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第4部 グランダ魔道学院対抗戦
第68話 賢者ウィルニアの提案
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「る、ルト!」
ルールス先生がぼくの首を絞め上げる。小柄なルールス先生はそんなに力はないのだけれど、本気である。
護衛のネイア先生がオロオロしている。
ネイア先生によって、ルールス先生は当然、上司であり、忠誠の対象なのであるが、ぼくだって、彼女の主人なのだ。
とりあえず、ぼくが死にそうにないので積極的に止めに入らずに、静観はしているのだが、かわいそうである。
「説明しろっ!」
「だから、こいつが新しくグランダ魔道院の学院長になったウィルニアで、紛れもなく千年前に勇者パーティにいた賢者ウィルニアです。」
「いい加減にショックから戻ってくれ、ルールス分校長。
これでは話ができない。」
ウィルニアが珍しく困った顔で言った。
「大賢者がご存命なのがわかったらもうなんでもいいわっ!」
「そうもいかん。
ボルテックのワガママのせいで、これ以上ないくらい胡散臭いヤツが学院長に就任した。すでにこれだけで魔道院の対外的な評判は地に落ちている。
このままだと、数年後魔道列車が開通すれば、有能な才のある若者はみな西域に流れてしまう。」
「自分でそれを言う?!」
「それはそうだろう。」
ウィルニアはひげのない顔をつるりと撫ぜた。
「わたしは紛れもなき、本物だがそれを証明する手立てはない。」
「わたしは本物だと確信しているぞっ!」
ルールス先生は叫んだ。
「この真実の目にまつわる事実は、当事者ではないとわからんことだ。」
「証言なんぞいくらでも。だが証拠はあるか?」
「ど、どうすればっ!」
「勇者たるクロノ、聖光教会が公認した勇者が手紙をしたためても教会は無視、だぞ。
だから、そっちは諦める。」
「あ、諦めるというのは?」
「わたしがホンモノの賢者ウィルニアだと証明することを、だ。
そんなふうに名乗っている酔狂な学院長がいる学校と認識してもらえば十分。」
「最初から別人のフリをすればよかったのでは?」
「それだと魔道院内部がまとまらない。百年、魔道院に君臨した妖怪ジジイの後がまだぞ。とんでもないビッグネームを持ってこない限りまとまらない。」
「なら、ボルテック殿が引退しなければ」
「そうは言ってもじじいはじじいなりの事情があって」
ぼくはちょっと考えたが、誤魔化すのは諦めた。どの道、ルールス分校長どのとは一蓮托生。ただ心臓には悪いぞ。
「魔王宮第三層で、ちょっと魔法の効かない相手とやり合って、そのとき長年密かに研鑽を積んでいた魔道プラス拳法を試したんです。
拳を使うのにいちばん相応しい年齢に若返って見事に、神竜皇妃リアモンドに引き分けたんだが、さあたいへん」
ルールス分校長の目が、完全におかしな奴を見る目にかわっている。
「今度はもとの年齢に戻れなくなってしまった。二十代の若僧が、いまさら魔道院支配ボルテック卿でございます、と言っても国のほうが認めないだろう。で、面倒くさくなったじじいは、学院長の席を放り投げた。」
「それを、わたしが縁あって拾ってやったというわけだ。」
ウィルニアが引き取って、そう言った。
さあ、これで事情は全部説明した。
だが、ルールス分校長の疑惑の視線は深まるばかり。
「嘘はついていない。それは分かるが、なにか証拠はないのか?
