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建国祭
救世主
しおりを挟むその日から数日。
ロキさんの熱烈な要望により私はカップラーメンの製作を試みた。
「蓋と容器の接着はスライムの粘着液が一番良さそうですね」
「そうですね。蓋と容器の内側が注いだお湯で染み込まないようにするのもスライム粘液を塗って乾かした物が一番良さそうです」
「スライムなら新人冒険者でも問題なく狩れるからコストも抑えられるな」
「麺揚げる用の型も作ってもらえましたし、スープの件もマーサちゃんに相談して解決しそうです」
最近は何故か周りの協力体制がどんどん強靭ものになっていっている気がする。お陰で私が思っていたよりも着々と色んな準備が整っていく。とても有難い。
蓋と容器は親方の知り合いに特注で作ってもらった紙をカップの形に加工して、その内側にスライム粘液を塗り、乾かすことでお湯を注げるようにした。
蓋と容器の接着にはスライムの粘着液の剥がしやすさが本物と一番似ていたのでそれを採用する事になった。
麺を揚げる為の型は某カップラーメンを参考に、容器の真ん中辺りで引っかかるように親方に計算して特注でもらって作った。
麺の揚げ方もただ揚げるよりも茹でた後に先に塩味をつけてから揚げて、更に風魔法でカラカラに乾燥させる事でお湯で戻した時にかなり近い食感に出来た。
加薬も天日干しなど色んな物を試したが、やっぱり魔法で急速に乾燥させるのが一番食感が良かった。
その辺は私の魔法の先生であるロキさんが乗り気だったので嫌がらずに進んで手伝ってくれたのでとても助かった。
お陰で私も初めはそよ風みたいなものしか出せなかったけど、今では加薬を乾燥させる事ぐらいは出来るようになったのでそれなりに上達したと思う。
自分の髪の毛やノアの毛を乾かせられるようになったのはかなり嬉しい。
「では、少しマーサちゃんの所へ行ってきます」
「麺を揚げるのは私にお任せ下さい」
「お願いします。ノア、行くよ」
カップラーメン最後の課題。
それはスープの粉末化。
初めはそれさえ諦めて、液体のスープにしようかとも考えたが、その液体スープを入れておける物が中々見つからなかった。
容器と同じようにスライム粘液を塗って乾かした物を使ってみたが、長期保存には向いておらず、5日程でスライム粘液が液体スープに溶け出し始めてしまったのだ。
結果、粉末スープが一番良いと言う結果となり、スープの粉末化を目指すことになった。
だが、こればかりは全く進まなかった。
初めは魔法で乾燥させて固めて、それを魔法で粉々に砕いてみたり、薄く伸ばしてから乾燥させて、砕いみたりと思いつく事は試してみたが、固まる過程で分離・沈殿したり、結晶化して綺麗に細かくならなかったりでどれもうまくお湯で溶けなかったり、味を損なってしまった。
そんな時、製作に行き詰まって食堂でうんうん、と唸っている私を見たマリーちゃんが気晴らしにとマーサちゃんのお店に行くのに誘ってくれた。
私も何か他のハンドメイドを作れば気分転換になると思いその提案に乗った。
久しぶりのマリーちゃんとのお出かけで気分も良くなる。
私が目に付いたものをあれこれ買い占めるので、不思議に思ったマーサちゃんが私に質問をしたのだ。
「…なら、初めからその液体をミスト状にして乾燥させてみたらどうですか?そうすれば沈殿する事も砕く必要もないですし、その液体自体も乾燥しやすいですよね?」
「…っ!流石、天才錬金術師様!」
「ふふふ、リザさんに褒められるのは素直に嬉しいですね」
ただ、私にはミスト状にする魔法も道具もないので、天才錬金術師様であるマーサちゃんにそのスープミスト機の製作をお願いする事になった。
今日はその機械を取りに行く日なのだ。
「少し早いですが、来ちゃいました」
「いらっしゃいませ。ノアもロキ卿もいらっしゃい」
「なぁ~」
「あぁ」
「ミスト機は完成してるから大丈夫ですよ」
マーサちゃんが手にしているのは紛れもなく私の望んでいたもの。
そう、霧吹きだ。
皆んなには内緒だが、一緒に化粧水用のスプレー容器も作ってもらったりしている。最悪スープの粉末化に失敗してもスプレーがあれば、使いにくいと指摘された鈴蘭バームの問題点も解決するかもしれない。
…ほとんどは自分のためだけど。
「中にただの水を入れてあるので試してみてください」
「…にゃ!」
「凄いです!完璧です!」
ノアは霧状になった水に驚いて慌てて私の肩に戻る。猫はやっぱり水が嫌いなのかな?
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