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俺は目の前に出現した巨大な白竜(ホワイトドラゴン)を見上げた。
「モニカ、その二人とこの場所を離脱するんだ」
「お兄ちゃんはどうするんです?」
「俺はとりあえず、こいつを何とかしてみる」
「なんとかって……竜ですよ?」
そのモニカのセリフに俺は疑問を浮かべた。
「どういうことだ? 竜だと何かまずいことがあるのか?」
「お兄ちゃんはそう言えば知らないんでしたね。この世界を支配しているのが誰なのか……」
「この世界は、人間が国をつくって支配しているんじゃないのか?」
そこに声をかけたのは、飛ばされたはずの冒険者、クリスティーナだった。
やはり外に飛ばされていたのか。
白竜を驚愕の表情で見上げつつ、クリスティーナはモニカの代わりにその説明をする。
「いや、違う。そもそもこの世界は世界の端っこ、それも中央大陸とはかけ離れた場所にある。そこに住んでいるのは人間以外の種族だ。その全ての種族を完全に掌握・支配しているのが竜種と呼ばれる存在だ」
「竜種というのは目の前のあれか?」
「そうなる……私も分類についてはそこまで詳しいわけではないがな。人の形をしている竜もいるらしいが、とにかく人間が勝てる相手ではないという話だ。帝国の建国目的はあまり知られていないが、その一つに『竜種の討滅』があるらしい」
「じゃあ……竜と支配権の取り合いを?」
この国が犠牲を積み重ねて強くなろうとしている理由は、世界の支配をひっくり返すことだとでも言うのか?。
「ああ、それでだいたい合っているのじゃ」
どこかから声が聞こえたかと思うと、空に浮いている一人の少女がいた。
ああやって俺たちを見下ろしている存在を忘れるわけがない。
アルカリス王国に勇者として召喚された時に見たちびっ子。
国王――マルファーリス=アルカリスだ。
「だが、なぜここに……」
こんなところにどうしているんだ?
ここは帝国のすぐ裏にある山だ……。
帝国の領内だぞ? 政争相手の領地に他国の王がいるなんて……。
そこで俺は不快な汗が流れるのを感じた。
女皇がなぜ俺を狙うのか……。
なぜステータスの情報を知っているような対策をしてきたのか。
「まさか……」
「改めてこう言わないといけないが、この国の『皇帝』となった女皇――マルファーリス=アルカリスじゃ」
ちっ、そういうことか。
「モニカその冒険者たちとこの場を離れてくれ」
「……わかりました」
モニカは悲しそうな表情で冒険者のクリスティーナと他グループの兄妹二人のところへと何かを話す。
それを聞いてクリスティーナが俺に驚いた表情を向けて、こう言った。
「正気か!? 相手は白竜もいるんだぞ? 竜種には魔法や物理攻撃も効かない。人間の攻撃では傷一つつかない」
「……そうか。いや、ここで相手をしなければどこへ逃げても変わらない。あいつは俺を狙っている」
そうだ。
相手の狙いが俺である以上、俺が一緒にいたらモニカが危険にさらされる。
それよりも、裏でコソコソするこのマルファーリスをここで沈めておきたい。
「……わかった。この3人を安全な場所まで届けたら必ず戻ってこよう。それまで生きていてくれ」
「……わかった」
あえて応援はいらないとは言わなかった。
俺は竜に対する知識を持っていない。それを聞ければよいのだが。
とはいえ、できるならクリスティーナが来る前に、突破口を見つけてこのデカい竜とバカ女皇・マルファーリスを始末したいところだ。
モニカたち4人は、離れるように帝国の中心へと走っていった。
俺は改めてマルファーリスへと目を向けた。
王癪を持っているのは前と同じだ。
ただ一つ違うのは目が真っ赤に充血していることだ。
良く観察してみると、マルファーリスの浮いているすぐ下の地面には大きな魔法陣が描かれていた。
さっきまで暴れまわる気満々だった白竜(ホワイトドラゴン)はといえば、苦しそうな表情でその場に静かにとどまっている。
「おい、その竜に何をした」
それに笑いかけるマルファーリスは、王癪を俺の方へ向けた。
「これじゃよ。生贄を使った大魔法。生贄は何じゃと思う? 貴様があの村を救ったらしいが……わかるじゃろ?」
俺は苦いものをかみつぶすように顔をゆがめた。
「人がわざわざ救った村人を生贄にしてきやがったってのか?」
「そうじゃ。貴様を殺すためだけにあの村は使わせてもらった。一応保険のつもりだったのじゃが、生贄にしてきて正解じゃった」
「ふん、イカれた女だな。それにしてもその竜はどういうことだ?」
「言ったじゃろ。ワシは精神拘束の魔法が得意でな……行け!」
そういって、マルファーリスは王癪を前方へと振った。
その声に支配されるように、白竜(ホワイトドラゴン)は俺へと赤い眼光を向けた。
そして、口を開いて何かをためるしぐさをする。
ブレスか!!
