ねこ耳探偵と愉快な仲間たち 小学生探偵の物語

三峰キタル

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4話 学校の怪奇音

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夏、蝉の声が鳴り響く中、みけ子たちの学校に奇妙な噂が広まっていた。夜間警備員の佐々木さんが、夜中に不思議な音を聞いたというのだ。
教室で昼食を食べていたみけ子たちは、その噂について話し合っていた。
みけ子が目を輝かせながら言う。
「ねえねえ、みんな聞いた?夜の学校から変な音がするんだって!」
まりが少し怖そうな表情で答える。
「うん、聞いたわ。幽霊の声かもしれないって噂もあるわよ」
けんたは冷静に腕を組んで言った。
「いや、そんなわけないだろ。きっと何か理由があるはずだ」
たけるが真剣な表情で提案する。
「僕たちで調べてみない?夜の学校、ちょっとドキドキするけど」
ユミは眼鏡を直しながら静かに言った。
「そうですね。科学的なアプローチで解明できると思います」
みけ子は立ち上がり、猫耳フードを整えながら宣言した。
「よし、決まり!今夜、学校に忍び込んで調査しよう!」
その日の放課後、みけ子たちは必要な機材を集めて学校に残ることにした。たけるは重い録音機器を背負い、みんなの分の懐中電灯も持っていた。
みけ子が作戦を説明する。
「みんな、聞いて。まずは校舎内を探索して、音のする場所を特定するよ。そのあと、録音して分析しよう」
けんたが頷きながら言う。
「了解。俺たちで手分けして探そう」
日が暮れるのを待つ間、みけ子たちは図書室で時間を潰した。やがて、外が暗くなり始めると、彼らは静かに廊下に出た。
まりが小声で言う。
「ちょっと怖いね...みんな、くっついて歩こう」
たけるが優しく答える。
「大丈夫だよ。僕がみんなを守るから」
暗い廊下を懐中電灯の明かりを頼りに進む5人。すると、かすかに奇妙な音が聞こえ始めた。
みけ子が耳をそばだてる。
「あれ?聞こえる?なんだか...うなってるような音」
ユミが冷静に分析する。
「確かに。低い周波数の音のようですね」
音を頼りに校舎内を歩き回るみけ子たち。しかし、音源がはっきりしない。
けんたが首をかしげながら言う。
「おかしいな。音は聞こえるのに、どこから出てるのか分からない」
たけるが提案する。
「僕が重い物を動かして、壁の向こうも調べてみようか」
みけ子が頷く。
「お願い、たけるくん!」
たけるは力強く本棚や戸棚を動かし、壁の裏側を調べていく。しかし、決定的な手がかりは見つからない。
ユミが思案顔で言う。
「このままでは音源の特定が難しいです。もっと科学的なアプローチが必要かもしれません」
みけ子が興味深そうに尋ねる。
「科学的なアプローチ?どういうこと?」
ユミが説明を始める。
「音の周波数分析をしてみるのはどうでしょうか。そうすれば、音の特性が分かるかもしれません」
けんたが感心した様子で言う。
「さすがユミ!それはいいアイデアだな」
たけるが即座に反応する。
「分かった。必要な機材を運んでくるよ」
たけるは重い分析機器を運び、ユミの指示に従って設置していく。みけ子たちは息を潜めて、分析結果を待った。
しばらくして、ユミが驚いた表情で言う。
「これは...予想外です。音が複数の場所から発生しているようです」
まりが不思議そうに尋ねる。
「複数の場所?どういうこと?」
ユミが説明を続ける。
「主に配管や空調設備がある場所から音が出ているようです。しかも、周波数のパターンが似ています」
みけ子が目を輝かせる。
「それって、つまり...?」
けんたが推理を始める。
「もしかして、建物全体に関係する何かが原因なのか?」
たけるが真剣な表情で提案する。
「床下や壁の中も確認した方がいいかもしれない。僕が床板や壁板を持ち上げるよ」
みけ子が心配そうに言う。
「でも、学校の物を勝手に動かしちゃまずいんじゃ...」
その時、廊下に足音が聞こえた。みんなが驚いて振り返ると、そこには夜間警備員の佐々木さんが立っていた。
佐々木さんが優しく微笑みながら言う。
「やあ、みんな。怪奇音の正体を探ってるんだね」
みけ子たちは慌てて説明を始める。佐々木さんは彼らの話を聞くと、深く頷いた。
佐々木さんが言う。
「分かった。君たちの調査を手伝おう。床下や壁の中も確認しよう」
佐々木さんの許可を得て、たけるは慎重に床板や壁板を持ち上げ始めた。すると、古い配管が露出した。
たけるが驚いた様子で言う。
「これ、かなり古そうだ。あちこちに亀裂や摩耗がある」
ユミが分析結果と照らし合わせながら言う。
「やはり、この配管が音の原因かもしれません」
佐々木さんが思案顔で言う。
「そうか...建物の経年劣化が原因だったのか。明日、学校の施設管理者に連絡して、専門家に見てもらおう」
翌日、施設管理者と配管の専門家が学校を調査した。その結果、みけ子たちの推理が正しかったことが確認された。
専門家が説明する。
「古い配管が振動して、この奇妙な音を出していたんです。早急に修理が必要ですね」
校長先生が深く頭を下げながら言う。
「みけ子さんたち、本当にありがとう。君たちのおかげで大きな問題を早期に発見できました」
たけるが控えめに言う。
「僕たち、何かお手伝いできることはありますか?」
施設管理者が答える。
「ありがとう。専門的な修理は業者に任せるけど、準備作業なら手伝ってもらえるかな」
みけ子たちは喜んで協力を申し出た。特にたけるは、その力強さを活かして大活躍した。重い機材を運んだり、作業スペースを確保するために備品を移動したりと、大人たちを驚かせるほどの働きぶりだった。
数日後、学校の配管修理が完了し、怪奇音は完全に消えた。
その日の放課後、探偵団のメンバーは校庭のベンチに集まった。夕日に照らされた校舎を見上げながら、みけ子が言った。
「最初は怖かったけど、みんなと一緒だったから頑張れたよ」
けんたが付け加える。
「そうだな。それに、学校のことをもっと知ることができた気がする」
たけるが少し照れくさそうに言う。
「僕も...みんなの役に立てて嬉しかったよ。これからも力仕事は任せてね」
みけ子が猫耳フードを整えながら立ち上がる。
「私たちの冒険はまだまだ続くよ。次はどんな謎が待っているかな?」
学校の怪奇音の謎は解決したが、みけ子たちの探偵団の冒険は、まだ始まったばかり。これからも、彼らは街の小さな謎に立ち向かい、仲間との絆を深めていくことだろう。
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