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第9部 道化師と世界の声
竜王の朝食会
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「ルトさん」
ルルベルーナが、少し悲しそうな顔で言った。
「わたしが一般の授業に参加するのはやはり、なにか差し障りがあるのでしょうか?
わたしが、その、人間では無いから?」
そんな、ことはありません。
と、「踊る道化師」のリーダーは断言した。
「これは、ぼくからのお願いなんです。
一緒に銀灰皇国に行って欲しいんです。」
ルルベルーナは、不安そうに、ルトを見返した。
「このメンバーで、ですか?」
「そうです。」
「わたしは、その、」
少女は、困っていた。
「ひとを乗せるのがあんまり、得意ではなく、」
「普通に、魔道列車で行きます。」
と、ルトが答えると安心したように、微笑んだ。
「問題はもうひとつあります。」
ルルベルーナは、続けて言った。
「こちらのほうが、問題なのですが、わたしがランゴバルド冒険者学校に在籍していることを、快く思わない物が居るのです。」
「誰です?」
「“牙”のもの達です。」
ああ、とルトは応えた。
「話がわからんっ! わしにも分かるように話せっ!」
ガセルが食ってかかった。
「牙というのは、ルルベルーナの、その実家のほうの」
イゲルがどこまで、事情が分かっているのか、把握していなかったので、ルトの言葉選びも慎重になる。
「護衛でね。もともとランゴバルドへの留学を反対されてたのを、無理やり出できてしまった。ここまでは、ガセルもわかるよね?」
うむ。と、偉そうに少年は頷いた。
「ランゴバルドにいる分には、たいうことで、留学を許してもらっています。
もし、ランゴバルドから1歩でも出るようなら」
「出るようなら?」
「最低でも1名、護衛のものを付けると。」
ルトは、考え込み、ガセルはまた喚いた。
「ま、まてっ! なんでもう行く前提で話がすすんでおるんじゃっ!
せっかく、これから、クラスメイトたちもうふふ、キャッキャッ出来るようになったということころで・・・」
「わたしは、行きますよ。ルトさん。」
イゼルがきっぱりと言った。
「わたしたち、戦闘民族にとっては、人生が即ち狩り。狩場を、変えることは、よくあることです。」
「本当は?」
「クラスメイトのなかに、ヴァルゴールの使徒がうじゃうじゃいて、担任が吸血鬼で副担任が蜘蛛の化け物なクラスが怖いからですっ!」
正直そうじゃろうなあ、としみじみとガセルが、言った。
なんども言うが、彼はあまりにもモテない半生のため、こじらせているだけで、性格が悪い訳では無い。人間ならば怒るであろう老化に伴う頑固さや、プライドの高さとも無縁である。
若いものには優しいし、相談にも乗ってやる。人格面も十分に尊敬していなければ、そもそも、任期の制限無しの長寿族で長老の地位には付けない。
なにげに、ルトに対する態度が厳しいのは、17年程度しか生きていない人間の子供である彼を、同格以上の傑物と認めているからである。
「逆に言うなら、牙をひとり同行させれば、銀灰行きは可能ですか?」
「もちろん。わたしがお役にたつのなら。」
控えめにルルベルーナは、言った。
もちろん、彼女は、役にたつどころではないのだが。
「ほかには、ルールス先生が同行する。公式には、ランゴバルド冒険者学校からの銀灰皇国への公式訪問だ。」
「なにか、訪問するような用事がありますか?」
「うちのクラスのオルガは、銀灰皇国の現皇帝から、後継者の指名を受けている。」
へっ!
