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5話 謎の白い矢印

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真夏の太陽が照りつける中、佐藤みけ子は猫耳フードをかぶって町を散歩していた。汗ばむ額を拭いながら、ゆっくりと歩を進める。そんな中、ふと目に入ったのは道路に描かれた謎の白い矢印だった。
みけ子は首をかしげ、つぶやいた。
「あれ?この矢印、今まで見たことないよ」
興味を引かれたみけ子は、すぐさま携帯電話を取り出し、探偵団のメンバーに連絡を入れた。
「みんな、緊急集合!謎の白い矢印を発見したよ。公園に集まって」
30分後、公園のベンチに探偵団のメンバーが揃った。みけ子は興奮気味に状況を説明する。
「ねえねえ、みんな。道路に描かれた白い矢印を見つけたんだ。どこに続いてるのか、調べてみない?」
 まりが目を輝かせて答える。
「わぁ、面白そう!きっと何かの謎が隠されてるわ」
けんたも頷きながら言った。
「よし、徹底的に調査しよう。きっと面白いものが見つかるはずだ」
たけるが力こぶを作りながら言う。
「僕も全力で協力するよ」
ユミも静かに言った。
「私、わくわくします!」
みけ子は満面の笑みを浮かべて言った。
「さすが、みんな!それじゃあ、探偵団、出動だ!」

5人は町に繰り出し、白い矢印を追跡し始めた。暑い日差しの中、汗を拭きながらも楽しそうに歩を進める。
しばらく歩くと、まりが気づいたことを口にした。
「ねえ、この矢印って主要な通りや広場を通ってるみたい」
けんたも頷きながら言う。
「そうだな。人通りの多い場所を中心に描かれてるみたいだ」
ユミがノートに記録しながら言った。
「そして、所々に『休』というマークがあります。なんでしょうか?」
みけ子は猫耳フードを整えながら、楽しそうに言った。
「ますます謎が深まってきたね。さあ、もっと先を調べよう!」
歩きながら、メンバーたちは矢印の意味を予想し合った。
まりが明るい声で言う。
「もしかして、宝探しのヒント?」
けんたは首を横に振りながら答える。
「いや、それじゃあ目立ちすぎだろ。もっと隠密な方法を使うはずだ」
ユミが静かに意見を述べる。
「私は、新しいジョギングコースの案内かもしれないと思います。最近、健康ブームですからね」
たけるも考えながら言った。
「そうかも。でも、誰も走ってる人見かけないよね」
みけ子は目を輝かせながら言う。
「わくわくするね!きっと、すごく楽しいことが待ってるはず!」

