お嬢様は特別だ 〜乙女ゲームの悪役令嬢ミリアーナは何者か

ree

文字の大きさ
上 下
20 / 37
悪役令嬢のいる世界〜sideコレット

分からない悪役令嬢

しおりを挟む


 ど、どうしてなの…!?
 私はきちんと4番を8回選択したのに一向に悪役令嬢ミリアーナとすれ違えない。
 も、もしかして何処かで間違えた?
 8回のすれ違いは何もしてなくても登下校や移動教室、先生からの呼び出しなどで廊下に出ると勝手に起こった。
 だから、それが終わってからというものミリアーナと挨拶するべく毎授業後、直ぐに廊下に出て各階、各廊下を駆け抜けているというのに全くミリアーナのミの字もない。
 しかも、ミリアーナの教室を覗いても毎度毎度彼女姿は見当たらない。
 ミリアーナと廊下ですれ違えないから、今だに誰とも挨拶を交わす事も出来ていない。
 このままだったら誰にもアプローチ出来ないまま一週間後に控えた次のイベント【校外学習】に突入してしまう。

 もー!!!何なのよ!
 8回があっという間に終わったから完全に油断してたわ!
 だって、ゲームでは毎回廊下の背景が一緒だから、何階の何処の廊下ですれ違うのかなんて分からないのよ。
 本当に手抜きよ!手抜き!毎回何階のどこの廊下なのか分かるように背景にも力を入れて描いておきなさいよ!!!

 なんて文句を言って見るけども、そもそも私が転生するなんてところまで制作スタッフが考えるわけないし、そんな所まで力入れてたら、それってもうアニメよね。…冷静になりましょ。

 …これはやっぱりミリアーナも私と同じ転生者で逆ハーレムルートを阻止する為に逃げ回ってるんじゃ…。
 いや、まだ校外学習まで2日ある。大丈夫よ。明日までにはすれ違えるよ、うん。



 …なんて思ってたのにもう明日が校外学習で、今は放課後。外は夕陽が沈みかけていて廊下を赤く染めている。
 ミリアーナとすれ違った廊下の背景は普通に昼間だった。だから、もう望みはない。
 …私どこで間違ったんだろ。まだ挽回する機会ってあるのかな…。ただでさえ高難易度のゲームなのにこんな所でミスしてたら…もうダメでしょ。
 でも、考えても考えても何を間違ったのか全く分からない。唯一思い当たるのは家のことだけど…でも、それは設定通りにするためにお気に入りのドレスもアクセサリーも我慢して家に置いて来たし、マナーもある程度習って来たけど、出来ないふりしてるし…。設定はきちんと守ってるのよ?
 それにキャラクター達と廊下をすれ違った時だってちゃんとスチル画像のような表情も見れたし、順番だってフルーライト、エルセフィロル、フィルエール、クレマンの順で2回づつだった。
 それ以降は会いたい気持ちに蓋をして、遠くから一目見るだけに留めてようとして…まぁ、会いたくても何故か会えなかったんだからその辺もちゃんとゲーム通り進んでるはずよ。
 なのに何でミリアーナに会えないの…?
 ゲームに他の要素ってあったっけ…?
 思い出せ…思い出せっ!何か思い出せ…っ!!!

「お帰りなさいませ」

「…ただいま」

「どうかなさいましたか?」

「…大丈夫よ。少し部屋で休むから夕食になったら呼びにきて」

「畏まりました」

 ふーっ。ふわふわベッド癒されるわー。
 …よし、落ち着け私。ここはゲームの中の世界だけど、ゲームじゃない。だから、初めの一週間のようにゲーム内では省略されている場所が絶対に存在している。もしこれが失敗ではないのなら今はその期間。そしてもし失敗しているのならば遅れを取り戻すチャンスもきっとそこだけだろう。
 心配なのはそこで更に物語が良くない方に改変されてしまう事。ただゲーム内で語られない時間だからこそ、他に影響を与えないという可能性もあり得る。
 …此処は慎重に見極めなければならないわ。
 よし、そうと決まれば明日は校外学習だからそれに向けて作戦を練ろう。
 もう二度と失敗は許されない。
 やるわよ!やってやるわよー!!!!



ーー
ーーー
ーーーー
ーーーーー



「………おはようございます?」

「…おはよう(小声)」

「…っ!」

 まじかー。まじかよー。何だよ…。何なんだよ…。ミリアーナとの挨拶って校外学習の日だったのかよ…。本当に焦って損したー。まじ萎え萎えな気分だわー。
 だって、やってやるぞっ!って鼻息ふんふん言わせながら息巻いて学校に乗り込んだら、キラキラな神々しい何かが目の前から歩いてきて、目を擦ってたらそれがミリアーナ達御一行様で教室の前ですれ違って慌てすぎて疑問系の挨拶しちゃったんだよ?

 でも、今冷静になって考えると確かに御一行様が一同に返すって場面って日常ならなかなかないか。まず王子とクレマンは学年が違うし、私達1年生もクラスは全員一緒って訳ではないし、男女で別れて行われる授業もあるし、移動教室もある。その点、校外学習なら学生全員が集まるからクラス関係なく全員揃っててもおかしくない。
 まぁ、結果的に挨拶交わせたから良かったか…。本当良くあの時咄嗟に声出せたよ、私。今度ご褒美買ってあげよう。

「ミリアーナ様、何故あの子にご挨拶を…?」

「き、聞こえていたの?」

「チュチュには聞こえておりましたよ」

「チュチュ、ごめんなさい」

「ミ、ミリアーナ様が謝る事はありませんわ!…た、ただ校外学習ではお付きの人はご一緒出来ないとの事ですから、わたくしがミリアーナ様の身の回りを、とユーリ様にはキツく言づかっているのです。ですから、何かあったのかとお伺いしたかっただけなのです」

「…ご挨拶をされたからですわ」

「お優し過ぎますわ、ミリアーナ様」

「あの方…となら…チュチュみたいにお話し出来そうだったので…」

「……お気持ちはわかりますが、チュチュでご勘弁くださいませ」

「勘弁なんて!そんな!チュチュ以上に素敵なお友達なんてこの世にいませんわ!」

「ミ、ミリアーナ様…///」

 よしよし。いいわ。
 この会話を攻略対象達が聞いていて、そこから私との接触が始まるのよ。
 これでやっと日常パートも進められそうね。あー、やっとみんなとお話し出来るのね。楽しみだわ!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ

奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。  スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。

黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。 差出人は幼馴染。 手紙には絶縁状と書かれている。 手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。 いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。 そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……? そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。 しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。 どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。

みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います

下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。 御都合主義のハッピーエンドです。 元鞘に戻ります。 ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。 小説家になろう様でも投稿しています。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

【完結】死がふたりを分かつとも

杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」  私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。  ああ、やった。  とうとうやり遂げた。  これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。  私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。 自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。 彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。 それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。 やれるかどうか何とも言えない。 だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。 だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺! ◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。 詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。 ◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。 1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。 ◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます! ◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。

私があなたを好きだったころ

豆狸
恋愛
「……エヴァンジェリン。僕には好きな女性がいる。初恋の人なんだ。学園の三年間だけでいいから、聖花祭は彼女と過ごさせてくれ」 ※1/10タグの『婚約解消』を『婚約→白紙撤回』に訂正しました。

処理中です...