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君に振り向いてもらう為に〜sideフィルエール
僕の大好きな女の子
しおりを挟む「チュチュアンナ、君はどうして僕に協力してくれないの?」
「私はエルセフィロル様を応援しているからです」
「でも、僕がミリーと結婚したら君はミリーと親戚になれるんだよ?身内になれるんだよ?その方が良くない?」
「……はい、…いいえ!それよりもミリアーナ様の幸せが優先です」
ミリーが僕と結婚するとまるで幸せになれないみたいな言い方をするのはどうしてなんだろう。
「公子と結婚したらミリーは幸せになれるの?」
「そうです。ミリアーナ様の事を一番に考えて下さってるのは公子様ですし、家柄も良くて、一番お金持ちですし…」
「それなら一番に応援するのは王子じゃないの?」
「…王子と結婚したら私が会えなくなるじゃない…」
「それなら、僕に協力して親戚になった方がより会い易いんじゃないの?」
「……公子様とお約束したのです」
結局はそこなんだろう。
大体の予想はつく。
彼女は大人しい子のように見えるが、その実は自分の家が“誠実貴族”だなんだと良い様に呼ばれていて、他家に良いように利用されている事をよく理解している利発な子だった。
その事で彼女は自分の家を怖いくらい嫌っていた。そして、それを誇りに思っている両親の事も好きではなかった。
その一番の原因は他家に利用されるだけ利用されて家が傾きそうになった時にこれまで手を貸してきた家にも手のひらを返されたのを見えいたのが大きい。
その後も両親は何も出来ず、いよいよという時に姉の縁談がまとまり、そのお陰で何とか首が繋がって没落だけは免れたのだが、それだけのことがあったのにも関わらず、それらの家と今だに付き合い続けている両親に心底落胆したのだとか。
縁談は凄く良い家と結ばれたのだが、共々相手側は事業などの付き合いのあった家で、過去にその家が傾きかけた時に金銭的な支援もしていた。
なのに今回は婚姻が条件に出され、チュチュアンナは大好きな姉が身売りのように嫁がされるんだと感じでいた。
それに関しては気に食わないと良く愚痴を漏らしていた。
だから、チュチュアンナは家の為にという理由では結婚する気は全くなかった。次家が傾いたとしたら没落すればいい、とすら思っているようだった。
ただ、そんな憎むほどに嫌いな“誠実貴族”の看板のお陰でミリアーナの友人候補として選ばれ、出会うことが出来た。
お陰か、それからは姉の件も少しずつ受け入れる様になり、ミリーと出会ってから両親との蟠りも傍目から見てだけどかなり改善したように思う。
だからチュチュのミリアーナ様への態度は忠誠心というか敬愛と言うか、ほぼ盲信のような雰囲気だ。
更にその出逢うきっかけを与えてくれたエルセフィロルにも忠誠を誓っているようなのだ。
「約束って?」
「私はエルセフィロル様とミリアーナ様がご結婚された暁には、ミリアーナ様の侍女として働かせて貰うのです。親戚…というのも良い響きですが、侍女の方がよりミリアーナ様と一緒にいられます」
「じゃあ、僕も侍女にしてあげるよ?」
「それだけじゃありません。王子同レベルの対応を…王族と同じ対応を受けれるのはエルセフィロル様と結婚した場合だけです」
「…」
うん、まぁ…そうだよね。
僕の家は侯爵家だ。父は騎士団長を務めているし、そのお陰か私兵のレベルも高いし、警備などの面ではミリーを守り切る自信がある。
でも、それ以外の場合…例えば、国を揺るがす様な大きな事件の犯人となった場合、王族やその系譜の者だと最悪でも島流し、国外追放、廃嫡などで済まされるが、侯爵家以下になると死罪。
王族やその系譜にはどんなに大犯罪を犯そうとも死罪は免除される。暗殺に関しては別だが。
それだけじゃない、流行病が流行してミリーがその流行病を患ってしまった場合、そしてその薬の数が限られている場合、優先されるのは国を守る義務がある王とその家族。そしてその系譜である公爵家もその中に含まれる。
こればっかりはいくらお金を積もうと侯爵家が嘆願しようと一つの家だけを特別扱いする事はできない。こういう、権力や地位、血筋でしか解決出来ない時は必ずある。
「それを言われたら頭が痛いけど、ミリーは“特別”だよ?王族にならなくても良い待遇は受けられるはずだよ」
「…でも、やっぱり貴方だけはないです」
「どうして」
「私達は従兄弟です。格上の王子やエルセフィロル様にミリアーナ様が取られるならば諦めが付きますが、貴方が相手なら悔しすぎて確実に呪い…いえ、嫌がらせや邪魔をする自信しかないです」
「…うん。チュチュを侍女にするの辞めるよ」
「ほら。やっぱりエルセフィロル様しかあり得ません」
チュチュアンナのこの強すぎる想いは果たして忠誠心や敬愛という言葉ですむのか、従兄弟ながら恐ろしい。
「二人とも何してるんですの?」
「ミリアーナ様!」
「遅いから迎えに来てしまいましたわ」
「ミリーありがとうね」
「ふふふ、わたくしせっかちさんでしたわね」
「「可愛い…」」
コテン、と首を傾げてみせるミリーに今日も僕達はメロメロなんだ。
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