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異世界

予感の的中(2)

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 何処の世界にもこういう奴らは存在する。弱いのがいけないのだと、奪われる方が悪いのだと、自分達を正当化して自分より弱い相手から奪えるものは全て奪ってやろうとする悪人。

「チッ、面倒なことになったぜ」

「おいコラ、ガキ!目を覚ませ!」

「仕方がねぇ。例の小屋に連れてくぞ」

「あぁ」

「お前も手伝え」

「ぼ、僕も…!?」

 気絶した梨沙とマリーは、気弱そうな男と共にそのまま男達に無理矢理馬車に乗せられて、暫く馬車を走らせた後、薄暗い森の中にある古びて埃まみれの小屋に閉じ込められてしまった。

「チッ、まだ起きねぇのか」

「おねえちゃん!」

 男は面倒臭そうに相変わらず気絶したままの梨沙を投げ捨て、動きの鈍い若い男の背中を蹴り倒す。マリーは泣きそうな顔で慌てて梨沙に駆け寄り、手を握りしめる。

「おい、良いからとっとと口を割ったらどうだ。ガキが!」

「何だその目付きは!」

「…ッ」

「頭のコレは何処で手に入れたか言うだけだろ」

 4、5歳のまだ小さな女の子の髪の毛と目当ての髪飾りを何の躊躇もなく鷲掴みにし無理矢理顔を上げさせる。

「それだけ話しちまえば解放してやるって言ってるのに…強情なガキだな」

「早く言え!もっと痛い目に会いたいのか!」

 恐怖からか、マリーから言葉が出てこない。とにかく梨沙からは離れまいと手を握ったまま痛みに耐える。

ーーーマリー。約束だ。

(パパ…)

 マリーは何かを思い出したかのように頭を掴む男に視線を合わせる。

「…お兄さん達は何でこれの事を知りたいの?」

「あぁ、やっと口を開く気になったか。実はな、さるお偉い方がそれを作った奴を召し上げてくださるんだ。言えばそいつの為になるぞ」

「私なんにもしらないの」

「いい加減にしろ!知らないわけねぇだろ!」

「お前のかーちゃんにでも聞けばいいか?あん?」

「これはパパがお土産にくれたの。パパに聞けば分かるわ!」

「ほぉ、ホントだろうな」

 相手は4、5歳の少女だ。でも、男達は決して油断しない。絶対に確実な何かを拾うまでは、その探る様な視線を変える事はない。

「ほんとうよ!パパが町に買い付けに行ったときに…」

「買い付け…ってことは料理屋か?いや、仕立て屋…道具屋…」

「宿屋ってのもあるな」

「…ッ!」

 ボロっと漏らしてしまった情報から推測を始めた男達の言葉にマリーは反応を見せる。

「なるほど…宿屋か」

「あの場所に近い宿屋は二軒だけだ。ガキ、お前の名前は」

「…」

「お前の両親を殺してやっても良いんだぞ」
 
「…ま、マーサだよ」

(ごめんなさい、マーサ…)

 流石に両親の事を持ち出されてマリーは表情を強ばらせる事しかできない。マリーの口から咄嗟に出たのはマーサの名前だった。

「マーサだな。もし、嘘だったら…よく分かってるだろうな?直ぐに親と会う事になるぞ。楽しみにしてろ」

 男達は情報を引き出した後も慎重でしっかりと固くロープで結ぶ。卑屈な笑みを浮かべて捨て台詞を吐くと何重にも鍵をかけて出て行った。

「…少しあたまからちが出てるけど、とりあえず、おねえちゃんはだいじょうぶね。お兄さんもだいじょぶ?」

「えっ」

ーーーマリー、約束よ…大丈夫。マリーはママとパパの子だから。

(ママとのやくそくだもん)

 さっきまで震えていたのが嘘みたいに収まる。力んでいた身体から力が抜けると自然とロープが緩まり、スポッと抜け出すことができた。

「お兄さんはあの二人の仲間じゃないんでしょ?」

「えっと…」

「まぁ、一緒にしばられてるもん。わかるよ」

「いや、何でロープが…?」

 上手いこと外れたロープを驚いた表情で見つめている男にマリーは励ますように声をかける。
 
「だいじょうぶよ。直ぐにパパが助けにくるから!」

「どう言う…」

「でも、どうやってここから出ようかなぁ?」
 
「あ、あの窓から出れないかな!」

「むりよ。お兄さん力持ちには見えないし」

「た、確かにそうだけど、君くらいなら大丈夫!」

「…リザおねえちゃんを置いていくの?」

(やっぱり、わるい人なのかも…)

 マリーに不安が押し寄せる。

ーーードンッ!!!

 そんな不安を更に煽るように小屋がミシミシと不吉な音を立てながら大きく揺れた。

















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