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第6部 聖帝国ギウリークの終わりの始まり
第267話 銀雷の魔女は語る
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ぼくは、炒めたものの残りで、サンドイッチを作ると、ドロシーのもとに走った。
新しいお客は、一段落いしてるが、昼食時間が終わればまた、またお客は増えるだえろう。おそらくは朝一番で押しかけた者たちより、もっと高位の、その分、扱いが難しいお客が増えそうな気がする。
その前に話がしたかった。
ドロシーは、ガルフィート伯爵家の侍女の服装で、なにやら用意した紙に、お花を描き続けている。
よく見たら、その花のイラストはきれいに10画でまとまっていた。つまり花が一輪あれば、十名の入場者があったということ。
一枚の紙に花は10輪描かれていたから、紙一枚で百名の入場者があったということだ。
開園からいままでこんな作業をもくもくと続けていたのだろう。
事務作業とはいえ、疲れも溜まっているはずだ。
ぼくが声をかけると、作業を待機していたガルフィート家のメイドに引き継いで、席をたった。
ドロシーを木陰のベンチに座らせて、食べ物と飲み物を差し出す。
ドロシーの好きな甘酸っぱい果実のジュースはミトラにはないようで、まあ、そのまま飲みには酸味がキツすぎる果汁に蜂蜜をとかしたものが割と味が近いようだったので、それを。
「話したいことはいっぱいあるんだけど、」
と、一つ目のサンドイッチを食べ終えてから、ドロシーは言った。
口をいっぱいに頬張り咀嚼しながら話という芸当は、フィオリナだけのものらしい。
「さきにルトくんの話から聞きます。なにか大事な相談ですか?」
「『踊る道化師』の今後について。」とぼくがいうとドロシーは、空を見上げてため息をついた。
「さてはオルガ姫からなにか言われました?」
「『踊る道化師』に入りたいと。」
「なるほど。」
ドロシーは、眉間にシワを寄せて考え込んだ。
「予想もできない未来のことを想像してもしかたないから、あとは鉄道公社の『絶魔法士』グルジエンをどうするかくらいを考えておけばいいと思います。」
「なぜ、ここでグルジエンが!」
「だって彼女は、フィオリナ姫に惹かれて彼女付きのメイドを申し出てるんですよ。
近いうちに『踊る道化師』入りを言い出すことは間違いありません。」
ドロシーは、ストローからジュースを飲んだ。わ、美味しいと、呟いたので味は気に入ったのだろう、とぼくは一安心した。
「わかった。オルガとグルジエンとレクスを『踊る道化師』に入れるかどうか、が相談の具体的な内容だ。」
「レクスも、ですか?」
「言ってなかったかな、あれは『神鎧竜』の異名をとる古竜だよ。」
「あら。」
ドロシーは、いたずらっぽい笑いを浮かべた。
「ずいぶん、嫌がってると思ったんだけど、アキルのメンバー入りはもう諦めた。」
苦い顔になっていたと思う。ぼくはしぶしぶ頷いた。
「だって、野放しにしたら危ないだろう?」
「それが答えですね。」
ドロシーは軽々と言った。
「それ、とは?」
「ほっておいたら危ないやつをメンバーにして、お互いに監視し合うんですよ。」
ぼくは、薄々は気がついていた。
とにかく暴走しやすいフィオリナに、限界の見えない魔力持ちのぼくをあてがったように。
魔王が神竜が神獣が真祖が邪神が。
暴走したときに止められるのは互いしかいない。
「なら、ぼくやフィオリナ、オルガは力不足だろ。普通の人間なんだから。」
プッとドロシーは吹き出した。
「ぎりぎり『普通の人間』を名乗れるのはジウルくらいまでですね。」
「ボルテックの妖怪じじいのどこが普通の人間だ?」
「ギリ、ですよ。ルトやフィオリナ姫はそのレペルをも超えてます。
ああ、ごめんなさい、傷ついたのなら謝ります。
いいですよ、ルトは普通の人間ってことで。
普通の人間の判断も出来る者がいないと、パーティは成り立ちません。」
「オルガとグルジエンはどうなんだ?その解釈だと。」
「一般人を超える力をもつもの達はいままで、冒険者ギルドが受け皿になったいたんですが、あまりそれがうまく機能しなくなったきたんですよ。
銀級より、うえ、黄金級や英雄級なんて現役引退後の名誉職、どこかの国や貴族のお抱えになって、年金をもらってお傍に侍るくらいしかやることがありません。
より、高みを目指そうとする者にはもう、普通の冒険者ギルドは魅力的ではないんです。」
かつて、ランゴバルトの銀級冒険者「燭乱天使」が王位継承争奪にからんで、グランダを我が物にしようとしたことがあったがそんなことも関係しているのかもしれない。
それで、新興勢力である鉄道公社の『絶士』があれだけのメンバーを、揃えられたのか。
ドロシーを改めてまじまじと見つめると、クスっとドロシーは笑って
「ちょっとおっきくなったの、わかります?」
「な、なにをっ!」
頬が熱くなった。
「毎晩だから、ね。やっぱり効果があるのかな。」
と、言いながらドロシーは、腕組みをして胸を隠した。
着ているお仕着せの伯爵家の制服は、それほど女性の曲線を強調するものではないので、ドロシーが余計なことを言わなければ、別にぼくは意識せずにすんだのだ。
いや、ちょっと、そうは思っていたのだけれど。
「逆にジウルは、『絶士』に興味があるみたいです。ロデリウム家の『ナンバーズ』からも誘われているようですし。
