これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉

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 俺たちは魔王軍の敵を警戒しながら進むと、アルカリス王国の領土へとはいった。

 そして、ちょうど5万ほどの軍勢の真上に滞空した。

 残りの10万はもう少し後方にいるようだ。
 ちょうどひし形になるように4つに分けて陣形を組んでいるらしい。

 俺はとりあえず、不死がどの程度かを確認するために、石を召喚・転移して一体のムカデ型の魔物へと石を叩きこんだ。数発繰り返すと脚や胴体など体がバラバラになった。

「よし……、こいつらマルファーリスほど万能の不死じゃないな」
「お兄ちゃん、どういうことです?」
「ああ、あのマルファールスって化け物は粉々にしても一瞬で身体が元に戻っていた」
「それはすごい再生力ですね……」

 モニカは苦笑いをしていた。

「だが、身体が吹き飛んで再生しないのであれば方法はある。とりあえず、魔王のところに行くまで足を止められればいいんだ。鉄柱を落として粉々に吹き飛ばせばいい」

 さすがに隕石を何発も落としたりして必要以上の威力を与えると、世界の方が壊れてしまうかもしれないから止めておく。
 氷河期とかはゴメンだ。

 俺は上空に数十もの直径5メートル以上ある大型鉄柱を上空に浮かべて、一気に落とした。

「お兄ちゃん……大胆ですね」

 モニカの友達のフィーも興味深そうにその様子を見ていた。

「今度はなにするんスか? あれを落としちゃったり?」

「まあ、そんなところだ」

 中心部を狙って落としたいくつもの鉄柱の先が赤熱化して、一気に敵軍の中央へと落下していく。

 だが、その地上まであと少しのところで、大きな魔法陣が展開された。
 鉄柱は、その全てが魔法陣の壁に阻まれて動きを止めた。

「なんだ? 何が起こっている?」

 誰かが魔法障壁を張ったようだ。
 
「これ、魔法障壁っスね。ふつうは数十人規模で『王クラス』が発動する魔法じゃないっすか?」

 確かに魔法の障壁だ。
 通常の物理の壁であの威力を防げるわけがない。

「そうみたいだな……。そういえば、たびたび聞くんだが、その『王クラス』って他の奴の魔法とは何か違うのか?」
「それは、その人が王クラスの……」

 そこで話の途中にモニカが叫んだ。

「あそこ! たぶん村人でしょう。一人逃げ遅れた女の子がいます」
「は?」

 指の向ける方を追って見ると、女の子がいた。光を使って拡大したら、確かに背が小さくてモニカと同い年くらいの子だった。
 長い黒髪を腰のあたりでまとめていて、赤と黒の刺繍のあるワンピース。手には護身用だろうか、黒い木の棒を持っていた。

 出会ったばかりのモニカと雰囲気が似ている。

「お兄ちゃん……」

 心配そうな声を出すモニカ。
 たぶん、自分とどこか似ているから、その子とモニカ自身を重ねているのだろう。

「仕方ない……」

 俺はため息をついて、風の操作でモキュを女の子の傍へと下降させた。












 避難が遅れた少女を拾い上げることにした俺は、ゆっくりとモキュを風の操作で接近させた。

「おい、大丈夫か? 逃げ遅れたのか? とにかく乗れ」

 驚いた様子の女の子は、モニカとディビナに引き上げられると、そのまま上昇した。
 
「……あの」

 女の子は怯えた様子でぽつりとつぶやいた。

「ん? どうした?」
「あなたたちは悪い人ですか?」
「……いや、悪い奴ではないと思うぞ?」

 俺は念のため、ディビナとモニカに確認の視線を向けた。

「大丈夫ですよ」
「お兄ちゃんはいい人です」

 いや、そこまで言われるとさすがに違うと思うんだが、ちょうどいい。いまは否定しなくてもいいか。

「そうですか……」

 安堵したように、その女の子はほっと息を吐いた。

「それで、なぜあんなところに?」
「そ、それは……魔物が……」
「まあ言いたくないなら別にいい」

 やけにおどおどしている子だ。
 気が弱いのだろう。

 と、そこでさっきの重要な話を思い出し、フィーに問い返す。

「そうだ、さっきの話だが、その人が王だと魔法もなにか違うのか?」
「はいっス。人間の場合しか知らないんスけど、人間の王は犠牲の数によって『魔法』の威力や性能をどこまでも上げることができるんスよ」

