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「じゃあ、モニカたちのところへ行こう」
「そうっスね」
手には封印された妖刀もちゃんと持っている。
捕まえた騎士は近くを歩いていた見回りの騎士に伝えておいた。あとは勝手にあっちで処理してくれるだろう。
フィーに案内されて王の間の下の階にある騎士訓練場の一つに足を運んだ。
そこではちょうどモニカと男の騎士レドルが模擬戦闘をしていた。
「なぜ模擬戦?」
隣りのフィーが答える。
「なんかディビナちゃんが言うには、同じ『血印魔法』が使えるからって、騎士の人が戦い方を見てくれてるっらしいっス」
そういえば、同じ血族だっけ?
この騎士も『霧影』が使えるのを何度もみたからな。
「じゃあ、あっちの方も相変わらずか……」
パンツ履いてないんだろうな。
「私も脱いだ方がいいっスか?」
フィーがまた馬鹿な事を言い出した。
「いや、パンツはちゃんと履いてくれ。これじゃあ、まるで俺が履かせてないみたいに思われるからな……」
「そうっスか? じゃあ履いたままにするっス」
フィーに対して素を見せろと言うのは、別に素股を見せろって意味ではないのだ。
そのくらいは自分で判断して欲しい……。
冗談だとは思うけど。
と、そこで俺が入ってきたことに魔王メアリスが気づいて、声をかけてくる。
「あ、起きられたんですね。心配していたのでよかったです」
「わざわざ心配してくれたのか……悪いな、色々と」
俺はとにかく謝ることが最優先だと思った。
メアリスもなんだかんだで迷惑をかけてしまった。
「いえ、無事ならいいんです。私の早合点で危うく殺してしまいそうにもなりましたし……」
「そのことはいいさ、お互い様だ。それよりも妖刀のことなんだが……」
「そうでしたね。妖刀を床に置いて、コウセイさんはその横に立ってください。魔法によって所有者契約を結ばせます」
「ただ立っているだけでいいのか?」
「いいえ、契約を完了させるためには、妖刀にこの契約を了承させる必要があります。まだこの刀がマルファーリスの支配を受けている場合、ちょっと厳しいかもしれませんが条件をつけて交渉してでも、刀の了承をとってください。失敗した場合は、この刀は二度と使えないように破棄したほうがいいでしょう」
「わかった。やってくれ」
そういって床を黒い棒が叩くと、魔法陣が展開される。
俺は夢の心地になって、どこか知らない場所へと意識が飛んだ。
「ん? どこだここ?」
そこにいたのは一人の少女だった。
中性的な顔立とシルエットにショートカットの女の子。
だがどこか全体的にぼんやりとしていて、はっきりとはわからない。
その子が俺に話しかける。
「久しぶり。僕にまだ用があるのかな?」
ああ、そういうことか。ここで話をするのか。
「お前を正式に俺の所有物にするためにここに来た」
「僕を? 君が? あそこまでされて? それでなぜ所有したいと思うのかな?」
「ああ、確かにあれは悪夢だったよ。でもさ、お前の意志じゃないんだろ? あんたの自由なんてどこにもなかった」
「自由? 何を言っているのやら……。僕の与えられた命令を果たしただけ。僕の意志だよ」
「違うな……。誰かにはじめから生まれた意味を決められた人生が、自由なはずはない。それを俺が一番よく知っているからな」
生まれた時に選べない者がある。
それは親だ。
親には資格がいらない。だから親にはいろんな人がいる。
良い親もいればダメダメな親もいる。
到底、子どもを育てるに値(あたい)しない無責任な親もたくさんいる。
でもそうやって世界は続いてきたから誰も文句を言えないのだ。
それによって被害を受けるのは誰か?