そろそろ潮時かも、しれませんねえ。」
フィオリナとは違って、そんなに美人ではないのだが、いやにきれいに見えるその横顔にぼくは少し見とれていた。
新しいお客は、一段落いしてるが、昼食時間が終わればまた、またお客は増えるだえろう。おそらくは朝一番で押しかけた者たちより、もっと高位の、その分、扱いが難しいお客が増えそうな気がする。
その前に話がしたかった。
ドロシーは、ガルフィート伯爵家の侍女の服装で、なにやら用意した紙に、お花を描き続けている。
よく見たら、その花のイラストはきれいに10画でまとまっていた。つまり花が一輪あれば、十名の入場者があったということ。
一枚の紙に花は10輪描かれていたから、紙一枚で百名の入場者があったということだ。
開園からいままでこんな作業をもくもくと続けていたのだろう。
事務作業とはいえ、疲れも溜まっているはずだ。
ぼくが声をかけると、作業を待機していたガルフィート家のメイドに引き継いで、席をたった。
ドロシーを木陰のベンチに座らせて、食べ物と飲み物を差し出す。
ドロシーの好きな甘酸っぱい果実のジュースはミトラにはないようで、まあ、そのまま飲みには酸味がキツすぎる果汁に蜂蜜をとかしたものが割と味が近いようだったので、それを。
「話したいことはいっぱいあるんだけど、」
と、一つ目のサンドイッチを食べ終えてから、ドロシーは言った。
口をいっぱいに頬張り咀嚼しながら話という芸当は、フィオリナだけのものらしい。
「さきにルトくんの話から聞きます。なにか大事な相談ですか?」
「『踊る道化師』の今後について。」とぼくがいうとドロシーは、空を見上げてため息をついた。
「さてはオルガ姫からなにか言われました?」
「『踊る道化師』に入りたいと。」
「なるほど。」
ドロシーは、眉間にシワを寄せて考え込んだ。
「予想もできない未来のことを想像してもしかたないから、あとは鉄道公社の『絶魔法士』グルジエンをどうするかくらいを考えておけばいいと思います。」
「なぜ、ここでグルジエンが!」
「だって彼女は、フィオリナ姫に惹かれて彼女付きのメイドを申し出てるんですよ。
近いうちに『踊る道化師』入りを言い出すことは間違いありません。」
ドロシーは、ストローからジュースを飲んだ。わ、美味しいと、呟いたので味は気に入ったのだろう、とぼくは一安心した。
「わかった。オルガとグルジエンとレクスを『踊る道化師』に入れるかどうか、が相談の具体的な内容だ。」
「レクスも、ですか?」
「言ってなかったかな、あれは『神鎧竜』の異名をとる古竜だよ。」
「あら。」
ドロシーは、いたずらっぽい笑いを浮かべた。
「ずいぶん、嫌がってると思ったんだけど、アキルのメンバー入りはもう諦めた。」
苦い顔になっていたと思う。ぼくはしぶしぶ頷いた。
「だって、野放しにしたら危ないだろう?」
「それが答えですね。」
ドロシーは軽々と言った。
「それ、とは?」
「ほっておいたら危ないやつをメンバーにして、お互いに監視し合うんですよ。」
ぼくは、薄々は気がついていた。
とにかく暴走しやすいフィオリナに、限界の見えない魔力持ちのぼくをあてがったように。
魔王が神竜が神獣が真祖が邪神が。
暴走したときに止められるのは互いしかいない。
「なら、ぼくやフィオリナ、オルガは力不足だろ。普通の人間なんだから。」
プッとドロシーは吹き出した。
「ぎりぎり『普通の人間』を名乗れるのはジウルくらいまでですね。」
「ボルテックの妖怪じじいのどこが普通の人間だ?」
「ギリ、ですよ。ルトやフィオリナ姫はそのレペルをも超えてます。
ああ、ごめんなさい、傷ついたのなら謝ります。
いいですよ、ルトは普通の人間ってことで。
普通の人間の判断も出来る者がいないと、パーティは成り立ちません。」
「オルガとグルジエンはどうなんだ?その解釈だと。」
「一般人を超える力をもつもの達はいままで、冒険者ギルドが受け皿になったいたんですが、あまりそれがうまく機能しなくなったきたんですよ。
銀級より、うえ、黄金級や英雄級なんて現役引退後の名誉職、どこかの国や貴族のお抱えになって、年金をもらってお傍に侍るくらいしかやることがありません。
より、高みを目指そうとする者にはもう、普通の冒険者ギルドは魅力的ではないんです。」
かつて、ランゴバルトの銀級冒険者「燭乱天使」が王位継承争奪にからんで、グランダを我が物にしようとしたことがあったがそんなことも関係しているのかもしれない。
それで、新興勢力である鉄道公社の『絶士』があれだけのメンバーを、揃えられたのか。
ドロシーを改めてまじまじと見つめると、クスっとドロシーは笑って
「ちょっとおっきくなったの、わかります?」
「な、なにをっ!」
頬が熱くなった。
「毎晩だから、ね。やっぱり効果があるのかな。」
と、言いながらドロシーは、腕組みをして胸を隠した。
着ているお仕着せの伯爵家の制服は、それほど女性の曲線を強調するものではないので、ドロシーが余計なことを言わなければ、別にぼくは意識せずにすんだのだ。
いや、ちょっと、そうは思っていたのだけれど。
「逆にジウルは、『絶士』に興味があるみたいです。ロデリウム家の『ナンバーズ』からも誘われているようですし。
そろそろ潮時かも、しれませんねえ。」
フィオリナとは違って、そんなに美人ではないのだが、いやにきれいに見えるその横顔にぼくは少し見とれていた。
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