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第3部 初めてのお使い 初めての・・・
第49話 藪の中
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クリュエルは何度も死地をくぐり抜けてきた。
そのつもりだった。
体術は、はっきり言って人間のレベルを超えた、と自負している。
それでも。
四方八方から槍の穂先を、皮膚に食い込むほどに突きつけられていては、「戦う」以外の選択肢を模索せざるを得ない。
アリアンとバンゴの二人が口々に叫んでいた。
クリュエルは裏切った!
例の新入生どもとメイリュウに、そそのかされて、ルトの奪還を命じられてここまできた。
自分たちは、あそこから脱出するために、誘いに乗ったふりをしただけだ。
裏切ったのはクリュエルだけです。
「何か言いたいことが、あるか? なあ、クリュエルのおっさん。
行き場のねえ、錆の冒険者を拾ってここまでにしてやった恩を忘れちまったのか?
そんな犬以下の脳みそしか入ってねえ、頭はいらねえなあ。」
エルト。「神竜の息吹」のボスはこんなときは、実に楽しそうだ。楽しそうに制裁を加える。
人をいたぶるのが好きで好きでしょうがない人種なのだ。
「いや、待ってくれ。」
クリュエルはなんとか笑みを作った。
「おいらの考えもこの二人と全く一緒さ。
病院のベッドに繋がれて、いざ退院となったら、ルトの捜索隊に無理やり合流させられた。
否も応もなかったし、こいつらと打ち合わせするために、三人きりになれる瞬間もなかった。
考えてることは一緒だよ。あんたや『神竜の息吹』を裏切るなんて気はさらさらないね。」
「なるほど、なるほど。」
ボスの愛想のいい笑いは怖いのだ。
今、ボスの脳裏には楽しいことしか浮かんでいない。すなわち、クリュエルたちを切り刻み、悲鳴を聞く楽しみ。
「メイリュウが俺を裏切りやがった、とそういうことか。」
「バッカねぇ。」
メイリュウは、強張った笑顔で、胸の膨らみを強調するように、シナを作ってみせた。
パンツもずり下げて、みせたのは下品すぎる。
「わたしが、あなたを裏切るような真似をするわけないじゃない。
こいつらがあんまり無様に負けるから、ちょっとイジワルしただけ。
本気で怒っちゃいやん。」
サオウは思った。
なんだよ、こいつら。正気なのは俺一人なのか。
幼馴染の彼はなかなかそうは見れないのだが。メイリュウは、それなりにいい女に違いない。キリリとした顔立ち。
スレンダーだが、すらりとのびた脚線といい、形よく膨らんだ乳房といい、スタイルだって悪くない。
だが、媚びるのが、全然ダメだ。なっちゃいない。
尊敬する団長がみるみるダサい女に成り下がっていくのを、暗澹たる気持ちでサオウは見つめた。
「1000万ダルだけどね、わたし、とってもいいことを思いついたの。
それで、エルト様に相談したくって。
ねえ。1000万ダル、このルトの仲間に払わせたらどうかしら?」
「ほうほう。」
ボスは体を乗り出した。
「なんかいいアイテムでも持ってんのか?」
「そうよ!