白い閃光が俺へと放たれた。
おそらく、グレートトカゲの強化版だ。
だとすると、竜だから聖なる魔力で増幅された白い炎弾……といったところか。
その速度も大きさも桁違いだ。
俺が自分の体制が崩れるのもかまわずに重力と気流の操作でその場を回避した。
さっきいた場所を通過した白いブレスは、はるか後方へ飛んでいき山を一つ吹き飛ばした。
ものすごい爆風が吹き荒れて、振動と衝撃波がここまで伝わってくる。
……はあ? なんだあれ!!
まじで竜って化け物だな。
無理に操られて、ガス欠気味に放たれたブレスがあの威力とは……。
しかしどうするか?
マルファーリスだけでも厄介そうなのに、白竜(ホワイトドラゴン)までいやがる。
しかも竜は物理攻撃や魔法が効かないというおまけつき。
そりゃ人間が勝てないわけだ。
とりあえずけん制攻撃として、巨大な石を複数、前方に召喚し赤熱するほどのスピードで放つ。
ついでに上空へ巨大な鉄柱を数本生みだして火を纏わせ、頭へと衝突させた。
隕石級の衝突と鉄柱による戦略兵器級の攻撃を数発。
爆炎と衝撃波が席巻して、辺りの木々をなぎ倒していく。
煙が晴れて視界が戻ると、そこには何事もなかったかのように白竜(ホワイトドラゴン)がいた。
その後ろにいるマルファーリスも当然無傷だ。
「無傷か……本当にどうするかな」
あの竜を何とかしないと、マルファーリスの相手さえ厳しい。
試しに、直接マルファーリスを攻撃するため、背後に鉄球を召喚・転移して心臓に叩きこんだ。
しかし、風穴のあいたマルファーリスの身体は、すぐに元通りになった。
おいおいおい。
どっちも化け物かよ。
すると、手をこまねいていた俺へと白竜(ホワイトドラゴン)が一直線に向かってくる。
「来やがったか」
『どうするんだい?』
「ん? 妖刀か……、さてどうするか、ねっと」
俺は竜の爪の攻撃を避けて大きく後方へと下がる。
「一つ聞きたいんだが、竜ってのはどうやって飛んでいる?」
『ふふふ、飛んでないよ。そこに「ある」だけだ』
「じゃあ地点固定タイプか。厄介だな」
『それにしてはなんか余裕あるね……』
「そうか? ああ、正直竜と戦うことになるとは思っていなかった。だからなのか、戦いに憧れる気持ちが精神を高揚させているのかもな」
『おかしな主様(ぬしさま)だ』
俺はまず、攻撃をどう連撃していくのか決める。
使えるのは電磁気操作、空間操作、重力操作。この辺があの規模の化け物に対抗できる能力といったところか。
手に鉄の塊を召喚すると、俺は竜の腹の中にそれを転移させた。
白竜(ホワイトドラゴン)の腹がボンッと膨らんだ。
すかさず、磁力を操作して、竜を真横へと吹き飛ばした。
山に直撃した白竜(ホワイトドラゴン)をさらに空間操作で俺の目の前へと転移し直す。
今度は鉄の杭を生み出して、磁力と物質操作で腹の中の鉄へと引き合わせてぶつける。
悲鳴を上げた白竜(ホワイトドラゴン)は、空中を何度も身体をうねっていた。
鱗に傷はついていないが、物理攻撃が全く効かないわけじゃなさそうだ。
内部との同時攻撃で、間違いなくダメージは受けている。
なら、使える能力はもっとある。
俺は水を召喚して転移で腹の中に移動させ、物質操作・強制で核分裂反応を起こさせ、急激な熱量を得て爆発させた。
いわゆる水蒸気爆発だ。
腹が一瞬にしてふくらみ、内部から爆音が聞こえた。
しかし、驚いたのは竜の身体が破裂することなく元の姿を維持したままだったことだ。
すげえな、あれで身体を保てるのだから、竜というのは確かに通常の物理攻撃では倒せないらしい。
こうなれば、今できる最大の攻撃手段を使うしか無い。
それは、物理的なものに対して最も有効な空間支配のスキルだ。
俺は、手の妖刀に一回り大きい形状をイメージして空間を纏わせる。
そのまま竜のところへ急速接近し、その刀を尻尾に振り下ろした。
竜ではなく空間そのものを切断したのだ。
俺は竜の尻尾を完全に切り落とした。
しかし、竜の尻尾は再生していた。
くっそ、ふざけるなよ!
