141 / 244
商会開業
面接
しおりを挟む「リザ様、今度は何を?」
「あ、これはですね…」
私の毎日は相変わらずで、見本と言いながら本能のままに沢山のアクセサリーを作っていた。
最近はもっぱらワイヤーでパーツを作る、所謂ワイヤーアートにハマっている。
と言っても一応売り物なのでブレスレットや指輪などのアクセサリーとして使えそうな物を作っている。
「此処に石を嵌め込めば…」
「なるほど、宝石だけを付け替え、入れ替え自由という事ですね」
「そうなんです」
何せこれら魔法石は内蔵魔力を使い果たすとただの宝石となる。
私はこれからオーダーメイドでアクセサリーを作ろうと思っているが、その度に新しいアクセサリーを買い直すのは私も相手も大変だと思う。
それなら一層の事、石だけ付け替え出来れば良いのではないかとおもったのだ。これこそワイヤーの利点だと思う。
ありがたい事にこの世界の魔物が落とす魔法石に関しては大きさが一定なのでこの方法でも問題はないはず。
「…しかし、リザ様…随分沢山作られましたね…」
「あははは」
楽しくてつい…。
こんな事前もってあったなぁ。
あの時は部屋が真っ暗になって、買ってきた生地が全部なくなるまで夢中でハンカチを作り続けてしまった。
「リザ様。私は先日の求人の件で午後から商業ギルドに行って参りますが、如何なさいますか?」
「私も行きたいです!」
アクセサリーも順調に作れているし、元々売る予定だった革製品やカップラーメンも出揃って、今度こそ開店パーティーを行えそうな所まで来た。
ただ、やはりカップラーメンに関してはなかなか量産は出来なくて、作ったものは殆どロキさんが買い占めているような状態だし、前々から考えていたお酒以外の娯楽としてはやはり甘味が手っ取り早く始められそうだけど、私はアクセサリー作りで手一杯。
正直今は猫の手も借りたいくらいに人手が不足している。
「お、来たか」
「お久しぶりです」
商業ギルドに着くと、笑顔のジンクスさんが出迎えてくれた。いつも通り忙しそうではあるが、なんだか機嫌がいい。
「早速みてみるか?」
「見る?」
ジンクスさんは親指を立てて、徐に自身の後ろの方へ指を刺す。指の方向を覗いて見ると広めの部屋に数十人の人達が集まっているのが見える。
「就職希望者だ」
「全員ですか!?」
「条件が良かったからな、いつもよりも集まっているよ」
集まっている人達は年齢も性別もかなりバラバラで真剣な人もいれば、緊張して顔が強張っている人もいる。
「一応、こっちの方でも募集条件をつけていくらか篩にかけてはある」
「…私は自信ないので…ルーペリオさんにお任せして大丈夫ですか…?」
「お任せください」
流石に私に面接なんて出来るわけがない。だって私は就職さえしたことがないのだから、どういう人が望まれるのか、頑張ってくれる人なのか、信用できるのか、なにも分からない。
取り敢えずルーペリオさんに任せておけば変な事にはならないだろう。
ルーペリオさんはジンクスさんから何やら紙を受け取り、サラサラと目を通していく。
「お待たせしております。早速ですが、募集条件にあったように採用者には秘密保持の魔法契約をします。それが嫌な方、ご不満な方は此処でご退場下さい」
募集要項できちんと提示されていたからか、退場を促されても此処で出ていく人は流石にいないみたい。
「では、続けます。此方、工房主のリザ様です。女性が上司である事に嫌悪される方も此処でご退場下さい」
だけど今度は集まっていた人達が途端に騒めきだす。特に男性陣からは困惑の声が上がっている。
そして半数以上の方がゾロゾロと面接会場から出ていく出ていってしまった。
「では、続けますね」
「あ、あの…」
「はい、なんでしょうか?」
「募集要項の内容には間違いないのですよね?」
「募集人数は12名で厨房経験者と工房経験者の各6名。ただし、やる気次第では資格問わず。勿論、性別、年齢問わず。3食付き、ただし通いを基本とする。住み込み希望者は要相談。給料は一律週払いの大銀貨5枚。出来高報酬もあり。週に一回程度の休みあり、ですよ?」
「工房主が女性でそんな事が可能なのですか?」
少し顔を強ばらせながらも要項らしき物を読む青年。でも、お陰で募集内容がどんな感じだったのか分かった。
週払いの6日出勤で大銀貨5枚(5万)が高いのか安いのかも私には分からない。
ジンクスさん曰く、条件は良いって事だけど、こんな質問が来るという事は何か気になる点があるという事。
