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建国祭

突然の知らせ

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「よし、移し替え終了!ノア、沢山お手伝いありがとう!お礼の白ワインはここに置いておくね」

「なぁ~」

 夏も終わりかけと言うのにまだまだ日差しの強い今日この頃。
 フローネの夏は暑いけどジメジメしていたのは始めだけで、今はカラッとしている。
 そんな気候はお酒を造るのにとても適しているようで、これまで作った酒、酢、共に一度も失敗していない。
 今回作った白ワインも一週間程で出来上がってくれて、さすがダンジョン品!ヌーボ造り立てなのにかなり美味しい。
 本当に有り難い事だ。

「あれ?今日もお出かけ?」

「なぁ~」

「そっか!行ってらっしゃい!」

 ノアは今日もお出かけみたい。

「あ、やば!」

 私も今日は朝から忙しくなるので、慌てて着替えを済ませて下へ降りる。

「おはよう、リザ」

「にゃにゃ~」

「おはよう!」

「おはようございます!」

「リザさん、おはようございます」

 いつも通り、金獅子のみんなはもう既に朝食を取り終えていた。

「皆さん、お休みでも早いんですね」

「もう、身体に染みついてるからな。それより今日は楽しみにしてるぞ」

「楽しみにしてて下さい!」

 開店お祝いパーティーはお酒も飲むので夕方からを予定している。アークさんにそれを言うと冒険者が酒を飲むのに朝も昼も関係ない、と力説されたが、料理やお菓子の準備もあるし、夕方からの開催でどうにか納得してもらった。

 みんなは久しぶりの休日をおのおのゆっくりと過ごしてから来てくれる。

 私はささっと朝食を食べ終わると席を立つ。

「マリーもじゅんび、できてるよ!」

「うん!今日は宜しくね!」

「マリーはこのやどのかんばんむすめよ!まかせて!」

 頼もしいお手伝いマリーちゃんとフィオデナルドさんと共に私の工房へ向かった。


「いいにおいがする!」

「ルーペリオさん、おはようございます」

「おはよう!」

「ふふふ、おはよう御座います」

 マリーちゃんは私の工房に来るのは初めてなので、どこもかしこにも興味があるようでキョロキョロと目を輝かせながら辺りを見渡す。

「ルーペリオ、すごくいい匂いね?」

「ありがとうございます」

「マリーはなにをてつだえばいい?」

「是非、お味見をお願いしたいのですが、まずはお嬢様にはお着替えをしてもらいましょう」

「マリー、おじょうさま?」

「えぇ。マリーお嬢様」

 ふふふ。何を隠そう!今日はパーティー。私の勝手なイメージだけど、パーティーは着飾らなくては!と言うことで私はマリーちゃん用にドレスを用意していた。

「マリーちゃんどう?」

 首元、肩、袖口、ふわふわのフリルをふんだんに使って、腰の切り返しには大きめのリボン。スカートはチュチュでしっかりとボリュームを持たせて後ろにかけて少しづつ長くした淡い黄色のドレス。
 フランさんにマリーちゃんのお洋服を一枚お借りして、それなりのお店をルーペリオさんに紹介して貰って仕立てて貰った。

「マリー、ほんとうのおじょうさまみたい!」

 正直、私が作ってみたいという気持ちもあったけど、一度で良いかプロの仕事と言うものも見てみたかった。
 仕上がりは勿論申し分ない。一つ一つ丁寧な縫製がされているし、肩のレースの立ち具合や切り返しのリボンの大きさなど私のオーダー通り。

「リザおねえちゃん、マリーかわいい?」

「かぁわわわわいぃぃぃぃーーー!」

「ママにも見せたいなぁ!」

「もう、最高にかんわいいよよよよ!」

 嬉しそうにクルクルと回りながら私やルーペリオさん、フィオデナルドさんに披露するマリーちゃん。
 フランさんにも一応パーティーのお声がけをしたが、やっぱり宿を空けるわけにはいかないと、お断りされてしまった。

「このドレスはマリーちゃんのだから、帰ったら見せようね!」

「うん!」

 まだまだ準備はこれから!
 私は前日から仕込んでいたコンソメスープや豚骨スープなどを温め直したり、ピザやカレーなどの仕込みを開始する。
 
ーーーコンコンコン

「どなたでしょうか?」

 突然工房のドアがノックされ、ルーペリオさんが一人確認に向かう。
 この工房を知っている人はそう多くない。そしてその知っている人達は今日の夕刻からを予定しているパーティーにみんな参加する予定だ。
 
 私は何となく嫌な予感がして、作業の手を止める。
 暫くすると、ルーペリオさんが厨房に戻って来た。

「モンタナさんとその部下の方々は本日のパーティーを欠席されるそうです」

「え?」

「…昨晩、先日伺ったあの倉庫で火事があってそうです」

「…火事って…モンタナさん達は無事なんですか!?」

「えぇ、焼けたのは倉庫だけで彼らは無事です。…ただ、建物ごと中にあった全てが燃えてしまったそうです」

 彼らが命に別状ないのならいい。
 ただ、このパーティーを開催するキッカケはウイスキー造りだった。
 あれほど頑張っていた彼らの気持ちを考えるとやるせない気持ちで一杯になった。







 




 
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