内心、叫んだ。
ただの化け物じゃないなこりゃ。
神でも相手にしているのかってレベルだ。
そこまで来て、ふとマルファーリスがどうしてそこまでして魔法にこだわるのかが分かった。
そうか、その精神拘束の魔法で中央大陸の竜種を同士打ちさせるつもりなのか。
もしくは全ての竜種を掌握するつもりなのか。
いずれにしてもどれだけの生贄がいるのか想像できない。
俺は思考をやめ、白竜(ホワイトドラゴン)の背後へと回った。
尻尾だからダメなのかと思って、頭を切り落とすことにした。
その瞬間、白竜(ホワイトドラゴン)はこちらを向いて、ブレスを放つ。
くそ。
操っているのはマルファーリスだから、死角が意味をなさない。
しかたなく、空間操作と転移で俺の目の前に顔が来るように転移させた。
正面には白竜(ホワイトドラゴン)の首筋だ。
俺は転移と同時に首を切り落とした。
だが……、
まさかの合体。
くっついたぞこいつ!
じゃあ、これだな。これ効かなかったら本気でまずい。
俺は石コロを竜の腹の中へと転移させた。
そこに重力操作で石自体へと莫大な重力を重ねがけする。
どんどんと重力に空間が飲み込まれていくようにして、超新星爆発を起こし、重力崩壊を起こす。
ブラックホールだ。
これは操作・強制によってはじめてなせる技。
石の姿は重力に飲み込まれ、『特異点』だけが発生していく。普通は太陽の約3倍以上の質量を持ち、中性子星で終わらないだけの質量がないとできないブラックホールを作り出している。
レベルが上昇して質量制限が解除されているからこそできるようになった。
ー―そんな大質量の崩壊が竜の腹の中で進んでいる。
外部に影響が出ないように、空間支配も併用した。これで宇宙線などの影響もこの国には出ない。
竜は腹の中に引っ張られるようにして身体の体積を縮ませていく。
そして、一瞬の後、大きく黒い視界が膨れ上がって、
竜はその姿を完全に消滅させた。
ブラックホールに飲み込まれて、白竜(ホワイトドラゴン)は消滅した。
その様子をずっと見ていたマルファーリスが絶叫した。
「馬鹿な!! 消えたじゃと!? ありえん、ありえんのじゃ!!!」
「さて、次はおまえの番だぞ?」
身体をひかせたマルファーリスは王癪をつかみ直した。
「仕方ない……ちょっと荒っぽいが」
そういって、王癪を一回転させた。
光の弾が無数に出現して、帝国へと飛んでいく。
しばらくすると、あちこちから悲鳴が聞こえてきた。
「……なにをしている?」
「簡単なことじゃ。もしもの時のために生贄を一か所に用意しておくのは戦略の一つじゃ」
どうやら、どこかに拘束していた人間たちを殺して生贄を集めているのだ。
俺は忘れていない。
さっきから身体への攻撃を続けているのだが、一向に死ぬ気配がない。
こいつはもはや人間としては成立しない生き物なのかもしれない。
空気を圧縮して潰しても、真空をつくりだしても、粉々に砕いても、分子レベルで分解しても、瞬時に元に戻る。
かといって、ブラックホールでの消滅がこいつに効果があるかといえば微妙だ。
こいつ普通に転移を使うのだ。ブラックホール内には空間の支配拘束は使えない。ブラックホールの内部は物理法則が何か違うのかもしれない。
石を召喚して重力を発生させた瞬間に中のものを転移させてしまう。
どれだけの生贄を積み重ねてきたんだこいつは……。
「しかしじゃ。計画がここまで狂わされたら、本計画にかなりの支障が出てくる。すでに貯蓄まで使わされたのじゃからな。また生贄をつくるのに時間がかかりそうじゃし、そう言うわけだから一応褒めてやるのじゃ」
「おいおい、偉く上から目線だな。俺に勝てる気なのか?」
正直、丸ファーリスに勝つ手段が浮かばないが、こちらも油断を見せるつもりはない。
「当然じゃろ? ワシは生まれた時からずっと竜種を倒すことだけを考えておったのじゃ。人間に負けては、ちゃんちゃらおかしいではないか」
マルファーリスは、王癪を空間にとんとんと叩きつけると、魔法陣が現れた。
俺の意識が強力な何かで押さえつけられていくのがわかった。
精神支配か……。
たしかに、魔法が精神を操るのも可能なのだろうが……。
俺にはそんなものは効かない!
