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建国祭
インスタント
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「本当に美味しい料理です。本当にリザさんの故郷は大変優れた料理や菓子が多いですね」
ロキさんは無言でラーメンを食べ進め、ルーペリオさんは食レポを交えながら、褒めてくれている。
此方の世界の食事も普通に美味しい。
だとしても、やっぱり故郷の味は懐かしく感じるもので、有難い事に市場で似たような食材も普通に手に入るし、他の土地では高級品として扱われている砂糖や香辛料なども手に入れづらい程の価格ではない。
マリーちゃん曰く、その理由はここがダンジョン都市だからなのだとか。
そんな訳で私は向こうの味をいくつか再現してみた。
作ったのはラーメン、カレー、ハンバーグや海老フライなどの王道家庭料理。それらを工房から出るのが面倒な時に二人に振る舞っていたのだが、ロキさんはラーメンを特に気に入ったらしい。
「それもこれもリザさんのように上手く啜れればもっと美味しくなるのでしょうが…残念です…」
「あの啜る音が食欲を掻き立てるからな…」
「ロキ殿、意見が合いますな」
「あはは…これは練習あるのみです」
ロキさん。ラーメンのことになるとめっちゃ喋る…。
確かに現代でも外国の方は麺を上手く啜れない人も多かった。それに二人ともテーブルマナーを守って音を立てないで食べる人だからこういうものには抵抗もあるだろう。
「これが毎日食えたなら…」
「そうですね…。リザさんのお料理は私がこれまでの人生で頂いてきたどの食事よりも美味しいものでした」
「そんな大袈裟な…」
「いいえ!大袈裟などではございません!リザさんのお許しさえあればお食事処を作る事も検討したくらいです」
こんなに喜んでくれているとは知らなかった。いつも二人ともただ黙々と食べていたから。
「まぁ…生麺とはいきませんが、お湯を注ぐだけでラーメンを食べれるものなら…」
「リザ、それは本当か!」
「あ、いや…作れない事も無いかな…って思っただけで…」
「リザ!是非に作ってくれ!私が全て買おう!」
「……えーと」
「…リザさん。これはとても良いアイディアです」
ルーペリオの表情がいつもの優しい笑みから、あの時折見せる商人の鋭い目に変わっている。
「アイディア…ですか」
「はい。リザさんは宿屋をご利用されているので良くご存じかと思いますが、冒険者は圧倒的に男性が多い」
「はぁ。まぁ、そうですね…?」
「当然、料理などが得意では無い人も多い」
「成程…?」
「これからリザが作った魔法鞄が冒険者達に浸透して行っても、結局料理は出来ないので食べ物は今まで通り干し肉やパンでしょう。でも、もしお湯を沸かすことさえ出来れば美味しい物が食べられるとしたら…」
戦闘も出来て、料理も出来て…言うことなし!という冒険者は中々いないという事だろうか。
せっかく鞄を作って冒険が少し楽になっても冒険中の娯楽でもある食事がそんなものばかりでは勿体ない。
もっと冒険者達が少しでも良い状態で攻略を進めてもらう為になるなら良いチャンスなのかも知れない。
「じゃあ…うどんも作ってみようかな…。あ、その前に焼きそばかな?あ、でもソースは作らないとないか…。なんならマヨネーズとかケチャップも作りたいし…」
「リザ、その“うどん”とやらも美味いのか」
「寧ろ、うどんの方が故郷の味ですかね。ラーメンよりも太めの麺料理で…」
「何が必要なんだ」
「えっ…」
「うどんを作るには何が必要なのかと聞いている」
やっぱりロキさんは食べ物への…いや、麺類への愛が強いみたい。
それから私はロキさんに詰め寄られ、食材を吐かされた。
そしてロキさんは当然のようにいつの間に用意したのか食糧庫らしき部屋からうどん作りに必要な材料を運び始める。
「そのうどんもお湯を入れるだけで作れるように出来るのか?」
「多分、やり方は一緒だと思います。でも、時間がかかりますよ?」
「どのくらいだ?」
「…さぁ、流石にそこまでは…」
カップラーメンを作る為には私が思いつくだけでも何個かの難関がある。
多分麺は直ぐにそれらしいものは出来ると思う。親方にお願いして型を作ってもらって油で上げればいい。
問題はスープと具の乾燥と、カップ型の容器とその蓋。
スープを粉にする方法も具を加薬にする方法、それからお湯を注いでも問題のないカップ容器と剥がせる蓋の作り方は流石に知らない。
それに残念ながらこの世界で醤油も味噌も見つけられていない。
今日は取り敢えず鳥だしに塩で味を整えて作ってみたが、やっぱりうどんは醤油が欲しいな。
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