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第5部 ギウリーク動乱篇~ミトラへの道
第208話 決戦準備
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「なにが起きている!」
ゼナス・ブォストルは。現在、オールベのおける実質的な最高権力者は、血相をかえて怒鳴りつけた。
だが、«絶»拳士シホウは、びくともするものではない。
たとえ、局長であろうが、「絶士」に命令できるものはいない。
シホウは、オールべの実質的最高権力者と、全裸の体にガウンを巻き付けただけの名目上の最高権力者を文字通り見下ろした。
ゼナス・ブォストルは、顔色を変え、たじろいだ。
いかに権力をもっていようが、絶士はその範疇を超えたところにあるのだ。
まだ、キッガの方が言い返そうとするだけ、気概があったが、まあ、それよりも体を洗ってから服を来てこい。
「これは戦だ。」
シホウは冷たく言った。
「治安局と造反した冒険者どもの一部が隊列を組んで、この屋敷に向かっている。率いているのは前ロデリウム公爵と黒竜ラウレス。ロテリウム家の精鋭も二人、いる。
ロデリウム家の『ナンバーズ』の二人とラウレスは、わたしとグエルジン、アイクロフトで抑える。市内に分散した保安局の隊員をここに集合させるよう指示をだせ。
それまでは・・・」
シホウは、ぐるりと居並ぶ面々を見回した。
「それまではここにいるメンバーで持ちこたえるのだ。」
「なぜ、こんなことになったのだ。」
キッガが壁を殴りつけた。
「わたしは、この地を治める伯爵だぞ!? やつらが何故造反する!?」
「どこの勢力が古竜をおくりこむ!
これはギウリークの意思で行われることだぞ。」
「ラウレスを送り込んだのが、どの勢力かはわからん。」
シホウはそっけなく言った。
「鉄道公社は鉄道公社で、自分の組みする勢力に『了解』を得たとして動いているのだが、教皇庁内でもギウリークにもそうでない勢力は存在する。
要は一枚岩ではないということだ。」
鉄道保安部は、軍並みの装備を持ってはいたが、今回は、伯爵領の持つ武力は、キッガが伯爵位を暫定的に継ぐことで無力化できると見ていた。
通常ならば、侮れない戦力となる冒険者ギルドも同様だった。
保安部はその隊員を2000人近く送り込んでいた。
さらに、予定では5000まで増強されるはずであったが、これはオーベルおよびその周辺の治安を担当する人員であり、武器としては、剣、槍、盾、弓、僅かな弩弓。
“ 自分の身だけを守ってくれればいいのだかな。”
とシホウは考える。
実際のところは、アイクロフトは腕の怪我が、酷く、戦えた状態ではなかった。グエルジンはその呆れるばかりの再生力で傷のほうは治っていたが、ドレスのストックを使い尽くしたといって、あまり、というか全く戦う気はない。
ならば、古竜の相手はシホウが受けることになるのだろう。
冒険者時代を含め、古竜と単騎で戦うのは初めてだった。
“人化したままなら、チャンスはあるか ”
シホウの唇に野太い笑みが浮かんでいる。やはり、彼もまた強者を求め、戦いに惑溺する困った人々のひとりではあった。
「シホウさまっ!」
屋根に登った物見の隊員が叫んだ。
「来ました。人数は、二百を超えています。治安局に、冒険者どももいます!」
ゼナス・ブォストルがまた、激昂したように叫んだ。
「任務を取り上げた治安局はともかく、何故冒険者ギルドが敵に回る!