身体の動き自体は俺の電磁気操作の能力で操作できるからな。
俺の能力ごと精神を完全にのっとるものでないとだ。
意識が少しでも残っているんだから効かないさ。
それに脳を支配しているのは精神じゃない。電気パルスだし。
それができても対策は可能だ。
心を操る魔法は俺と一番相性の悪い魔法ともいえるかもな。
精神支配が聞いていない様子に、マルファーリスは目を見開いた。
俺はため息を吐いた。
冗談交じりにこう聞いた。
「時間かければ生贄が増えるってのは、子どもが産まれて増えるのを待つつもりか?」
「違うのじゃ。ワシはそんな非効率なことはせん。女奴隷たちに子どもを永遠と製造させるための装置になってもらっておる。時期に数も増えるじゃろ……」
「おいおい……それって」
「想像した通りじゃ。精神がぶっ壊れるまで子どもを孕むだけの存在を帝国には確保しておるのじゃ。男は増やすの好きみたいじゃし、勝手に増えてくれる。そして、生まれた子は税金が払えねばそのまま生贄に、そうでない者は魔法の向上に教育。これはワシの考えだけではない。以前から帝国で行われていたことを利用しているだけじゃ」
「まったくどいつもこいつもネジの飛んだやつばかりだ。じゃあ、その悪習はここで終わらせるか」
「貴様にはワシを倒すのは無理じゃよ……」
その滅び願望のあるちびっ子のお遊びはもう終わりだと言ってやる。
「いや、もう終わりだよ、お前は……」
俺はマルファーリスへと手をかざした。
どうやって倒すかずっと考えていたのだが、死なない奴を相手にする場合、考えることは2つだ。
死なない方法を崩すか、
もしくは……そいつを死なない状態で永久に動きを止めるか。
空間操作によって俺はその場に発生する空間を世界から完全に隔離する。
これでマルファーリスは自身の体を転移させることはできない。
そして、その空間を繰り返し転移させて、時間の連続性をつくりだす。
疑似的に光速をつくりだし、それによって空間内の時間を外部から隔離した。
――マルファーリスが生きている『時間』を完全に止めたのだ。
光の速度に近づいた空間内部は、時間を完全に停止させられる。現代科学では常識だ。いや、宇宙にだけは興味のあった俺が動画で見て知っていただけだが、まさか使うことになるとは。
あとはブラックホールにその空間を飲み込ませる。
闇の中にマルファーリスを入れた空間は飲み込まれると、
空間ごと消滅した。
後はブラックホールを重力操作・強制で解除した。
目の前から空間ごと跡形もなく消えた。
俺は手をパンパンと払った。
「ふう、終わったな。結構な疲労感があった」
まあ、微々たるものだ。
「さすがに出てこないよな?」
俺は、ゆっくりと土がむき出しになった地面へと降り立つ。
「帰るか……」
正直、ブラックホールの先に何があるのか知らない。そこでは、俺のスキルの物理法則が正常に作用しているかは不明だ。
そして、苦肉の策というだけで、女皇マルファーリスはそもそも死んでいない。
そういえば白竜もだ。
この目で確認したわけではない。
もし、あのスキルを何かしらの方法で抜け出て、その方法を確立されたら、いよいよを持って俺のスキルでは殺しきれない最大の敵となるだろう。
そんな嫌な予感があった。
そこへ、クリスティーナがやってきて俺を見つけた。
「おい、大丈夫か? 竜は? それにあの女の子は?」
「ん? ああ、始末しておいた」
その何でもないと言った返事にクリスティーナは茫然としていた。
「世界最強の竜を倒したというのか?」
「ああ、さっきからそう言っている」
「まさか、いや、しかし……」
信じられない様子みたいだが、俺が気になるのはモニカだ。
「モニカはいま帝国か?」
「ああ、そうだ。ギルドまで避難してもらった。もうしばらくすると、こっちに応援としてギルドの部隊が来る……のだが、いらなかったようだな」
「そうか……まあ、そうなるな」
「それにしても、どうやって倒したのだ?」
「……それはこう『グシャッ』ってな感じだな」
「ふっ、そうか。まあいい。よくやってくれた」
俺は会話しながらそのままクリスティーナとモニカのいるギルドへと戻ることにした。
あまりキャピキャピした女の子じゃないから、俺にはこのくらいが話しやすいらしい。
女の子と話すのは得意じゃないが、すらすらと言葉が出てくる。まあ、美人さんではあるが、女の子って感じがしないからかもしれない。
ギルドに戻ると、モニカがいて、俺の腕にしがみつく。
妹になって、こうやって甘えるようになってきたらしい。頭を撫でてやりつつこれからどうしようか考える。
帝国の皇帝を隔離したのだから、王がまたいなくなってしまった。
日本の総理大臣みたいな辞任・交代劇じゃないんだから、影響が出るのだろうが、その辺は抵抗勢力とかいっていた奴らがいるから、代わりになんとかなるのだろう。
俺が責任を持つものではない。
気になるのは、以前から行われていた、帝国での子ども量産の話だ。
やけに親のいない子どもが街中に多いと思ったが、親なしの子どもがこの国にはあふれているようだ。
