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異世界
反省
しおりを挟む「それで?何があったんだ…?」
フィオデナルドと梨沙の足音が遠くなったのを確認してジンクスが問いただす。
三人は怒り心頭だと言わんばかりに、ジンクスお気に入りの高級革張りソファにドスッと座った。
それに文句を言おうとしたジンクスの怒りを更に上回る勢いでミャールが机を強く叩いて声を荒げる。
「私達、フィオの作戦通りきちんと城へ行ったにゃ!王様があの馬鹿たちを正式に公衆の面前で懲らしめられるところはまで予定通りだったにゃ!」
「馬鹿は馬鹿、そういうこと」
「だけど男爵家の馬鹿娘が王様にそれがどうした、って口答えしたにゃ」
大方その馬鹿娘がここまでされても自分が何をしたのか分かっていなかった事に激怒したのだろう、とジンクスは予想して執務椅子にゆっくりと腰を下ろした。
どうせ何かの間違いだとか、平民に何しても問題ないとでも騒いだか。若い貴族の娘が言いそうな事だ、と納得したジンクスは机の書類に視線を向けた。
「勿論、王様もビシッと言ってその馬鹿たちは牢屋に繋がれたにゃ。でも、その後フローネで暴れたアホたちをリストにした抗議書を王様が確認したんにゃけど…」
「多すぎて、捌き切れない、お祝いした、見逃せ、王様言った」
「だから、殴った」
思わず椅子から転げ落ちそうになったジンクスは何とか体制を立て直してから恐る恐る聞く。
「…ま、まさか…大丈夫だよな?」
「アークはかなり我慢したにゃ。ちょっと地面に風穴が空いたくらいにゃ」
今は王様を殴ってなかった事だけでも良かったと思うべきだろうか。確かに、フローネの領主であるアークからしたら自分の街を他の貴族たちに荒らされてお祝いのパーティーを開いたから許せ、は横暴な話しだろう。
そもそもパーティーだって王室側がダンジョンから出た新たな素材の献上の催促とその後の取引の為にこちらとコネを持ちたいが為に勝手に開いたものだ。それを恩着せがましく言って来られれば流石に納得がいかないだろう。
今回は王室側が下手に出た事と梨沙の為もあってパーティーに参加したが、フローネ領主と王室には確執があり、余り仲良くは無い。
その確執と言うのも《若葉狩り》が関係している。
王室は長年冒険者達の台頭に自分達の地位が危ぶまれるのでは、と言う危機感を持っていて、冒険者ギルドを権力と財力で押さえつけて《若葉狩り》に関して知っていながら敢えて放置していた。
その影響を一番受けたのが世界有数のダンジョン都市であるフローネだった。
冒険者が足りないが為に攻略よりも素材集めがメインになってしまったり、素材の供給が追いつかない不満がフローネに集まったのだ。
それだけを聞けば何故フローネが責められるのか、と思うだろうがフローネはダンジョン都市であるが為にダンジョンから出る素材以外には昔から盛んだったリンド以外に何もない。その他は主に観光業を営んでいる。
その為食料品や日用品の殆どを他領からの輸入で賄っていた為にダンジョン素材の枯渇はフローネの死活問題だったのだ。
フローネはこの国において重要な資源を抱えている拠点で、王室側はこれ幸いとフローネを手に入れようとした。
しかし、フローネは先日のワイバーン事件のようにいつ魔物が襲ってくるか分からないという危険を孕んだ土地でもあり、更に王都から遠く離れた辺境の地なのと大帝国と隣接している事、更には英雄が産まれた土地として神聖化されていて、国民達の反感を買い王室側としては取り上げたくても出来ない不如意な土地だった。
だから、王室側はフローネを自分達で管理出来ないし、蔑ろにも出来ない為に表面上だけでも出来れば良くしておきたいと言う思惑がある。
「まぁ…爺さんに言っておくよ」
「すまんな、ジンクス」
アークは怒りを隠していないし、殴った事は後悔はしていないようだが、領主としては間違っていたことは分かっているようで、珍しく少し落ち込んでいた。
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