――そうだ、それが子どもなのだ。
この妖刀は生みの親に名前も与えられず、ただ命令に従って人を殺すためにだけ生みだされた。
今回の事件もマルファーリスによる精神拘束を応用した暴挙の一端だったにすぎないのだろう。
そこにはこの妖刀の意志も自由もない。
「なにを言いだすかと思えば……」
すでにマルファーリスの支配的な影響が途絶えているのか、少しだけ動揺したように妖刀は声をひねり出した。
「俺がお前を自由にしてやる。だから俺に従え。そして、俺の物になれ!」
それを聞いて溜息を吐いたのは妖刀の少女だ。
「なんて勝手な人だ……」
「嫌なのか? このままだとお前は破棄されることになるんだぞ?」
「……」
「なにも出来ずに終わってもいいのか? それにお前はたぶん悪い奴ではないと思うんだ」
「何を根拠に……」
「だってあの時、俺の心臓を治してくれただろ?」
「それはそうしたほうが後々の計画のためにはいいと思ったから……」
「いや、違うな。もっとスマートな方法はいくらでもあったはずだし、わざわざリスクの高い『俺を助ける』なんて選択肢を選んで計画に使うなんて無駄はしない」
俺はゆっくり首を振って、さらに続きを語る。
「あの日あの時までは、間違いなく俺を殺すことが最優先だったはずだ。結果的に俺が生き残ったことを利用しようとマルファーリスはしたのだろうけど。つまり、何が言いたいかと言うと、お前はあの日、俺を助けてくれようとしたんだ」
「前にも言ったよね? 君の命をつないだのは、そうすべきだったからだ。君を助けたかったからなんかじゃ……ないよ」
尻すぼみの言葉にもはや説得力はなかった。
俺はゆっくりとその妖刀だと言う少女に近づいて、その華奢な腕をつかんだ。
この命令を聞く以外に何もない少女にも、俺からあげられるものがある。
「お前の名前は、妖子(ヨウコ)だ。俺の所有物になれ!」
ずっと名前もなく、ただの妖刀だったこの子に、俺にでも名前をつけることはできる。
あんなロリババアにいいように使われなくても、もういいのだ。
俺の顔を無言で眺める妖刀の少女は、再び長いため息をつく。
「その名前……ダサいよ」
「な……」
せっかく考えた名前なのにダサいって……。日本では普通なのに。全国のヨウコさん、すまない。
俺はここに来て初めて心が折れそうになった。
俺のセンスってダサかったのか……。
とりあえず少女には子を付けておとけばいいという考えがダメなのだろうか?
そこに妖刀がこう付け加えた。
「でも、もし名前を考え直してくれるなら、主様の所有物にないってもいいよ?」
「……え? いいのか?」
そんなことでいいのか?
名前を考えて、それを与えるだけ。
それだけで所有物になることをOKしてくれるというのか?
いや、これは難題だ。名前を考えるのは意外と大変なのだ。
一通り口に出してみる。
「ようとう……ようこ……ようみ……よもみ……よもぎ……、いや今度は「も」で攻めて見よう。もも……もぬ……もみじ?」
もみじで止めるが、用途は首を横に振った。
気に入らなかったらしい。
……ていうかこの妖刀、名前にめっちゃこだわっているみたいに見える。
本当は名前をつけてほしかったのかもしれない。
「あ~・か~・さ~・た~・な~・は……」
五十音で名前をとにかく引っ張り出そうとするが見当たらない。
「ま・や・ら……リ? ん~、あそうだ! 刀身も黒いし、『夜』って感じがするから『莉々珠(りりす)』なんてどうだ?」
それを聞いた妖刀は少しだけ微笑んで静かに目を閉じた。
頭の中でその名前を反芻しているのかもしれない。
気に入った……のか?。
「うん、それで構わないよ。これ以上は、良さそうな名前が出てこないかもしれないしね」
そう言ったのは半分くらいはやせ我慢なのだと思う。
「よし、これで完了か?」
「ううん、最後に一つ残っているよ?」
「え? なにがのこっ」
そう言って俺の唇に柔らかくて暖かい何かがふれた。
何をしたのかは一目瞭然。
俺に口づけをしたのだ。
「お、おい……何を」
「決まっているじゃないか。所有者契約だよ。改めてよろしく、主様」
にこりと微笑んだ顔を始めて見た。
その幼い顔がこの時はっきりと伺えた。
妖刀が、『莉々珠』という名前を得たことによってはっきりと見えるようになって実体化したのだ。
名前を得ただけで存在がはっきりとするのが生きた武器の特徴らしい。
俺は意識が訓練場に戻ってくるのがわかった。
「どうだったっスか?」
フィーが声をかけてくる。
「ああ、説得できたよ」
メアリスも声をかけてくる。
「おめでとうございます。無事契約は完了しました。フィーさん、武器拘束を解いてあげてください」
「了解っス。武器拘束を解除!!」
そういってローブが解かれると、宙に浮きあがった妖刀が一瞬だけ眩しい光を放った。
目の前にいたのは、刀ではなかった。
「おい……お前は」
目の前にいたのは、見た目6~7歳くらいの幼い女の子だった。
背丈も俺の胸辺りまでしかない。
中性的な顔立ちにショートカットと、まさにさっき見たばかりの子と同一人物。
「ボクは莉々珠だよ、こっちでは初めてだね。よろしく主様」
それを見ていたメアリスは驚いたまま俺を見る。
「あの、もしかしてこの子に名前を与えたんですか?」
なぜそんなことを聞くのか疑問に思ったが、すぐに頷く。
「え? そうだけど?」
「じゃあ……キスも?」
「ああ、した」
「……そうですか、してしまったことは取り消せませんから仕方ないですね」
ちゃんと説明をしなかったことをメアリスは悔いる表情をした。
ん? どういうことだ? 何かまずかったのか?