とりあえず、またへんな奴が現れて生贄に使われる前にその根元は断っておこうと思い宿に戻るのだった。
その日、上空を一つの流れ星が輝いた。
とても赤くて綺麗な光だった。
東の空へと消えていく流れ星を見て、思った。
悪なる元凶は消えた。
これまでの大きな出来事に幕が下りたのだと。
――俺は一区切り付いたとそう思っていた。
「モニカ、その二人とこの場所を離脱するんだ」
「お兄ちゃんはどうするんです?」
「俺はとりあえず、こいつを何とかしてみる」
「なんとかって……竜ですよ?」
そのモニカのセリフに俺は疑問を浮かべた。
「どういうことだ? 竜だと何かまずいことがあるのか?」
「お兄ちゃんはそう言えば知らないんでしたね。この世界を支配しているのが誰なのか……」
「この世界は、人間が国をつくって支配しているんじゃないのか?」
そこに声をかけたのは、飛ばされたはずの冒険者、クリスティーナだった。
やはり外に飛ばされていたのか。
白竜を驚愕の表情で見上げつつ、クリスティーナはモニカの代わりにその説明をする。
「いや、違う。そもそもこの世界は世界の端っこ、それも中央大陸とはかけ離れた場所にある。そこに住んでいるのは人間以外の種族だ。その全ての種族を完全に掌握・支配しているのが竜種と呼ばれる存在だ」
「竜種というのは目の前のあれか?」
「そうなる……私も分類についてはそこまで詳しいわけではないがな。人の形をしている竜もいるらしいが、とにかく人間が勝てる相手ではないという話だ。帝国の建国目的はあまり知られていないが、その一つに『竜種の討滅』があるらしい」
「じゃあ……竜と支配権の取り合いを?」
この国が犠牲を積み重ねて強くなろうとしている理由は、世界の支配をひっくり返すことだとでも言うのか?。
「ああ、それでだいたい合っているのじゃ」
どこかから声が聞こえたかと思うと、空に浮いている一人の少女がいた。
ああやって俺たちを見下ろしている存在を忘れるわけがない。
アルカリス王国に勇者として召喚された時に見たちびっ子。
国王――マルファーリス=アルカリスだ。
「だが、なぜここに……」
こんなところにどうしているんだ?
ここは帝国のすぐ裏にある山だ……。
帝国の領内だぞ? 政争相手の領地に他国の王がいるなんて……。
そこで俺は不快な汗が流れるのを感じた。
女皇がなぜ俺を狙うのか……。
なぜステータスの情報を知っているような対策をしてきたのか。
「まさか……」
「改めてこう言わないといけないが、この国の『皇帝』となった女皇――マルファーリス=アルカリスじゃ」
ちっ、そういうことか。
「モニカその冒険者たちとこの場を離れてくれ」
「……わかりました」
モニカは悲しそうな表情で冒険者のクリスティーナと他グループの兄妹二人のところへと何かを話す。
それを聞いてクリスティーナが俺に驚いた表情を向けて、こう言った。
「正気か!? 相手は白竜もいるんだぞ? 竜種には魔法や物理攻撃も効かない。人間の攻撃では傷一つつかない」
「……そうか。いや、ここで相手をしなければどこへ逃げても変わらない。あいつは俺を狙っている」
そうだ。
相手の狙いが俺である以上、俺が一緒にいたらモニカが危険にさらされる。
それよりも、裏でコソコソするこのマルファーリスをここで沈めておきたい。
「……わかった。この3人を安全な場所まで届けたら必ず戻ってこよう。それまで生きていてくれ」
「……わかった」
あえて応援はいらないとは言わなかった。
俺は竜に対する知識を持っていない。それを聞ければよいのだが。
とはいえ、できるならクリスティーナが来る前に、突破口を見つけてこのデカい竜とバカ女皇・マルファーリスを始末したいところだ。
モニカたち4人は、離れるように帝国の中心へと走っていった。
俺は改めてマルファーリスへと目を向けた。
王癪を持っているのは前と同じだ。
ただ一つ違うのは目が真っ赤に充血していることだ。
良く観察してみると、マルファーリスの浮いているすぐ下の地面には大きな魔法陣が描かれていた。
さっきまで暴れまわる気満々だった白竜(ホワイトドラゴン)はといえば、苦しそうな表情でその場に静かにとどまっている。
「おい、その竜に何をした」
それに笑いかけるマルファーリスは、王癪を俺の方へ向けた。
「これじゃよ。生贄を使った大魔法。生贄は何じゃと思う? 貴様があの村を救ったらしいが……わかるじゃろ?」
俺は苦いものをかみつぶすように顔をゆがめた。
「人がわざわざ救った村人を生贄にしてきやがったってのか?」
「そうじゃ。貴様を殺すためだけにあの村は使わせてもらった。一応保険のつもりだったのじゃが、生贄にしてきて正解じゃった」
「ふん、イカれた女だな。それにしてもその竜はどういうことだ?」
「言ったじゃろ。ワシは精神拘束の魔法が得意でな……行け!」
そういって、マルファーリスは王癪を前方へと振った。
その声に支配されるように、白竜(ホワイトドラゴン)は俺へと赤い眼光を向けた。
そして、口を開いて何かをためるしぐさをする。
ブレスか!!