 なぜか『魔法』をかなり強調していた。
 人間の王として力を上げられるのは、魔法だけらしい。それ以外はダメってことか。俺は魔法が使えないから、人間の王になってもその無限増強のような資格はもらえないと。

「なるほど……マルファーリスみたいなものか」
「そうっす。この世界には人間だけでも複数の王がいるっすから」

 そこにモニカがこう付け加える。

「私が知っているだけでも、魔族の王と竜種の王がいるらしいです。ちなみに魔物の王が『魔王』です。竜の方は『竜王』と呼ばれています」

「ふ~ん、人間以外の王か。いまから会いに行く魔王がつまり魔族の王で、魔王となるわけか」

「人間以外の王は種族ごとに一体だけと言われているっス。でも人間以外の王が何を増やせば魔法の力を上げられるのか、詳しいことはわからなくて。人間とは違うことだけはわかっているらしいっスけど」

「それを……誰も知らないのか?」

 俺は3人を見回すが、皆が首を振った。

「そうか……」

 そこで、モキュの上を不安そうにしがみつく女の子が小さな声で言った。

「それは……『支配』です」
「いまなんて言った?」

 俺は女の子へと聞き返した。

「魔王は『支配』している数が多いほど魔法が強くなります」
「……そうなのか?」

 じっとその子を俺は見つめた。

 怯えつつも、「はい」と首を縦に振った。

「支配……か。すると、竜王もそうなのか?」
「いえ、竜種は支配する『領土』だと言っていました……」

 言っていた? 誰が?
 いや、そこは問題じゃない。
 竜はこの世界の『領土』のほとんど、中央大陸を支配しているらしい。
 たしかにマルファリースがいくら化け物で犠牲を重ねても竜王に届かなかったわけか。
 それに……

「いまの魔王は……」

 現時点での魔王の強さは、支配の数に匹敵する。
 支配数が多いほど魔法が強くなる。
 つまり、最低でも十数万の軍勢を動かしているだけの勢力を支配状態に置いている。
 それでいて不死。
 さて、マルファーリスとどっこいどっこいの化け物ってことだけは確定だな。

 人間の王は死者。
 竜王は支配領土。
 そして魔王は支配数。

 なんとなくだが、この世界の仕組みの一端がわかった気がした。

「あの……」
「なんだ? そういえば、君の名前は?」
「あ、えっと、メアリス……です」
「そうか。しばらくついてきてもらうことになるけど、いいか?」
「……どこへ行くつもりなんですか?」
「そりゃ、魔王がいるっていうアルカリス王国の王城だな。ちょっと見て見たいのと、話がしたい」
「……わかりました」

 俺は改めて魔物と騎士の軍勢を見下ろすと、その全てが動きを止めていた。

「なんだ? 進軍を止めた……」

 小さな声でメアリスは言った。

「私がやりました。王城に行って魔王に話があるんですよね?」
「君がやったのか? 魔法……なのか?」
 
 確かに手に持っている黒い棒から魔法陣が一面に浮かび上がっていた。
 背は小さいが、騎士レベルの魔法の才能があるのかもしれない。見た目は侮れないな。

「そうです。あの……魔王に何を聞きたいのですか?」
「ん? 魔王に聞きたいことは一つだけだ。この世界を滅ぼそうとしているのかどうかだ。それ以外は、ついでにクラスメートに言ってやりたいことはあるが、ついでのさらについで程度だ。世界が滅ぶと困るのは俺たちだからな」
「そうですか……魔王はそんなこと考えていないです。と私が言ってもこんな私の言葉を信じてはくれませんよね」
「……たしかに君に言われてもな」
「あの一つ約束してほしいのですが、魔王軍の本当の目的がわかるまでは敵対軍事行動はやめていただけますか?」
「……なぜだ?」
「いま戦争をしているはずの魔王軍の中に入れば当然騎士や勇者たちに攻撃をされます。それでは戦いになってしまいます。そうではなくて、魔王の真意を確かめることだけに目的を絞ってほしいのです」
「まあ……3人も連れがいたら、確かに戦いというのは良作ではないが」
「きっと、あなたにも悪いことではないと思うんです。私を人質にして、中に入ればきっと攻撃もしてこないはずです。」

 彼らは仲間ですから、と最後にポツリと呟いた。
 そういったメアリスの目が真剣だった。いままで怯えたような不安そうなそんな顔だったのにだ。

「そうか、わかった。メアリスを人質にして、魔王軍側の攻撃をやめさせよう。それでとりあえず話し合う。その方法でも容赦なく君を殺して俺たちの命を取りに来たら、こちらも容赦はしない」
「そうしてください」

 若干頭の悪い作戦と思わなくもないが、俺はなぜか彼女の言っていることが一番正しい道に思えてならなかったのである。
 旗から見れば極悪非道。その役目を見ず知らずの人間に提案できるというのは、相当勇気がいることだと思うのだ。

 メアリスの覚悟めいた宣言から一通り段取りを考えることにした。










 まず、宮廷のベランダに降り立つと、俺は全員をモキュからおろした。

 どうしてかは分からないが、ここに来る間に攻撃がいっさいこなかったのは良かった。

 中へ向かって俺は叫んだ。
 腕の中にはメアリスという女の子。
 首筋に妖刀を添えて、人質に見せているのだ。

「おい! 魔王はいるか!? 今すぐ魔王軍の奴らは出てこい!」

 そう怒鳴りつけると、スライドする大きな窓を開けてベランダへと数名の騎士たちが出てきた。

「お前が勇者たちから離脱したコウセイか?」

 一人の騎士が代表してそう言った。
 もし、他のクラスメートたちが魔王軍に加担しているのなら、そうなるかもな。
 俺のことを知っているのは当然か。俺を召喚したのはこの国なのだから。

「この子の命が惜しければ上の奴と話をさせろ! 中にいるんだろ!?」
「……わかった」

 騎士たちの後について俺たち4人は王城の王の間へと入る。
 ここへ戻ってくるとは思っていなかった。
 ダンジョンを落としてやったはずなのだが、無傷だったのも少し驚いた点だ。

 そして、中にいたのは数名の顔なじみと、以前に俺を殺そうとした騎士の二人だった。
「また……会うことになるとはな」

 俺はため息をついた。
 とりあえず、この二人が生きている理由はわかった。魔王の支配下ならこの二人も不死か。
 さすがに切りかかってこないのは、やられて歯が立たなかったことを知っているからだろう。

「そうだな。久しぶりだ。前は悪かったな。それでその子を離してくれないか?」

 まったくふてぶてしいな。殺そうとしといて悪かったで済むはずがないんだが、一度死んでもらったことでそこまで執着するつもりもない。
 生きていたのが予想外ではあるが。

「そうだな。じゃあ、魔王を出せ? それともここにいる誰かか? どいつだ?」

 俺は周囲を見回した。

 そのセリフに騎士の二人は目を見開いた。

「何を言っている?」
「そうよ、あなたの傍にいるじゃない!」

「は?」

 こいつら何を言っているんだ?
 
 すると、モニカが騎士たちの視線から何かに気づいて、俺の手を握ってきた。

「あの……もしかして途中で拾ってきたその子……魔王だったんじゃないですか?」

 俺はそんな馬鹿なと思ってメアリスを見る。
 すると、申し訳なさそうに俺を見上げていた。
 そして、なぜ魔王の代弁者みたいに話していたのか、ようやくつながっていく。

 そうか……そういうことか。

「じゃあ、君……メアリスが魔王?」
「……はい」

 じゃあ、魔法障壁も魔物を動きを止めたのもこの子ができた理由をようやく理解した。
「ということは、世界を滅ぼすつもりは……」
「ないです。言っても信じてもらえそうになかったので、証人のいる彼らの所まで連れてきてもらいました。それに、彼らの話も聞いてほしかったので」
「そうか……」