俺はきょろきょろ視線をメアリスとリリスの間で往復させた。
「どういうことなんだ? 事情がわからないんだけど……」
「え~と、実はですね。生きている武具って言うのは、名前の無い状態だと卵の中にいるひな鳥みたいなものなんです。『名前』を与えて誰かの魔法でそれを孵化させるのは、そのまま親と子の関係と同じなんです。そして誓いのキスは、親と子のきずなを永遠にするんです」
「じゃあ……この子はこの先ずっと俺の娘ってこと?」
ちょっと気まずそうにメアリスは頷く。
「はい……。しかも私の魔力で孵化させたので……」
「え~と、つまり?」
「この子にとってのコウセイさんが父親、私が母親という扱いになります」
それを聞いた俺が驚くのは当然だが、いつも何かしら言葉をはさんでくるフィーが無言で立ち尽くしていた。
「本当に?」
それに答えたのは妖刀の莉々珠だ。
「そうだよ、主様。これからは父様と呼んだ方がいいかな?」
「いや、止めてくれ! なんか変な感じだ。おい、もしかして……」
親子関係になったと、突飛なことを聞いたはずなのに、妖刀の莉々珠は全く驚いてなかった。
もしかして莉々珠は、それを知っていた?
俺が名前をつけてやる代わりに所有物になることに了承したのは、これを知っていたからなのか。
あれだけ動揺はしても頑なに所有物になると言わなかったのに、いきなり意見を翻した理由がこれなのかもしれない。
キスも本当は所有者契約に必要なことではなかったようだし。
メアリスは少しだけ頬を赤くして、俺を見ていた。
「その……いきなり子持ちになってしまいました。どうしましょう?」
どうしましょうって、俺にそんなことわかるわけがないだろうに
本当にどうしよう……。
でもあれだぞ? この子は人間に見えても刀だ。
武器なのだ。
でもリリスを見るとそうと割り切れない感情も俺にはある。
「いや、その、あれだ。これはなんというか、不可抗力というやつだ。メアリスは気にしなくてもいいぞ? 俺が一人でも育て……いや持って帰るから。できちゃっただけだから」
何の言い訳かは分からない気持ちを抑えながら、とりあえずこれで話を終わらせたいと心から俺は願う。
「そうですね。わかりました。私はバツイチになってしまったんですね……」
ちげーよ。何言ってんの?
今のは離婚宣言とかじゃないから。親権争いでもないよ?
「いや、メアリスさんよ、ちょっと落ち着いて……。おい、フィーさんもどうした? なんで何も言わずに固まってる?」
俺は「さん」付けでへりくだった口調になりながら、フィーの肩を揺すった。
「結婚を飛び越えたっス……。こうやって『既成事実』をつくればよかったんスね……」
と訳のわからないことを呟いて、忘我状態のままだった。
とりあえず、妖刀の莉々珠の手を引いて、そそくさとこの場を一緒に離れた。
これが最善で賢明な判断のはずだ。
明日には頭も冷えて冷静にこの状況を理解するだろう。
相手は刀であり武器なのだ。
落ち着いて考えればそこまで慌てることじゃない。
さて、いろいろあったが、それでも俺のやることは変わらない。
そう思いながら王城での短い時間を過ごすのだった。
明日には、帝国へと戻ってしまうのだから。
次の日の朝、俺たちは城を飛び立った。
とはいえ、その出発までの時間さえもいろいろ起こり、筆舌に尽くしがたいものがある。
――出発の数時間前。
俺はこのぎこちない雰囲気の中で王の間へと足を運んでいた。
もちろん、4人と1匹が一緒だ。
俺の隣に妖刀の莉々珠、その逆隣りにモニカ、後ろからディビナとフィーだった。
なぜぎこちない雰囲気なのか?