そうして歩いていると、Y字路に差し掛かった。そこで矢印が二つに分かれていることに気がつく。
みけ子が不思議そうに首をかしげる。
「あれ?どっちが正しいルートなんだろう」
ユミが注意深く観察しながら言った。
「左側の矢印は少し色あせてますね。右側の方が新しく見えます」
けんたが提案する。
「よし、ここで手分けしよう。俺とみけ、まりで左側。たけるとユミで右側を調べよう」
みんなが頷き、二手に分かれることにした。
みけ子が元気よく言う。
「よーし!じゃあ、1時間後にここで待ち合わせね。気をつけて行ってきて!」
みけ子、けんた、まりの3人は左側のルートを進んでいく。しばらく歩くと、矢印が所々薄くなっていることに気がついた。
まりが心配そうに言う。
「ねえ、この矢印、消えかかってない?」
けんたも眉をひそめながら答える。
「ああ、かなり古いみたいだな。雨で流されたのかも」
みけ子は真剣な表情で言った。
「でも、まだ追えるよ。がんばって探そう!」
3人は慎重に矢印を追いながら進んでいく。すると、突然道路工事の看板が目に入った。
けんたが驚いて声を上げる。
「おい、前が通行止めだぞ!」
まりも困った様子で言う。
「どうしよう...ここで行き止まりってこと?」
みけ子は周りを見回しながら言った。
「大丈夫、きっと迂回路があるはず。探してみよう!」
3人は周辺を歩き回り、何とか迂回路を見つけ出した。小道や裏通りを通りながら、なんとか矢印のルートに戻る。
まりがほっとした様子で言う。
「よかった、また矢印を見つけられたね」
3人は再び矢印を追いかけ始める。狭い路地や人通りの少ない道を通りながら、少しずつ目的地に近づいていく。
そして、最後の曲がり角を曲がると、そこには立派な神社が見えてきた。
みけ子が驚いて声を上げる。
「わぁ!神社だよ!」
まりも目を丸くして言う。
「本当だ!ここが目的地だったのね」
けんたがふと気づいて言った。
「おい、あそこを見ろ。たけるとユミじゃないか?」
確かに、神社の入り口付近に、たけるとユミの姿が見えた。3人は駆け寄る。
みけ子が大きな声で呼びかける。
「たけるくん、ユミちゃん!こっちこっち!」
たけるとユミも気づいて手を振る。
ユミが少し驚いた様子で言う。
「みけ子さん、みなさん。やはりここに辿り着いたんですね」
たけるも嬉しそうに言った。
「僕たちも今着いたところだよ」
5人が再会し、互いの冒険を報告し合う。そのとき、神社の境内から賑やかな声が聞こえてきた。
みけ子が首をかしげる。
「あれ?なんだか騒がしいね」
まりが提案する。
「中を見てみない?きっと何かあるわ」
5人は神社の中に入っていく。すると、大勢の大人たちが何やら準備を進めている様子が目に入った。
けんたが声をかける。
「すみません、ここで何かイベントがあるんですか?」
するとひとりの年配の男性が振り返り、にこやかに答えた。
「おや、子どもたちか。ここは来週の夏祭りの準備をしているんだよ」
みけ子が目を輝かせて尋ねる。
「夏祭り?道路に描かれた白い矢印は、その関係あるんですか?」
男性は少し驚いた様子で答える。
「よく気がついたね。その通りだよ。あの矢印は、お神輿の巡行ルートなんだ」
5人は驚きの声を上げる。
たけるが不思議そうに尋ねる。
「でも、なんで二つのルートがあったんですか?」
男性は少し困ったように頭をかく。
「実はね、元々のルートが道路工事で使えなくなってしまったんだ。だから、新しいルートを作ることになってね」
みけ子たちは納得したように頷く。
まりが明るく言う。
「私たち、両方のルートを調べてきちゃいました」
男性は感心したように答える。
「そうか、よく頑張ったね。君たちの探究心に感心だよ」
けんたが真剣な表情で尋ねる。
「俺たちに何か手伝えることはありますか?」
男性は嬉しそうに笑顔を見せる。
「ありがとう。実は人手が足りなくて困っていたんだ。君たちの力を借りられたら助かるよ」
みけ子が元気よく答える。
「お任せください!私たち探偵団、全力でお手伝いします!」
そうして、みけ子たちは夏祭りの準備を手伝うことになった。
たけるは力仕事を担当し、重い荷物を運んだり、テントを立てたりと大活躍。
ユミは緻密な計画が得意なので、スケジュール管理や配置図の作成を手伝う。
まりはコミュニケーション能力を活かし、地域の人々との連絡係を務める。
けんたは動きまわるのが得意なので、走り回って様々な場所に必要な物資を届ける。
みけ子は全体を見渡しながら、みんなの調整役として奔走した。
準備の合間に、みけ子は男性に尋ねた。
「おじさん、夏祭りってどんなお祭りなんですか?」
男性は優しく微笑みながら答える。
「うちの神社の夏祭りは、古くから続く伝統行事なんだ。御神輿を担いで町中を練り歩き、みんなで祭りを楽しむんだよ」
みけ子の目が輝く。
「わぁ、楽しそう!私たちも参加できますか?」
男性は嬉しそうに頷く。
「もちろんだとも。君たちみたいな元気な子どもたちが参加してくれると、祭りがもっと賑やかになるよ」
そうして一週間が過ぎ、いよいよ夏祭り当日を迎えた。
朝早くから、みけ子たち探偵団は神社に集合。それぞれの役割に分かれて準備を始める。
みけ子が元気よく声をかける。
「みんな、今日は思いっきり楽しもうね!」
祭りが始まると、町中が活気に溢れた。御神輿が町を練り歩き、沿道では大勢の人々が声援を送る。
みけ子たちも、子ども神輿を担いだり、出店のお手伝いをしたりと大忙し。
たけるも嬉しそうに言う。
「僕、この町に住んでてよかったって思うよ」
「うん、私もそう思う。これからもこの町の謎を解いていこうね。そして、もっともっとみんなを笑顔にしていこう!」
夏の日差しの中、祭りの喧騒が心地よく響いていた。

それからその夜、祭りが終わった後、みけ子たちは神社の境内で星を見上げていた。
疲れてはいるものの、達成感に満ちた表情を浮かべていたのであった。
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