「魔法契約を行うのですから募集内容に間違いはありません」
質問した人達はそれを聞いて納得したのか、残る事にしてくれたよう。
「では、続けますよ」
そうしてルーペリオさんは一人一人にこれまでの職歴などを聞き回り、先ほどのジンクスさんから貰った紙に何やら書き込んで行く。
工房主なのにただ黙って成り行きを見ているだけの私が気になるのか、先程からチラチラと就職希望者達から視線を向けられている。
少し居心地が良くないが仕方のない事なのかもしれない。どれだけ発展した世界でも女性が男性の上に立つと言うことを受け入れられない人はいた。
私はただ隅の方で面接を見ていた。
4
お気に入りに追加
879
あなたにおすすめの小説
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした
鈴木竜一
ファンタジー
健康マニアのサラリーマン宮原優志は行きつけの健康ランドにあるサウナで汗を流している最中、勇者召喚の儀に巻き込まれて異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされた先の世界で勇者になるのかと思いきや、スキルなしの上に最底辺のステータスだったという理由で、優志は自身を召喚したポンコツ女性神官リウィルと共に城を追い出されてしまった。
しかし、実はこっそり持っていた《癒しの極意》というスキルが真の力を発揮する時、世界は大きな変革の炎に包まれる……はず。
魔王? ドラゴン? そんなことよりサウナ入ってフルーツ牛乳飲んで健康になろうぜ!
【「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」1巻発売中です! こちらもよろしく!】
※作者の他作品ですが、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」がこのたび書籍化いたします。発売は3月下旬予定。そちらもよろしくお願いします。
神によって転移すると思ったら異世界人に召喚されたので好きに生きます。
SaToo
ファンタジー
仕事帰りの満員電車に揺られていたサト。気がつくと一面が真っ白な空間に。そこで神に異世界に行く話を聞く。異世界に行く準備をしている最中突然体が光だした。そしてサトは異世界へと召喚された。神ではなく、異世界人によって。しかも召喚されたのは2人。面食いの国王はとっととサトを城から追い出した。いや、自ら望んで出て行った。そうして神から授かったチート能力を存分に発揮し、異世界では自分の好きなように暮らしていく。
サトの一言「異世界のイケメン比率高っ。」
巻き込まれたおばちゃん、召喚聖女ちゃんのお母さんになる
戌葉
ファンタジー
子育てが終わりこれからは自分の時間を楽しもうと思っていたある日、目の前で地面へと吸い込まれていく女子高生を助けようとして、自分も吸い込まれてしまった。
え?異世界?この子が聖女?
ちょっと、聖女ちゃんは普通の女の子なのよ?四六時中監視してたら聖女ちゃんの気が休まらないでしょう。部屋から出なさい!この国、いまいち信用できないわね。
でも、せっかく異世界に来たなら、新しいことに挑戦したい。まずは冒険者ね!
聖女召喚に巻き込まれたおばちゃんが、聖女ちゃんの世話を焼いたり、冒険者になってみたりする話。
理不尽に振り回される騎士様の話も。
「悪役令嬢と私の婚約破棄」と同じ世界です。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど!〜
はくまい
ファンタジー
ひょんなことから異世界へと転生した少女、江西奏は、全く知らない場所で目が覚めた。
目の前には小さなお家と、周囲には森が広がっている。
家の中には一通の手紙。そこにはこの世界を救ってほしいということが書かれていた。
この世界は十人の魔女によって支配されていて、奏は最後に召喚されたのだが、宛先に奏の名前ではなく、別の人の名前が書かれていて……。
「人違いじゃないかー!」
……奏の叫びももう神には届かない。
家の外、柵の向こう側では聞いたこともないような獣の叫ぶ声も響く世界。
戻る手だてもないまま、奏はこの家の中で使えそうなものを探していく。
植物に愛された奏の異世界新生活が、始まろうとしていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる