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商会開業
【烈火の姫】
しおりを挟む「はぁー、もうー!何なのよ!こんな雑魚ばっかりウジャウジャとー!」
「これを雑魚と言えるのはお前だけだよ…」
「わぁーん、姉さん~助けて~」
「ジャム、こっちにおいでなさい」
「姫のことはレイに任せよう」
「おい、お前ら!ふざけんな!あ、おい!ユシテル勝手に進むな!」
ドタバタと右往左往するレイを尻目にユシテルは好き勝手に暴れ回り、他の仲間達は優雅に休憩している何とも不思議な光景。
これが彼らの日常だ。
「セーナ、次お願いね」
「はーい、姫さま」
「姉さんこれ飲んで」
「助かるわ」
木一本ない荒野の真ん中。
煉獄ダンジョンはマグマが点在しているのとお陰で温泉があるから、気温も湿度も高く、ダンジョン内は過ごしやすい場所とは言えない。
更に周りにはユシテルが言った通りウジャウジャと魔物の群れが犇めき合っていて、そんな中でゆっくりと腰を落ち着けながら喉を潤す彼女らは【烈火の姫】というパーティーだ。
彼ら【烈火の姫】パーティーは他のパーティーとは少し毛色の違う異色のパーティーだ。
リーダーは【烈火の姫】の名にふさわしく激しく燃えているような赤い髪を靡かせて舞姫の如く優雅に魔物を倒していくユシテル。
それを支えるのが器用に何でもこなしパーティーのバランスを取るレイフォーグ。
そして、若干ナルシストでめんどくさがりの魔法使いのマルセイユと非戦闘員の双子の姉で薬術師のセーナと弟で錬金術師ジャーシム。五人組のパーティーである。
「ユシテル、マナポーション出来たわよ~」
「ありがとう」
彼らの戦いのスタイルは絶対的な強者であるユシテルを中心に周りがサポートしていくと言うかなりシンプルなもの。
それでもAランクにまで上り詰めるのだからユシテルの強さは言うまでもない。
「これで終わりね」
「…なかなかの数だったな」
「雑魚ばかりでつまらなかったわ」
「でも、この依頼が成功したらこの魔法鞄を作った術師にアクセサリーを作らせる事をギルと約束したのよね?」
「そうよ。じゃなければこんな面倒な依頼受けなかったわよ」
疲れた、とでも言いたげにセーナの横に腰を下ろしながらユシテルは答える。
「…シュナがつけてたあのベルト…アレよりも絶対に良い物を作らせるわ」
「「「「…」」」」
負けず嫌いをそんなところでまで発揮しなくても良いのに…とパーティーメンバー全員から思われているとは知らずに対抗意識を燃やすユシテル。
「それにしても変ですね。これではまるでモンスターハウスですわ」
「そうね。50階層辺りから気配がおかしかった気がするのだけれども」
「…気がするって。ユシテル、言ったでしょ?何か魔法石の破片みたいなのが落ちてるって」
「それが何だと言うの?」
「…ここには優秀な魔法使いこの僕が魔力酔いしそうなくらい此処には魔力が溜まってる。恐らくだけど、故意にかなり強力な魔法石を壊して強制的に魔力だまりを作ってるんじゃないかな?」
「そんな話し聞いたことありませんわ」
「試したことがないから、ただの予測でしかないけど、僕みたいな優秀な魔法使いが魔力酔いを起こすほどの魔法石ってこれまでなかったんだよね」
「…これまで、ということは今はあるってことか?」
「そう。ついこないだ、【金色の獅子】が手に入れたヒュドラの魔法石なら…」
話し合いを行っていた彼らは途端に会話をやめて、息を顰めつつ一方方向に視線を合わせる。
先程からヒシヒシと感じていた何かの気配が明らかに近づいてきている。
「如何やら、休憩は終わりのようね」
「姉さんは前に出ちゃダメだよ」
「分かっているわ」
「大丈夫、俺らには姫がいるから」
「私に任せなさい!」
「…全く………来るぞ!」
緑一つない山岳地帯。
ゴツゴツとした岩肌を転がるように駆け降りてくるゴーレムの群れ。
「また雑魚ばかりなのね」
「…ユシテル」
「行くわよ、レイ!」
「…」
「如何したの?」
「あーーー!!!分かったよ、行けば良いんだろ、行けば!」
「当たり前じゃない。私の背中をアンタ以外の誰が護るのよ」
「……クソ」
「照れてますね、レイくん」
「えぇ。とっても可愛いわ、レイくん」
「あれで片想いなのが残念です、レイさん」
「うるせぇ!」
「レイ!何してるの!行くわよ!」
「あ゛ーーー!どいつもコイツも!!!!」
レイの苦労は尽きない。
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