変な圧迫感を感じていると言い換えてもいいかもしれない。
ぎくしゃく?ともなんか違う。
これを感じているのは俺だけではないだろう。
空気を読む術に長けていない俺ですらこの異様な雰囲気を他の4人の女の子から感じるのだ。
我慢しきれなくなったと言う顔でモニカが気になっていたことを切り出した。
「その……莉々珠ちゃん? どうしてそんなお兄ちゃんにベタベタくっついているのですか?」
「どうして? 主様はボクのパパだからだよ?」
「む~~~~~」
モニカは頬を膨らませていた。
俺はそんな姿を見てなんとなく気付いた。
モニカは妹で一番俺と距離感が近かった。
でも今はその距離感が子どもである莉々珠の方が近いのだ。
「ボクは主様の子どもだから、ね?」
とはいえ、俺の腕をつかんでいる莉々珠のやっていることは、別に子どもなら誰でもすることではないはずだ。
その論理が著しく破たんしている理屈に嫉妬心を燃やすのもモニカの頭がどこか少し抜けているからかもしれない。
「ディビナちゃんはいいのですか?」
ディビナはというと終始笑顔だった。
「構いませんよ。ええ、ほんとに。これっぽっちも気にしていません……」
だが、逆にこの取り繕った笑みが怖い。
愛想笑いの下に何が隠れているのか分からないのだ。
ふと俺はフィーの方へ視線を向けた。
いつもの明るい表情をしていたのだが……。
なんていうか、何らかの決心を決めたという雰囲気だけがわかった。
こっちはこっちでホントに怖いな……。
モニカはただ小さい子がすることに腹を立てることはしないが、妹であるプライドは捨てられなかったらしい。
リリスに張り合うことにしたようだ。
俺は俺で、他に考えることがあって大変なのだ。
それは、ダンジョンで拾ったパンツの件だった。
魔王メアリスに返却すべきか?
何度かシュミレーションしてみたのだが、上手い言い訳が見つからない。
だいたいパンツを拾ったって何だよ……って話だ。
そもそも、なぜメアリスはあんなところにパンツを落としていたのか?
よくわからないから、どの言い訳が正しいのか分からない。
まあ、ここまで来たら当たって砕けるしかないか。
王の間に行くと、そこにいたのは魔王メアリスと顔見知りの騎士が二人だけだった。
メアリスが声をかけないことに男の騎士レドルは困惑して、先に俺たちへと声をかけてくる。
「おお、来たか。もう出発するのか?」
「そうだ。少しの間だったが、世話になったな。それで……」
俺はポケットから二つの布切れを取りだした。
そのままメアリスの前まで階段をのぼって歩いていく。
「……どうしましたか?」
ようやく声を出したメアリスは、昨日の醜態を恥ずかしがるように俺から視線をそらした。
「いや、そのなんだ……これを返そうと思ってな」
「これは……?」
俺が手に持っているのは二枚のパンツだった。
「その、ダンジョンの最下層で拾ってな。何かの暗号?と思ってそのまま持ち帰ってしまったんだ。受け取ってくれ……」
正直、人前でパンツを渡す言い訳をしながら女の子にそれを受け取ってもらう光景は、顔から火が出るほど恥ずかしいものだった。
「そうでしたか……でも」
俺はメアリスの表情を見て、まさか受け取りを拒否されるのかと一瞬頭によぎる。
が、そうではなかった。
メアリスはちゃんと手に持ったパンツの一枚をゆっくりと手に取った。
「これは私のですが、こっちは違います……」
俺は一瞬何を言われたのか分からなかった。
「え~と、こっちは……?」
「私のものではないですね……」
俺の手に残ったパンツと、メアリスの受け取ったパンツの2枚をよく見比べて見ると、少し色が違うことに気づいた。
手に残った方は少しだけベージュの色が混ざっている。
そして形から、残った方が村の上流で川をせき止めていたダンジョンから拾ったものだと気づいた。
「それじゃあ……別の誰か?」
「はい」
「え~とちなみに聞いていいかな? なんであんなところに落ちてたんだ?」
「それは落ちていたのではなくて、置いてあったのです。ダンジョンというのは支配権が明確に決まっていて、最下層の中心点に魔王の肌着を置くのが一番効率が良かったのです。当時はまだ私の魔法は支配数が足りずに弱いままでした。それを補うための苦肉の策で、下着を置くことにしたのです」
「そ、そうか……」
この世界の住人、下着に能力を委ねすぎだろ。
「まさか、最下層にまで来れる人がいるとはだれも思いませんし……。無くなった時は驚きましたけど。どこか別の場所に置いたのではないかと探しましたし、レドルさんに疑いをかけた時期もありましたし……」
それを聞いた男の騎士は、うんうんと頷いた。
「それはすまなかったな……」
どうやら、ダンジョンを出入りしていた唯一の男に疑いがかかったようだ。
「そうっスね」
手には封印された妖刀もちゃんと持っている。
捕まえた騎士は近くを歩いていた見回りの騎士に伝えておいた。あとは勝手にあっちで処理してくれるだろう。
フィーに案内されて王の間の下の階にある騎士訓練場の一つに足を運んだ。
そこではちょうどモニカと男の騎士レドルが模擬戦闘をしていた。
「なぜ模擬戦?」
隣りのフィーが答える。
「なんかディビナちゃんが言うには、同じ『血印魔法』が使えるからって、騎士の人が戦い方を見てくれてるっらしいっス」
そういえば、同じ血族だっけ?