 ちょっと驚いたが、想定の範囲内……とはいかなかったが納得だ。

「わかってもらえましたか? ここにいる騎士の方たちもマルファーリスの息のかかっていなかった騎士です」
「それじゃあ、なぜ帝国に戦争を仕掛けたんだ?」

 それに答えたのは、騎士の男だった。
 
「それはな、皇帝家をこのタイミングで滅ぼしておきたかったんだ」
「……皇帝家を?」
「ああ、これは本当の話なんだが……。皇帝の血を持つ一族たちは、強力な魔法を所持していた。そいつらは、どこか頭のおかしいやつらでな。とにかく、支配できる世界をどこまでも拡大しようとするだけの狂人だった」
「まあ、それは少しだが知っている」
「そうか……、マルファーリスはこの混乱の中で自分の脅威になりそうな奴らを殺した。しかし、皇帝家にはもう一人息女がいると言うことが後でわかったんだ」
「それで、そいつを始末するために? 暗殺ではなく戦争で?」

 俺は当然の疑問を呈した。

「暗殺はまず無理だ。俺たちはその息女の名前も顔も知らない。それに怖~い秘書が常に皇帝に張り付いているんだ」

 その最後にぽつりと付け足した。あれは別の意味での化け物だ、と。

「そういうことか。皇帝は戦争時には前線へ指揮を取りに来る……」
「そうだ。最後の一人さえ消すことができれば、もう王になれるのは皇帝家以外の者しかいない。人格者で実績のある者はいくらでもいる。本当なら、戦争に勝って支配する人間の数を増やせれば、それだけ人類を守れるんだがな……」
「人類を守るって……おいおい、お前何言ってるんだ?」
「まあ、召喚されたばかりの勇者にはちょっと耳に入らないことだろうな。この世界の人類を守っていたのは王国と帝国の王だった。だが……もういない」
「そう言うことじゃなくてだな……滅ぼさないってのは、メアリスを見ればなんとなくわかる。だが、魔王軍が敵のはずの人類を守ろうとしているのか?」
「そうだ」

 なぜ? わからん。

「人類を滅ぼそうとしているのは誰だ?」
「竜種の奴らだよ。この前、帝国で竜王の子どもが殺されただろ? いや、それ以前に竜を封印していたことがもう奴らの尾を踏んでいた。近いうちにこの人類のいる大陸の端っこを地図から消し去るつもりだろうな」

 そうだったのか……。あれが竜王の息子か。
 もしかして俺その化け物の竜王にこれから狙われるのか?

「……だが、なぜそこまで人類に固執する? お前たち魔王軍は魔族だけ守るものじゃないのか?」
「簡単な話さ。魔王メアリスの願いは人間と仲良くすることにある。なぜなら彼女は……人間の転生者だからだ」

 転生者と聞いて、俺はメアリスに振り返った。

「本当なのか?」
「はい……、見た目は小っこいですが、死んだのはコウセイさんと同じくらいの年齢の時です」
 
 なるほど、これまでの魔王と180度違う考えになるのも当然だ。中身が人間となれば、そりゃ人類滅ぼすなんて言わないだろうな。
 種族の影響で見た目が幼いままなのは、魔族の年齢の単位が違うかららしい。

「そうか。じゃあ、俺がもう言うことはない」





 いまになって、メアリスという魔王は、拾い上げたときにあの場にいたことをこう説明していた。

 『誰かを殺すのに、人任せにして責任を押しつけたくなかったんです。やるなら私の手で先頭に立ちました』

 とのことらしい。
 騎士二人が俺のような勇者を殺そうとしたことだ。どうも俺がきっかけだったという。
 それを知ったメアリスが、自分の目的で仲間が誰かを殺すことに耐えられなかったのだという。