わたし、この目で見たもの。
伝説級の鎧。
色は真っ黒でね、兜は狼の形をしているんだ。」
一応は興味を持ったボスの目が、侮蔑のそれに変わった。
「・・・・あのなあ、それは伝説の『魔王』の鎧だろうが。」
拳がわなわなと震えたが、なぐる価値もないと判断したのか、そのまま手を下ろした。
「どこの世界に、コスプレグッズに1000万ダルの価値があんだよっ!!」
「ええええっ!間違いなくすごい業物だよおっ!伝説級の・・・」
「伝説級のコスプレグッズか。面白いもんを見つけたな。よかったよかった。」
そう言って、後ろを振り返る。
華奢な少年は、とぼけたように微笑んだ。
ぼくは、自分の救援隊が目のまえでなにもできないまま、瓦解するのを生暖かい半笑いで見つめた。
なにを言ってんだこいつら。
責任を押し付けあったつもりだろうが、結局、エルトの信頼を損なっただけに終わっている。
「なあ、新団長。こいつらをどうすりゃあ、いいと思う。」
振り返ったエルトの笑みが、飢えた肉食獣のそれになっていた。
「し、」
「しんだ・・ん・・ちょ?」
「ど、どういうことなの?」
「まあまあ、『メイリュウと愉快な仲間たち』のみなさん。」
「変なパーティ名をつけないで!」
「ぼくは、確かに『神竜騎士団』をいただくとはいいましたが、団長をやるとは言ってませんからね。
誰を団長にするかも含めて、ぼくに一任、ってことで。」
メイリュウがよろよろとへたり込んだ。
「じゃあ・・・わたしはどうなるの?」
「『神竜騎士団込みで、ルトのものになった。」
悲鳴は可聴音を超えていた。
「さあ、楽しいお仕置きの始まり・・・なんだが、お前はあまりすかないんだったな?」
「そうですね。」
ぼくは頷いた。
「とりあえず、メイリュウはぼくの所有物になったんで除外してもらいましょうか?
クリュエルさんたちも腕が悪かったわけじゃあなくて」
クリュエルたちが懸命に頷く。
「ぼくらが即席で鍛えた冒険者見習いの方が上回っただけの話ですから。
まあ、とりあえずは頭を冷やす意味でも、今晩はこのままここにお泊まりいただきましょう?
変な打ち合わせはされないように、一人一人個室で。」
「ま、待ってくれ。」
クリュエルが叫んだ。
「リウが・・・お前の相棒が・・・おまえが今日中に戻らないと、その・・・・ランゴバルドを破壊すると。」
この発言に、集まった「神竜の息吹」全員が爆笑した。
「おいおい、みんな頭がどうかしちまったらしいな。
おかしくなっちまった奴らを痛めつけても面白くねえ。
ルトのいう通り、頭を冷やせや。」
そのつもりだった。
体術は、はっきり言って人間のレベルを超えた、と自負している。
それでも。
四方八方から槍の穂先を、皮膚に食い込むほどに突きつけられていては、「戦う」以外の選択肢を模索せざるを得ない。
アリアンとバンゴの二人が口々に叫んでいた。
クリュエルは裏切った!
例の新入生どもとメイリュウに、そそのかされて、ルトの奪還を命じられてここまできた。
自分たちは、あそこから脱出するために、誘いに乗ったふりをしただけだ。
裏切ったのはクリュエルだけです。
「何か言いたいことが、あるか? なあ、クリュエルのおっさん。
行き場のねえ、錆の冒険者を拾ってここまでにしてやった恩を忘れちまったのか?
そんな犬以下の脳みそしか入ってねえ、頭はいらねえなあ。」
エルト。「神竜の息吹」のボスはこんなときは、実に楽しそうだ。楽しそうに制裁を加える。
人をいたぶるのが好きで好きでしょうがない人種なのだ。
「いや、待ってくれ。」
クリュエルはなんとか笑みを作った。
「おいらの考えもこの二人と全く一緒さ。
病院のベッドに繋がれて、いざ退院となったら、ルトの捜索隊に無理やり合流させられた。
否も応もなかったし、こいつらと打ち合わせするために、三人きりになれる瞬間もなかった。
考えてることは一緒だよ。あんたや『神竜の息吹』を裏切るなんて気はさらさらないね。」
「なるほど、なるほど。」
ボスの愛想のいい笑いは怖いのだ。
今、ボスの脳裏には楽しいことしか浮かんでいない。すなわち、クリュエルたちを切り刻み、悲鳴を聞く楽しみ。
「メイリュウが俺を裏切りやがった、とそういうことか。」
「バッカねぇ。」
メイリュウは、強張った笑顔で、胸の膨らみを強調するように、シナを作ってみせた。
パンツもずり下げて、みせたのは下品すぎる。
「わたしが、あなたを裏切るような真似をするわけないじゃない。
こいつらがあんまり無様に負けるから、ちょっとイジワルしただけ。
本気で怒っちゃいやん。」
サオウは思った。
なんだよ、こいつら。正気なのは俺一人なのか。
幼馴染の彼はなかなかそうは見れないのだが。メイリュウは、それなりにいい女に違いない。キリリとした顔立ち。
スレンダーだが、すらりとのびた脚線といい、形よく膨らんだ乳房といい、スタイルだって悪くない。
だが、媚びるのが、全然ダメだ。なっちゃいない。
尊敬する団長がみるみるダサい女に成り下がっていくのを、暗澹たる気持ちでサオウは見つめた。
「1000万ダルだけどね、わたし、とってもいいことを思いついたの。
それで、エルト様に相談したくって。
ねえ。1000万ダル、このルトの仲間に払わせたらどうかしら?」
「ほうほう。」
ボスは体を乗り出した。
「なんかいいアイテムでも持ってんのか?」
「そうよ!
