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異世界

心強い協力者

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「今日は二人で草摘みか?」

「はい、いつも通り染色に必要な素材が少なくなってきたので静の森に行ってきます」

「いつもよりペースが早いな?儲かってるんなら何よりだ!いってらっしゃい!」

「ありがとうございます」

 マーサちゃんがいつも通り門番をしている衛兵達と簡単な会話をしているのを横で大人しくして聞きながら、ペコリとお辞儀だけする。
 みんな良い人なのはもう分かっているのだが、先日彼らに殺気を出されて倒れて以来、まだ苦手意識が抜けきれていないようでついつい身体が硬ってしまう。
 彼らも彼らでそれが分かっているからか、無闇に話しかけては来ない。

「まだ怖いですか?」

「そう言うわけではないんだけど…つい、身体がそうなってしまうみたいで…」

「キャスパリーグは怖くないのに人が怖いんですね」

「ノアには助けられた事はあっても襲われた事一度もないから…」

 ゆっくりと静かな森の中を会話を途切れさせないように時より冗談なんかを交えながら進む。
 ただ、コミュニケーション能力の低い私と普段物静かなマーサちゃんの会話が上手く続く訳もなく、仕方がなく本題を切り出した。
 
「…二人で話したい事…聞いても良いですか?」

「…リザさん。その、話しというのは先日の件なんです」

 先日。
 そう言われて思い浮かぶのはノアを迎えに行ったあの日の事。ノアの話しに取り乱した様子を見せたマーサちゃんにあの日は余り深くは聞けなかった。

「キャスパリーグ…いえ、ノアが言っていた事についてあれから冷静になって少し考えてみたんです」

「魔物が…その……人を襲った理由、だよね」

「はい」

 ダンジョン攻略が進まず、育ちすぎたダンジョンのせいで周囲の魔素が薄くなり、魔素で栄養を補う魔物達が生きる為に人を襲った、と言う話し。

「私の故郷はこの静の森の奥深いところにあったんです。でも、数年前に村が魔物の群れに襲われて…その時に私は父も母も姉も亡くしました」

「…それは…」

「突然、重い話しをしてすみません。でも、大丈夫です。今はフローネに来て本当に良かったと思っているんです。…ただ、やっぱり魔物は憎いんです」

「うん、そうだね」

 大丈夫だ、と言うマーサは優しく笑っていて無理をしている風には見えなかった。勿論、住む場所を、仲間を、家族を失った悲しみは残っているだろう。
 でも、彼女は彼女なりにきちんと折り合いをつけられているみたいだ。

「あの時はまるで魔物達も人を襲いたくなかった、と言われているように聞こえて。でも、私達も草花を摘んだり、動物を狩ったり、勿論…魔物も素材になりますから倒します。それはやりたくて、と言うよりは生きる為でお互い様なんですよね」

「…うん、お互い様なのかも知れないね」

「でも、もし本当にノアが言うようにダンジョン攻略さえ進めば魔物達が私の村や先日のワイバーン騒ぎみたいに人を襲わなくなるのなら…私も協力したいと思います」

 マーサの強い決意に応えるように肩に乗っていたノアがそのふわふわの尻尾で彼女の頬を撫でる。

「協力して貰えるのなら本当に助かります。…他に打ち明ける訳には行かないので…」

「確かに、ノアがキャスパリーグだと皆さんに伝えるのは大変ですね。何か作戦はあるのですか?」

 この世界についての知識が著しく足りてない。それをマーサが補ってくれるのならばとても頼もしい。

「冒険者じゃない私に出来るのは優秀冒険者を集める事をだと思うんです」

「そうですね。あの鞄は金色の獅子達が宣伝してたみたいですね?」

「あ、あれは…その、他に事情がありまして…」

「分かってます。貴族達を避ける為に、ですよね」

 マーサちゃんは私が貴族を嫌っている事を知っているし、先日の誘拐事件の事も知っている。だから、詳しく話さなくてもある程度は察してくれているみたいだ。

「彼らが持ち帰ったと言うヒュドラも広場に見に行きましたが、本当に大きくて驚きました。あれがあんな小さな鞄に入るなんて信じられません」

「…実はあれには私も驚いたんです」

「リザさんがですか??」

 作った本人なのに、と可笑しそうに笑ったマーサに梨沙も笑顔を返した。







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