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商会開業
クズ石に価値を
しおりを挟む「今日はありがとうございました」
「あ、あの…リザさん」
「凄く勉強になりました。またよろしくお願いします」
「ここは僕が…」
「お勉強代なのでここは私が払わせて頂きますね」
この時、マルクに周りから同情の視線が送られたのは言うまでもない。
それを知らない私はお会計の札を持ってスキップをしているのだった。
「申し訳ありません。リザ様は鈍感が過ぎるようで…」
「は、はい…そのようですね…」
マルクさんとの充実したお花論議を終えた私はそのままの足でマーサちゃんのお店へ向かう。
実は前々からマーサちゃんにはお願いしていたことがあって、如何やら私の求めていた通りの物が出来上がったらしい。
「リザさん、どうでしょう?」
「素晴らしいです!」
「それは良かった」
色、形、大きさ毎に木箱の中で綺麗に整理された小さな石たち。
マーサちゃんにお願いしていたのはビーズの作成だ。ビーズと言っても一から作ってもらった訳では無い。
以前ギルさんから譲って貰ったダンジョンの戦利品の数々。
中にはラーメンを作ったトロナ鉱石やシナモンなやバニラなどの香辛料、石灰や蜜蝋など様々な物があったが、一番多かったのはスピネルのような魔石というものだった。
魔石は基本的に魔物を倒し、解体すると体内から出てくる物のようで魔物の心臓のようなものらしい。
ただ、今回私が目をつけたのはそんな魔石の中でも比較的弱い魔物がドロップさせる【クズ石】と呼ばれるもの。
注目すべきはその形と大きさとだ。パールを大量に仕入れて貰った時にも思ったが、魔石には色味こそ多少のブレはあるが大きさや形が均一なのだ。
マーサちゃん曰く、基本的に魔石は魔物毎に形と大きさが決まっていて変わることはない。色の違いは個体のレベル差によるものなのだとか。
ゴブリンやスライムのように低階層のとても弱い魔物からも【クズ石】は必ず取れるのでとても安いわけなのだ。
お陰で丸、四角、三角、細長い物、平たい物、雫型、星形、本当に様々な形の石が簡単に手に入る。
しかも、とても格安で。
ただ、そこからが問題だった。
クズ石の入手は出来たがビーズのように穴を開けないことには使えない。
幾らか桐やアイスピックのような物で穴を開けられないか試して見たものの、たった一つ開けるのに途方もない時間がかかり、やっと開いたかと思えば穴のせいで石自体がボロボロだった。
「でも、まさかクズ石にこんな使い方もあるなんて思いもしませんでした」
「そう言えば、クズ石はどのように使われていたのですか?」
「クズ石とは呼ばれていますが、勿論魔石ですので多少ではありますが魔力を含んでいますから種類によっては日常生活に用いられる事もあります。ただ、小さすぎてる物は流石に殆ど使い物になりませんから廃棄になる事も多いです」
魔石と違って出回ってないのはそもそも価値がなさすぎて、倒した後にわざわざ解体してまで回収をしないからなのだとか。
「じゃあ、なかなか手に入らないかも知れませんね…」
「どうでしょうか。新人の冒険者からすればいくら低階層の弱い魔物だとしても戦闘となれば当然武器や防具も消耗します。当然依頼を達成すれば依頼料は貰えますが割に合わないことの方が多いのです」
低階層の依頼は難しくない分、報酬も少ない。でも、依頼を受ければ必然的に武器や防具は勿論、食事や宿代などの経費もかかる。
だから、新人は生傷も絶えない状態でまともに準備も出来ず、その上娯楽もない、報酬も少ない、という劣悪な環境の中で無茶をしながら上を目指すのだ。
「だから、もしクズ石にも多少なりとも買取価格が付くのなら新人なら解体してでも取ってきてくれるでしょうね」
「冒険者がフローネに集まるかも…?」
「まぁ、Cランク以上の冒険者なら戦わずに避けるか、そもそもその階層には行かないので、新人救済の意味合いが強くなるとは思いますが」
そうだったとしても、冒険者がフローネに集まるのはいい事だ。もしかしたらその中に将来有望な人がいるかもしれない。
後は来てくれた人達が長くフローネに止まって貰えるように影ながらサポート出来れば良い。
「…マーサちゃん。どうやったら買取価格つくのでしょう!?」
「ギルにお願いしておきますね」
「お願いします!」
そう言えばギルさんは冒険者ギルドの一番偉い人だった。
忘れてた訳ではありませんよ…。記憶から少しの間消してただけで…すみません、現実逃避してました…。
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