いや、こんなバカな話に証拠もないが。
せめて、ほかに証言するものはいないのか?」
ばくは、ロウを探したが彼女はアキルとイチャついていた。まったくぼくの仲間は(ぼく自身もふくめて)どいつもこいつも。
「いますぐ、というわけにはいきませんが、ランゴバルドに戻ったらアモンにきいてください。当事者ですから。」
「アモンが、当事者?」
怪訝そうな顔をしたルールス分校長の顔がみるみる青ざめていく。
「アモン・・・が、神竜リアモンド? そんな馬鹿な・・・」
「まあ、信じがたいでしょうけども。」
ぼくは慰めるつもりでつい言ってしまった。
「真祖に魔王がいるパーティに神竜がいても別にそんなに違和感はないでしょう?」
「ま。」
と言ったきり、ルールス分校長の呼吸はとまった。たっぷり一分はたったあと
「リウが、魔王バスズ=リウだと?」
あ、いかん。これはまだ話してなかったなあ。
「ひょっとしてギムリウスが、神獣ギムリウスなのも言ってませんでしたっけ?」
気を失ったルールス先生が回復するには少し時間がかかった。
ルールス先生がぼくの首を絞め上げる。小柄なルールス先生はそんなに力はないのだけれど、本気である。
護衛のネイア先生がオロオロしている。
ネイア先生によって、ルールス先生は当然、上司であり、忠誠の対象なのであるが、ぼくだって、彼女の主人なのだ。
とりあえず、ぼくが死にそうにないので積極的に止めに入らずに、静観はしているのだが、かわいそうである。
「説明しろっ!」
「だから、こいつが新しくグランダ魔道院の学院長になったウィルニアで、紛れもなく千年前に勇者パーティにいた賢者ウィルニアです。」
「いい加減にショックから戻ってくれ、ルールス分校長。
これでは話ができない。」
ウィルニアが珍しく困った顔で言った。
「大賢者がご存命なのがわかったらもうなんでもいいわっ!」
「そうもいかん。
ボルテックのワガママのせいで、これ以上ないくらい胡散臭いヤツが学院長に就任した。すでにこれだけで魔道院の対外的な評判は地に落ちている。
このままだと、数年後魔道列車が開通すれば、有能な才のある若者はみな西域に流れてしまう。」
「自分でそれを言う?!」
「それはそうだろう。」
ウィルニアはひげのない顔をつるりと撫ぜた。
「わたしは紛れもなき、本物だがそれを証明する手立てはない。」
「わたしは本物だと確信しているぞっ!」
ルールス先生は叫んだ。
「この真実の目にまつわる事実は、当事者ではないとわからんことだ。」
「証言なんぞいくらでも。だが証拠はあるか?」
「ど、どうすればっ!」
「勇者たるクロノ、聖光教会が公認した勇者が手紙をしたためても教会は無視、だぞ。
だから、そっちは諦める。」
「あ、諦めるというのは?」
「わたしがホンモノの賢者ウィルニアだと証明することを、だ。
そんなふうに名乗っている酔狂な学院長がいる学校と認識してもらえば十分。」
「最初から別人のフリをすればよかったのでは?」
「それだと魔道院内部がまとまらない。百年、魔道院に君臨した妖怪ジジイの後がまだぞ。とんでもないビッグネームを持ってこない限りまとまらない。」
「なら、ボルテック殿が引退しなければ」
「そうは言ってもじじいはじじいなりの事情があって」
ぼくはちょっと考えたが、誤魔化すのは諦めた。どの道、ルールス分校長どのとは一蓮托生。ただ心臓には悪いぞ。
「魔王宮第三層で、ちょっと魔法の効かない相手とやり合って、そのとき長年密かに研鑽を積んでいた魔道プラス拳法を試したんです。
拳を使うのにいちばん相応しい年齢に若返って見事に、神竜皇妃リアモンドに引き分けたんだが、さあたいへん」
ルールス分校長の目が、完全におかしな奴を見る目にかわっている。
「今度はもとの年齢に戻れなくなってしまった。二十代の若僧が、いまさら魔道院支配ボルテック卿でございます、と言っても国のほうが認めないだろう。で、面倒くさくなったじじいは、学院長の席を放り投げた。」
「それを、わたしが縁あって拾ってやったというわけだ。」
ウィルニアが引き取って、そう言った。
さあ、これで事情は全部説明した。
だが、ルールス分校長の疑惑の視線は深まるばかり。
「嘘はついていない。それは分かるが、なにか証拠はないのか?
いや、こんなバカな話に証拠もないが。
せめて、ほかに証言するものはいないのか?」
ばくは、ロウを探したが彼女はアキルとイチャついていた。まったくぼくの仲間は(ぼく自身もふくめて)どいつもこいつも。
「いますぐ、というわけにはいきませんが、ランゴバルドに戻ったらアモンにきいてください。当事者ですから。」
「アモンが、当事者?」
怪訝そうな顔をしたルールス分校長の顔がみるみる青ざめていく。
「アモン・・・が、神竜リアモンド? そんな馬鹿な・・・」
「まあ、信じがたいでしょうけども。」
ぼくは慰めるつもりでつい言ってしまった。
「真祖に魔王がいるパーティに神竜がいても別にそんなに違和感はないでしょう?」
「ま。」
と言ったきり、ルールス分校長の呼吸はとまった。たっぷり一分はたったあと
「リウが、魔王バスズ=リウだと?」
あ、いかん。これはまだ話してなかったなあ。
「ひょっとしてギムリウスが、神獣ギムリウスなのも言ってませんでしたっけ?」
気を失ったルールス先生が回復するには少し時間がかかった。
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