白い閃光が俺へと放たれた。
おそらく、グレートトカゲの強化版だ。
だとすると、竜だから聖なる魔力で増幅された白い炎弾……といったところか。
その速度も大きさも桁違いだ。
俺が自分の体制が崩れるのもかまわずに重力と気流の操作でその場を回避した。
さっきいた場所を通過した白いブレスは、はるか後方へ飛んでいき山を一つ吹き飛ばした。
ものすごい爆風が吹き荒れて、振動と衝撃波がここまで伝わってくる。
……はあ? なんだあれ!!
まじで竜って化け物だな。
無理に操られて、ガス欠気味に放たれたブレスがあの威力とは……。
しかしどうするか?
マルファーリスだけでも厄介そうなのに、白竜(ホワイトドラゴン)までいやがる。
しかも竜は物理攻撃や魔法が効かないというおまけつき。
そりゃ人間が勝てないわけだ。
とりあえずけん制攻撃として、巨大な石を複数、前方に召喚し赤熱するほどのスピードで放つ。
ついでに上空へ巨大な鉄柱を数本生みだして火を纏わせ、頭へと衝突させた。
隕石級の衝突と鉄柱による戦略兵器級の攻撃を数発。
爆炎と衝撃波が席巻して、辺りの木々をなぎ倒していく。
煙が晴れて視界が戻ると、そこには何事もなかったかのように白竜(ホワイトドラゴン)がいた。
その後ろにいるマルファーリスも当然無傷だ。
「無傷か……本当にどうするかな」
あの竜を何とかしないと、マルファーリスの相手さえ厳しい。
試しに、直接マルファーリスを攻撃するため、背後に鉄球を召喚・転移して心臓に叩きこんだ。
しかし、風穴のあいたマルファーリスの身体は、すぐに元通りになった。
おいおいおい。
どっちも化け物かよ。
すると、手をこまねいていた俺へと白竜(ホワイトドラゴン)が一直線に向かってくる。
「来やがったか」
『どうするんだい?』
「ん? 妖刀か……、さてどうするか、ねっと」
俺は竜の爪の攻撃を避けて大きく後方へと下がる。
「一つ聞きたいんだが、竜ってのはどうやって飛んでいる?」
『ふふふ、飛んでないよ。そこに「ある」だけだ』
「じゃあ地点固定タイプか。厄介だな」
『それにしてはなんか余裕あるね……』
「そうか? ああ、正直竜と戦うことになるとは思っていなかった。だからなのか、戦いに憧れる気持ちが精神を高揚させているのかもな」
『おかしな主様(ぬしさま)だ』
俺はまず、攻撃をどう連撃していくのか決める。
使えるのは電磁気操作、空間操作、重力操作。この辺があの規模の化け物に対抗できる能力といったところか。
手に鉄の塊を召喚すると、俺は竜の腹の中にそれを転移させた。
白竜(ホワイトドラゴン)の腹がボンッと膨らんだ。
すかさず、磁力を操作して、竜を真横へと吹き飛ばした。
山に直撃した白竜(ホワイトドラゴン)をさらに空間操作で俺の目の前へと転移し直す。
今度は鉄の杭を生み出して、磁力と物質操作で腹の中の鉄へと引き合わせてぶつける。
悲鳴を上げた白竜(ホワイトドラゴン)は、空中を何度も身体をうねっていた。
鱗に傷はついていないが、物理攻撃が全く効かないわけじゃなさそうだ。
内部との同時攻撃で、間違いなくダメージは受けている。
なら、使える能力はもっとある。
俺は水を召喚して転移で腹の中に移動させ、物質操作・強制で核分裂反応を起こさせ、急激な熱量を得て爆発させた。
いわゆる水蒸気爆発だ。
腹が一瞬にしてふくらみ、内部から爆音が聞こえた。
しかし、驚いたのは竜の身体が破裂することなく元の姿を維持したままだったことだ。
すげえな、あれで身体を保てるのだから、竜というのは確かに通常の物理攻撃では倒せないらしい。
こうなれば、今できる最大の攻撃手段を使うしか無い。
それは、物理的なものに対して最も有効な空間支配のスキルだ。
俺は、手の妖刀に一回り大きい形状をイメージして空間を纏わせる。
そのまま竜のところへ急速接近し、その刀を尻尾に振り下ろした。
竜ではなく空間そのものを切断したのだ。
俺は竜の尻尾を完全に切り落とした。
しかし、竜の尻尾は再生していた。
くっそ、ふざけるなよ!