この騎士も『霧影』が使えるのを何度もみたからな。
「じゃあ、あっちの方も相変わらずか……」
パンツ履いてないんだろうな。
「私も脱いだ方がいいっスか?」
フィーがまた馬鹿な事を言い出した。
「いや、パンツはちゃんと履いてくれ。これじゃあ、まるで俺が履かせてないみたいに思われるからな……」
「そうっスか? じゃあ履いたままにするっス」
フィーに対して素を見せろと言うのは、別に素股を見せろって意味ではないのだ。
そのくらいは自分で判断して欲しい……。
冗談だとは思うけど。
と、そこで俺が入ってきたことに魔王メアリスが気づいて、声をかけてくる。
「あ、起きられたんですね。心配していたのでよかったです」
「わざわざ心配してくれたのか……悪いな、色々と」
俺はとにかく謝ることが最優先だと思った。
メアリスもなんだかんだで迷惑をかけてしまった。
「いえ、無事ならいいんです。私の早合点で危うく殺してしまいそうにもなりましたし……」
「そのことはいいさ、お互い様だ。それよりも妖刀のことなんだが……」
「そうでしたね。妖刀を床に置いて、コウセイさんはその横に立ってください。魔法によって所有者契約を結ばせます」
「ただ立っているだけでいいのか?」
「いいえ、契約を完了させるためには、妖刀にこの契約を了承させる必要があります。まだこの刀がマルファーリスの支配を受けている場合、ちょっと厳しいかもしれませんが条件をつけて交渉してでも、刀の了承をとってください。失敗した場合は、この刀は二度と使えないように破棄したほうがいいでしょう」
「わかった。やってくれ」
そういって床を黒い棒が叩くと、魔法陣が展開される。
俺は夢の心地になって、どこか知らない場所へと意識が飛んだ。
「ん? どこだここ?」
そこにいたのは一人の少女だった。
中性的な顔立とシルエットにショートカットの女の子。
だがどこか全体的にぼんやりとしていて、はっきりとはわからない。
その子が俺に話しかける。
「久しぶり。僕にまだ用があるのかな?」
ああ、そういうことか。ここで話をするのか。
「お前を正式に俺の所有物にするためにここに来た」
「僕を? 君が? あそこまでされて? それでなぜ所有したいと思うのかな?」
「ああ、確かにあれは悪夢だったよ。でもさ、お前の意志じゃないんだろ? あんたの自由なんてどこにもなかった」
「自由? 何を言っているのやら……。僕の与えられた命令を果たしただけ。僕の意志だよ」
「違うな……。誰かにはじめから生まれた意味を決められた人生が、自由なはずはない。それを俺が一番よく知っているからな」
生まれた時に選べない者がある。
それは親だ。
親には資格がいらない。だから親にはいろんな人がいる。
良い親もいればダメダメな親もいる。
到底、子どもを育てるに値(あたい)しない無責任な親もたくさんいる。
でもそうやって世界は続いてきたから誰も文句を言えないのだ。
それによって被害を受けるのは誰か?
