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異世界
君にいている子
しおりを挟む俺が殺してしまった男達は正当に金を払ってメイを買っていただけだったらしく、メイを売っていたのはまた別の奴だった。
「何でメイなんだ!何でメイだったんだよ!!!」
「ラウリ、お前が目障りだったからさ」
「俺が…?…俺が目障りで…何でメイにあんな事をするんだ?」
「はぁ?何言ってんだよ?あの女が自分から言ってきたんだよ。何でもするから嫌がらせをやめて欲しいってな」
「嫌がらせ…?」
「アイツ、なかなか人気だったんだぜ?」
「冒険者より向いてるよな!」
「「「ハハハ!!!」」」
「ック…!」
相手は同じCランクの冒険者だった。
決して勝てない相手ではない。なのに何でメイは彼らに従ったのか。俺は馬鹿だから初めは何にも分かってなかった。
当然俺は罪に問われ人殺しとして前科がついた。ただ、奴らはメイの他にも新人の女性冒険者達を脅したり、騙したり、時には力にものを言わせて従わせ男達に売っていたらしく、奴らもすぐに捕まった。
そういう状況が状況だった為に情状酌量が認められて俺は2年間の無給就労で済んだ。
そんな俺を皆んなは待っていてくれたが、“人殺し”のレッテルが消えることはなく俺たちは王都から逃げるようにしてフローネにやってきた。
医者の話しではメイは男達に相当酷い扱いを受けていたらしい。その頃の心労などが祟って…俺が出てきた頃には帰らぬ人となっていた。
何故メイがあんな目に遭ってまで我慢してアイツらの言うことを聞いたのか。
「メイ!俺はギルゲインみたいな冒険者になるんだ!」
「ギルゲインに?」
「何だよ、お前も出来ないって言うのかよ…」
「ううん。ラウリなら絶対になれるよ!寧ろ私はそれ以上の冒険者になるって分かってるから!」
「お、おう!任せろ!世界中で俺の名前を知らない奴はいなくなるぞ!」
「楽しみにしてるわ!」
全部俺のせいだ。
俺が無鉄砲だったから奴らに目をつけられた。そしてお前はそんな俺が奴らといざこざを起こす事も想定済みだったんだろ?
しかもその後パーティーの評判が悪くなり、俺の目標であるSランクの冒険者になれなくなる可能性まで見越していたんだ。
だから、俺の夢のために何も言わずに一人で耐え続けた。
そして俺はお前の苦労も何も知らずに呑気に冒険をして、お前の為になってると思い込んでいたんだ。
結局、その努力も俺が一瞬で無駄にして…。
まさに今みたいな状況になる事を分かっていたんだろ?こうならない為に…こうしない為に…お前は…。
すまない、メイ。
どんなに頑張ってももう俺はSランクには慣れない。俺がパーティーにいる限りAランクにすら慣れないだろう。
でも、そんなことよりも俺はお前の方が大切だったんだ。お前が俺を大切に思ってくれていたように。
だから、お前が俺の犠牲になる必要なんてどこにもなかった。隠さず、俺に助けを求めて欲しかった。
やっぱり分からない。
お前は何で俺のためにそこまでしたのか。
「ラウリ、顔が険しくなってるぞ」
「また変な事を考えてたんじゃないだろうな?」
「ラウリ。何度も言ったけど、私達のパーティーはアンタがいないとパーティーとして終わるの。こんな噂が立ってるパーティーに誰も入りたがらない。分かるわね」
「…あぁ。ワリィ、少し感傷に浸ってたらしい」
「何だよ、お前らしくない」
「あの子が少しメイに…似てたからか」
「……そうね、リザちゃん…メイにソックリだったわね」
「はいはい、しんみりするのはもう終わり!日が暮れる前に戻るぞ!流石にもう1日野営する訳には行かないからな!」
俺たちはメイのためにも明るく振る舞う事に決めている。メイがこう言うしみったれた雰囲気をとにかく嫌っていたからだ。
お前の努力を無駄にしてギルゲインのようになる事を諦めた俺をお前はどう思う?
ーーラウリなら絶対になれるよ
ってまた励ましてくれるのかな?
ーー馬鹿言ってないで頑張りなさい!
って叱るのだろうか。
皆んなが言うように、お前にそっくりな女の子がいるんだ。しかも似てるのは顔だけじゃなくて歳の割にしっかりしてそうな感じも、お節介そうなところも、優しい雰囲気も…。
彼女ならなんて言うだろう。
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