わたし、この目で見たもの。
伝説級の鎧。
色は真っ黒でね、兜は狼の形をしているんだ。」
一応は興味を持ったボスの目が、侮蔑のそれに変わった。
「・・・・あのなあ、それは伝説の『魔王』の鎧だろうが。」
拳がわなわなと震えたが、なぐる価値もないと判断したのか、そのまま手を下ろした。
「どこの世界に、コスプレグッズに1000万ダルの価値があんだよっ!!」
「ええええっ!間違いなくすごい業物だよおっ!伝説級の・・・」
「伝説級のコスプレグッズか。面白いもんを見つけたな。よかったよかった。」
そう言って、後ろを振り返る。
華奢な少年は、とぼけたように微笑んだ。
ぼくは、自分の救援隊が目のまえでなにもできないまま、瓦解するのを生暖かい半笑いで見つめた。
なにを言ってんだこいつら。
責任を押し付けあったつもりだろうが、結局、エルトの信頼を損なっただけに終わっている。
「なあ、新団長。こいつらをどうすりゃあ、いいと思う。」
振り返ったエルトの笑みが、飢えた肉食獣のそれになっていた。
「し、」
「しんだ・・ん・・ちょ?」
「ど、どういうことなの?」
「まあまあ、『メイリュウと愉快な仲間たち』のみなさん。」
「変なパーティ名をつけないで!」
「ぼくは、確かに『神竜騎士団』をいただくとはいいましたが、団長をやるとは言ってませんからね。
誰を団長にするかも含めて、ぼくに一任、ってことで。」
メイリュウがよろよろとへたり込んだ。
「じゃあ・・・わたしはどうなるの?」
「『神竜騎士団込みで、ルトのものになった。」
悲鳴は可聴音を超えていた。
「さあ、楽しいお仕置きの始まり・・・なんだが、お前はあまりすかないんだったな?」
「そうですね。」
ぼくは頷いた。
「とりあえず、メイリュウはぼくの所有物になったんで除外してもらいましょうか?
クリュエルさんたちも腕が悪かったわけじゃあなくて」
クリュエルたちが懸命に頷く。
「ぼくらが即席で鍛えた冒険者見習いの方が上回っただけの話ですから。
まあ、とりあえずは頭を冷やす意味でも、今晩はこのままここにお泊まりいただきましょう?
変な打ち合わせはされないように、一人一人個室で。」
「ま、待ってくれ。」
クリュエルが叫んだ。
「リウが・・・お前の相棒が・・・おまえが今日中に戻らないと、その・・・・ランゴバルドを破壊すると。」
この発言に、集まった「神竜の息吹」全員が爆笑した。
「おいおい、みんな頭がどうかしちまったらしいな。
おかしくなっちまった奴らを痛めつけても面白くねえ。
ルトのいう通り、頭を冷やせや。」
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