――そうだ、それが子どもなのだ。
この妖刀は生みの親に名前も与えられず、ただ命令に従って人を殺すためにだけ生みだされた。
今回の事件もマルファーリスによる精神拘束を応用した暴挙の一端だったにすぎないのだろう。
そこにはこの妖刀の意志も自由もない。
「なにを言いだすかと思えば……」
すでにマルファーリスの支配的な影響が途絶えているのか、少しだけ動揺したように妖刀は声をひねり出した。
「俺がお前を自由にしてやる。だから俺に従え。そして、俺の物になれ!」
それを聞いて溜息を吐いたのは妖刀の少女だ。
「なんて勝手な人だ……」
「嫌なのか? このままだとお前は破棄されることになるんだぞ?」
「……」
「なにも出来ずに終わってもいいのか? それにお前はたぶん悪い奴ではないと思うんだ」
「何を根拠に……」
「だってあの時、俺の心臓を治してくれただろ?」
「それはそうしたほうが後々の計画のためにはいいと思ったから……」
「いや、違うな。もっとスマートな方法はいくらでもあったはずだし、わざわざリスクの高い『俺を助ける』なんて選択肢を選んで計画に使うなんて無駄はしない」
俺はゆっくり首を振って、さらに続きを語る。
「あの日あの時までは、間違いなく俺を殺すことが最優先だったはずだ。結果的に俺が生き残ったことを利用しようとマルファーリスはしたのだろうけど。つまり、何が言いたいかと言うと、お前はあの日、俺を助けてくれようとしたんだ」
「前にも言ったよね? 君の命をつないだのは、そうすべきだったからだ。君を助けたかったからなんかじゃ……ないよ」
尻すぼみの言葉にもはや説得力はなかった。
俺はゆっくりとその妖刀だと言う少女に近づいて、その華奢な腕をつかんだ。
この命令を聞く以外に何もない少女にも、俺からあげられるものがある。
「お前の名前は、妖子(ヨウコ)だ。俺の所有物になれ!」
ずっと名前もなく、ただの妖刀だったこの子に、俺にでも名前をつけることはできる。
あんなロリババアにいいように使われなくても、もういいのだ。
俺の顔を無言で眺める妖刀の少女は、再び長いため息をつく。
「その名前……ダサいよ」
「な……」
せっかく考えた名前なのにダサいって……。日本では普通なのに。全国のヨウコさん、すまない。
俺はここに来て初めて心が折れそうになった。
俺のセンスってダサかったのか……。
とりあえず少女には子を付けておとけばいいという考えがダメなのだろうか?
そこに妖刀がこう付け加えた。
「でも、もし名前を考え直してくれるなら、主様の所有物にないってもいいよ?」
「……え? いいのか?」
そんなことでいいのか?
名前を考えて、それを与えるだけ。
それだけで所有物になることをOKしてくれるというのか?
いや、これは難題だ。名前を考えるのは意外と大変なのだ。
一通り口に出してみる。
「ようとう……ようこ……ようみ……よもみ……よもぎ……、いや今度は「も」で攻めて見よう。もも……もぬ……もみじ?」
もみじで止めるが、用途は首を横に振った。
気に入らなかったらしい。
……ていうかこの妖刀、名前にめっちゃこだわっているみたいに見える。
本当は名前をつけてほしかったのかもしれない。
「あ~・か~・さ~・た~・な~・は……」
五十音で名前をとにかく引っ張り出そうとするが見当たらない。
「ま・や・ら……リ? ん~、あそうだ! 刀身も黒いし、『夜』って感じがするから『莉々珠(りりす)』なんてどうだ?」
それを聞いた妖刀は少しだけ微笑んで静かに目を閉じた。
頭の中でその名前を反芻しているのかもしれない。
気に入った……のか?。
「うん、それで構わないよ。これ以上は、良さそうな名前が出てこないかもしれないしね」
そう言ったのは半分くらいはやせ我慢なのだと思う。
「よし、これで完了か?」
「ううん、最後に一つ残っているよ?」
「え? なにがのこっ」
そう言って俺の唇に柔らかくて暖かい何かがふれた。
何をしたのかは一目瞭然。
俺に口づけをしたのだ。
「お、おい……何を」
「決まっているじゃないか。所有者契約だよ。改めてよろしく、主様」
にこりと微笑んだ顔を始めて見た。
その幼い顔がこの時はっきりと伺えた。
妖刀が、『莉々珠』という名前を得たことによってはっきりと見えるようになって実体化したのだ。
名前を得ただけで存在がはっきりとするのが生きた武器の特徴らしい。
俺は意識が訓練場に戻ってくるのがわかった。
「どうだったっスか?」
フィーが声をかけてくる。
「ああ、説得できたよ」
メアリスも声をかけてくる。
「おめでとうございます。無事契約は完了しました。フィーさん、武器拘束を解いてあげてください」
「了解っス。武器拘束を解除!!」
そういってローブが解かれると、宙に浮きあがった妖刀が一瞬だけ眩しい光を放った。
目の前にいたのは、刀ではなかった。
「おい……お前は」
目の前にいたのは、見た目6~7歳くらいの幼い女の子だった。
背丈も俺の胸辺りまでしかない。
中性的な顔立ちにショートカットと、まさにさっき見たばかりの子と同一人物。
「ボクは莉々珠だよ、こっちでは初めてだね。よろしく主様」
それを見ていたメアリスは驚いたまま俺を見る。
「あの、もしかしてこの子に名前を与えたんですか?」
なぜそんなことを聞くのか疑問に思ったが、すぐに頷く。
「え? そうだけど?」
「じゃあ……キスも?」
「ああ、した」
「……そうですか、してしまったことは取り消せませんから仕方ないですね」
ちゃんと説明をしなかったことをメアリスは悔いる表情をした。
ん? どういうことだ? 何かまずかったのか?