内心、叫んだ。
ただの化け物じゃないなこりゃ。
神でも相手にしているのかってレベルだ。
そこまで来て、ふとマルファーリスがどうしてそこまでして魔法にこだわるのかが分かった。
そうか、その精神拘束の魔法で中央大陸の竜種を同士打ちさせるつもりなのか。
もしくは全ての竜種を掌握するつもりなのか。
いずれにしてもどれだけの生贄がいるのか想像できない。
俺は思考をやめ、白竜(ホワイトドラゴン)の背後へと回った。
尻尾だからダメなのかと思って、頭を切り落とすことにした。
その瞬間、白竜(ホワイトドラゴン)はこちらを向いて、ブレスを放つ。
くそ。
操っているのはマルファーリスだから、死角が意味をなさない。
しかたなく、空間操作と転移で俺の目の前に顔が来るように転移させた。
正面には白竜(ホワイトドラゴン)の首筋だ。
俺は転移と同時に首を切り落とした。
だが……、
まさかの合体。
くっついたぞこいつ!
じゃあ、これだな。これ効かなかったら本気でまずい。
俺は石コロを竜の腹の中へと転移させた。
そこに重力操作で石自体へと莫大な重力を重ねがけする。
どんどんと重力に空間が飲み込まれていくようにして、超新星爆発を起こし、重力崩壊を起こす。
ブラックホールだ。
これは操作・強制によってはじめてなせる技。
石の姿は重力に飲み込まれ、『特異点』だけが発生していく。普通は太陽の約3倍以上の質量を持ち、中性子星で終わらないだけの質量がないとできないブラックホールを作り出している。
レベルが上昇して質量制限が解除されているからこそできるようになった。
ー―そんな大質量の崩壊が竜の腹の中で進んでいる。
外部に影響が出ないように、空間支配も併用した。これで宇宙線などの影響もこの国には出ない。
竜は腹の中に引っ張られるようにして身体の体積を縮ませていく。
そして、一瞬の後、大きく黒い視界が膨れ上がって、
竜はその姿を完全に消滅させた。
ブラックホールに飲み込まれて、白竜(ホワイトドラゴン)は消滅した。
その様子をずっと見ていたマルファーリスが絶叫した。
「馬鹿な!! 消えたじゃと!? ありえん、ありえんのじゃ!!!」
「さて、次はおまえの番だぞ?」
身体をひかせたマルファーリスは王癪をつかみ直した。
「仕方ない……ちょっと荒っぽいが」
そういって、王癪を一回転させた。
光の弾が無数に出現して、帝国へと飛んでいく。
しばらくすると、あちこちから悲鳴が聞こえてきた。
「……なにをしている?」
「簡単なことじゃ。もしもの時のために生贄を一か所に用意しておくのは戦略の一つじゃ」
どうやら、どこかに拘束していた人間たちを殺して生贄を集めているのだ。
俺は忘れていない。
さっきから身体への攻撃を続けているのだが、一向に死ぬ気配がない。
こいつはもはや人間としては成立しない生き物なのかもしれない。
空気を圧縮して潰しても、真空をつくりだしても、粉々に砕いても、分子レベルで分解しても、瞬時に元に戻る。
かといって、ブラックホールでの消滅がこいつに効果があるかといえば微妙だ。
こいつ普通に転移を使うのだ。ブラックホール内には空間の支配拘束は使えない。ブラックホールの内部は物理法則が何か違うのかもしれない。
石を召喚して重力を発生させた瞬間に中のものを転移させてしまう。
どれだけの生贄を積み重ねてきたんだこいつは……。
「しかしじゃ。計画がここまで狂わされたら、本計画にかなりの支障が出てくる。すでに貯蓄まで使わされたのじゃからな。また生贄をつくるのに時間がかかりそうじゃし、そう言うわけだから一応褒めてやるのじゃ」
「おいおい、偉く上から目線だな。俺に勝てる気なのか?」
正直、丸ファーリスに勝つ手段が浮かばないが、こちらも油断を見せるつもりはない。
「当然じゃろ? ワシは生まれた時からずっと竜種を倒すことだけを考えておったのじゃ。人間に負けては、ちゃんちゃらおかしいではないか」
マルファーリスは、王癪を空間にとんとんと叩きつけると、魔法陣が現れた。
俺の意識が強力な何かで押さえつけられていくのがわかった。
精神支配か……。
たしかに、魔法が精神を操るのも可能なのだろうが……。
俺にはそんなものは効かない!