と表情を歪めて、ガセルがへんな声を出した。
「銀灰としては、その後、正式な立太子も行ってはいない。非公式の後継者だ。」
「そうです。ギウリークでなみいる高位貴族、各国の外交官の目の前で宣言された非公式な後継者指名でしたね。」
「まるで、見てきたように言うでは無いか? いや、まさか・・・」
ガセルは口ごもった。
「確か、クローディアがミトラに到着したのを歓迎するパーティーの席上だったと。そうか、お主もいたのだな、まおうじ・・・・・・ルト!!」
そろそろ、ホームルームの時間だったが、話しがそういう方向に進んでいたので、すっかり、授業に出る気をなくしたガセルは、サラミとハムとチーズを鷲掴みにして、くちに放り込んだ。
「いいだろう、力を貸すぞ、ルト・・・」
「ルトくーーーーーんっ!!」
突然、現れた美少女に、クビに抱きつかれて、ルトはさすがに目をしろくろさせた。
「どこから出てきたっ!」
「昨日、届けてもらってのです。」
ルルベルーナは、ニコニコと笑っている。
「調度良いタイミングでした。小包のなかに閉鎖空間を作ってそこに、潜んでもらいました。
学校を見たいというので、わたしのバッグに入ってもらって」
では、この少女、妖滅竜クサナギが、ルルベルーナのバックから出てきたのは、見間違いでは無かったわけだ。
「会いたかったよっ! ルトくんっ!」
可憐な少女は、ルトの胸に顔を埋めたすりすりを続ける。
さすがに、朝の学食も、騒然となってきた。
クサナギは、紛れもなく古竜。しかも「竜の牙」と、呼ばれる竜王直属の護衛のひとりである。
なにが、得意なのかは実は、ルトも知らない。だが、苦手は知っていた。
人間の姿への変身。いわゆる「人化」である。感情の高ぶりで、クサナギの人化は簡単に解け、竜とも人間ともつかぬ、化け物へと変化してしまう。
実際に、はじめて会った時、彼女はそう、なりかけており、それをルトが救って依頼、クサナギはすっかりルトに懐いている。
竜から見れば、毛の薄い猿の一種である人間のルトに、恋心をいだいているなどといつことは、有り得るのだろか?
そこまではいかなくても、単純に年次がうえの古竜に対するような、親しみを込めて接してくるようになってのである。
「クサナギを銀灰皇国に、同行されることが条件ですか?」
「クサナギは、強いです。」
ルルベルーナは、胸を張って自慢した。
「個体対個体の戦いなら、わたしにも負けません。」
そういう、ルルベルーナは、地方の農家の娘同様だったので、その正体を知らぬものは、なんだ、それがどうした?になるのだろうか。
ルルベルーナの正体は、竜王である。
ルルベルーナが、少し悲しそうな顔で言った。
「わたしが一般の授業に参加するのはやはり、なにか差し障りがあるのでしょうか?
わたしが、その、人間では無いから?」
そんな、ことはありません。
と、「踊る道化師」のリーダーは断言した。
「これは、ぼくからのお願いなんです。
一緒に銀灰皇国に行って欲しいんです。」
ルルベルーナは、不安そうに、ルトを見返した。
「このメンバーで、ですか?」
「そうです。」
「わたしは、その、」
少女は、困っていた。
「ひとを乗せるのがあんまり、得意ではなく、」
「普通に、魔道列車で行きます。」
と、ルトが答えると安心したように、微笑んだ。
「問題はもうひとつあります。」
ルルベルーナは、続けて言った。
「こちらのほうが、問題なのですが、わたしがランゴバルド冒険者学校に在籍していることを、快く思わない物が居るのです。」
「誰です?」
「“牙”のもの達です。」
ああ、とルトは応えた。
「話がわからんっ! わしにも分かるように話せっ!」
ガセルが食ってかかった。
「牙というのは、ルルベルーナの、その実家のほうの」
イゲルがどこまで、事情が分かっているのか、把握していなかったので、ルトの言葉選びも慎重になる。
「護衛でね。もともとランゴバルドへの留学を反対されてたのを、無理やり出できてしまった。ここまでは、ガセルもわかるよね?」
うむ。と、偉そうに少年は頷いた。
「ランゴバルドにいる分には、たいうことで、留学を許してもらっています。
もし、ランゴバルドから1歩でも出るようなら」
「出るようなら?」
「最低でも1名、護衛のものを付けると。」
ルトは、考え込み、ガセルはまた喚いた。
「ま、まてっ! なんでもう行く前提で話がすすんでおるんじゃっ!
