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異世界

決心

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「カードなら嘘をつくこともありませんし、本人の意思も関係ありません」

「人に質問するのではなくカードに質問をするのですね!」

 ICカードのように翳すだけで犯歴が分かれば、こんなにも簡単な事はないだろう。
 質問もとても簡単だ。カードに犯罪歴の有無を問えばいい。

「リザさんの言う通り、審査員側の不正ないと思いたいですが、対策は必要です。ただ、それについてはギルド側の判断に委ねるしかありませんね。ギルドが必要だと考えれば、精神干渉魔法の使用許可を取るでしょう」

「王様…」

「そういった事が得意な人に当てがありますからお任せください」

 マーサちゃんは特に誰とは言わなかった。きっと王様に掛け合うのだからそれなりの地位の人に頼むのだろう。
 私が関わり合いたくないのも分かっているから、マーサちゃんは敢えてそうしてくれたのだろう。そんな気遣いに感謝しながら私は瞼を閉じた。

 
 翌朝、何事もなく目覚めた私たちがテントから出ると【猛き蒼狼】の皆さんは既に野営の片付けを始めていた。

「お、早かったな!」

「テントを譲って頂きありがとうございました」

「気にしないで。私達は慣れてるから!」

 メリルさんはそう言いながら豪快に笑う。私が気にしないように気を遣ってくれているのだと分かる。
 やっぱり、こんなに優しくて素敵な人達が何かしているとはとても思えない。

 私達はテントの片付けを少し手伝って、簡単な朝食を取る。
 干し肉をお湯で戻して、野草などと煮込んだスープ。干し肉から出た黒い油とほのかに感じられる程度の塩分、ほんのり野草の青臭さが鼻をかすめる。

 正直、美味しくはない。

「俺らは後始末してから帰るから、先に街に戻りな」

「え?」

「ほら、森の中に火が残ってたら困るからさ」

「それなら、お手伝いを…」

「皆さん、本当にお世話になりました」

「え?マーサちゃん?」

 マーサちゃんは簡単なお礼を言うと彼らに振り向く事もなく私を引っ張って歩き始める。
 少し寂しそうな表情で手を振って送り出してくれた【猛き蒼狼】の皆さんに私は何度も振り返ったが、直ぐに片付けをし始めてこちらを見なくなった。

 昨夜はあんなに仲良くさせて貰ったのにこんな別れ方はあんまりだ。

「マーサちゃん!」

「仕方がないんです」

「え?」

「彼らは自分達がどのような評価をされていて、どんな噂が流れているのか知っているんです」

 彼らは自分達に良くない噂がある事も、そのせいでランクが上がらない事も、そして周りからどう見られているのかも良くわかっているのだ。
 だから、そんな自分達と一緒に街へ戻ると私達まで変な目で見られる可能性があると考えたらしい。
 
「特に彼らはリザさんの事をギルドの職員と思ってます。ギルド職員に悪い噂が立つということは職を追われる可能性もあるという事なんです」

「…マーサちゃん。私、絶対に彼らの無実証明したい」

「そうですね。目標の為にも優秀な冒険者が増えるのは良い事だと思います。それが例え根も歯もない噂で潰されているのなら…過去の二の舞。裏取りが取れない限りはギルドはランクに上げないですから、そこが簡潔になるのならばとても素晴らしいことです」

「うん、まずはフィオデナルドさんに相談して“調べの石”を譲って貰わないとだね」

「はい、そして彼らから金貨200枚ぶん取りましょう」

「え、えぇ!!!」

 マーサちゃんは気付いていないかも知れないけれど、昨日の昼間にラウリくんと共にグリフォンと戦った時のようにキラキラした表情をしていて、明らかにいつもより砕けた雰囲気で何より楽しそうだった。
 



 
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