お嬢様は特別だ 〜乙女ゲームの悪役令嬢ミリアーナは何者か

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悪役令嬢のいる世界〜sideコレット

分からない悪役令嬢

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 ど、どうしてなの…!?
 私はきちんと4番を8回選択したのに一向に悪役令嬢ミリアーナとすれ違えない。
 も、もしかして何処かで間違えた?
 8回のすれ違いは何もしてなくても登下校や移動教室、先生からの呼び出しなどで廊下に出ると勝手に起こった。
 だから、それが終わってからというものミリアーナと挨拶するべく毎授業後、直ぐに廊下に出て各階、各廊下を駆け抜けているというのに全くミリアーナのミの字もない。
 しかも、ミリアーナの教室を覗いても毎度毎度彼女姿は見当たらない。
 ミリアーナと廊下ですれ違えないから、今だに誰とも挨拶を交わす事も出来ていない。
 このままだったら誰にもアプローチ出来ないまま一週間後に控えた次のイベント【校外学習】に突入してしまう。

 もー!!!何なのよ!
 8回があっという間に終わったから完全に油断してたわ!
 だって、ゲームでは毎回廊下の背景が一緒だから、何階の何処の廊下ですれ違うのかなんて分からないのよ。
 本当に手抜きよ!手抜き!毎回何階のどこの廊下なのか分かるように背景にも力を入れて描いておきなさいよ!!!

 なんて文句を言って見るけども、そもそも私が転生するなんてところまで制作スタッフが考えるわけないし、そんな所まで力入れてたら、それってもうアニメよね。…冷静になりましょ。

 …これはやっぱりミリアーナも私と同じ転生者で逆ハーレムルートを阻止する為に逃げ回ってるんじゃ…。
 いや、まだ校外学習まで2日ある。大丈夫よ。明日までにはすれ違えるよ、うん。



 …なんて思ってたのにもう明日が校外学習で、今は放課後。外は夕陽が沈みかけていて廊下を赤く染めている。
 ミリアーナとすれ違った廊下の背景は普通に昼間だった。だから、もう望みはない。
 …私どこで間違ったんだろ。まだ挽回する機会ってあるのかな…。ただでさえ高難易度のゲームなのにこんな所でミスしてたら…もうダメでしょ。
 でも、考えても考えても何を間違ったのか全く分からない。唯一思い当たるのは家のことだけど…でも、それは設定通りにするためにお気に入りのドレスもアクセサリーも我慢して家に置いて来たし、マナーもある程度習って来たけど、出来ないふりしてるし…。設定はきちんと守ってるのよ?
 それにキャラクター達と廊下をすれ違った時だってちゃんとスチル画像のような表情も見れたし、順番だってフルーライト、エルセフィロル、フィルエール、クレマンの順で2回づつだった。
 それ以降は会いたい気持ちに蓋をして、遠くから一目見るだけに留めてようとして…まぁ、会いたくても何故か会えなかったんだからその辺もちゃんとゲーム通り進んでるはずよ。
 なのに何でミリアーナに会えないの…?
 ゲームに他の要素ってあったっけ…?
 思い出せ…思い出せっ!何か思い出せ…っ!!!

「お帰りなさいませ」

「…ただいま」

「どうかなさいましたか?」

「…大丈夫よ。少し部屋で休むから夕食になったら呼びにきて」

「畏まりました」

 ふーっ。ふわふわベッド癒されるわー。
 …よし、落ち着け私。ここはゲームの中の世界だけど、ゲームじゃない。だから、初めの一週間のようにゲーム内では省略されている場所が絶対に存在している。もしこれが失敗ではないのなら今はその期間。そしてもし失敗しているのならば遅れを取り戻すチャンスもきっとそこだけだろう。
 心配なのはそこで更に物語が良くない方に改変されてしまう事。ただゲーム内で語られない時間だからこそ、他に影響を与えないという可能性もあり得る。
 …此処は慎重に見極めなければならないわ。
 よし、そうと決まれば明日は校外学習だからそれに向けて作戦を練ろう。
 もう二度と失敗は許されない。
 やるわよ!やってやるわよー!!!!



ーー
ーーー
ーーーー
ーーーーー



「………おはようございます?」

「…おはよう(小声)」

「…っ!」

 まじかー。まじかよー。何だよ…。何なんだよ…。ミリアーナとの挨拶って校外学習の日だったのかよ…。本当に焦って損したー。まじ萎え萎えな気分だわー。
 だって、やってやるぞっ!って鼻息ふんふん言わせながら息巻いて学校に乗り込んだら、キラキラな神々しい何かが目の前から歩いてきて、目を擦ってたらそれがミリアーナ達御一行様で教室の前ですれ違って慌てすぎて疑問系の挨拶しちゃったんだよ?

 でも、今冷静になって考えると確かに御一行様が一同に返すって場面って日常ならなかなかないか。まず王子とクレマンは学年が違うし、私達1年生もクラスは全員一緒って訳ではないし、男女で別れて行われる授業もあるし、移動教室もある。その点、校外学習なら学生全員が集まるからクラス関係なく全員揃っててもおかしくない。
 まぁ、結果的に挨拶交わせたから良かったか…。本当良くあの時咄嗟に声出せたよ、私。今度ご褒美買ってあげよう。

「ミリアーナ様、何故あの子にご挨拶を…?」

「き、聞こえていたの?」

「チュチュには聞こえておりましたよ」

「チュチュ、ごめんなさい」

「ミ、ミリアーナ様が謝る事はありませんわ!…た、ただ校外学習ではお付きの人はご一緒出来ないとの事ですから、わたくしがミリアーナ様の身の回りを、とユーリ様にはキツく言づかっているのです。ですから、何かあったのかとお伺いしたかっただけなのです」

「…ご挨拶をされたからですわ」

「お優し過ぎますわ、ミリアーナ様」

「あの方…となら…チュチュみたいにお話し出来そうだったので…」

「……お気持ちはわかりますが、チュチュでご勘弁くださいませ」

「勘弁なんて!そんな!チュチュ以上に素敵なお友達なんてこの世にいませんわ!」

「ミ、ミリアーナ様…///」

 よしよし。いいわ。
 この会話を攻略対象達が聞いていて、そこから私との接触が始まるのよ。
 これでやっと日常パートも進められそうね。あー、やっとみんなとお話し出来るのね。楽しみだわ!

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