せっかく、これから、クラスメイトたちもうふふ、キャッキャッ出来るようになったということころで・・・」
「わたしは、行きますよ。ルトさん。」
イゼルがきっぱりと言った。
「わたしたち、戦闘民族にとっては、人生が即ち狩り。狩場を、変えることは、よくあることです。」
「本当は?」
「クラスメイトのなかに、ヴァルゴールの使徒がうじゃうじゃいて、担任が吸血鬼で副担任が蜘蛛の化け物なクラスが怖いからですっ!」
正直そうじゃろうなあ、としみじみとガセルが、言った。
なんども言うが、彼はあまりにもモテない半生のため、こじらせているだけで、性格が悪い訳では無い。人間ならば怒るであろう老化に伴う頑固さや、プライドの高さとも無縁である。
若いものには優しいし、相談にも乗ってやる。人格面も十分に尊敬していなければ、そもそも、任期の制限無しの長寿族で長老の地位には付けない。
なにげに、ルトに対する態度が厳しいのは、17年程度しか生きていない人間の子供である彼を、同格以上の傑物と認めているからである。
「逆に言うなら、牙をひとり同行させれば、銀灰行きは可能ですか?」
「もちろん。わたしがお役にたつのなら。」
控えめにルルベルーナは、言った。
もちろん、彼女は、役にたつどころではないのだが。
「ほかには、ルールス先生が同行する。公式には、ランゴバルド冒険者学校からの銀灰皇国への公式訪問だ。」
「なにか、訪問するような用事がありますか?」
「うちのクラスのオルガは、銀灰皇国の現皇帝から、後継者の指名を受けている。」
へっ!
と表情を歪めて、ガセルがへんな声を出した。
「銀灰としては、その後、正式な立太子も行ってはいない。非公式の後継者だ。」
「そうです。ギウリークでなみいる高位貴族、各国の外交官の目の前で宣言された非公式な後継者指名でしたね。」
「まるで、見てきたように言うでは無いか? いや、まさか・・・」
ガセルは口ごもった。
「確か、クローディアがミトラに到着したのを歓迎するパーティーの席上だったと。そうか、お主もいたのだな、まおうじ・・・・・・ルト!!」
そろそろ、ホームルームの時間だったが、話しがそういう方向に進んでいたので、すっかり、授業に出る気をなくしたガセルは、サラミとハムとチーズを鷲掴みにして、くちに放り込んだ。
「いいだろう、力を貸すぞ、ルト・・・」
「ルトくーーーーーんっ!!」
突然、現れた美少女に、クビに抱きつかれて、ルトはさすがに目をしろくろさせた。
「どこから出てきたっ!」
「昨日、届けてもらってのです。」
ルルベルーナは、ニコニコと笑っている。
「調度良いタイミングでした。小包のなかに閉鎖空間を作ってそこに、潜んでもらいました。
学校を見たいというので、わたしのバッグに入ってもらって」
では、この少女、妖滅竜クサナギが、ルルベルーナのバックから出てきたのは、見間違いでは無かったわけだ。
「会いたかったよっ! ルトくんっ!」
可憐な少女は、ルトの胸に顔を埋めたすりすりを続ける。
さすがに、朝の学食も、騒然となってきた。
クサナギは、紛れもなく古竜。しかも「竜の牙」と、呼ばれる竜王直属の護衛のひとりである。
なにが、得意なのかは実は、ルトも知らない。だが、苦手は知っていた。
人間の姿への変身。いわゆる「人化」である。感情の高ぶりで、クサナギの人化は簡単に解け、竜とも人間ともつかぬ、化け物へと変化してしまう。
実際に、はじめて会った時、彼女はそう、なりかけており、それをルトが救って依頼、クサナギはすっかりルトに懐いている。
竜から見れば、毛の薄い猿の一種である人間のルトに、恋心をいだいているなどといつことは、有り得るのだろか?
そこまではいかなくても、単純に年次がうえの古竜に対するような、親しみを込めて接してくるようになってのである。
「クサナギを銀灰皇国に、同行されることが条件ですか?」
「クサナギは、強いです。」
ルルベルーナは、胸を張って自慢した。
「個体対個体の戦いなら、わたしにも負けません。」
そういう、ルルベルーナは、地方の農家の娘同様だったので、その正体を知らぬものは、なんだ、それがどうした?になるのだろうか。
ルルベルーナの正体は、竜王である。
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