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異世界
商業ギルド
しおりを挟む「あ、あの…」
「こんにちは、ご依頼ですか、登録ですか?」
「リンリン!あのね、リザおねえちゃんはすごーく優秀なじゅつしなの!」
「あら?マリーちゃんが連れて来てくれたの?」
「うん!マリーはフィオに頼まれたの!」
その名前を聞いた途端少し驚いた表情に変えた受付の女性は私の顔を見たあと、少し気の抜けた顔をして、マリーにもう一度向き直る。
「マリーちゃん、本当にフィオデナルドさんの紹介なの?」
「本当だもん!リンリンしつれー!フィオはジンジンに通すようにって言ってたもん!」
「あの、お手紙もあります…」
「え!フィオデナルドさんの紹介状ですか!す、すみません…直ぐにギルドマスターにお繋ぎします!」
フィオデナルドさんは実はかなり凄い人なのかなぁ、と思いつつも内心ヒヤヒヤしてた私とは違ってフィオデナルドさんだけでなく、そのギルドマスターと言う人とも知り合いのマリーちゃんもなかなかに強者だわ、と密かに思う。
「お待たせしました、執務室にご案内します」
執務室に向かいながらもいまだにプンプンと怒っているマリーちゃんに何とか許して貰おうと手を尽くしているリンリンさんを見て、マリーちゃんを怒らせるのは辞めておこうと心に刻んだ。
「ジンジン!来たよ!」
「お~、良く来たなぁ!マリー。今日は飲みに行くから宜しくな」
「仕方がないなぁ、今日はムム炒めさーびすしてあげる!」
「さすが、可愛いマリーだ!」
執務室の扉を開けるや否や飛びつく勢いで駆け出したマリーちゃんを逞しい体躯の男性が嬉しそうに抱き抱えてイチャコラしている。
デレデレの顔を見て、私もあんな顔してたのかな、と不安になりつつも、抱きついてしまった時のマリーちゃんの慣れた様子はコレのお陰だったのか、と妙に納得して私はうんうん、と唸る。
「ギルマス、此方の方がフィオデナルドさんの紹介状をお持ちになったリザさんです」
「リザさん、俺がこの商業ギルドのギルマスをしているジンクスだ。マリーは俺の弟の娘でな、恥ずかしいところを見せた」
「いえ、リザです。宜しくお願いします」
軽い挨拶を交わし、ソファに案内され早速話しに入る。
「俺も忙しい身でな、早速で悪いが紹介状に書かれていた“アンクレット”とやらを見せて貰えるか?」
「は、はい」
「「…!!」」
ポケットから無造作に取り出したのを見て驚く二人はベルベット素材のトレーに置くように言い、わざわざ手袋をして丁寧に扱っている。
「なるほど、国王陛下に献上する品と言われても疑問にも思わないな…」
「美しすぎて、言葉になりません…。鍛治ギルドじゃなくてウチに来てくれたのは有り難いですが…私には値段を付けることも出来ません…」
二人は感動を言葉にしてくれているのだろうが、出来ればあまり国王とか貴族とか偉そうな人とは関わりたく無い。
昨日聴いてしまった“奴隷”という言葉に反応してしまうのは過剰でも何でも無いと思う。
「あの、私はその王様とかお貴族様と関わらないようにする為にここに来たんです」
「あぁ、聴いているよ。でも、製作者がバレなければ別に問題ないのでは無いか?」
「そうです!王様に献上しないにしてもその辺で売るよりも貴族に売る方が確実に高値が付きますし、貴方にも箔も付きます!」
「じゃあ、お二人は王様やお貴族様に作ったのは誰なのか聞かれても答えないって事ですね?」
「…うん…まぁ、誤魔化し方は幾らでもあるからな」
それはそうだ。でも、国王って多分嘘とか付けないような相手だ。嘘ついたら殺される、とかそう言う存在だ。
「もし誤魔化せたとしても国王が全力で凄い人に頼めば私の事探せるんじゃ無いですか?」
「確かになくは無いことだろうが…」
「勿体無いです…」
二人は残念そうにしているが、私にとって王様とか貴族とか、稼げるとか、箔がつくとか、そんなのはどうでも良い。身の安全が第一なのだ。
「フィオデナルドを敵に回す訳にも行かないしな…要望通りにするが…」
「そうなると…一番いいのは少し品質を下げて出回っているものよりも少し良いものに見せて、徐々に世間に浸透させていく、とかですかね?」
「…いずれにしても長期戦という事だな」
品質を下げると言うのは逆にありがたい。寧ろ必然的に下がってしまうから言い訳せずに済みそうだ。
それから二人は色々と準備を整えてから連絡する、と言い私はギルド登録だけをしてマリーちゃんと共に宿屋に帰ってきた。
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