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第5部 ギウリーク動乱篇~ミトラへの道
第183話 激闘!茶番劇!
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「フハハハハ!」
オーベルの郊外。元はオーベル石と言われる光沢のある石材の産出地だったらしい。
今は切り立った崖が並ぶ。一部風化した部分が崩れる心配があるので、立ち入り禁止の危険区域だ。
その崖の上で、長いマントを靡かせてロウ=リンドは高笑いをした。
「よおっくきたなあ、ジウル・ボルテック。ここが貴様の最後だ!」
十字架に貼り付けたれたドロシーが叫んだ。
「わたしに構わず戦って! ジウル!」
同じく並んで十字架に貼り付けたれたアキルは、満足そうにその展開を眺めていたが、自分のセリフの番だと判断したのか
「抵抗してみろ! こいつらの命はないぞっ!」
一同が思った。
・・・・いや、それはおまえのセリフではないぞ。
一人一人に敵を分断してから、確実に仕留めていく。
フォストルの考えは間違いではない。
この採石場跡には、首領であるキッガを除く、白狼団のほぼ全員が集められていた。
人数は50名を超えている。いずれも腕に自身のある強者揃いだった。おそらく街の警備兵などでは相手にらない。銀級以上の冒険者でも討伐するのは不可能だ。
軍隊ならば?
地の利を利用して隠れてしまうにも逆にこの程度の人数ならば、簡単である。
つまり白狼団の討伐に手間取っていたのは、まんざら嘘でもない。
そして、きちんと訓練を詰んだ精鋭ならば、かつてウロボロス鬼兵団が、クリュークたちを相手に戦ったように、古竜クラスの力をもつ相手でも戦える。
ジウル・ボルテックは、単純に渋い顔である。決して、悪ふざけが嫌いな方ではないが、自分がその的にされるのは、大っ嫌いなのだ。
ロウが手を触れると、ドロシーとアキルの手足を拘束していた枷は落ちて、彼女たちは地面に転げ落ちた。転ばないようにちゃんと受け止めてやるのは、流石に面倒見のいいロウである。
「な、なにをするんです? ロウの旦那! せっかくの人質を・・・」
副長をつとめる双剣使いのガルハスが慌てたように言った。
「なにちょっとした趣向だ。」
ロウが、ドロシーとアキルの顔を覗き込む。
二人の目が虚になった。
「よおし、我が忠実なる僕よ。おまえら自身の手でジウルを打ち倒すがいい。」 ロウは、ジウルにも聞こえるように高らかに叫んだ。「ドロシーよ。婚約者のいるおまえの体を夜な夜な弄んだ憎い男だ。ズタズタにしてしまえっ!」
「え? あのジウルって拳士、そんなに悪いやつだったんですかい?」
ガルハスは驚いたように言った。
「当たり前だ! ジウル・ボルテックといえば、若い女性の敵! 特に10代の女に目がないという変態野郎なのだ。」
「ゆ、許せねえ!」
そっちの方は、まともな道徳感覚があるのか、ガルハスが怒りに燃えるのをロウは、楽しげに見守った。
「よし、おまえらもいけ! 全員でやつを叩きのめしてやれ!」
「・・・あれ? ジウルは味方につけるはずじゃあ・・・」
思い出したガルハスが指摘した。
「叩きのめしてから、仲間にしてやればいい。」
というのが、このいい加減な真祖の答えだった。
人が人ならざる者と対時する場合は「陣」が重要となる。
巨体を持つ相手には、盾を持つ物を全面に。
矢を打ち、足止めをするうちに、強化魔法で全員を付与する。
素早い動きのものには停滞フィールドを貼りながら、動きを阻害する。同時に投網や炸裂系の魔法でダメージを重ねていく。
練度を見た限り、白狼団は十分だった。
牽制のために長剣を振りかざした剣士たちが駆け寄った。
さらに魔法士たちが光の矢を飛ばす。
ジウルは拳を地面に叩きつけた。