キッガを、通じて前ロデリウム公や、クローディア公の逮捕命令はギルドにも回っているはずだ。」
だからだよ、局長。
シホウはつぶやいた。
こんなところで、前伯爵の娘だか愛人だかを抱き込んで、爵位の簒奪なぞやるからだ。コイツがそこそこ民衆に人気があったのは、正当な伯爵家の血統をついでいるかもしれないのに、盗賊なぞをやっていたからだ。おまえにしてみれば思いどうりになるキッガを頭に据えたかったんだろうが。
そこまでやってしまうと、損得をこえた嫌悪の対象にしかならんのさ。
まともな人間にはな。
「弓兵構えっ!」
「盾をあげろっ。向こうも撃ってくるぞ。」
「扉を閉めろ。閂もだ!」
待て。
とシホウは言った。
1団の先頭にいるのは。
後ろの連中と楽しそうに雑談をしながら近づいてくるその姿にシホウは見覚えがあった。
「食客」として紹介された吸血鬼。
ロウ=リンド、
だった。
ゼナス・ブォストルは。現在、オールベのおける実質的な最高権力者は、血相をかえて怒鳴りつけた。
だが、«絶»拳士シホウは、びくともするものではない。
たとえ、局長であろうが、「絶士」に命令できるものはいない。
シホウは、オールべの実質的最高権力者と、全裸の体にガウンを巻き付けただけの名目上の最高権力者を文字通り見下ろした。
ゼナス・ブォストルは、顔色を変え、たじろいだ。
いかに権力をもっていようが、絶士はその範疇を超えたところにあるのだ。
まだ、キッガの方が言い返そうとするだけ、気概があったが、まあ、それよりも体を洗ってから服を来てこい。
「これは戦だ。」
シホウは冷たく言った。
「治安局と造反した冒険者どもの一部が隊列を組んで、この屋敷に向かっている。率いているのは前ロデリウム公爵と黒竜ラウレス。ロテリウム家の精鋭も二人、いる。
ロデリウム家の『ナンバーズ』の二人とラウレスは、わたしとグエルジン、アイクロフトで抑える。市内に分散した保安局の隊員をここに集合させるよう指示をだせ。
それまでは・・・」
シホウは、ぐるりと居並ぶ面々を見回した。
「それまではここにいるメンバーで持ちこたえるのだ。」
「なぜ、こんなことになったのだ。」
キッガが壁を殴りつけた。
「わたしは、この地を治める伯爵だぞ!? やつらが何故造反する!?」
「どこの勢力が古竜をおくりこむ!
これはギウリークの意思で行われることだぞ。」
「ラウレスを送り込んだのが、どの勢力かはわからん。」
シホウはそっけなく言った。
「鉄道公社は鉄道公社で、自分の組みする勢力に『了解』を得たとして動いているのだが、教皇庁内でもギウリークにもそうでない勢力は存在する。
要は一枚岩ではないということだ。」
鉄道保安部は、軍並みの装備を持ってはいたが、今回は、伯爵領の持つ武力は、キッガが伯爵位を暫定的に継ぐことで無力化できると見ていた。
通常ならば、侮れない戦力となる冒険者ギルドも同様だった。
保安部はその隊員を2000人近く送り込んでいた。
さらに、予定では5000まで増強されるはずであったが、これはオーベルおよびその周辺の治安を担当する人員であり、武器としては、剣、槍、盾、弓、僅かな弩弓。
“ 自分の身だけを守ってくれればいいのだかな。”
とシホウは考える。
実際のところは、アイクロフトは腕の怪我が、酷く、戦えた状態ではなかった。グエルジンはその呆れるばかりの再生力で傷のほうは治っていたが、ドレスのストックを使い尽くしたといって、あまり、というか全く戦う気はない。
ならば、古竜の相手はシホウが受けることになるのだろう。
冒険者時代を含め、古竜と単騎で戦うのは初めてだった。
“人化したままなら、チャンスはあるか ”
シホウの唇に野太い笑みが浮かんでいる。やはり、彼もまた強者を求め、戦いに惑溺する困った人々のひとりではあった。
「シホウさまっ!」
屋根に登った物見の隊員が叫んだ。
「来ました。人数は、二百を超えています。治安局に、冒険者どももいます!」
ゼナス・ブォストルがまた、激昂したように叫んだ。
「任務を取り上げた治安局はともかく、何故冒険者ギルドが敵に回る!
キッガを、通じて前ロデリウム公や、クローディア公の逮捕命令はギルドにも回っているはずだ。」
だからだよ、局長。
シホウはつぶやいた。
こんなところで、前伯爵の娘だか愛人だかを抱き込んで、爵位の簒奪なぞやるからだ。コイツがそこそこ民衆に人気があったのは、正当な伯爵家の血統をついでいるかもしれないのに、盗賊なぞをやっていたからだ。おまえにしてみれば思いどうりになるキッガを頭に据えたかったんだろうが。
そこまでやってしまうと、損得をこえた嫌悪の対象にしかならんのさ。
まともな人間にはな。
「弓兵構えっ!」
「盾をあげろっ。向こうも撃ってくるぞ。」
「扉を閉めろ。閂もだ!」
待て。
とシホウは言った。
1団の先頭にいるのは。
後ろの連中と楽しそうに雑談をしながら近づいてくるその姿にシホウは見覚えがあった。
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