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第5部 ギウリーク動乱篇~ミトラへの道
第192話 死闘! 茶番劇 その1
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ジウル・ボルテックが作り出した岩塊は、それ自体が拳となって、アウデリアが立て篭もる宿屋の屋根を二階部分ごと粉砕した。
粉砕された石材や木材は、集まったほ鉄道公社の保安部の人間を何人か巻き込んだ。
「お、おい、人質がいるんだぞっ!」
鉄道公社の保安部の副隊長が、一番まともなことを言った。
「吸血鬼流のやり方だ。」
吸血鬼から抗議が来そうなことを平然と言って、まだもうもうと煙の立ち込める宿屋へ歩を進めるロウ。そしてその下僕となったジウル、ドロシー、アキル。
・・・・
それにクローディアとオルガも一緒にきた。
「何をしている?」
「言うまでもない。アウデリアの逮捕に力を貸す。」
「あのなあ。」
ロウとクローディアは旧知の仲だ。
ロウは、クローディアを希に見る傑物だと評価してる。だがちょっと苦手でもあるのだ。
ずううんっ。
音を立てて、残った2階部分の残骸が1階を巻き込んで崩落した。
「増援が到着したぞ!」
後ろで誰かが喚いた。
おそらくはあの副隊長どのだろう。
「魔法士ども!
最大火力で家ごと破壊しろっ!」
「逮捕ですらないんだな。」
瓦礫の山を押し分けてアウデリアが立ち上がった。両の手には、しっかりとウィルニアともうひとりの女性を抱き抱えている。
ウィルニアは、崩落が巻き起こした土煙をいいことに、笑顔をみせて挨拶した。
「やあ、クローディア。あなたの奥様は無事に保護したよ。」
「ありがとう。感謝する。賢者殿。」
クローディアは、なんとなく、戦うふりをするために戦斧を抜いてみた。
「ロウ=リンド。なぜおまえがここにいる?」
アウデリアが怖い顔をした。無意識に腕に力が入ったのか、腕の中のウィルがぐええ、と何かが潰されたような声をだした。
「話せば長いことながら」
「20文字以内で」
「ギムリウスがルトたちを探しに出ていった。」
ウィルニアは、アウデリアの腕のなかでブツブツと呪文を唱えた。
後方で魔法士たちがパニックを起こしている。いや多少なりとも魔法を使えるものすべてが呆然としていた。
「これは、ウィルニア殿の魔法なのか?」
クローディアが言った。
「魔法を使えない・・・のではなくて、使い方を忘れてしまったようだ。」
「さすがに、表現が正確だ、クローディア。
ただ、これを使うとぼく自身も他者に対する攻撃ができなくなってしまうのだが」
「体内で循環する魔法は大丈夫だ。」
ジウル・ボルテックが言った。
「打撃に魔力をのせて打ち出す、俺の蒼炎破砕拳にも問題はない。」
「いい加減に流派の名前を決めろ!」
アウデリアは、人質を瓦礫のうえに放り出すと、戦斧を取り出した。
「くそっ!
むざむざ殺されるかっ」
アウデリアは演技が下手である。このセリフもやや棒だった。
「全員でかかれっ!」
ロウが叫んだ。
「ボスから殺してもかまわないと言われている。全力でかかれっ!」
ジウル・ボルテックが実にいい笑いを浮かべた。
ああ。
ロウは悟った。ほんとに本気でやるつもりだ、この人。
「保安部は、野次馬どもを下がらせろっ!」
ロウは副隊長に指示した。同時に、ドロシーとアキルを背後に庇う。
次の瞬間、ぶん殴られたような衝撃波に飛ばされた。二人の「並の」人間を庇いながら地面に転がる。
痛い。ちょうど、瓦礫の尖ったところに顔から落ちた。
クソっ
ドロシーとアキルは大丈夫か?