土砂が巻き上がり、岩の破片が飛び散る。
それを目眩しに、ジウルは剣士たちに接近した。十分に接近してしまえば、遠距離の攻撃魔法は打てない。
「うおおおおおおっ!」
叫びを上げながら、その脇から突進したのはドロシーだった。拳の先に巨大な氷の塊を形成している。
ジウルの目前で、くるりと回転しながらその勢いを利用して、氷塊を叩きつけようとした。
ジウル・ボルテックは流水の動きでそれをいなした。
回転の勢いのまま、バランスを崩したドロシーの氷の拳の犠牲になったのは、白狼団の剣士だった。
顔面を痛打され、吹っ飛ぶ。もう一人は、胸を胸あてごと陥没させられて血を吐いて
倒れた。
「な、なにをしている。」
指先を氷の刃物に変えたドロシーをジウルは、かわしざまに、足を払った。よろけたドロシーの氷の刃は、さらに一人の白狼団の剣士の剣を握る腕を深々と切り裂いた。
「ドロシー! 距離をとれ!」
ロウ=リンドが命じた。
「そこにいては、白狼団の攻撃の邪魔になる。」
言われるがままにドロシーは、ジウルから距離を取ったが、攻撃をやめようとはしない。
魔法で生み出した氷柱を数十歩、ジウル目がけて投じた。
当然、槍を構えて、ジウルに殺到しようとしていた白狼団たちは尻を穴だらけにされてのたうち回る。
ジウル自身も大人くししているわけはない。その鉄拳は、金属の盾を折り曲げ、その手刀は、槍をへし折る。蹴りは、胸当てごと、白狼団の戦士たちの肋を粉砕した。
「魔法士ども! 俺に強化魔法を!」
ガルハスは、歯噛みした。
まずい。
ドロシーの戦闘力は、予想以上で、ロウ=リンドの指示通りに、ジウルに攻撃を仕掛けてはいるのだが、なにしろ一度もコンビネーションを合わせたことはない。
帰って混乱と被害を拡大させている。
ジウル自身の強さも相当だ。一個小隊程度は一人で全滅させてしまうかもしれない。
ならば、俺が行く。
左右の腰に挿した刀に手をかけて、飛び降りる。
その上から。
アキルが落ちてきた。
「邪拳ジウル・ボルテック! 勇者アキルが相手だああああぁああっ」
アキルは別に体術剣術に優れているわけではない。
そして、別に太っているわけでは「決して」ない。
だが、予想だにしない方向から、人一人分の重さのあるものが落ちてくるのは、ガルハスにも大ダメージだった。
頭から、地面に突っ込む。
激痛が走り、目の前を火花が走った。
ようやくあげた顔は血まみれだった。
アキルはそんなガルハスを無視して、剣を抜きジウルに向かって走り出した。
ガルハスは、手をついてなんとか起き上がる。
そこへ。
ジウルに投げ飛ばされたアキルがまたも降ってきた。
再び顔面を地面に痛打して、今度こど、ガルハスも気を失った。
オーベルの郊外。元はオーベル石と言われる光沢のある石材の産出地だったらしい。
今は切り立った崖が並ぶ。一部風化した部分が崩れる心配があるので、立ち入り禁止の危険区域だ。
その崖の上で、長いマントを靡かせてロウ=リンドは高笑いをした。
「よおっくきたなあ、ジウル・ボルテック。ここが貴様の最後だ!」
十字架に貼り付けたれたドロシーが叫んだ。
「わたしに構わず戦って! ジウル!」
同じく並んで十字架に貼り付けたれたアキルは、満足そうにその展開を眺めていたが、自分のセリフの番だと判断したのか
「抵抗してみろ! こいつらの命はないぞっ!」
一同が思った。
・・・・いや、それはおまえのセリフではないぞ。
一人一人に敵を分断してから、確実に仕留めていく。
フォストルの考えは間違いではない。
この採石場跡には、首領であるキッガを除く、白狼団のほぼ全員が集められていた。
人数は50名を超えている。いずれも腕に自身のある強者揃いだった。おそらく街の警備兵などでは相手にらない。銀級以上の冒険者でも討伐するのは不可能だ。
軍隊ならば?
