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商会開業
面接
しおりを挟む「リザ様、今度は何を?」
「あ、これはですね…」
私の毎日は相変わらずで、見本と言いながら本能のままに沢山のアクセサリーを作っていた。
最近はもっぱらワイヤーでパーツを作る、所謂ワイヤーアートにハマっている。
と言っても一応売り物なのでブレスレットや指輪などのアクセサリーとして使えそうな物を作っている。
「此処に石を嵌め込めば…」
「なるほど、宝石だけを付け替え、入れ替え自由という事ですね」
「そうなんです」
何せこれら魔法石は内蔵魔力を使い果たすとただの宝石となる。
私はこれからオーダーメイドでアクセサリーを作ろうと思っているが、その度に新しいアクセサリーを買い直すのは私も相手も大変だと思う。
それなら一層の事、石だけ付け替え出来れば良いのではないかとおもったのだ。これこそワイヤーの利点だと思う。
ありがたい事にこの世界の魔物が落とす魔法石に関しては大きさが一定なのでこの方法でも問題はないはず。
「…しかし、リザ様…随分沢山作られましたね…」
「あははは」
楽しくてつい…。
こんな事前もってあったなぁ。
あの時は部屋が真っ暗になって、買ってきた生地が全部なくなるまで夢中でハンカチを作り続けてしまった。
「リザ様。私は先日の求人の件で午後から商業ギルドに行って参りますが、如何なさいますか?」
「私も行きたいです!」
アクセサリーも順調に作れているし、元々売る予定だった革製品やカップラーメンも出揃って、今度こそ開店パーティーを行えそうな所まで来た。
ただ、やはりカップラーメンに関してはなかなか量産は出来なくて、作ったものは殆どロキさんが買い占めているような状態だし、前々から考えていたお酒以外の娯楽としてはやはり甘味が手っ取り早く始められそうだけど、私はアクセサリー作りで手一杯。
正直今は猫の手も借りたいくらいに人手が不足している。
「お、来たか」
「お久しぶりです」
商業ギルドに着くと、笑顔のジンクスさんが出迎えてくれた。いつも通り忙しそうではあるが、なんだか機嫌がいい。
「早速みてみるか?」
「見る?」
ジンクスさんは親指を立てて、徐に自身の後ろの方へ指を刺す。指の方向を覗いて見ると広めの部屋に数十人の人達が集まっているのが見える。
「就職希望者だ」
「全員ですか!?」
「条件が良かったからな、いつもよりも集まっているよ」
集まっている人達は年齢も性別もかなりバラバラで真剣な人もいれば、緊張して顔が強張っている人もいる。
「一応、こっちの方でも募集条件をつけていくらか篩にかけてはある」
「…私は自信ないので…ルーペリオさんにお任せして大丈夫ですか…?」
「お任せください」
流石に私に面接なんて出来るわけがない。だって私は就職さえしたことがないのだから、どういう人が望まれるのか、頑張ってくれる人なのか、信用できるのか、なにも分からない。
取り敢えずルーペリオさんに任せておけば変な事にはならないだろう。
ルーペリオさんはジンクスさんから何やら紙を受け取り、サラサラと目を通していく。
「お待たせしております。早速ですが、募集条件にあったように採用者には秘密保持の魔法契約をします。それが嫌な方、ご不満な方は此処でご退場下さい」
募集要項できちんと提示されていたからか、退場を促されても此処で出ていく人は流石にいないみたい。
「では、続けます。此方、工房主のリザ様です。女性が上司である事に嫌悪される方も此処でご退場下さい」
だけど今度は集まっていた人達が途端に騒めきだす。特に男性陣からは困惑の声が上がっている。
そして半数以上の方がゾロゾロと面接会場から出ていく出ていってしまった。
「では、続けますね」
「あ、あの…」
「はい、なんでしょうか?」
「募集要項の内容には間違いないのですよね?」
「募集人数は12名で厨房経験者と工房経験者の各6名。ただし、やる気次第では資格問わず。勿論、性別、年齢問わず。3食付き、ただし通いを基本とする。住み込み希望者は要相談。給料は一律週払いの大銀貨5枚。出来高報酬もあり。週に一回程度の休みあり、ですよ?」
「工房主が女性でそんな事が可能なのですか?」
少し顔を強ばらせながらも要項らしき物を読む青年。でも、お陰で募集内容がどんな感じだったのか分かった。
週払いの6日出勤で大銀貨5枚(5万)が高いのか安いのかも私には分からない。
ジンクスさん曰く、条件は良いって事だけど、こんな質問が来るという事は何か気になる点があるという事。
「魔法契約を行うのですから募集内容に間違いはありません」
質問した人達はそれを聞いて納得したのか、残る事にしてくれたよう。
「では、続けますよ」
そうしてルーペリオさんは一人一人にこれまでの職歴などを聞き回り、先ほどのジンクスさんから貰った紙に何やら書き込んで行く。
工房主なのにただ黙って成り行きを見ているだけの私が気になるのか、先程からチラチラと就職希望者達から視線を向けられている。
少し居心地が良くないが仕方のない事なのかもしれない。どれだけ発展した世界でも女性が男性の上に立つと言うことを受け入れられない人はいた。
私はただ隅の方で面接を見ていた。
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