ジウルとアウデリアの拳がぶつかっていた。
拳同士がぶつかったその衝撃の余波だけで、周りの瓦礫が吹っ飛び、隣家まで被害を拡大させている。
二人とも、拳を打ち合わせたまま、みじろぎもしなかった。
・・・いや、押し合っているのか?
武神の生まれ変わりと噂されるアウデリアとの押し比べで、パワー負けしないジウルを褒めるべきなのか。
それとも神竜皇妃リアモンドと肉弾戦を戦ったジウルの拳を拳で迎うったアウデリアに呆れるべきなのか。
「そっちの黒いの!」
ロウは、オルガに向かって呼びかけた。彼女は手に持った布に包まれた棒状の武具をくるくると旋回させて衝撃波を逃していた。
何者かはわからないが、達人クラスなのは間違いない。
「“黒の傭兵”ガルレア。」
少なくとも、ロウが吸血鬼だとわかっても彼女は少しも怯えるところはなかった。
「少し離れていろ。巻き込まれる。」
それは、人質になっていた二人の女性(?)に言った言葉ではなかったが、きゃいきゃい言って、彼女からもロウの背後に隠れようとする。
「ちょっと待て、あんたはウィルニアと名乗ってたやつだろ。」
その腕を掴んで、ガルレアが止めた。
「なんで女装して、アウデリアと一緒にいたんだ。それとそっちは人間のなりをしてるがアンデッドだな? 一体何者なんだ!」
「やめとけ、ガルレア。」
うんざりしたようにロウが言った。
「ウィルのやることにいちいち理由なんか求めるな!」
「知り合いなのか?」
ガルレアが尋ねた。
ウィルニアがロウを指差して
「元『魔王宮』第二階層主」
ロウがウィルニアを睨んで
「元、いや今も、か。『魔王宮』第六層階層主」
「いつのまにか地獄の蓋が開いてたようだな。」
ガルレアは嬉しそうだった。
「迷宮の階層主が、揃って現世に遊びに来るのか?」
本当は元迷宮主と元第三階層主頼まれて、元第一階層主を探しに来たんだけどな。
と、ロウは思ったが、ガルレアが何者かわからない以上、あまり詳しくは触れないことにした。
粉砕された石材や木材は、集まったほ鉄道公社の保安部の人間を何人か巻き込んだ。
「お、おい、人質がいるんだぞっ!」
鉄道公社の保安部の副隊長が、一番まともなことを言った。
「吸血鬼流のやり方だ。」
吸血鬼から抗議が来そうなことを平然と言って、まだもうもうと煙の立ち込める宿屋へ歩を進めるロウ。そしてその下僕となったジウル、ドロシー、アキル。
・・・・
それにクローディアとオルガも一緒にきた。
「何をしている?」
「言うまでもない。アウデリアの逮捕に力を貸す。」
「あのなあ。」
ロウとクローディアは旧知の仲だ。
ロウは、クローディアを希に見る傑物だと評価してる。だがちょっと苦手でもあるのだ。
ずううんっ。
音を立てて、残った2階部分の残骸が1階を巻き込んで崩落した。
「増援が到着したぞ!」
後ろで誰かが喚いた。
おそらくはあの副隊長どのだろう。
「魔法士ども!