俺はきょろきょろ視線をメアリスとリリスの間で往復させた。
「どういうことなんだ? 事情がわからないんだけど……」
「え~と、実はですね。生きている武具って言うのは、名前の無い状態だと卵の中にいるひな鳥みたいなものなんです。『名前』を与えて誰かの魔法でそれを孵化させるのは、そのまま親と子の関係と同じなんです。そして誓いのキスは、親と子のきずなを永遠にするんです」
「じゃあ……この子はこの先ずっと俺の娘ってこと?」
ちょっと気まずそうにメアリスは頷く。
「はい……。しかも私の魔力で孵化させたので……」
「え~と、つまり?」
「この子にとってのコウセイさんが父親、私が母親という扱いになります」
それを聞いた俺が驚くのは当然だが、いつも何かしら言葉をはさんでくるフィーが無言で立ち尽くしていた。
「本当に?」
それに答えたのは妖刀の莉々珠だ。
「そうだよ、主様。これからは父様と呼んだ方がいいかな?」
「いや、止めてくれ! なんか変な感じだ。おい、もしかして……」
親子関係になったと、突飛なことを聞いたはずなのに、妖刀の莉々珠は全く驚いてなかった。
もしかして莉々珠は、それを知っていた?
俺が名前をつけてやる代わりに所有物になることに了承したのは、これを知っていたからなのか。
あれだけ動揺はしても頑なに所有物になると言わなかったのに、いきなり意見を翻した理由がこれなのかもしれない。
キスも本当は所有者契約に必要なことではなかったようだし。
メアリスは少しだけ頬を赤くして、俺を見ていた。
「その……いきなり子持ちになってしまいました。どうしましょう?」
どうしましょうって、俺にそんなことわかるわけがないだろうに
本当にどうしよう……。
でもあれだぞ? この子は人間に見えても刀だ。
武器なのだ。
でもリリスを見るとそうと割り切れない感情も俺にはある。
「いや、その、あれだ。これはなんというか、不可抗力というやつだ。メアリスは気にしなくてもいいぞ? 俺が一人でも育て……いや持って帰るから。できちゃっただけだから」
何の言い訳かは分からない気持ちを抑えながら、とりあえずこれで話を終わらせたいと心から俺は願う。
「そうですね。わかりました。私はバツイチになってしまったんですね……」
ちげーよ。何言ってんの?
今のは離婚宣言とかじゃないから。親権争いでもないよ?
「いや、メアリスさんよ、ちょっと落ち着いて……。おい、フィーさんもどうした? なんで何も言わずに固まってる?」
俺は「さん」付けでへりくだった口調になりながら、フィーの肩を揺すった。
「結婚を飛び越えたっス……。こうやって『既成事実』をつくればよかったんスね……」
と訳のわからないことを呟いて、忘我状態のままだった。
とりあえず、妖刀の莉々珠の手を引いて、そそくさとこの場を一緒に離れた。
これが最善で賢明な判断のはずだ。
明日には頭も冷えて冷静にこの状況を理解するだろう。
相手は刀であり武器なのだ。
落ち着いて考えればそこまで慌てることじゃない。
さて、いろいろあったが、それでも俺のやることは変わらない。
そう思いながら王城での短い時間を過ごすのだった。
明日には、帝国へと戻ってしまうのだから。
次の日の朝、俺たちは城を飛び立った。
とはいえ、その出発までの時間さえもいろいろ起こり、筆舌に尽くしがたいものがある。
――出発の数時間前。
俺はこのぎこちない雰囲気の中で王の間へと足を運んでいた。
もちろん、4人と1匹が一緒だ。
俺の隣に妖刀の莉々珠、その逆隣りにモニカ、後ろからディビナとフィーだった。
なぜぎこちない雰囲気なのか?