身体の動き自体は俺の電磁気操作の能力で操作できるからな。
俺の能力ごと精神を完全にのっとるものでないとだ。
意識が少しでも残っているんだから効かないさ。
それに脳を支配しているのは精神じゃない。電気パルスだし。
それができても対策は可能だ。
心を操る魔法は俺と一番相性の悪い魔法ともいえるかもな。
精神支配が聞いていない様子に、マルファーリスは目を見開いた。
俺はため息を吐いた。
冗談交じりにこう聞いた。
「時間かければ生贄が増えるってのは、子どもが産まれて増えるのを待つつもりか?」
「違うのじゃ。ワシはそんな非効率なことはせん。女奴隷たちに子どもを永遠と製造させるための装置になってもらっておる。時期に数も増えるじゃろ……」
「おいおい……それって」
「想像した通りじゃ。精神がぶっ壊れるまで子どもを孕むだけの存在を帝国には確保しておるのじゃ。男は増やすの好きみたいじゃし、勝手に増えてくれる。そして、生まれた子は税金が払えねばそのまま生贄に、そうでない者は魔法の向上に教育。これはワシの考えだけではない。以前から帝国で行われていたことを利用しているだけじゃ」
「まったくどいつもこいつもネジの飛んだやつばかりだ。じゃあ、その悪習はここで終わらせるか」
「貴様にはワシを倒すのは無理じゃよ……」
その滅び願望のあるちびっ子のお遊びはもう終わりだと言ってやる。
「いや、もう終わりだよ、お前は……」
俺はマルファーリスへと手をかざした。
どうやって倒すかずっと考えていたのだが、死なない奴を相手にする場合、考えることは2つだ。
死なない方法を崩すか、
もしくは……そいつを死なない状態で永久に動きを止めるか。
空間操作によって俺はその場に発生する空間を世界から完全に隔離する。
これでマルファーリスは自身の体を転移させることはできない。
そして、その空間を繰り返し転移させて、時間の連続性をつくりだす。
疑似的に光速をつくりだし、それによって空間内の時間を外部から隔離した。
――マルファーリスが生きている『時間』を完全に止めたのだ。
光の速度に近づいた空間内部は、時間を完全に停止させられる。現代科学では常識だ。いや、宇宙にだけは興味のあった俺が動画で見て知っていただけだが、まさか使うことになるとは。
あとはブラックホールにその空間を飲み込ませる。
闇の中にマルファーリスを入れた空間は飲み込まれると、
空間ごと消滅した。
後はブラックホールを重力操作・強制で解除した。
目の前から空間ごと跡形もなく消えた。
俺は手をパンパンと払った。
「ふう、終わったな。結構な疲労感があった」
まあ、微々たるものだ。
「さすがに出てこないよな?」
俺は、ゆっくりと土がむき出しになった地面へと降り立つ。
「帰るか……」
正直、ブラックホールの先に何があるのか知らない。そこでは、俺のスキルの物理法則が正常に作用しているかは不明だ。
そして、苦肉の策というだけで、女皇マルファーリスはそもそも死んでいない。
そういえば白竜もだ。
この目で確認したわけではない。
もし、あのスキルを何かしらの方法で抜け出て、その方法を確立されたら、いよいよを持って俺のスキルでは殺しきれない最大の敵となるだろう。
そんな嫌な予感があった。
そこへ、クリスティーナがやってきて俺を見つけた。
「おい、大丈夫か? 竜は? それにあの女の子は?」
「ん? ああ、始末しておいた」
その何でもないと言った返事にクリスティーナは茫然としていた。
「世界最強の竜を倒したというのか?」
「ああ、さっきからそう言っている」
「まさか、いや、しかし……」
信じられない様子みたいだが、俺が気になるのはモニカだ。
「モニカはいま帝国か?」
「ああ、そうだ。ギルドまで避難してもらった。もうしばらくすると、こっちに応援としてギルドの部隊が来る……のだが、いらなかったようだな」
「そうか……まあ、そうなるな」
「それにしても、どうやって倒したのだ?」
「……それはこう『グシャッ』ってな感じだな」
「ふっ、そうか。まあいい。よくやってくれた」
俺は会話しながらそのままクリスティーナとモニカのいるギルドへと戻ることにした。
あまりキャピキャピした女の子じゃないから、俺にはこのくらいが話しやすいらしい。
女の子と話すのは得意じゃないが、すらすらと言葉が出てくる。まあ、美人さんではあるが、女の子って感じがしないからかもしれない。
ギルドに戻ると、モニカがいて、俺の腕にしがみつく。
妹になって、こうやって甘えるようになってきたらしい。頭を撫でてやりつつこれからどうしようか考える。
帝国の皇帝を隔離したのだから、王がまたいなくなってしまった。
日本の総理大臣みたいな辞任・交代劇じゃないんだから、影響が出るのだろうが、その辺は抵抗勢力とかいっていた奴らがいるから、代わりになんとかなるのだろう。
俺が責任を持つものではない。
気になるのは、以前から行われていた、帝国での子ども量産の話だ。
やけに親のいない子どもが街中に多いと思ったが、親なしの子どもがこの国にはあふれているようだ。
とりあえず、またへんな奴が現れて生贄に使われる前にその根元は断っておこうと思い宿に戻るのだった。
その日、上空を一つの流れ星が輝いた。
とても赤くて綺麗な光だった。
東の空へと消えていく流れ星を見て、思った。
悪なる元凶は消えた。
これまでの大きな出来事に幕が下りたのだと。
――俺は一区切り付いたとそう思っていた。
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