異世界で趣味(ハンドメイド)のお店を開きます!

ree

文字の大きさ
上 下
10 / 244
異世界

商業ギルド

しおりを挟む



「あ、あの…」

「こんにちは、ご依頼ですか、登録ですか?」

「リンリン!あのね、リザおねえちゃんはすごーく優秀なじゅつしなの!」

「あら?マリーちゃんが連れて来てくれたの?」

「うん!マリーはフィオに頼まれたの!」

 その名前を聞いた途端少し驚いた表情に変えた受付の女性は私の顔を見たあと、少し気の抜けた顔をして、マリーにもう一度向き直る。

「マリーちゃん、本当にフィオデナルドさんの紹介なの?」

「本当だもん!リンリンしつれー!フィオはジンジンに通すようにって言ってたもん!」

「あの、お手紙もあります…」

「え!フィオデナルドさんの紹介状ですか!す、すみません…直ぐにギルドマスターにお繋ぎします!」

 フィオデナルドさんは実はかなり凄い人なのかなぁ、と思いつつも内心ヒヤヒヤしてた私とは違ってフィオデナルドさんだけでなく、そのギルドマスターと言う人とも知り合いのマリーちゃんもなかなかに強者だわ、と密かに思う。

「お待たせしました、執務室にご案内します」

 執務室に向かいながらもいまだにプンプンと怒っているマリーちゃんに何とか許して貰おうと手を尽くしているリンリンさんを見て、マリーちゃんを怒らせるのは辞めておこうと心に刻んだ。

「ジンジン!来たよ!」

「お~、良く来たなぁ!マリー。今日は飲みに行くから宜しくな」

「仕方がないなぁ、今日はムム炒めさーびすしてあげる!」

「さすが、可愛いマリーだ!」

 執務室の扉を開けるや否や飛びつく勢いで駆け出したマリーちゃんを逞しい体躯の男性が嬉しそうに抱き抱えてイチャコラしている。
 デレデレの顔を見て、私もあんな顔してたのかな、と不安になりつつも、抱きついてしまった時のマリーちゃんの慣れた様子はコレのお陰だったのか、と妙に納得して私はうんうん、と唸る。

「ギルマス、此方の方がフィオデナルドさんの紹介状をお持ちになったリザさんです」

「リザさん、俺がこの商業ギルドのギルマスをしているジンクスだ。マリーは俺の弟の娘でな、恥ずかしいところを見せた」

「いえ、リザです。宜しくお願いします」

 軽い挨拶を交わし、ソファに案内され早速話しに入る。

「俺も忙しい身でな、早速で悪いが紹介状に書かれていた“アンクレット”とやらを見せて貰えるか?」

「は、はい」

「「…!!」」

 ポケットから無造作に取り出したのを見て驚く二人はベルベット素材のトレーに置くように言い、わざわざ手袋をして丁寧に扱っている。

「なるほど、国王陛下に献上する品と言われても疑問にも思わないな…」

「美しすぎて、言葉になりません…。鍛治ギルドじゃなくてウチに来てくれたのは有り難いですが…私には値段を付けることも出来ません…」

 二人は感動を言葉にしてくれているのだろうが、出来ればあまり国王とか貴族とか偉そうな人とは関わりたく無い。
 昨日聴いてしまった“奴隷”という言葉に反応してしまうのは過剰でも何でも無いと思う。

「あの、私はその王様とかお貴族様と関わらないようにする為にここに来たんです」

「あぁ、聴いているよ。でも、製作者がバレなければ別に問題ないのでは無いか?」

「そうです!王様に献上しないにしてもその辺で売るよりも貴族に売る方が確実に高値が付きますし、貴方にも箔も付きます!」

「じゃあ、お二人は王様やお貴族様に作ったのは誰なのか聞かれても答えないって事ですね?」

「…うん…まぁ、誤魔化し方は幾らでもあるからな」

 それはそうだ。でも、国王って多分嘘とか付けないような相手だ。嘘ついたら殺される、とかそう言う存在だ。

「もし誤魔化せたとしても国王が全力で凄い人に頼めば私の事探せるんじゃ無いですか?」

「確かになくは無いことだろうが…」

「勿体無いです…」

 二人は残念そうにしているが、私にとって王様とか貴族とか、稼げるとか、箔がつくとか、そんなのはどうでも良い。身の安全が第一なのだ。

「フィオデナルドを敵に回す訳にも行かないしな…要望通りにするが…」

「そうなると…一番いいのは少し品質を下げて出回っているものよりも少し良いものに見せて、徐々に世間に浸透させていく、とかですかね?」

「…いずれにしても長期戦という事だな」

 品質を下げると言うのは逆にありがたい。寧ろ必然的に下がってしまうから言い訳せずに済みそうだ。

 それから二人は色々と準備を整えてから連絡する、と言い私はギルド登録だけをしてマリーちゃんと共に宿屋に帰ってきた。





しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

隠密スキルでコレクター道まっしぐら

たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。 その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。 しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。 奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。 これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...