神的にも辛かっただろうし、怪我をしているのかもしれない。

 ノア、取り敢えず私を置いていくって事で良いから、みんなと一緒に地上に戻って欲しい。

 ーーーーそれは出来ない

 ノア、お願い。
 何とかしてみるから。

「…なぁ~」

「うむ、良いだろう」

「他の人間もお前の顔に免じて今回は見逃してやる」

 皆んな声が出ない代わりに目で何かを必死に訴えていたけど、動けないし、声も出ない今はこれ以外に方法はないように思う。
 それに、何だろう。
 何故か、この白い影の事は全然怖くない。むしろ何故か心地よくすら感じる。そして、この感覚に何故か覚えがある気がした。



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