最大火力で家ごと破壊しろっ!」
「逮捕ですらないんだな。」
瓦礫の山を押し分けてアウデリアが立ち上がった。両の手には、しっかりとウィルニアともうひとりの女性を抱き抱えている。
ウィルニアは、崩落が巻き起こした土煙をいいことに、笑顔をみせて挨拶した。
「やあ、クローディア。あなたの奥様は無事に保護したよ。」
「ありがとう。感謝する。賢者殿。」
クローディアは、なんとなく、戦うふりをするために戦斧を抜いてみた。
「ロウ=リンド。なぜおまえがここにいる?」
アウデリアが怖い顔をした。無意識に腕に力が入ったのか、腕の中のウィルがぐええ、と何かが潰されたような声をだした。
「話せば長いことながら」
「20文字以内で」
「ギムリウスがルトたちを探しに出ていった。」
ウィルニアは、アウデリアの腕のなかでブツブツと呪文を唱えた。
後方で魔法士たちがパニックを起こしている。いや多少なりとも魔法を使えるものすべてが呆然としていた。
「これは、ウィルニア殿の魔法なのか?」
クローディアが言った。
「魔法を使えない・・・のではなくて、使い方を忘れてしまったようだ。」
「さすがに、表現が正確だ、クローディア。
ただ、これを使うとぼく自身も他者に対する攻撃ができなくなってしまうのだが」
「体内で循環する魔法は大丈夫だ。」
ジウル・ボルテックが言った。
「打撃に魔力をのせて打ち出す、俺の蒼炎破砕拳にも問題はない。」
「いい加減に流派の名前を決めろ!」
アウデリアは、人質を瓦礫のうえに放り出すと、戦斧を取り出した。
「くそっ!
むざむざ殺されるかっ」
アウデリアは演技が下手である。このセリフもやや棒だった。
「全員でかかれっ!」
ロウが叫んだ。
「ボスから殺してもかまわないと言われている。全力でかかれっ!」
ジウル・ボルテックが実にいい笑いを浮かべた。
ああ。
ロウは悟った。ほんとに本気でやるつもりだ、この人。
「保安部は、野次馬どもを下がらせろっ!」
ロウは副隊長に指示した。同時に、ドロシーとアキルを背後に庇う。
次の瞬間、ぶん殴られたような衝撃波に飛ばされた。二人の「並の」人間を庇いながら地面に転がる。
痛い。ちょうど、瓦礫の尖ったところに顔から落ちた。
クソっ
ドロシーとアキルは大丈夫か?
ジウルとアウデリアの拳がぶつかっていた。
拳同士がぶつかったその衝撃の余波だけで、周りの瓦礫が吹っ飛び、隣家まで被害を拡大させている。
二人とも、拳を打ち合わせたまま、みじろぎもしなかった。
・・・いや、押し合っているのか?
武神の生まれ変わりと噂されるアウデリアとの押し比べで、パワー負けしないジウルを褒めるべきなのか。
それとも神竜皇妃リアモンドと肉弾戦を戦ったジウルの拳を拳で迎うったアウデリアに呆れるべきなのか。
「そっちの黒いの!」
ロウは、オルガに向かって呼びかけた。彼女は手に持った布に包まれた棒状の武具をくるくると旋回させて衝撃波を逃していた。
何者かはわからないが、達人クラスなのは間違いない。
「“黒の傭兵”ガルレア。」
少なくとも、ロウが吸血鬼だとわかっても彼女は少しも怯えるところはなかった。
「少し離れていろ。巻き込まれる。」
それは、人質になっていた二人の女性(?)に言った言葉ではなかったが、きゃいきゃい言って、彼女からもロウの背後に隠れようとする。
「ちょっと待て、あんたはウィルニアと名乗ってたやつだろ。」
その腕を掴んで、ガルレアが止めた。
「なんで女装して、アウデリアと一緒にいたんだ。それとそっちは人間のなりをしてるがアンデッドだな? 一体何者なんだ!」
「やめとけ、ガルレア。」
うんざりしたようにロウが言った。
「ウィルのやることにいちいち理由なんか求めるな!」
「知り合いなのか?」
ガルレアが尋ねた。
ウィルニアがロウを指差して
「元『魔王宮』第二階層主」
ロウがウィルニアを睨んで
「元、いや今も、か。『魔王宮』第六層階層主」
「いつのまにか地獄の蓋が開いてたようだな。」
ガルレアは嬉しそうだった。
「迷宮の階層主が、揃って現世に遊びに来るのか?」
本当は元迷宮主と元第三階層主頼まれて、元第一階層主を探しに来たんだけどな。
と、ロウは思ったが、ガルレアが何者かわからない以上、あまり詳しくは触れないことにした。
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