地の利を利用して隠れてしまうにも逆にこの程度の人数ならば、簡単である。
つまり白狼団の討伐に手間取っていたのは、まんざら嘘でもない。
そして、きちんと訓練を詰んだ精鋭ならば、かつてウロボロス鬼兵団が、クリュークたちを相手に戦ったように、古竜クラスの力をもつ相手でも戦える。
ジウル・ボルテックは、単純に渋い顔である。決して、悪ふざけが嫌いな方ではないが、自分がその的にされるのは、大っ嫌いなのだ。
ロウが手を触れると、ドロシーとアキルの手足を拘束していた枷は落ちて、彼女たちは地面に転げ落ちた。転ばないようにちゃんと受け止めてやるのは、流石に面倒見のいいロウである。
「な、なにをするんです? ロウの旦那! せっかくの人質を・・・」
副長をつとめる双剣使いのガルハスが慌てたように言った。
「なにちょっとした趣向だ。」
ロウが、ドロシーとアキルの顔を覗き込む。
二人の目が虚になった。
「よおし、我が忠実なる僕よ。おまえら自身の手でジウルを打ち倒すがいい。」 ロウは、ジウルにも聞こえるように高らかに叫んだ。「ドロシーよ。婚約者のいるおまえの体を夜な夜な弄んだ憎い男だ。ズタズタにしてしまえっ!」
「え? あのジウルって拳士、そんなに悪いやつだったんですかい?」
ガルハスは驚いたように言った。
「当たり前だ! ジウル・ボルテックといえば、若い女性の敵! 特に10代の女に目がないという変態野郎なのだ。」
「ゆ、許せねえ!」
そっちの方は、まともな道徳感覚があるのか、ガルハスが怒りに燃えるのをロウは、楽しげに見守った。
「よし、おまえらもいけ! 全員でやつを叩きのめしてやれ!」
「・・・あれ? ジウルは味方につけるはずじゃあ・・・」
思い出したガルハスが指摘した。
「叩きのめしてから、仲間にしてやればいい。」
というのが、このいい加減な真祖の答えだった。
人が人ならざる者と対時する場合は「陣」が重要となる。
巨体を持つ相手には、盾を持つ物を全面に。
矢を打ち、足止めをするうちに、強化魔法で全員を付与する。
素早い動きのものには停滞フィールドを貼りながら、動きを阻害する。同時に投網や炸裂系の魔法でダメージを重ねていく。
練度を見た限り、白狼団は十分だった。
牽制のために長剣を振りかざした剣士たちが駆け寄った。
さらに魔法士たちが光の矢を飛ばす。
ジウルは拳を地面に叩きつけた。
土砂が巻き上がり、岩の破片が飛び散る。
それを目眩しに、ジウルは剣士たちに接近した。十分に接近してしまえば、遠距離の攻撃魔法は打てない。
「うおおおおおおっ!」
叫びを上げながら、その脇から突進したのはドロシーだった。拳の先に巨大な氷の塊を形成している。
ジウルの目前で、くるりと回転しながらその勢いを利用して、氷塊を叩きつけようとした。
ジウル・ボルテックは流水の動きでそれをいなした。
回転の勢いのまま、バランスを崩したドロシーの氷の拳の犠牲になったのは、白狼団の剣士だった。
顔面を痛打され、吹っ飛ぶ。もう一人は、胸を胸あてごと陥没させられて血を吐いて
倒れた。
「な、なにをしている。」
指先を氷の刃物に変えたドロシーをジウルは、かわしざまに、足を払った。よろけたドロシーの氷の刃は、さらに一人の白狼団の剣士の剣を握る腕を深々と切り裂いた。
「ドロシー! 距離をとれ!」
ロウ=リンドが命じた。
「そこにいては、白狼団の攻撃の邪魔になる。」
言われるがままにドロシーは、ジウルから距離を取ったが、攻撃をやめようとはしない。
魔法で生み出した氷柱を数十歩、ジウル目がけて投じた。
当然、槍を構えて、ジウルに殺到しようとしていた白狼団たちは尻を穴だらけにされてのたうち回る。
ジウル自身も大人くししているわけはない。その鉄拳は、金属の盾を折り曲げ、その手刀は、槍をへし折る。蹴りは、胸当てごと、白狼団の戦士たちの肋を粉砕した。
「魔法士ども! 俺に強化魔法を!」
ガルハスは、歯噛みした。
まずい。
ドロシーの戦闘力は、予想以上で、ロウ=リンドの指示通りに、ジウルに攻撃を仕掛けてはいるのだが、なにしろ一度もコンビネーションを合わせたことはない。
帰って混乱と被害を拡大させている。
ジウル自身の強さも相当だ。一個小隊程度は一人で全滅させてしまうかもしれない。
ならば、俺が行く。
左右の腰に挿した刀に手をかけて、飛び降りる。
その上から。
アキルが落ちてきた。
「邪拳ジウル・ボルテック! 勇者アキルが相手だああああぁああっ」
アキルは別に体術剣術に優れているわけではない。
そして、別に太っているわけでは「決して」ない。
だが、予想だにしない方向から、人一人分の重さのあるものが落ちてくるのは、ガルハスにも大ダメージだった。
頭から、地面に突っ込む。
激痛が走り、目の前を火花が走った。
ようやくあげた顔は血まみれだった。
アキルはそんなガルハスを無視して、剣を抜きジウルに向かって走り出した。
ガルハスは、手をついてなんとか起き上がる。
そこへ。
ジウルに投げ飛ばされたアキルがまたも降ってきた。
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