変な圧迫感を感じていると言い換えてもいいかもしれない。
ぎくしゃく?ともなんか違う。
これを感じているのは俺だけではないだろう。
空気を読む術に長けていない俺ですらこの異様な雰囲気を他の4人の女の子から感じるのだ。
我慢しきれなくなったと言う顔でモニカが気になっていたことを切り出した。
「その……莉々珠ちゃん? どうしてそんなお兄ちゃんにベタベタくっついているのですか?」
「どうして? 主様はボクのパパだからだよ?」
「む~~~~~」
モニカは頬を膨らませていた。
俺はそんな姿を見てなんとなく気付いた。
モニカは妹で一番俺と距離感が近かった。
でも今はその距離感が子どもである莉々珠の方が近いのだ。
「ボクは主様の子どもだから、ね?」
とはいえ、俺の腕をつかんでいる莉々珠のやっていることは、別に子どもなら誰でもすることではないはずだ。
その論理が著しく破たんしている理屈に嫉妬心を燃やすのもモニカの頭がどこか少し抜けているからかもしれない。
「ディビナちゃんはいいのですか?」
ディビナはというと終始笑顔だった。
「構いませんよ。ええ、ほんとに。これっぽっちも気にしていません……」
だが、逆にこの取り繕った笑みが怖い。
愛想笑いの下に何が隠れているのか分からないのだ。
ふと俺はフィーの方へ視線を向けた。
いつもの明るい表情をしていたのだが……。
なんていうか、何らかの決心を決めたという雰囲気だけがわかった。
こっちはこっちでホントに怖いな……。
モニカはただ小さい子がすることに腹を立てることはしないが、妹であるプライドは捨てられなかったらしい。
リリスに張り合うことにしたようだ。
俺は俺で、他に考えることがあって大変なのだ。
それは、ダンジョンで拾ったパンツの件だった。
魔王メアリスに返却すべきか?
何度かシュミレーションしてみたのだが、上手い言い訳が見つからない。
だいたいパンツを拾ったって何だよ……って話だ。
そもそも、なぜメアリスはあんなところにパンツを落としていたのか?
よくわからないから、どの言い訳が正しいのか分からない。
まあ、ここまで来たら当たって砕けるしかないか。
王の間に行くと、そこにいたのは魔王メアリスと顔見知りの騎士が二人だけだった。
メアリスが声をかけないことに男の騎士レドルは困惑して、先に俺たちへと声をかけてくる。
「おお、来たか。もう出発するのか?」
「そうだ。少しの間だったが、世話になったな。それで……」
俺はポケットから二つの布切れを取りだした。
そのままメアリスの前まで階段をのぼって歩いていく。
「……どうしましたか?」
ようやく声を出したメアリスは、昨日の醜態を恥ずかしがるように俺から視線をそらした。
「いや、そのなんだ……これを返そうと思ってな」
「これは……?」
俺が手に持っているのは二枚のパンツだった。
「その、ダンジョンの最下層で拾ってな。何かの暗号?と思ってそのまま持ち帰ってしまったんだ。受け取ってくれ……」
正直、人前でパンツを渡す言い訳をしながら女の子にそれを受け取ってもらう光景は、顔から火が出るほど恥ずかしいものだった。
「そうでしたか……でも」
俺はメアリスの表情を見て、まさか受け取りを拒否されるのかと一瞬頭によぎる。
が、そうではなかった。
メアリスはちゃんと手に持ったパンツの一枚をゆっくりと手に取った。
「これは私のですが、こっちは違います……」
俺は一瞬何を言われたのか分からなかった。
「え~と、こっちは……?」
「私のものではないですね……」
俺の手に残ったパンツと、メアリスの受け取ったパンツの2枚をよく見比べて見ると、少し色が違うことに気づいた。
手に残った方は少しだけベージュの色が混ざっている。
そして形から、残った方が村の上流で川をせき止めていたダンジョンから拾ったものだと気づいた。
「それじゃあ……別の誰か?」
「はい」
「え~とちなみに聞いていいかな? なんであんなところに落ちてたんだ?」
「それは落ちていたのではなくて、置いてあったのです。ダンジョンというのは支配権が明確に決まっていて、最下層の中心点に魔王の肌着を置くのが一番効率が良かったのです。当時はまだ私の魔法は支配数が足りずに弱いままでした。それを補うための苦肉の策で、下着を置くことにしたのです」
「そ、そうか……」
この世界の住人、下着に能力を委ねすぎだろ。
「まさか、最下層にまで来れる人がいるとはだれも思いませんし……。無くなった時は驚きましたけど。どこか別の場所に置いたのではないかと探しましたし、レドルさんに疑いをかけた時期もありましたし……」
それを聞いた男の騎士は、うんうんと頷いた。
「それはすまなかったな……」
どうやら、ダンジョンを出入りしていた唯一の男に疑いがかかったようだ。
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