 俺は後ろの3人を連れて王の間を出ていこうとして、もう一つ大事なことを思い出し立ち止まった。

「そういえば……」

 俺は王の間を見回してこう言った。

「お前たち元クラスメートに言っておきたいことがあるんだが……」

 王の間の中にいる十数名のクラスメートたち。名前も特に覚えていない。
 騎士の隣にいる端田令未果と見覚えのある数名くらいか。
 
「俺の自由を脅かさなければ、俺は特に何もしない。だが、そうじゃなければ……わかるよな? それだけだ」

 俺の実力がすでに伝わっていたのだろう。
 クラスの連中は沈黙で答えを返した。

 わざと見下す感じで言ってやった。いまでずっとこうされていたのだから当然の意趣返しだ。この屈辱を胸に抱いてせいぜい苦しみながら生き続けてくれ。
 心に少し余裕ができたことで、哀れな奴らだ……くらいにしか今は思わなくなったのもある。(あの一人を除いては……)

 すると俺はあることに気づく。

「そういえば、竹岡はどうした? あいつだけは手足をぶった切って氷漬けにしたいところなんだが……」

 それに答えたのは端田だった。

「彼は……死んじゃったの」

 どこかすまなさそうな声だった。
 死なせてしまったことではなく、何かもっと別のことだろう。

「そうか」

 それ以上興味はなかった。あの俺をいじめていたカス野郎が死んだのであればそれでいい。俺の手で裁けなかったのは悔しいが。
 あの赤い髪の騎士同様に生かしておいてはならない奴だったからな。

「悪いな。俺が殺した」

 そう名乗りを上げたのはあの男の騎士だった。そのまま話を続ける。

「あいつはどこか皇帝家の人間に似ていたからな。それに一人で勝手なことばかりしようとするのにいい加減耐えきれなくなってな」

 奴はどこまでも馬鹿だったらしい。

「ふ~ん」

 そこにフィーがまだ何か話したいことがあるのか、言葉を挟む。

「メアリスさんに言いたいことがあるっス」
「……なんでしょうか?」

 ここで何の話だろうと疑問の顔をするメアリス。

「皇帝家の第一息女は危険な人物じゃないっスよ。私はよく知っているっス」
「信じてもいいのですか?」
「そうっス。もし違ったら私が殺すから大丈夫っスよ~。けどそうはならないとわかっているんで安心して欲しいっス」

 なんとも物騒なことを簡単に言うフィーだった。
 声には迷いがなかった。その新皇帝のことをよく知っているということなのだろう。

「そうですか。でしたら信じます」

 唖然とした顔をする騎士たちは半信半疑だったが、メアリスが信じていることに異を唱えることはしないようだ。
 メアリスは、戦列を後退させるように騎士たちに指示を出す。戦うことなく戦争が終結することになった。
 フィーのおかげだな。俺は新皇帝のことは知らないからな。

 俺は踵を返して、3人と一緒に帝国へと戻ることにした。
 帝国側にこの結果を教えてやるのだ。
 そして、もうそろそろ逃げ出した新皇帝を見つけている頃だろう。
 
 この成果と一緒に話をしてモニカの家の土地を返してもらうのだ。


 もと来た道を飛んで帰る。まさにとんぼ返りだな。
 とか思っていた時だ。

 ちょうど国の境界線まであと少しといった地点のちょうど真上に異変が起きた。
 空が割れるようにして空間が歪んでいく。
 真っすぐ莫大な閃光の塊が地面へと落ちた。
 俺たちは台地に衝突した時の余波で爆風にあおられる。


「クソっ! なんだあれは!?」

 悲鳴を上げる後ろの3人を振り向くことなく、手をかざすと、風を操作して爆風をそらす。

「な、何事なのでしょうか?」

 ディビナはその光の方角へと目を凝らしていた。
 モニカは怯え、なぜかフィーはハイテンションだった。

「今度はなんスか、あれ!」

 光の中でたっているものをよく見て見ると、一人の巨大な男だった。

『ふう、うまくいったぜ……』

 そこに立っているのは、黒い皮膚をした巨大な男だった。
 男は俺たちの視線に気づき、赤い目をこちらに向けた。
 そう、俺が魔王として想像したのはあんな感じの男だった。

「まずいな……あいつ、雰囲気がやばそうだ」
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